-悪夢EX Another episode 3rd-
もう、あの頃には戻れない。堅く冷たい木の壁に寄りかかりながら、桜乃森文は思う。そう思い始めたのはいつのことだろう? ……恐らくあの時。見ず知らずの男に無理やり貞操を奪われ、全裸のまま地下牢に監禁された日から。
暗闇の中には文と同じく未だに監禁され続けているクラスメイトたちがいた。皆一様に目を伏せ、無言だった。失意に沈み、死んだような目をして全てを諦め切っていた。きっと自分も同じ顔をしていることだろう。鏡を見るまでもない。
この地獄のような日々が終わりを告げることはあるのだろうか? もしかすれば、あるかもしれない。だが、その時自分は正気でいられるだろうか? 恐らくは無理だろう。無言のクラスメイト達を横目に、そう思う。
そうしているうちに文もまた呼び出された。ずきずきと込み上げる破瓜の痛みは癒えていないのに。再び訪れるであろう激痛の恐怖に身をこわばらせる。だが、予想に反して紳一は優しかった。これが互いを認め合い、尊重し合う恋人同士だとしたら、どれほど甘く幸せな時間なことだろうか。
「あ、あ……」
紳一は文をベッドに横たわらせてから優しくキスをした。恋人同士がするような、軽く唇を触れさせるだけのもの。それでも、意中ではない人とのものだから嫌だった。文は心を壊されないように目を閉じ、必死に耐える。
そうして紳一は仰向けに寝そべる。文を抱くように、重ねるようにして体の上に乗せ、豊満な胸を愛撫し始めた。大きめの乳房は紳一の手の平に吸い付くように収まる。
「あ……あふ。や、あ……」
優しく大事に壊れ物を扱うかのように揉み、時折乳首をつまみ指先で撫でる。文は微妙な表情になり、喘いだ。触れられる度に胸が熱く、乳首が起っていく。紳一のものは既に限界にまでそそり立ち、今では文の股に挟まっている。いつまた貫かれて犯されるのか……。そう思い、文は恐怖を感じる。だが、今の行為は苦痛とは正反対だった。かえってそれが怖い。
「やめ……やめてくださ、い……。あ、あ」
「痛いのか?」
「い、え。痛くは……ないです。けど……」
紳一は文の乳首をきゅっと摘まむ。ぴん、と起ってしまっているのが嫌でもわかり、文は視線を彷徨わせる。
「あっ」
「感じてるのか?」
「ち、ちが……違い、ます……あっ」
紳一は文の首筋に舌を這わせた。ざらりとした感触に、文は体を震わせる。
「じゃあなんだ。その声は」
「あ……ひっ。や、あ……っ。や、め……」
甘い声を上げてしまっているのは確かだ。文は反論できず、悲しくてしゃくり上げた。紳一は恥じらいに満ちて返答できない文を追い込みながら、今度は耳に舌を這わせた。耳たぶを嘗め、中も。
「いい胸だ。形も、大きさも、触り心地も」
文の胸は散々揉まれ,形を変える。
「あ、あ……」
犯されているのだ。ほめられても嬉しくなんてない。文はクラスでも特に貞操観念の強い娘。それ故に、ふっくらした大きめの胸は本人の理想とは掛け離れていた。道で男性とすれ違うたびに、好奇を帯びた視線に晒されるから。誰もが皆、制服に包まれた大きな膨らみに目をやり、中身を想像するのだろう。もっとも今や身を守る制服ははぎとられ、剥き出しにされているが。
淫らで、いやらしく見えてしまうから、文は自分の胸が嫌いだった。紳一はそんな文の心をすぐさま見透かしてしまっていた。だから、あえていじめるために優しく愛撫を繰り返すのだ。
「そうだな。柚流や帆之香の胸も良かったが、お前の胸の方が好みだ」
名前を挙げられた二人のクラスメイト。恐らく文と同じように犯したのだろう。牢の中で呆然としていたのを思い出す。
「う……う……」
紳一はひたすら優しく文の乳房を愛撫し続けていた。文は堅く目を閉じ、歯を食いしばっていた。紳一の中指と薬指の間からは、文の尖ってしまった乳首が挟まっていた。貞操観念の強い文をあえて快楽の渦に叩き落とし、羞恥攻めするつもりなのだ。
