悪夢EX 第四話 -牧野詩織・大和美紗紀-





 昼間なのに薄暗く、気分を陰鬱にさせるような長雨が降り続く。それはあたかも、空が彼らの悪事に手を貸し、痕跡を洗い流すかのように。時折雷鳴すら轟く。

 全ては計画通りに進んだ。

 古手川、直人が具体的な計画を立案し、木戸がそれを実行力としてサポートする役割は最初から決まっていた。彼らは抜け目なかった。その証拠に、何も足跡を残しはしなかった。事実、警察の捜査は難航を極め、全てが後手に回った。結局の所何もわからなかった、と云うのが正しいところだ。

 バスジャック実行地点より数キロ程先。山の中へと続く、アスファルトも途切れた林道にて。彼らは大型のトラックを用意していた。そして暗く、人目に付かない場所でバスを止め、脅える少女たちを全員トラックの荷台に押し込むようにして、直接詰め込んだ。ものの数分もたたぬ内にバスは無人と化した。

 そしてそこで彼らは二手に分かれた。木戸がトラックを、直人がバスを運転していく。後には何も残らなかった。誰も見つかることも目撃されることも無く、神隠しのように少女たちは消え去った。ひたすらに暗い闇の中で、少女たちは恐怖と不安にさいなまれた。雨は更に強まり大粒になっていき、全てを洗い流していった。

 何時間……あるいは何十時間が経過したことだろう。それさえもわからないような長い間、トラックは走り続けた。光は一切届かず、音は聞こえず、電波も入らず。二十数人の体は押し合いへし合い、ひたすら揺さぶられ続けた。

 距離にしても、もう、百キロ、二百キロ、という程度の数字では表せないだろう。日本の端から端まで行けてしまうのではないかと思うくらいに遠くまで来たのではなかろうか。

 半日。あるいは一晩。もしかするとそれ以上かもしれない。少女たちが疲れ果て、中には眠りについてしまう娘も出る頃に、トラックはガタガタと揺れる。荒れた道を数時間も走り続けたところで突然止まった。山奥の、誰も来ないようなところに連れ込まれたのだ。

 がちゃりと重厚な金属音をたてて後部のドアが開く。その先に明るい光は見えなかった。それでも完全な闇は消え、薄暗い木造の建物の中だと分かる。突然『出ろ』と低い声が響き、トラックの最後列に座っていた少女がびくっと体を震わせる。云われなくても出ざるを得ない。暗い闇の中は恐ろしい。だが、とにかく外に出たいと思った。全員がトラックから降りて男たちに導かれるまま歩む。すると、だだっ広い大広間へと着いた。そして、そこに座れと命じられる。

 二十数名の女生徒たちはすぐさま思い知ることになる。自分たちは誘拐され、監禁されたのだ。嫌。怖い。何なの。私達をどうするつもりなの。と、そのような内容の呟きが漏れる。他にもすすり泣き、震える声。……違和感と不安。そして、殺されるかもしれないと云う恐怖。彼女たちの悪夢はこうして幕を開けた。

 一方。バスの処分を任された直人だが。少女たちの荷物を全て確保した後、無用となったバスを湖の中に沈めた。足が付かないように携帯電話のような通信機は全て破壊してから捨て、証拠隠滅の為にバスのガソリンを全て抜き、重しを付けて二度と発見されぬように処置を取った。これまでについたタイヤの跡も、雨が洗い流してくれることだろう。何も問題はなかった。後はもう、主人の元へと戻るのみだった。

 その日の夜。少女たちが向かうはずだったホテルでは、引率の教師達や旅行業者が不眠不休で電話対応と調査に追われていた。到着するはずのバスが一台来ない。その上誰とも連絡が取れない。道に迷いでもしたのだろうか? 事故にでも遭ったのだろうか? それとも何かが? あるいは……。全て杞憂であればいいのだが。とにかく確認を取らねばならない。だが、時は既に深夜であり、加えて激しい雨が降り続き、風は吹き荒び、嵐となっていく。何も手がかりが得られずに、焦燥感だけが高まっていく。

