悪夢EX 第一話 -小林莉菜・津守奈緒-





 それは修学旅行直前のこと。小林家にて。

「莉菜。忘れものはない?」

「うん。大丈夫だよ」

 母に云われ、小林莉菜は修学旅行のしおりと照らし合わせながら再度リュックサックの中を点検してみるが、チェック漏れは無さそうだった。

「そう。あんたは学校の中では珍しい普通の家庭の娘なんだから。そういうところで浮かないようにしないとね」

 母はいつも少しだけ自嘲気味に云う。確かにそうだった。お嬢様揃いの聖エクセレント学園において、莉菜の家庭環境は貧乏というわけではないけれど、珍しく一般庶民と言うべきか、ごく普通の中流家庭なのだから。それだけに、恥ずかしい思いはさせたくないとの心遣いだろう。

「やだなぁお母さん、大丈夫だって。それに。みんな普通に接してくれてるよ?」

 冗談めかして言う母に、笑ってそう返してやった。事実、そういったことで差別されたりいじめられたりしたことは皆無に等しかったのだから。みんな、普通に接してくれるのだから。そんなことを話していると、出発の時間になった。

「っと。そろそろ出ないと遅刻しちゃう」

「はい行ってらっしゃい。気をつけてね」

「うん。お土産いっぱい買ってくるからね。行ってきま〜す」

 トレードマークとも云えるリボンをきゅっとしめて、足取り軽く玄関を出る。彼女にとって楽しみな修学旅行はそうして幕を開けた。





それが全ての終わりとも知らずに。





 それからわずか数日後の事。牢の中には全裸にされたクラスメイト達が十数人、鎖で繋がれていた。

(……ん)

 『私』は今日もまた、とろとろとして煮え切らないような、浅い眠りから目を覚ます。『私』が誰であるかということは、もはや何の意味もありはしない。私は『彼女』の親友でクラスメイト、というだけ。

 目を覚ますと同時に、側から『ううっ』と、苦しげな声が辺りに漏れるのを聞いた。もはやこれも、今の私達にとってはいつものことに成り果てていた。寝ても覚めても暗闇の中で何度と無く、そして今も目の前で行われている行為。

 私のすぐ側でクラスメイトの『彼女』こと、莉菜ちゃん……小林莉菜ちゃんが、男に頭を掴まれながら太いアレを口内へと押し込められている。苦しさと嫌悪感でくぐもった声が、嗚咽混じりに響いているのだけれど。私にはどうすることもできない。どんなに助けてあげたくても、だ。それは私以外の誰であっても同じ。力では絶対にかなわないし、それに……助けようとした方も巻き添えをくらってひどい目に遭うのが明らかだから。事実。そのような例は枚挙にいとまがない。

「ほら、もっと舌を使え。動かすんだよ!」

「んぐぅっ!」

 鋭く、情け容赦ない声が牢の外に響く。直人という若い男によって莉菜ちゃんは、ずにゅ、ずちゅ、という感じの音とともに口内の奥まで犯されて、引き抜かれてはすぐに激しく奥まで犯される。吐き出しそうな嫌悪感を抱いているのに、男たちはそれを許さない。

(ひどい)

 無機質で、固く冷たい鉄格子の向こう側。そこで行われている無情な出来事。これが何度目かなどということは、既にもうわからなくなっていた。もはや一度や二度のことではないから。

 莉菜ちゃんは制服をはぎ取られ、完全に丸裸の状態にされながら犯され続けていた。スカートも、ブラウスも、ショーツも、ブラジャーも、衣服を何もかも剥ぎ取られて、何一つ身にまとっていない。髪につけた可愛いリボンだけがただ一つだけ残されて、犯される度に揺れるのが寒々しく見えてしまう。でもそれは私達も同じ。私も莉菜ちゃんも、誰もが衣服を剥ぎ取られ全裸にさせられていた。空気は冷たくて、鳥肌が常に立っている。極限の緊張感に、誰もが心の中で絶望の叫びを繰り返していた。もう嫌だ。助けて。ここから出して……と。

「あぐ……あぐ……あぐぅぅぅ〜!」

 莉菜ちゃんは目を閉じることもできずに、ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、ただひたすらに、云われるままに男のアレをくわえこみ、激しく口を動かしている。

 ここに連れて来られてから…どれほどの時が経過したのだろう?