「ほめてやってるんだ。何とか云え」
「は……ぅっ。あ、あ……。やめ、て……くださ……あっ」
今度は背後より、首筋からあごの辺りに舌を這わされて、力が抜けてしまう。紳一は尚も問い続ける。
「本当の事を云え。じゃないとずっとこのままだぞ」
「う、う……。やめて……。離して」
文はさめざめと泣き、紳一の手を胸から引きはがそうとする。云うまでもなく、圧倒的な力故にかなわず、紳一の手に重ねるだけで断念してしまう。その事実が文を更に追い込み、頬を幾筋もの滴が流れ落ちて行く。紳一は文に、気持ちいいと云わせたいのだ。恥ずかしくてはしたなくて云えるはずのないことをあえて云わせていじめ、心まで支配し満たされたいのだ。
「仕方ない。云わないのなら入れるか」
ため息交じりにそう云った。文が嫌がるのを分かった上で。
「え……っ?」
急に紳一が文の胸から右手を離し、股間のものを掴んだ。そうして文の秘所に宛てがおうとする。文の顔はすぐに蒼白になる。恐怖にカチカチと震えた歯が鳴る。
「い、嫌ぁっ! やめてぇぇ! それはいやぁぁっ!」
二度目とは云え、嫌なものは嫌だった。そんな文に紳一は云った。
「それが嫌ならはっきり云え。胸を揉まれてどうなんだ」
「う、う……。ひっく。き……もちいい、です……」
紳一は股間のものを掴む手を離し、再び文の両胸を揉み始めた。軽く掴んで、ふるふるふると小刻みに揺らす。文はほっとするけれど、辛い時間はまだまだ終わったわけではないのだ。
「乳首はどうなんだ。どこが感じるんだ?」
「あ、つい……です……う、う。ち、くび……が、あ、あ」
紳一の愛撫が早まって行く。文の乳房はぐにゅ、と形を変える。痛みはなかった。だけど、自分が自分ではなくなっていくのが分かる。
「い、や、ああああっ! やああっ! いやあっ! 恥ずかしいことさせないでええっ! もうやめてえええっ! こんなこと、やめてえええっ!」
文は達しかけ、パニック状態に陥っていた。それでも紳一はひたすら愛撫を繰り返す。
「犯されてるのに感じてるんだな」
「ちが、違いま……す。……あ、あ、あああああっ! もういやあああっ!」
否定しても甘い声は嘘をつけない。
紳一が止めをさした。ぎゅ、と乳首を強く摘まみ、引っ張った。その瞬間、文は達してしまった。口からは熱い吐息と甘い喘ぎ声。秘所からは、とろりとしたやらしい液体が出て来ていた。
「あひいっ! あっ……あっ……あっ! あーーーっ!」
「イったか」
紳一はにやにやと笑う。文は消え入るような声で云った。云わないと、また……。
「う、う……。は、い……」
荒い息を吐き、呆然とする文に紳一は満足したように云った。
「早く孕んで乳を出せるようになれ。そうしたら思う存分絞り出してやるからな」
ひどい。何てひどいことを……。文は嗚咽を漏らししゃくりあげるだけだった。
そうして紳一は文の上に覆いかぶさってきた。
「ひぃぃっ!」
文の両脇をくすぐり、胸を寄せ上げて、起ったままの乳首をくわえてなめ始めた。ちゅばちゅばと音を立てて、聞かせながら。
「あひぃっ! やあああっ! 吸わないでええええっ! あうううっ!」
そして吸い付いた。文は終始悲鳴を上げ続ける。嫌いだった胸を散々いじくられ、赤ん坊のように吸われ、感じさせられている。その事実に文はかぶりを振り続け、涙の粒を何度もこぼす。
……
「パイズリだ。やり方は覚えているな?」
「う、う。は、い……」
文は泣きじゃくりながら、椅子に腰掛ける紳一のものを愛撫し始めた。大きな胸で挟み込み、前後に揺さぶる。処女を奪われた時に無理矢理させられた行為。考えるだけでもおぞましくてやらしい。
「いや、いやぁ、いやぁ……。もういや。こんな……」
「休めるな」
「ひっ」
少しでも動きを緩めようものなら睨まれる。針で刺すかのような鋭い視線だった。文は顔を押し付けられ、胸に挟んだものの先端を舌で愛撫させられる。