 青ざめながら忙しく動き回る大人達をよそに、被害に遭わなかったクラスの少女たちは理由も説明されぬまま放置され、何事かといぶかしがりながらも、結果的に予想外の自由時間を与えられた。だから、友人たちと楽しげにお喋りに興ずるのだった。





その時は





別のクラスの友人達が全員拉致監禁され、犯され、汚され、壊され。





そして、二度と会えなくなる事など知る由も無かった。





 いやああ……、と、少女たちの喘ぎが聞こえる。目の前から聞こえてくるそれは、巨大な大型液晶ディスプレイの映像と完全にリンクしていた。

 牢の前。男たちのサディスティックな嫌がらせ。誰もがあの時の恐怖を思い出す。処女を奪われた時の苦痛に満ちた時間を。

 鉄格子ごしに置かれたそれはただ延々と、少女達のレイプシーンを流していた。ある少女は圧倒的な力で制服を引きちぎられ、泣き叫びながら抵抗をし、また、ある少女は男の性器を口で無理やりくわえこまされ、くぐもった声を上げながら顔を前後に揺さぶられしゃぶらされていた。ある少女は気味の悪い老人に体中をなめ尽くされ、白目を剥いてひくつき、また、ある少女はお尻の穴に肉棒を突き立てられて、羞恥と痛みと嫌悪感とどうしようもない絶望に涙をこぼす。ある少女は凌辱のショックに耐え切れずに失禁し、ある少女は奴隷のように首輪を引っ張られ、惨めさに頭を振った。

 映像の中でもリアルでも、クラスメイト全員のレイプシーンがエンドレスで続く。耳を塞いでも目を閉じても悪夢が解けることはなかった。そんなものを見せられて、最初は取り乱す娘がいた。だが、今ではもう……うつむき、目を逸らすだけだった。もう、おしまいだ。と、誰もがそう思ってしまったのだから。

「おとう……さま」

 誰もが全裸にさせられ、鎖で繋がれる牢の中で。一人の少女がぼそっと呟いた。牧野詩織。旧家の娘。

 思い出すのは厳しくも優しい父の事。詩織が誰よりも慕い、尊敬し、頼っている人物。年配の男性の姿が脳裏に浮かぶ。彼女が知っている男性は、父だけだった。

 詩織は母親不在の父子家庭にて育ったからか。父の云う事は絶対だった。けれど、それに対し不満を抱いたことは少なかった。父の云うことは全てが正しい、とまで思っていたのだから。

「ふぉふぉ。何じゃな?」

 古手川は、四つん這いにした詩織の腰を掴み、後ろから激しく突き立てていた。その度に、詩織のポニーテールにした長い髪が揺れる。詩織の心は今まさにずたずたにされていた。

「どうじゃな。お父様の肉棒の味は」

「おとう、さ……ま……ぁ」

 父を捨てろ。今日からお前の父はワシだ。お前のお父様は古手川という名の老人だと宣言しろ。と、古手川から脅迫を受け続けていた。無論そんなこと認めるわけがなかったが、度重なる凌辱に、詩織はついに屈してしまった。あまりにも執拗で、ねちっこい責めに詩織は心身共に疲弊していった。