 日々こんな、地獄のような光景ばかりが繰り広げられて。私たちは男たちの慰み者にされて、壊されていく。

「よし。そろそろ後ろから入れてやろう。どちらにするかな」

「入れられた拍子に噛むんじゃないぞ。ん?」

「あひぃっ!」

 木戸という男が、莉菜ちゃんの後ろから一気に挿入することにしたようだが、どちらの穴に入れるか少し迷っていた。この男たちには分担というものがあるらしく、最初は莉菜ちゃんを直人という男が犯すだけだったのだけれど、そのうち木戸という大柄な男と、古手川という老人も加わっていった。互いに割り振られた娘を交換し始めたのだ。

 直人という男が云うには『こいつにはもう飽きたから、やらせてやるよ』と云うことだ。そんな、人を物のように扱うなんて信じられないと。最初は思ったけれど……。

「ぐ……ぎぎ……んぐっ! い、たい……よぉぉ! あぐぅっ!」

 直人のアレをくわえさせられたまま腰を捕まれる莉菜ちゃん。木戸は結局後ろ、お尻の穴へと挿入し始めたのだ。そんなところにまで……。

 咥えたものを噛めばどのような目に遭うかわかっているから、おとなしく従順にならざるを得ないが、すさまじい痛みと圧迫感に口から離してしまう。それでも木戸は莉菜ちゃんのお尻の穴を貫き、奥まで無理やりねじ込んでいく。その拍子に、くわえていたものを離してしまうが。漏れてきた声は苦痛に満ちていた。

「ぐ……うッ……ぐぅぅ。さ、けちゃうぅ。し、死んじゃ……うぅぅ。助け……て、ぇぇ」

「ふう。全部入ったぞ」

 本来、モノが入る部分ではないのに強引に挿入されて。苦痛と涙で莉菜ちゃんの顔がくしゃくしゃに歪んで行くけれど、それでも容赦なく男たちは責め続ける。

「あ……。や、だ……やめ……てぇ……。いた、い……うぐっ! あぁ、あぁ、あひぃ、あひっ……あひぃぃぃ!」

「相変わらず、きつそうだな」

 直人が云い、木戸が答える。

「そりゃ。尻の方だからな…っく! もっと早く動かすぞ!」

 莉菜ちゃんのお尻付近がぬめりを帯び、木戸の陰毛とこすれ合いずりゅずりゅと音をたてはじめる。直人は再度彼女の頭を髪を鷲掴みにしながら固定して、一気に口内へのピストン運動を早める。