「いいぞ。その調子だ」
四つん這いにさせられてお尻を突き出し、恥ずかしい所をむき出しにしたままの格好。今にも卒倒しそうだった。
挟み込んだ胸と陰毛が絡み合い、ずりゅずりゅと音を立てる。更に、紳一のものは先端が濡れ始め、ぐちゃぐちゃになっていく。毒液のようなそれに汚されていく……。
「もっと早くだ」
「う、うう。やあああ……いやあああ」
文は無我夢中で自分の胸を掴み、前後にしごく。指がめり込むくらいに強く。胸で、こんなことを……。信じられない行為だった。自分の大きな膨らみがとても恨みがましく思える。普段以上に……。
「俺がイクまで続けろ」
紳一は文の頭を掴み、舐めさせる事も忘れない。
「あ、ぐ。い、やぁぁぁ。もうやぁぁぁ。助けてぇぇぇ」
きっと、心が壊れるまでこの地獄は続く。助けなんて来ない。そう思えてしまう。胸も、口も、あそこも……全てこの男の欲望を満たすだけの道具にさせられてしまった。もう私は奴隷なのだ……。そう思えてしまう。
「お前のでかい胸は俺を喜ばせるためだけにあるのだ。光栄に思えよ」
「ぐ、う。……う、う、う。ぐふぅっ!」
口の中にも突っ込まれ、文は苦しそうに呻いた。更に、乳首をぎりりと強くつねられ、引っ張られ、痛みと苦しみにむせ返る。
(わた、くし……。男の、人の……もの、を……。口で、なん……て)
そして突然に射精。胸も、乳首も、胸の谷間も、口も、唇も、頬も、全て白く汚されていく。
「けほっ! けほっ……い……いやああああああっ! もうやめてええええええっ!」
べとつく感触に、むせ返るような匂い。文は半狂乱になって叫んだ。よろめき、倒れながらもベッドから逃れ、床に這いつくばって逃げだそうとする。だが、黒く長い髪を乱暴に捕まれて痛みに喘ぐ間もなく引き戻され、ベッドに頭を押しつけられる。文は謙虚な性格だから口に出したりはしないけれど、艶のある黒髪には自信があった。それは今、強く捕まれてくしゃくしゃにされていく。
「いやああああっ! そこはいやあああっ! 入れないでええええっ!」
再び入り口付近にものを押し付けられて絶叫。少し力を込めれば入ってしまうことだろう。処女を奪われた瞬間を思い出す。散々かきまぜられたあげく、膣内に出された……。熱く込み上げてくる感触に文は絶望した。今また、同じことをされようとしている。がっちりと腰を掴まれ、逃げられない。どんなに口で愛撫しようと、胸でこすって奉仕しようと、命令どおり卑猥な言葉を叫んでも、結局最後は犯されるのだ。それでも、その時がくるのを少しだけでも延ばしたかった。
「やめてえええっ! やめてやめてやめてぇぇぇっ!」
駄々をこねる子供のように嫌々と頭を振る。紳一は少しずつ、腰を進めて行く。文のお尻の割れ目に埋まり込んで行くように見える。
「いやあああああっ! きゃあああああっ! あああああっ! 抜いてえええええっ!」
先端部分がほんの少し埋まり込んだ状態で、ぐりぐりとかき回してやる。時に強く入れるようにしては引き抜く。
「あ……や……。や、め……うぅ、う、う」
叫び続け、もはや声は枯れ、疲れ果てていた。どんなに拒否を望んでも……無駄だから。だけど、彼は悪魔のような笑みを見せた。
「入れないで欲しいか」
「……。は、い……」
じゃあ、と紳一は耳打ちした。どんな要求でも、入れられるよりはマシ……。
「私……は。胸を揉まれて……イってしまった……はしたない女……です」
「淫乱なんだな?」
「は、い……」
あえて云わせる。
「両親に顔向けできないな」
「は、い……」
「桜乃森家の面汚しだな」
「う、う……。は、い……」
もはや答えることができず、僅かに頭を縦に振る。
「わた……くしは……淫乱、です」
宣言させられる。これで……これで入れないで、いただけますねと文の目は語っていた。それに免じたのか、紳一は文の秘所にねじこみかけていたものを外す。