「いいのう。ほれほれ。もっともっとワシのことをお父様と呼ぶのじゃよ」

「う、うぅぅぅ。う、う……。痛……いぃぃ」

 何度と無くぎりりと乳首を摘ままれて引っ張られる。痛みに顔をしかめながら、やがて云わざるを得なくなる。

「お……とう、さ……まぁ」

 古手川のことを父と呼ばされた。その瞬間、全てがどうでもよく感じられる。最低最悪の鬼畜に屈し、父を裏切ってしまった。詩織にはそう思えた。もうこれで何度目だろうか。

 陵辱に次ぐ陵辱で、古手川は云った。『私はあなたの娘です、と云え』と。それは男達の性欲を満たすだけの奴隷にされてしまった証拠だった。

「ふぉふぉ。よく云ったのう。これで今日からお前はワシの娘じゃ。お父様のち○ぽはどうじゃ? ん?」

「あ、あ、あ。やぁぁぁ」

 お父様と呼ばれた古手川は更に調子に乗って、ばん、ばん、と音を立てて詩織を突き立てる。ふっくらとした胸を揉みしだきながら。

「ほれ。云え。『お父様のち○ぽが私のおま○こに入って、こすれて気持ちいいです』とな」

 云えるわけがない。が、その都度古手川は詩織の乳首を握り潰す。詩織が痛みで顔をしかめる。その度、恥ずかしいことの復唱を要求される。

「あひぃ……。お……とうさまの……あっ……。ちん、ぽ……が。ふっ……や……」

 とめどなく流れ落ちる涙をぬぐい取ることすらできずにいた。脅迫されているとは云え、自分は今、何と卑猥で嫌らしい事を口走っているのだろう。

「ほれ。ちゃんと云え」

「あふ……。私の……お、ま……こに入って……んっ。こす、れて……うっ。きも……ち、い……です」

 古手川はにやりと笑って何度でも云う。お前の本当のお父様はワシじゃ、と。認めろ。認めろないなら認めるまで犯す。その繰り返しだった。僅か数分前の記憶は、今でも詩織の心をえぐる。

(ごめ……んなさ……い)

 詩織は泣いている。心の底から。

(お父様……。許して、ください)

 謝っても謝り足りない。汚されてしまった姿を見たら、父は何と云うだろう。許してくれるのだろうか。きっとそうだろう。だけど……何かが失われて、二度と戻ってこない気がした。

「おっおっ! 締まりがいいのう。出るぞ! 出すぞ! お父様のザーメンを体で受け止めるのじゃぞ」

 その間も古手川は詩織を犯す。熱く、大きなものが詩織の中をかきまぜる。絶頂が近まり……一瞬びくっと震えて硬直した後に、膣内に射精していた。下半身に熱いものを感じ、詩織は溜息をつく。

「あ、あ……」

「そら。今度はこっちじゃ」

 中に出され、呆然とする詩織。それに対し古手川は満足しきれなかったのか、すぐさま次の行動に移る。

「や。あ……」

 今まで入れていたところの少し上。ひくつくアヌスの先端を押し当てる。そして云う。

「お父様のおちん○んでお尻の穴をずこずこ突いてください、と云うのじゃよ」

「う……あ……。や、あぁぁ。おしり……い、や……」

 牢の外。大きな液晶ディスプレイに写る少女達も、例外なくアヌスを汚されていた。あまりにも非道な行為に誰もが目を見開いて絶叫した。男達は楽しそうに聞きながら、奥深くまで突き立てた。

「なんじゃ。お父様の云うことに逆らうのか?」

「あひぃっ!」

 古手川は詩織のクリトリスをつねった。詩織の目から涙がこぼれ落ちる。

「しょうがないのう。悪い子にはお仕置きじゃ。ほれほれ。ずこずこずこ〜」

「や、だ、あ、ああああ……やめ……あ、あぁぁぁぁぁ」

 信じられないところを責められ、詩織は泣きじゃくった。さしたる抵抗もなく、アヌスに肉棒が突き刺さった。

(お父……様あぁぁ。ゆ、ゆる……して、くださ……い)

 果てしなく続く凌辱。詩織はしゃくり上げた。

(たす……けてぇぇ。おと……さ、ま……たすけ……あ、あぁぁ)

「ほ、ほっ……ほっ!」

 古手川は動きを早めていき。やがて……達するのだろう。ずきゅ、ずきゅ、と柔らかくほぐれた感じに擦れ合う。何と云う所に入れられているのだろう。詩織はあまりの恥ずかしさに目を閉じる。