「それじゃこっちも。一気にいこうか。そらそら……そらぁっ!」

「ぐはっ! んぐううううっ!」

 同時に、木戸も後ろの穴への挿入も早めていく。

 莉菜ちゃんの身体は前と後から同時に揺さぶられ、ガクガクと揺れている。そうして、大した間もなく……。

「くうっ!」

「出る!」

「ぁ……」

 わずかなうめき声とともに男たちは莉菜ちゃんの中へと射精してからアレを抜きさった。

 どさっという鈍い音と共に、莉菜ちゃんの身体が床に投げ出され、無造作に転がった。

「ふぅ。快感だ」

「ああ」

「ぁ……ぅ……」

 まるで物を扱うかのように乱暴に……。うつ伏せに転がされた莉菜ちゃんの口とお尻の穴からは、白い液体がとろとろとこぼれ落ちている。

「たっぷり入ったようだな。こぼれ落ちてくるぜ」

「すっかり俺たちのが馴染んだようだな」

「そりゃ、毎日のように可愛がってやってるからな」

「努力のたまものってか?」

 男達はまるで汚物に触るかのように、莉菜ちゃんの両足を大きく開いてから、固い革靴の先端で乱暴にお尻の穴をつついて押し広げる。

「い……やぁ……」

 莉菜ちゃんは虚ろな瞳で微動だにせず、硬い靴先をぐりぐりとお尻の穴にねじり混まれる際に生まれる新たな痛みに顔をしかめながら、ぽろぽろと涙を流していった。

「もっと広げてやれよ」

「はははは!こいつ、ケツの穴からも垂らしてるぜ」

「ううっ。……痛い……よぉ。嫌………ぁぁ……。もお、ゆる……してぇぇ……うっうっ」

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 私たちは抵抗すらできず、男たちの欲望の赴くままに貫かれ、汚されていく。始まりは……正確には覚えてないけれど。ほんの数日ほど前のことだった。けれど……もう、どうでもいい。

 私には何もできないと、悟ってしまったのだから。悲しい。悔しい。どうして。どうしてこんなこと、するの……? と、誰もが自問自答するけれど、答えなど出るはずがなかった。










莉菜は思う。



中学生の頃。




聖エクセレント学園に合格した。と、そう云ったら、聞いた友達はみんな驚いて、そしてうらやましいなぁと、自分のことのように喜んでくれた。




全国でも指折りのお嬢様学校ということで、最初は不安だった。私の家は、貧乏……というほどではないけれど、お金持ちというわけでもなかったから。で も……。




クラスメイトはみんな、そんなこと気にしないで接してくれた。




時がたつにつれて、仲良しの友達ができていった。




修学旅行。すごく、楽しみにしてたのに。




私は……もう……。




もう……。










「せっかくだから、もう一回してやろうか」

「輪姦してやろうかのう。ひっひっひ」

 今度は古手川と云う名の老人も加わり、今度は三人がかりで莉菜ちゃん取り囲んだ。これだけいたぶっても、まだ満足できないのだろうか。せめて……せめてもう、楽にさせてあげて欲しい。そうは思うけれど私ははっとする。この行為が終われば、次に犯されるのは私なのかもしれないから。……恥じ入る間もなく、涙が頬を伝う。もう、全てを終わらせて欲しい。欲しいのに……。

「うっうっ……。もう、いやぁ……はうっ!」

 男達は横たわる莉菜ちゃんを無理矢理起こしてまた、犯し始めた。穴という穴に一気に挿入し、突き始めるとぱんぱんと、肉体がぶつかる音が響き渡って嫌でも聞こえてくる。

「そらっそらっ。いいぞぉ!」

「う。いい……」

「うぅ……ぅ……っ」

 度重なる陵辱によって莉菜ちゃんの瞳は、光が消えたように虚ろになっていき。やがて、反応すらおぼろげになっていった。










男達がそんなことを何度となく繰り返していくうちに、時間は更に過ぎていく。









『私』は涙が乾かないまま、浅くて不快な眠りについていった。










 もはや、いつのことだったかということも知る由もない。この行為がいつから繰り返されているか、ということなど。

 もうろうとした意識から我に返ると……再び、ぱちん、ぱちんと裸の肉体同士が激しくぶつかり合う音が響いていることに気付く。それは私たちが閉じこめられている、牢獄の外。僅か数メートル先の風景。

 男達は驚異的な精力を持っているようだ。莉菜ちゃんを犯すだけに飽きたらず、今度は牢の中から他の娘……津守奈緒ちゃんを引きずり出し、いたぶり始めていたのだ。奈緒ちゃんも、莉菜ちゃんと同じような目に遭わされていた。

「む、お……おおっ。しまる。きついっ……」

 木戸と呼ばれているサングラスの大男が、顔を僅かにしかめながら咆吼のようなため息を漏らし、更に挿入の速度を速めていく。痣ができるくらい強く、奈緒ちゃんの小ぶりな胸を握りつぶしながら、ずんずんと強く。あんなに強く揉まれたら、痣ができてしまうだろう。それくらいに。