そして、すぐに文は驚愕する。
「え……あ……」
引き抜かれた紳一のものがもう一つの穴に宛てがわれる。
「そん、な……とこ。あっ」
ぐいぐいと押し込まれていこうとする。
「いや……いやぁ。いや……だめ。そんなとこ……」
「どっちならいいんだ」
「うう、うぅぅ……もう、やめてください……」
「はっきり云え! ケツの穴とま○こ、突っ込まれるならどっちだ!」
選べるわけなどない。どっちも嫌に決まっている。
「うぅ、うぅ。やぁぁ……う、う」
文は答えない。業を煮やした紳一は舌打ちし、文のお尻に宛てがっていたものを外し、秘所の入り口へと再び当てる……。
「選ばないならこっちに入れる。もちろん中で出す」
「ひぃぃぃぃ……。お、しりに……して……くださ、い。ひああああっ! あがあああああっ!」
紳一はそれを聞き入れ、一旦宛てがったものを引き抜こうとした。だが、お尻に入れようとしたのはそぶりだけだった。一瞬離してから、一気に押し込んだ。文の秘所へ。紳一のだまし討ちは文を痛めつけた。恥ずかしいことを云わせるだけ云わせておいて、地獄の底へと落とし込んだのだ。
「ひ、ひどいいいいいっ! ひどいいいいいっ! いやあああああっ!」
紳一は一気に射精するつもりだった。ぱんぱんと音をたてながらたたきつける。文は熱いものが込み上げてくるのを感じて顔をくしゃくしゃに汚す。
「中はっ! 中はいやああああっ! 中で出さないでぇっ! お願いいいいいいっ!」
犯される。汚される。そして、孕ませられてしまう。しかし、その思いも空しく、紳一は文の一番深いところで達していった。
「あ、あ、あ」
しかし文は呆然とする間も与えられなかった。
「ひぐっ! ぐっ! ああっ!」
ずぐ、と音をたてた気がした。今度はお尻の中へと入れられたのだ。猛烈な圧迫感に文は目を見開いた。
文字通り、文は全てを奪われた。
……
「あ、ふ……」
文は目隠しをされ、ロープで縛られて天井から吊るされ、背後から攻められていた。大きな胸も、絞るようにロープを巻かれている。
「悪くないな。礼菜を犯す時に使ったものだが」
もっと他の娘にも使えばよかったかな、と紳一は椅子に腰掛けながら思った。文のクラスメイト。新進気鋭の新人アイドル礼菜。彼女を犯すときに使ったロープ。
そして、今文を犯しているのは、紳一の部下達だった。
「ふ、う、うー……」
文の口にはプラスチック製の赤いボールのようなものが押し込まれ、黒いバンドで固定されている。あえて他の男に犯させ、中に出させてやろう。この案を考えた時、紳一に対し古手川は云った。この女は舌を噛んで自殺する恐れがある、と。だから、ボールギャグを噛ませてそれをさせないようにした。
他の娘より貞操観念が強いとされているから、それも有り得ることだろう。自殺を図れば他の娘の命が無いぞと脅しをかけてはいるが、とっさにしてしまうと云うことも考えられる。しかし。
「文。自殺すらできなくなった気分はどうだ?」
「う、うぅぅ……うぅ……」
生殺与奪の権利すら奪われ、文はただ呻くだけ。とめどなく流れ落ちる涙に加え、涎がぽたぽたと落ちる。
身動き一つできない文に、男たちは代わる代わる挿入し、射精していった。
「そろそろ出そうだな」
「んひいいいいっ! んうううううっ!」
誰に犯されているか分からないように、部下には声を出さないように命令していた。柔らかいお尻がたゆみ、そして動きが止まる。文の中に大量の精液が放出されていく。何人もの男の精液が交じり合い、ぐちゃぐちゃになっていた。
「色んな男とヤれて嬉しいだろう?」
「ふ、ひぃ……」
紳一は文の限界にまで勃起した乳首をつまみ、こね回した。そうこうしているうちにまた、文のアヌスに男のものがねじ込まれていく。
「う、ぐ……」
文は意識を失った。
…………