 父以外の男性と付き合うときまで……父が認めてくれるような、優しい人と結ばれるまで守りたかった。けれどもう、手遅れもいいところ。

「出るぞぉ。受け止めるのじゃぞ、我が娘よ」

「あふぅぅうっ! い、や、あぁぁぁ……」

 程なくして詩織はあそこにもアヌスにも出されて脱力し、倒れ込む。初めて中に出された時、誰もが呆然とし、錯乱し、そして泣きじゃくりながら必死にかき出そうとしたけれど無駄だった。どうしようもない絶望に涙を流しながら、妊娠しちゃう……と、誰もが呟いた。

「ふぉふぉふぉ。ではもう一寸、してもらおうかの」

「う……あ……うぐっ!」

 古手川は詩織の顔を椅子がわりにして、腰掛け。自分の尻の穴を、舌で愛撫させ始めたのだ。余りの嫌悪感に、詩織の心は壊される。

「ほれ。お父様の尻の穴を嘗めるのじゃよ」

「ぐ……。ぎ……いぃぃ。あ、が……ぅぅぅぅっ! ぐえぇぇぇっ!」

 もがき、苦しむ。呼吸すらまともにできない。それでも舌の先端をちろちろと動かす。嘔吐感が込み上げ、胃液を吐く。完全に服従させられてしまった悲しみに、詩織は華奢な体を震わせる。

「ほ、ほっ。気持ちいいぞ。自分の娘に嘗めてもらうのは最高じゃのう」

(わた……しは……)

 あなたの娘ではない。そう云いたかった。けれど、もはや声を出すことすらできはしなかった。

(こんなのもう……いや。たすけて……。もういや……です……だれか……たす……けて……。おとう、さま……)

 余りの嫌悪感に、詩織の意識は遠のいていった。ディスプレイに映る凌辱は、未だに続いているようだった。










その頃。










「あぐぅ!」

 椅子に腰掛ける大男。木戸大門。その上に跨がるようにして犯されているのは大和美紗紀だった。落ちないように木戸の体を掴むと、恋人同士が抱き締め合っているような形になって、悔しくて見ていられない。時折乱暴にキスをされて、尚更そう思う。愛情など、ひとかけらもこもっていないキス……。

「うぐうっ!」

 ファーストキスは、むしゃぶりつくかのように奪われた。葉巻の濃い匂いが口内に充満し、美紗紀はむせ返った。

(なん、で……。こんな……)

 かれこれ数時間、一つになった状態にされている。揺さぶられ、振り回され、美紗紀は力尽きていた。が、当の木戸は美紗紀の存在など無視していた。道具でも使うかのような態度だった。

「馬鹿野郎! 応じないのならトラックでもダンプでも突っ込ませろ!」

 やくざのような風袋の男、木戸。彼は椅子に腰掛けながら携帯電話で話をしていた。これでも紳一より会社経営を任されているのだ。あまりにも強引で、悪どいやり方でのし上がって来た。汚れ仕事はお手の物というわけだ。今もそうなのだろう。が、それが故に紳一の信頼を得ているのだ。

 苛ついた口調で怒鳴り散らす。部下に指示を与えていると云うよりも、恐喝しているようにしか見えない。

「はぐっ! あぅっ! パ、パぁ……っ! 痛いいいいっ!」

 その間も巨大なものを突き立てられる度に、美紗紀はつぶれたような声をだしてしまう。詩織と同じように父の名を呼ぶが、助けに来てはくれなかった。

 美紗紀は新人芸能人。クラスにも何人か同業者と云うべきか、アイドル達がいるが。競争と云う意味ではまだまだ出遅れていた。無理もないこと。このクラスには、キラ星のごとく現れたトップアイドル、礼菜がいるのだから。美紗紀は華やかさの面で彼女に少しばかり負けているのだ。若干であっても、地味という印象はなかなか拭えるものではない。努力でカバーするしかないといつも自分に云い聞かせていた。

