-悪夢EX Another episode 5th-
天井から吊り下げられた小さな裸電球だけが辺りを照らしていた。いつ消えてもおかしくないような頼り無い光。
「う、う……い、や、あぁ。やめ……て、えぇぇ……あぅぅ」
紫音は横たわり、うなされていた。浅い眠りはいつも、処女を奪われた時の悪夢を呼び起こす。財閥令嬢として何不自由なく育った紫音。我が侭と云われ、何もかもが自分の思うようにいっていた。修学旅行中にバスジャックされたあの日までは。
紫音はプライドも純潔も、なにもかもを踏みにじられた。奴隷のように、犬のように扱われ、屈服させられた。
「もう、いや……」
それを見て、せりかが呟いた。新進気鋭の新人女優せりかは男嫌いで有名だった。それなのに、最低最悪な男に犯され、汚され続けた。
「や……あ……」
ずきんとこみ上げてくる痛みに、彩乃は体を丸める。秘所とアヌスを同時に貫かれた痛みは今も続く。ベッドの上で処女を奪われて射精され、呆然としていると……今度は信じられないところに紳一のものは押し当てられた。叫ぶ間もなかった。彩乃はお尻の穴にねじ込まれたのだ。散々蠢かれて、彩乃は失神した。……目を覚ましたら、牢の中だった。彩乃は泣き叫んだ。誰も何も云えなかった。ただ、目を伏せるだけだった。
誰もが局部を押さえ、呻いていた。苦痛と悲しみに満ちた牢獄の中で、少女達は悪夢に苛まれた。犯され、疲れ果て、破瓜の痛みにすすり泣き続ける少女達は悟っていた。今日も、明日も。恐らく死ぬまでこの状態は続くことだろう。地獄は終わらないのだ、と。
(でき、ちゃう……)
その中の一人、帆之香はずっと同じ言葉を繰り返し続けていた。ずれた眼鏡を直すことすらせずに。度重なる凌辱に、帆之香の精神は崩壊しかけていた。けれどクラスメイト達も例外ではない。全員同じ目に遭っているのだ。みんな側にいるのに、もう数日間一言も口を聞いてはいなかった。何も話せない。大丈夫? などと聞くこともできない。この牢の中にいる友人達は皆、一人の男……紳一によって犯されたのだ。
(赤ちゃんが……でき……ちゃう……)
「うっ……うっ……。えっ……く……」
帆之香が呆然と思う横で、惨劇の記憶が蘇ったのか鈴が泣きじゃくっていた。
延々と続く凌辱の日々はしかし、突如終わりを告げた。
けたたましい泣き声。
新たな生命が誕生する瞬間。
(あ……)
今も生き永らえている。が、それが幸福なことだとは到底思えなかった。帆之香は今も呆然としていた。度重なる凌辱により痛んだ体。それに加え、望まれない出産を強要された。帆之香は麻酔を打たれ、意識のない状態で子供を産んだ。時が過ぎて、もはや堕胎することができなくなっていたのだ。
(赤……ちゃん……)
元気よく泣き続ける男の子。罪の無い子。だけど、帆之香はその瞳を見て涙をこぼした。この子を恨んではいけない。この子は可哀想な子。それでも……それでもわたしはこの子を愛す事はできないだろうから。せめて、せめて恨みだけは抱かないようにと。
あなたのお父さんは……と、帆之香は思ってしまう。彼は、わたしとわたしのお友達を徹底的に犯し尽くした。そうして何人もの友達を死に追いやった。その上わたしはあなたを……望まぬ子を孕まされてしまったのだ。けれど……。
(どうして……)
あの時。紳一に処女を奪われ、体の中に射精されてからどれくらいの時が過ぎたのだろう。クラスメイト全員が男たちの毒牙にかかった頃、紳一は病死した。これで、凌辱が終わるかと帆之香は思ったが。結果は違った。
『ふぉっふぉ。さて、今日は誰を可愛がってやろうかのう』
ある日突然、牢の中に古手川と木戸がずかずかと入り込んで来た。そうしてうなだれる少女や床に転がっている少女を値踏みするように見て、起こしにかかる。何故か直人という男だけはいなかったが、それでも二人は異常なまでに性欲を抱いていた。
『お前にしてやろう。ほぉれ。立つんじゃよ』
古手川はひなを選んだようだ。細い腕をぐい、と無造作に掴んで引き起こされる。ひなの全裸の体が尚更華奢に見える。
『い……や、ぁ』
『入れるぞ。そぉれ!』
『はぅっ! ああああああーーーーーっ!』
挿入され、ひなは目を見開いて絶句した。
(どう……し、て。あ、あ……)
男たちは代わる代わる少女を犯し続けた。生前、紳一に割り振られていた娘達を満遍なく、禁漁区が解禁になったかのように獲物を狩り漁った。帆之香も例外ではなかった。古手川は思う存分ひなを犯し、用済みになったら無造作に放り投げ、別の獲物を求めた。それが帆之香だった。
『だ、出さないで! あぅっ! 出さないでええっ! ああっ! な、中は、中はやめてえええっ! 中はいやあああああっ! 中だけはやめてえええっ! ひいいいいっ!』
四つん這いの帆之香は必死に叫んだ。大きな胸を散々揉み回され、乳首を引っ張られ、痛みに呼吸さえ苦しい。もう無駄なのに、わかっているのに叫ばなくいられなかった。これ以上汚さないでと、かすれた声を張り上げる。
『ふぉっふぉ、そうかそうか。中は嫌か。それじゃあ外に出してやろうかの。そおれ!』
古手川はそう云って帆之香の中から一瞬引き抜いた。帆之香も一瞬だけほっとする。……が、それは騙しうち。すぐさままた奥まで貫かれて、びゅ、びゅ、と射精されてしまった。熱いものが子宮の方まで届いてくる感触。