「う……。ぎぎぎぃぃ……い、いた……い……よぉ……ぐすっ。……やめ……やめてぇぇ」

「そりゃ。この娘はお前さんがはじめてじゃからのぅ。だからその分しっくりくるんじゃろう? ……ホレ、口を開け。ワシのものもしっかりくわえてもらおうかのう」

「あぐぅっ!」

 奈緒ちゃんの口内へと古手川と呼ばれている老人の……老人とは思えない大きさのものが突っ込まれる。強引に、嫌がる奈緒ちゃんの口の中にだ。もし噛んだりしようものなら、どのような目に遭っているかわかっているから、従順に、限界にまで口を開いて奉仕するしかなかった。

 以前に、別の娘が口で奉仕させられて……歯が当たってしまって、思い切り平手で殴られていた。その光景を、彼女も知っているのだから。

「うぶっ。んぶっ、んぶぅっ!」

 莉奈ちゃんの時と同じように、奈緒ちゃんも男二人によって犯されていく。それも、最初の頃に比べて明らかにエスカレートしている。明らかに嫌がるように、いたぶるように愛撫をしている。

「そりゃっ。そりゃっ!…そりゃぁっ!」

「も、もっと腰を使えっ! 動かせ!」

 叱咤と共に奈緒ちゃんの体はガクガクと震えていく。奈緒ちゃんの、後ろで一括りにまとめられた髪がぐいと乱暴に捕まれて引っ張られ、苦しそうに背中を反らす。くびれた腰も折れそうなくらい、震えは激しくなっていく。

「むぐぅっ!お、おうっ、おぐっ、おぶぅぅっ!」

 呼吸困難でおぼれそうな声。

「よ、よし……中に出すぞっ!」

「ううっ……。も、もう……限界じゃっ!出すぞ!」

 ぱちん、ぱちん、じゅぷ、じゅぶ……陵辱の音は、いつも同じ声のない涙のようだった。断続的に何度も何度も、早く、強く犯す。弱くて、無抵抗な女の子を好き放題に虐め、痛めつけていく。

「ん……くうぅぅぅぅ……ん…」

 初めても奪われて……大好きな男の子だけに捧げるはずだったのに。そんな、ささやかな夢すら踏みにじられて、汚されていく。ひどい。けれど、どうすることもできない。

「くっ!」

「むぅっ!」

 最後には強烈な一突きで、私たちには悲しみの。男達には快楽のクライマックスを告げ、ドサっと投げ出される。云うまでもなく、口とあそこに思い切り出されてから、だ。

「ぁ……ぁ……。ぁ……ぅ……ぁ………」

 乱暴に床へと転がされ、ようやく解放された奈緒ちゃんの、焦点の合わなくなってしまった虚ろな瞳が妙になまめかしく見えてしまう。不謹慎だと思うけれど、綺麗だと思ってしまった。

「さて、と。……今度は前と後ろいっぺんに入れて可愛がってやるか?」

「ふむ。それも良いが、その前に洗濯してやるとしようか」

「そうだな」

 男達は互いに頷きあってから、どこからか消火用のホースを持ってきて、精液がたっぷりとこびりついたままの、奈緒ちゃんの口やあそこをめがけて強烈に冷水を浴びせて、洗いにかかった。

 私たちは今、男達に犯されるためだけに生かされている。最初は何もなかった。私たちは何もない牢屋に閉じ込められ、鎖の付いた首輪で繋がれていた。だが、日がたつにつれて牢の中は空調を整えられ、時には医師を呼ばれて健康状態を維持されて、時にはお風呂にも入れられた。それもこれも全ては男達の欲望を満たすためだけのことだった。全裸で、自由を奪われていることには変わりないのだから。

「いっ! ぁぁぁ……あっやっ! ……つ、つめた……い……よぉ……ああっ! やめ、て! あっあっあ!」

「綺麗になったらまた可愛がってやるからな」

「ふぉっふぉっふぉ。ほれほれ、ほおれほれ、綺麗になろうな」

「い、痛い……よぉ…。あっ、あうっうっ……しみる……よっ……嫌ぁぁぁ……やだあぁぁっ!」

 圧倒的な水圧に叩かれて、床の上を転げ回る奈緒ちゃん。まるで、物のように……ううん。もっと酷い。まるでゴミのように扱われ……汚されていくクラスメイト達。それは私も例外ではなかった。数日、もしくはすぐ次の瞬間に、ああいう目に遭っているのは私かもしれない。きっと、そうなのだろう。