 もっとも、礼菜とはライバルではあるけれど、業界のひどい内情を知っているからか、互いに理解し合えている親友同士だった。礼菜も、せりかも、鈴も、みおも。誰もがそう。お互い、愚痴や雑談の相手になっていた。そうだ。いつだったか、思いつきで学園祭で即席のユニットを組んでみたら大好評。あの時は楽しかった、と美紗紀は思った。

「さっさとやれと云っているんだ! わかったか!」

 ようやくの事で木戸の電話は終わる。

 その間、散々振り回され、犯され、息も絶え絶えの美紗紀はぐったりと肩を落とす。が……木戸は突然立ち上がる。その衝撃で、ただでさえ大きなものが奥まで全て入り込んだ。

「あ、ああっ!? 痛あっ! ひぃぃぃぃっ!」

 美紗紀の体を抱え、結局そのまま宙に持ち上げながら揺さぶり、射精した。大量に中に出されて行為は終わる……かと思われた。だが、木戸は何事もなかったように肉棒の出し入れを続けていた。木戸に限らず、彼らの精力は底無しだった。小便のように大量に射精し、それが何度も続く。

「いい感じだ。やっと馴染んで来たな」

「やああああああっ!」

 濃い精液があふれ、ぐちゅぐちゅと水音が響く。木戸は美紗紀の事をモノとしか見ていない。悲鳴を上げようが泣きじゃくろうが知ったことではないのだ。むしろその悲壮感を楽しんでいる。

「ちなみにな。お前の親父の会社。うちが乗っ取ったぞ」

 さりげなく、衝撃の事実を告白する。

「ひっ!?」

「莫大な債務を押し付けておいたから、お前の親父は女房と一緒に失踪でもしたとか云っていたな。自殺でもするんじゃないか?」

 どんな裏工作をしたのだろう。嘲笑するわけでもなく、淡々と思い出すように木戸は云う。美紗紀の父は大企業経営者。だが、木戸はそれを遥かに上回る勝沼財閥の財力をもってして、敵対的買収を仕掛け、強引な手法をもってして叩き潰したのだ。

 美紗紀は目を見開いて絶叫した。自分だけではなく両親も……。全てを奪われた。そんな男に今も尚犯され続けている絶望。

「いやあああああっ! そんなっ! そんなのっ! そんなの……ないよぉぉっ! ひどいいいいいいっ! うああああああんっ!」

 美紗紀はパニック状態に陥り、泣き叫んだ。もうどうしようもなかった。帰る家も何も残ってはいない。服も全て奪われて……プライドも純潔も全て壊された。

「諦めろ」

 恐らく、彼女が絶望に打ちひしがれるところを見たかった。ただそれだけの為にしたことなのだろう。

「ひっく。えぐっ。……う、う」

 二度目の射精。しかし木戸は微動だにしない。体の中に熱いものを出され、強く握り潰された胸はずきずきと痛む。

(これは……。夢……だよね……)

 美紗紀は薄れゆく意識の中で、そう願った。その問いに答えられる者はいない。

 ずんずんと、自分の体が宙に浮かされたまま揺さぶられている。ただその感覚は、とても長く続いたという事だけは覚えていた。










…………










 美紗紀が牢に戻されると。未だに鉄格子の側においてあるディスプレイでは少女たちのレイプシーンが流されていた。が……木戸は美紗紀を見て、趣向を変えることにした。

 大容量の映像ディスクを別のものに取り替える。と……。

「あ……」

 いつ撮ったのか。どこで入手したのか。それはわからなかったけれど、流れてくるのは確かに学園祭後夜祭の映像だった。美紗紀を始めとした学園内の即席アイドルユニットが大きな体育館のステージで楽しげに歌っていた。席は当然満席で、立ち見の者すらいた。割れんばかりの大歓声に、みんなのりにのっていた。