『ひど……い……。あ、あ、あ……ああ、あ、そんな……そんな……嘘……。い、いやあーーーーーーっ!』
帆之香は目を見開いて絶叫した。
『油断は禁物じゃぞぉ。ふぉっふぉっふぉ』
『あぁ、あぁ……あ、あ、ぁ……』
そうして古手川は中に射精したまま、再度腰を動かし始めた。帆之香の奥まで入り込んだものは再び勢いを取り戻していく。その事実に帆之香は絶望する。もう、声すら出せなくなりつつあった。
『ふぉっふぉ。抜かずの二発じゃ。そぉれ!』
『いや、いや、あ……あ……あーーーーーっ! ああああああっ!』
ずちゅ、ずちゅ、と中に出された精液と古手川のものが擦れ合い、いやな音を立てていく。まただ。また、中に出される。何人もの男の精を受け、更に汚されるのだ……。
『や、ああああ。中は……中はや……あ、あ、あ』
『ふう。今日は調子がいいぞ。後五回は中に出してやるからな』
『い、やあぁぁ』
すぐ側から帆之香と全く同じように拒否の声が上がる。弱々しく、消え入りそうなそれは文の声だった。四つん這いにされて木戸によって犯され、中に射精されていた。親友が自分の目の前で犯されていたのに、助けることはおろか気付きもしなかったしできなかった。文の端正な顔は赤く、汗と涙と涎と……精神的なショックでくしゃくしゃになっていた。きっと自分も同じ顔をしているのだろう。帆之香は薄れていく意識の中でそう思った。もはや誰と誰のものかもわからないが、ぱんぱんぱん、と体同士がぶつかり合う音だけが意識の最後として残っていた。
…………
何度も中に出された。誰の子かなど、わからなかった。……無論、調査すればわかるだろうが、わかったところで何かが変わる訳でも無い。犯されて、孕まされた。その事実だけで、帆之香は呆然とした。
「はぁ……」
帆之香はただ、ため息を付くだけだった。紳一が死んでからどれほどの時が過ぎたのだろう。残った男たちも少女を犯すのに飽き、出て行った。
やってきたのは、遅すぎた救助。冷たい風が吹いたかと思うと、うっ……と、男のうめくような声がした。続いて別の誰かがつぶやいた。これはひどい、と。
「できちゃう……でき、ちゃう……」
帆之香は焦点の合わない目で、うわ言のようにひたすらつぶやいていたらしい。
それを見つけたのか、まだ生きてる子がいるぞ! と、男たちの緊迫した声が響いた。少女たちは皆、秘所からもお尻からも、口からも精液をこぼし、体中にぶちまけられたまま横たわっていた。そこには食い散らかしたような光景が広がっていた。
床には、横たわる少女が生み出したであろう水たまり。猛烈な異臭。放置されて何日もたっているであろうことが容易に想像できる。
おい、しっかりしろ! と、恐らくまだ生きているであろう少女に呼びかける男。
「あ、あは……あは……私……オナニー……好きなんです。大好きなんです。もっと……もっとぉ……もっとしてください……。あは、あははは……あは……」
それは柚流だった。強力な媚薬を何杯も飲まされおかしくなってしまった。かつての凛々しい姿は跡形もなかった。今ではもう、はぁはぁと荒い呼吸と共に舌を出し、自らの胸を揉みし抱きクリトリスと秘所をいじるだけだった。
「みんと……みんつぅ……。どこぉ……。どこにいるのぉ……」
かつて縫いぐるみだったもの……引き裂かれた残骸を抱き締めて、ひなはぼやいていた。黒いプラスチックの球体を転がしては落とす。かつてぬいぐるみの目だったもの。不思議そうに見つめる目は虚ろだった。
「あぅ……う……。う、う……」
せりかは床の水たまりをぴちゃぴちゃと嘗めていた。犬のように。そうしなければいけないと云うかのように。同時にしゃあああ、と股間から水滴を垂らし、新たな水たまりを生み出していた。
少女たちはすぐさま運び出された。殆どが衰弱死し、遺体となって……。
赤ん坊は帆之香から引き離された。両親の配慮だろう。
父が理事長を務める病院の個室に、帆之香は入院していた。
そんなある日。
「ううーーーーっ! ううううっ!」
リハビリ代わり。車椅子に乗り、近くの公園に散歩に連れてきてもらってる時に事件は起こった。
「ふぉっふぉ。また更に大きくなったのう」
声の主は古手川だった。妊娠し、母乳の分泌により張りが出て膨らんだ帆之香の胸を強くもむ。乳首をつねると……。
「おお、おお。出るのう」
びゅ、びゅ、と細く勢いよく、ミルクのような母乳が飛び出した。
「うぐーーーーーっ!」
そこは暗い茂みの中だった。付き添いの子が少しだけ目を離した隙を狙われた。車椅子は引き倒され、衣服を剥ぎ取られていた。悲鳴すらあげられないように、口にはハンカチを詰められている。
「へっへ。また中に出してやるからな」
もう一つの声の主は木戸だった。嬉しそうに帆之香の中に挿入する。忘れかけていた痛みに帆之香は目を見開いた。
「うううううっ!」
「も、もうたまらんわい!」
古手川は帆之香の乳首を噛むように、強引に吸い付いて、飲んだ……。
「ふぉふぉふぉ! ええわい! ええわい」
右、左と。膨らんだ巨大な乳房を握り潰し、絞り出す。そうしてごくごくと音を立てて飲む。
(もうやだああああああああああああっ! やめてえええええっ!)