 男達は奈緒ちゃんを散々水攻めにしていじめてから、バスタオルで体を拭いて……そして行為を再開する。

「よぉし。では、続きをするぞ」

「夜はまだまだこれからだからな。そらぁっ!」

「うがっ! もう……や……ぁぁぁ……ぁ、ぁ……助け……ああぁぁぁ!」

 奈緒ちゃんのお尻とあそこに、勢いが戻ったアレがずぶずぶと突っ込まれていく。

「いっ、いっ……嫌ぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ! さ、裂け……あああーーーーっ!」

 暗闇の中。いつまでこんな事が…続いていくのだろう? 誰も、その疑問には答えてくれない。

「ひぎゃあああああ〜〜〜! いやっ……いやああっ! 痛いぃぃっ! だめぇぇっ! や、やめてぇーーーーっ!」

 それは……壊れつつある私たちの、悲鳴。もう何も考えたくないので、私は目を閉じて浅い眠りを求めた。










奈緒は思う。




私には、お父さんがいない。




お母さんはいつも忙しいから。私がお母さんの変わりに家のことを何でもやった。当然のことだと思っていた。




だから私はいつも動きやすいように、髪を後ろで留めているだけ。




みんなに比べて地味かな、とは思うけど、リボンは可愛いし、お気に入りだった。




料理も掃除も、嫌いじゃなくて、むしろ大好きだった。




修学旅行の数日間は、お休みできるね、なんて。お母さんは笑って云った。




そうだね、と私も笑って答えた。




どうして……こんなことになっちゃったんだろう?




私はもう、何も……。考えることも、できなくなってきちゃった。




何もかも奪われて、悲しさと、悔しさと、痛みで、心が……壊れちゃった……。










 犯され、遠のく意識の中で、二人は思い出す。

 新学期の頃。旅行に備え、クラス内で四人一組の班を組むことになった。公平にということでクジで決めることになったのだけど。莉菜はと云うと――。

「奈緒ちゃん」

「一緒だね」

 親しい仲の奈緒と一緒になって、ちょっと嬉しかった。裕福な家庭に育った娘が多い聖エクセレント学園だけど、奈緒の境遇は比較的莉菜と似ていたから。奈緒は母子家庭に育ったので、金銭的には全く問題なくても炊事洗濯掃除買い物など、家事は全て自分でやっている。だからか、奈緒はお嬢様揃いの中でもどことなく庶民派というべきか、家庭的な雰囲気の娘なのだった。

 それに何より、奈緒はとてもおっとりしていて家庭的な性格をしているわけで、いつしか自然に莉菜と共感して仲良しになっていた。

 程なくして、もう一人が決まる……。

「あら。私は二班みたいね」

 その声は莉菜とは正反対の、超が付くほどの典型的なお嬢様。西九条財閥の令嬢、紫音に決まったようだ。そして更に立て続けにもう一人が決まる。その瞬間、莉菜と奈緒は互いに顔を見合わせてしまった。それもそのはず。

「私は、二班のようね」

 今をときめく新人アイドル松澤礼菜。彼女は莉菜にとって憧れの存在。それは奈緒にとっても同じで。二人が顔を見合わせてしまったのは、これから決めなければいけない事があるわけだった。とっても厄介なことを。

「全員決まったわね。それじゃ、次に班長を決めてください」

 教卓のところで学級委員長の柚流が微笑を見せながらそう云うと、各班内での話し合いになった。案の定そこで問題が発生する。

「私がやりますわ」

「いいえ。私がやるわ」

 紫音と礼菜。互いにプライドの高い者同士。別名、クラス内でも随一の意地っ張り同士でもあるわけで。ちょっとしたことですぐ張りあうことになってしまうのだった。いつもこんな些細なことで衝突してしまう。

「あはは」

「やっぱり」

 二人して苦笑してしまうわけで。そして結局、公平な勝負ということで提案してみる。

「ジャンケンで決めたらどうかな?」

「うん。それがいいと思うよ」

 無難なところに落ち着いたのだった。というよりも、そうでもしないといつまでたっても堂々巡りになるだけなのだった。

「わかりましたわ。三回勝負でいいわね?」

「ええ、いいわ。それじゃ、いくわよ紫音!」

「ええ。来なさい礼菜! 最初はグー!」

 どちらも負ける気などさらさらない。望むところとばかりに気合いを入れて拳を振り上げるのだった。

 ふと、他の班を見てみると?