 生徒達も、外部から来たお客さん達も誰もがそう。

「いやぁ。やめ……てぇ。見せないでえぇぇ……」

 変わり果ててしまった自分。そして、クラスメイト達。犯され、汚され、誰もが例外なく疲れ果て、弱っていた。美紗紀も、長い髪はくしゃくしゃになり、止めどなく流れ落ちる涙に顔も紅潮していた。

 美紗紀は歌っていた。青春の、恋の歌。退屈な学校生活に対して前向きな歌詞。未来はきっと明るくて、楽しいだろう。信じて疑わなかった。

「あうぅ。はうぅ。もう、嫌あぁぁ」

 あの頃には戻れない。もう、歌えない。そのことを実感して、悲しくて悔しくてどうしようもなかった。

 突如、木戸が射精した。これで何度目だろうか。引き抜くと……美紗紀の秘所から大量の精液がこぼれ落ちてきた。

「うっうっ。うあああああっ!」

 木戸は突如美紗紀の頭を掴み、未だ勢いの衰えない肉棒を見せつける。そして、口元にぴたぴたと当て……。

「うっぐうぅ!」

 一気に奥までくわえ込まされた。精液と体液が混ざり合い、美紗紀の口内を満遍なく汚す。一瞬意識が遠くなるが、噛みでもしたら痛い目に遭わされるだろう。そう思い、必死に意識を取り戻す。

 必死に、小さな口を目一杯開く。木戸は好き勝手に美紗紀の頭を前後に揺さぶり、そして出す。

「出すぞ。全部飲めよ」

 こぼしたらただじゃおかないからな、と。低い声の脅し。美紗紀は覚悟を決める。そして射精が始まる。と、思いきや。

「んんんぅっ! んぐっ! んぐぅっ! んーーーーーーーっ!」

 それは精液ではなく、熱く、大量の小便だった。予想外のことに美紗紀は慌てふためき、むせ返った拍子に口から吐き出してしまった。吐きだした物が近くの誰かの顔に当たり、びしゃりと音を立てる。けれど、虚ろな瞳をした少女は何も反応しなかった。

「うえっ。うげえぇぇ。げほげほっ。ごほっ。うぐぅうぅぅぅっ!」

 木戸の小便が顔面にもろに当たりながら、美紗紀はのたうち回った。窒息死しそうなくらいに苦しくて、顔を真っ赤にする。

「貴様。吐くなと云っただろう!」

「いっやあああああああああああああっ! もういや! もうやだ! 助けてえええええええっ! 誰かあああああっ!」

 あまりの非道な行為に美紗紀はクラスメイト達に助けを求めた。しかし、誰もが涙をこぼし目を背ける。彼女の手を取ることはなかった。今彼女を助ければ……自分も巻き添えを食うのだろう。それがわかっているのだから。どうしようもなかった。

「この糞アマがっ! 立て!」

「ひいいいいっ!」

 激高した木戸は美紗紀の髪を掴んで引っ張り立たせ、そのままの勢いでアヌスを一気に貫いた。

「ぎゃあああっ! ああっ! あがっ! あぐっ! や、やめっ! あーーーーーっ!」









…………










「礼菜ちゃんお疲れさま〜!」

 と、流花。

「もー最高! 美紗紀ちゃんもお疲れ〜!」

 綾乃が楽しそうに云う。

 後夜祭のクライマックスライブの後。クラスメイト達が口々に声をかけてくる。先に出てきた礼菜と美紗紀は笑顔でそれに応じる。

「ありがと」

「私も楽しかったわ」

 いつだったか。学園祭の会議にて、誰かが冗談交じりで云った一言が発端だった。『あたし、本職アイドルのライブが見たいなー』とか、礼菜や美紗紀を前にして。それを聞いて礼菜も美紗紀も『いいわねぇそれ』と、本気にして。同じく芸能人の鈴とみおとせりかも巻き込み、即席のアイドルユニットを結成したのだった。『最高のライブを見せてあげる!』と云って、冗談のような企画はスタートした。