と、そんなとき。ガサ、と音がした。
「お姉ちゃん?」
「うぅっ!?」
帆之香より遥かに小さな女の子が現れた。それは、付き添いをしてくれた少女。小学生くらいだろうか。帆之香の父は病院の理事長。だからと云う訳ではないけれど、よくボランティアをした。そこで知り合った。帆之香と同じように入院していて、病室も近くだったから。事件に巻き込まれた帆之香のことを姉のように慕っていた女の子。
(に、逃げてえええっ! 来ちゃだめぇっ! いやああああああっ!)
心の叫びは届かない。
「何、してるの?」
古手川はにたりと笑いながら、女の子に云った。
「乳を出さないと溢れてしまうから出してあげておるんじゃよ。つらそうじゃが仕方が無いから、と頼まれてのう」
嘘もいいところだった。だけど、女の子は純粋だった。戸惑いながら、そうなんだと頷いた。そして。
「う、う、うーーーーーっ! うーーーーーっ!」
帆之香が絶叫する中、少女は赤ん坊のように吸い付いかされて、ちゅーちゅーと飲まされていた。古手川が、協力してくれるかの……などと優しい口調で騙したから。
(飲まないでえええええっ! やめてええええええっ!)
その少女は数分後、全裸にされて古手川によって犯された。辺りには、かつて服だったものが散乱していた。子供用の、綿素材の白い下着。柔らかな衣服。全て引きちぎられていた。
「ひいいいいいいっ! ひいい! ひっ!……あ……ぅ……。おねえ……ちゃ、ん……あぅっ! ひいいいいいいっ!」
小さな体は宙に浮かされ、猛烈な勢いで揺さぶられる。首筋にはねっとりとした古手川の舌が何度も這いずり回る。その度に少女は白目を剥いて震えた。
絶望感に満ちた少女の瞳は光を失っていく。また、あの時の惨劇が蘇る。帆之香は何もできなかった。ただ、ずれた眼鏡のレンズにぽたぽたと涙が落ちていき、視界がぼやけていく。
…………
「俺の子か」
声と共に紳一の魂が乗り移った男……草陰茂が現れた。腕の中には安らかに眠る赤ん坊。自分の遺伝子を継ぐ子が生まれているとの情報を得て、来てみたのだ。
「はい」
恭しく返事を返す男。直人は誰か他の肉体に移り変わっていた。
「う、う……」
古手川によりアヌスを貫かれて女の子は悶絶し、失心していた。木戸は帆之香を仰向けに寝かせ、乳首が千切れそうなくらい強く引っ張って、パイズリをしていた。痣がつくくらい乳房を絞り上げると、帆之香は痛みの余り顔をしかめた。
「この子が成長したら、この体ともおさらばだな」
薄汚れた男の体には嫌悪感しか覚えない。紳一はその子をある程度まで育てて、乗っ取るつもりのようだ。目の前で母である少女が犯されているのも知らずに、赤ん坊は無邪気に笑っていた……。
(そんな……。やめて……やめてぇぇ……やめ……て。そんなことしないでええぇぇ)
その子を道具にしないで。悪いことをさせないで……。帆之香は必死に目で訴えた。成長して、今の自分と同じように女の子を痛い目に遭わせるつもりなのだろう。そんなことはしないでと必死に訴える。望まれて産まれて来た子では無くても、自分の子には違いない。紳一の中に一片の良心があることを望むが、打ち砕かれる。
「帆之香、感謝するぞ。お前のように思う存分女を犯してやる。こんな醜い体は捨ててな」
紳一はくくく、と喉を鳴らして笑った。
(もう……いや……)
帆之香は絶望し、完全に心を失った。
数年後。新たな肉体を得た紳一は、少女の凌辱を始めることになる。
(赤……ちゃん……)
赤ん坊を抱いた帆之香。幸せな姿。最後の記憶はせめてもの救い。決して訪れることのない未来。
-了-