「お、お。締まる」
「あ、あっあっあっ」
牢の中では毎日のように乱行が繰り返されていた。男たちは誰彼構わず娘を犯した。文も例外ではなかった。
「ほら、しゃぶれ。大好きなものだぞ」
「んうううっ! ん、ん!」
他の娘に比べて、文の体は強い方では無かった。よく喘息にかかったりして、病弱だと自他共に認めていた。文よりも元気な娘は何人もいた。
もうもたない。絶命するのは時間の問題だと思われた。ところがある日のこと。
「紳一様! おいお前ら、紳一様を守れ!」
「直人は入り口を固めろ!」
「おぼっちゃま!」
男達は口々に叫んだ。校舎の外から聞こえるエンジン音。男達の誰もがただならぬ気配を察したから。当局の捜査により、ついにこの場所が明らかになった。
校舎の回りは包囲されたが、紳一達は徹底的に抵抗を図った。元よりこの様な事態は想定済みだ。重火器なども持ってきていた。そして、部下達は皆訓練を受けた者達だった。
「あ、ふ……」
後に当局の対応も後々に批判を浴びた。男達は全裸の娘を盾代わりにしながら銃を撃ち続けたのだ。それにより対応が遅れ、少なからず被害を被った。文もその一人。度重なる凌辱により心が壊れ、何が起こってるのかすらわからなそうに、ぼーっとしていて瞳は虚ろだ。華奢な体を引きずられていく。
それでも、長時間に渡る戦闘により包囲網は狭まり、部下達は紳一を残して死んだ。当局はようやくの事で首謀者達の狙撃に成功したのだ。直人は最後まで紳一を守り、身代わりとなって死んだ。全身に銃弾を浴びながらも刀を離さなかった。
「ぐっ! 紳一様ぁっ……」
全て終わった。悟った紳一は自ら校舎に火を放ち、自害を試みたが寸前で救出された。
(自殺すらできないのはどういう気分か、わかった気がするな)
紳一は文に云った一言を思い出していた。その文は直人が倒れたことにより盾の役割を終え、紳一の足元にごろんと横たわっていた。が、それが幸いしたのか衰弱し、死を待つばかりの文は偶然救出された。火の手は激しさを増していき、当局による救出活動も難航した。煙と火にまみれていき、意識が薄れていった。
紳一を含め、助かったものはほんの僅か。数名だった。
事件の概要はすぐさま世間に知れ渡る。犯人の特徴、動機、経歴など全てが明らかになった。何に影響されたかなど、ワイドショーの的外れなコメンテーターも、立派なアナウンサーも演技したわけでもないのに暗いトーンで語り続けた。犠牲者の数も、悲しみに包まれた遺族へのインタビューも配慮される事なく流された。ワイドショーも普通のニュースも、可能な限りこの事件を報道し続けた。
勝沼財閥には激震が走り、あまりの反社会的行為に対し批判が集中し、解体するべしとの世論が多勢になった。
紳一は今、必死の延命措置を取られていた。ただ裁判で死を待つばかりの身。情状酌量の余地などまるで残されてはいなかった。少女達を追い込み、自殺すらできない状態で徹底的に犯し、最後には放置して死なせるつもりだったのだから。因果応報とでも云うべきだろう。
(牢の中、か)
娘たちがどういう思いをしていたのか、自分で体験してみてようやくわかった気がする。暗く、静まり返った牢の中は寂しく、不安を煽り立てる。その上で全裸にさせられ、処女を奪われ、痛め付けられるのだ。想像を絶する苦悩だったことだろう。しかし、紳一は同情などしなかった。
(最高の快楽だ)
もし出来るのであればもう一度してみたい。
裁判は茶番劇もいいところだった。最初から結論は決まっていた。各界の財閥や政治家、企業家など有力者の娘たちを犯して殺したのだから。何を云われても厳しく糾弾されても、薄く笑い無言を貫き通した。
しばらくして、紳一は処刑された。死の間際まで少女達を凌辱するための執念を感じさせながら。絞首台の露と消えた。
――文は今……病院に搬送されて治療を受けていた。奇跡的に命は助かったが、絶対安静の状態が続く。