 衣装から、歌から、振り付けから。全てがオリジナル。みんなで作り上げたライブだった。

 美紗紀は心底思った。やってよかった。ステージの上で絶叫するように歌いまくって疲れているはずなのに、まだまだ歌ってみたかった。そう思えるくらい。ノーギャラ? そんなのまるで気にしない。学園生活において、これほどの思い出はないだろうから。

「礼菜」

 普段何かと張り合い、突っかかってくる紫音だったけれど、今日は違った。心底楽しそうに礼菜の肩を叩いて労をねぎらう。

「最高だったわよ」

「紫音。……ありがと」

 礼菜も素直に礼を云う。

「そだっ。みんなで記念写真撮ろうよ」

 綾乃の提案に、誰もが頷く。

「いいわねぇ」

 いつもそうだ。どんな小さな事でも楽しいことがあれば、誰もが集まり盛り上がり。このクラスは今時珍しい、一体感に溢れていた。美紗紀はみんな結構熱血なんだな、などと思った。










それなのに、現実は……










「うぅ、うぅぅ……う、う」

「あぁ……あぁぁ」

 美紗紀は木戸にアヌスを貫かれながら、仰向けに寝そべるかすみの秘部に顔を埋められ、愛撫を強要させられていた。

 そして、それだけではない。直人も牢の中に入ってきて、木戸と同じ事をしていた。……亜衣のアヌスを犯しつつ、詩織の秘部を愛撫させた。

「あ、あぁぁぁ」

「や、め、てぇぇ……亜衣ちゃん……あぁぁ」

「久しぶりに乱交パーティーじゃの」

 更に古手川も参加し始めた。莉菜のアヌスを犯し、奈緒の秘部を愛撫させた。全裸の少女達は重なり合い、喘ぎ声を上げながら男達に蹂躙され続ける。横一列に三人の少女が四つん這いにされ、アヌスを犯され、仰向けに寝そべる友人達の恥ずかしいところを愛撫させられている。

「は……ぅっ!」

「いやぁぁ」

「何だお前達。尻の方がいいか?」

 木戸が馬鹿にしたように云う。美紗紀のお尻を何度も何度も出入りする。

「ああぁっ! ひぃぃっ! ひぃっ!」

 ぱん、ぱん、と音が響き、少女達の喘ぎと吐息が牢の中に充満していく。直人は後ろを見て云う。

「お前達にもすぐしてやるからな」

 それを聞いて、残された少女達の表情も曇る。やはり……また、と。諦めの涙を流す。

 男達の腰を動かす速度は段々と速まっていく。そして、中に出した。

「かえ……り、たい……」

「ほら休むな!」

 美紗紀がつい言葉をもらす。と、頭を再度押しつけられてしまう。

「あぐぅっ!」

 ディスプレイのスピーカーからは歌が流れ続ける。前向きで、明るくて、元気で。女の子が恋をする歌。明日はきっといいことがある、と。その歌詞は美紗紀が歌っていた。思い出す度に涙がこぼれる。

(もど……り、たい)

 あの頃に。こんな、最低の男達に犯され続ける毎日なんていらない。誰もがそう思っているはずだ。










 男達は一斉に射精し、用済みとなった少女達を解放した。そしてそのまま、別の少女達に手をかける。

「いやあああああっ!」

「やめてええええっ!」

 犯されるさくらと舞そして……。

「あぎゃああああっ! 痛い痛い痛いいぃぃぃっ!」

 木戸によって持ち上げられ、アヌスを貫かれる早由美。ものすごい圧迫感に絶叫。










(おとう……さま……)

 詩織はもう、過去に生きていた。

「お父様。行ってまいります」

 横たわる詩織は、玄関を出るときの事を思い出す。父は、僅か数日間の別れなのにどことなく寂しそうな、そんな表情をしていた。

 失礼なことだけど、父は意外と子供っぽいところがあるのかもしれない。溺愛……と、いうのでしょうかと詩織は思いながら、ドアを閉じた。

 そういえば、と思い出す。誰だったか。クラスメイトが云っていた。格好いい男の子、紹介しよっか?  とか。父が聞いたら何と云うだろうか?