「あは」

「可愛いね」

 お隣の班は鈴と流花、そしてひなとみお。みんなマスコットのように小柄で子供っぽくて無邪気で、可愛らしい班ができていた。そして、他には。

「あ……」

「あっちも、みたいだね」

 せりかと、彼女をライバル視している美沙紀。同じような境遇にいるのだから対抗意識も燃えてくるようで。やっぱりジャンケンで張り合っていた。

「私の勝ちね」

「うう。悔し〜!」

 勝負は紫音に軍配が上がったようだ。勝ち誇り、笑顔の紫音と心底悔しそうな礼菜だった。










…………










 男たちの声が、彼女たちの意識を再び現実へと引き戻した。今の二人には、紫音も礼菜も既に犯されている事など知る由もない。紫音も礼菜も別の牢獄にて鎖に繋がれ、破瓜の痛みと屈辱にうちひしがれていた。

「こいつ、がばがばじゃのぅ」

「そうだな。これじゃ、もう洗っても取れないだろうな」

「う……ぅ……」

 奈緒の身体のあらゆる所……口もあそこもお尻も、白濁液がたらたらとこぼれ落ちていく。長時間に及ぶ行為により、彼女はもう動くことすらできず、微かに震えるだけだった。

「まあいい。かえって滑りがよくなるだろ。……さて、またケツの中に入れてやるかな」

 木戸は尚も犯すつもりのようだ。

「ほっほっほ。気に入ったようじゃのう」

 古手川が邪悪な笑みを見せる。

「最高だからな」

「ぅ……ぅぅ……」

 木戸という大男に持ち上げられた奈緒の身体は人形のようにだらりとして、完全に力が抜けてしまっているけれど、そんなことはお構いなしだった。

「じゃあわしは、もう一回中を味わおうかの」

 そして、前後の穴をずにゅっと奥まで入れられてしまう。

「はうっ! あがっ! や……ぁ……っ!」

「くぅ! 夢見心地じゃわい」

「う……。締まる」

「あ……ぁ……。や、だ……。たすけ……うぐっ」

 弱々しい拒否の言葉も、助けを呼ぶ声も、ずちゅ、ずちゅ、と激しく犯される音にかき消されていく。……奈緒はやがて失神してしまい、何も……話すこともできなくなっていた。

 そうして数時間に及ぶ凌辱はやっと終わり、用済みになった奈緒の体はどさりと床に放り出された。同じく凌辱し尽くされ、立ち上がることすらできない莉菜が転がっている上に重なるように。

 二人の虚ろな視線が重なるけれど。もはやその瞳には何も映ってはいなかった。










「かえ……りたい……」




うわごとのように莉菜は云った。けれど、失神した奈緒にはその言葉は届かなかった。




「う、うぅ……げほっ! けほっ! えふっ……う、うぅぅ!」




莉菜の呼吸は荒く、ひゅーひゅーと喘息のように辛そうだった




むせ返る度に、飲み込まされた精液が嘔吐感を誘う。




必死に堪えてやり過ごしても、下腹部に出された火照りは消えない。




「かえ……して……」




奪われてしまったものを返して欲しいのか。家に帰して欲しいのか。その両方か……。




白目を剥いて重なった奈緒の口から、とろりと精液がこぼれ落ちてきて、莉菜の顔を汚していくけれど




もはや莉菜には、ぬぐい取る力すら残されていなかった










「いやあああっ!」

 不意にまた、誰かの絶叫が響く。男達はまた、牢の中から誰かを連れ出して、犯し始めたのだ。

 陵辱の宴は終わるどころか、始まったばかりのようだった。



















-了-