何年も過ぎた頃。
「……」
病院関係者や家族による必死の介護とリハビリにより文はようやく退院することができ、自宅での療養生活を続けていた。無論、元通りなどになるわけがなかった。
「あ、う」
着物を着た文はお茶碗を持つことすらおぼつかない。力が入らないのだ。体の所々には火傷の跡などが残っている。文の両親は、変わり果てた娘の姿に泣きながらも、無事であったことを心の底から喜んだ。跡継ぎ……次期家元の事などどうでもよかった。今はただ、普通に生きて欲しいと願った。
あまりにも激しい凌辱により、文は記憶を完全に失っていた。その上、小さな子供に返ってしまったようだ。そして、言葉すらまともに話すことができなくなってしまった。
「おかあ……さま」
大好きだった着物を着て、正座。しばらくしていて足が痺れてきたのか、泣きそうな表情。しきたりにうるさかった父も母も、小さな子供をあやすかのように優しく接した。正座なんてしなくてもいいから、楽にしなさい。そう云った。
「おちゃ……たて、ます……」
無理だと分かっていたから、両親は止めさせた。お庭でも散歩してきなさいな。そう云われて文はふらつきながら、縁側へと出て行った。
辺りは静かで風が木々を揺らす音と鳥のさえずり、そしてししおどしが時折かこーんと鳴る音だけが聞こえる。広大な純和風の庭園には花々が咲き乱れ、蝶々が飛んでいる。文は眠たげな、とろんとした目でそれを追いかけようとした。
空は高く青く、ちぎれた雲が可愛らしく感じる。平和な、何事もない一日。
もう、少女達が凌辱の涙を流すことはないだろう。誰もがそう思い、平穏を望んだ。
願わくば……望まぬ死を向かえることになった少女達に救いを。
事件の当事者達は皆、救いを求めた。
「あ、ぅ……」
夜。文は時折悪夢を見た。意味は分からないけれど、とにかく怖い目に遭ってうなされる。
今日もそうだった。どこだかわからない暗いところで、男達数人が自分の体を好き放題弄り回しては、大きくそそり立ったものをねじ込んでくる。
「い、た、ぃ」
激痛と支配される恐怖におののく。大好きな着物ははぎとられ、くしゃくしゃにされた。
お尻の中に、ずぶりと太いものが押し込まれ、何度も出入りを繰り返したあげく、熱いものが入ってきた。
「ひ、ぅ……」
そして、口にもくわえこまされる。とても悪いことをしている。文はもう、それすらもわからなくなっていた。
夢だと思っていた。どんなにひどいことをされても、いつか覚めると思っていた。けれど、違った。
庭を散歩中……忍び込んできた男達に誘拐されて、暗い森の中に連れ込まれて文は凌辱された。それは紳一達の執念により、体を乗り移られた男達だった。
痛い、と強く思った。皮肉なことにそれがスイッチとなり、文は全ての記憶を取り戻していた。再び会えた両親と過ごした幸せな時。文は絶叫を上げた。お尻とあそこに男達のものが入ってきている。
生かしたまま終わらせるはずがない。文は犯し尽くされて死んだ。全裸にされ、口も秘所もお尻も全て……体中精液まみれにされて、ずたずたに引き裂かれた着物と共に近所のゴミ集積場に捨てられた。早朝、冷たくなっていたところを近所の主婦に発見された。
正確には……文は舌を噛み切って自殺した。最後の言葉は、別れを告げるものだった。
「おとう……さま……。おかあ……さま……」
あの時とは違う。今ならば、死んでも誰も犠牲にはしない。足かせはようやくほどけた。もう楽になりたかった。許して欲しかった。
「ごめん……なさ……ぃ……」
男達の射精と同時だった。文の体は力無く垂れ下がる。男達は文が死んだことに気づきながらも凌辱を続けた。
(さよう……な……ら……)
その声は、誰にも聞こえなかった。
全て夢であって欲しい。
けれどこれは、現実。
みんなに会いに行こう。
遠のく意識の中で、文はそう思った。
-了-