「あ、ぁ……あぅ……。もうやだ……。許し……て」

 ひかりはアヌスを古手川に、前を直人に貫かれていた。二カ所同時に。

 古手川はひかりの首筋をじゅるりと舐めた。その拍子にひかりは震える。

「ひいっ!」

「おっ。締まりがきつくなったぞ」

「感じておるんじゃのう。ふぉっふぉっ」

「いやああああああっ!」

 ひかりは絶叫した。










 後夜祭も終わり、誰もが帰路につく頃のこと。美紗紀は一人教室にいた。後片付けは全て後日に行われるから、するべき事はもうなかった。ただ、少しだけ一人になりたかった。

「はぁ」

 と、溜息。窓際の椅子に座って外を眺める。教室から見る夜景は綺麗だったけれど。どことなく憂いを帯びた気分。

「何溜息ついてんのよ」

 背後から声。つい先程までステージで一緒に歌っていた礼菜。彼女も既に衣装を脱ぎ、制服に着替えていた。

「ん。お祭りの後は寂しいな、って」

「そうね」

 礼菜も隣の椅子に腰掛ける。

「敵わないな、って思ってね」

 美紗紀はボソッと呟いた。

「何が?」

「全部。礼菜はすごいなぁって思っちゃって。もう、ね」

 ライバル、だと思っていた。けれどそれは違った。ステージ上で一緒に歌って、楽しかったけれど。格の違いを見せつけられた気もした。技術なんかはともかく、存在感が違っていた。いつもは強気に振る舞っていても、見せつけられると流石に凹むのだった。

「馬鹿ねぇ」

 と云った。

「わたしが頑張れるのは、あなたがいるからなのよ」

「……そうなの?」

「そう。わたしは、誰にも負けたくない。あなたにも、他の娘達にも。でもね……」

 一人じゃ頑張れない。と、礼菜は云った。今の美紗紀のように、落ち込んだとき。元気がなくなった時。そんな時、頑張ってる美紗紀を見て、勇気をもらった。美紗紀が努力家なことは、礼菜も認めていた。

 礼菜もそうなのか、と思った。何だか悩んでるのが馬鹿らしく思えてきた。

「だいたいねぇ。あなたらしくないわよ。紫音を見なさい紫音を。あの、どこから湧いてくるのかわからない無意味なまでに溢れてる自信とプライドを」

 礼菜の本当の意味でのライバル。西九条紫音。

「そう、ね。ふふ」

 やっと笑顔になれた、と思った。が……。

「だーれが無意味なまでの自信とプライドですってぇっ!?」

 教室のドアの所には、当の本人。どうしてこう、タイミングが良すぎるのだろう。

「成り上がりのアイドルさんに云われたくないわねぇ」

「悪かったわね。成り上がりで」

「悪いわよ」

 そして段々エスカレートしていく云い合い。美紗紀は、あーまた始まっちゃったか。と思った。

「礼菜。あなた、最近メイクが濃いんじゃないの? もしかしてお疲れ気味?」

 図星だ。流石にグサッと来る一言だった。

「う、るさいわねっ! そっちこそ、また背が伸びたんじゃないの?」

 暗に、それに比較して胸が大きくなっていないと云っているのだった。紫音は結構気にしているようで。

「なんですってぇっ!?」

 そういえば紫音は、西九条財閥が総力を結集して開発した豊胸クリームを使っているとか云っていたな。と、忘れ去られた美紗紀は思ったのだった。効果は……云わずもがな。










「ふ、ぅ……」

 美紗紀の上に誰かが倒れる。小柄な、軽い体の娘。牢の中にいた全員が犯され、その日の乱交はようやく終わった。

 けれど、彼女たちの悪夢は終わらない。寝ても覚めても、陵辱される日々は続いていくのだ。

 明日はきっといい日。そんな明るい歌声が、牢の中に響いていった。



















-了-