-悪夢EX Another episode 8th-
悔しい。この間、何度その言葉を頭の中で繰り返したことだろう。もはや思い出せないくらいにこみ上げてくる。思っている側から悔しい、とわき水のように言葉が出てくる。考えたくなくてもその言葉しか出てこないのだ。これまでも、これからもそうだろう。もはや逃れることのできない事実に、本能がそうさせているのだろう。
様々な理由とトラウマから、せりかは男が嫌いな少女として有名だった。そして現状は最悪なことに、彼女にとって特に大嫌いなタイプ……曰く、外道で性欲にまみれた最低最悪の下衆男によって屈服させられ、凌辱されたのだった。もちろん徹底的に抵抗したけれど、力の差は圧倒的だった。せりかはただ痛みと屈辱に必死に耐え、呻く。
「う、う……」
せりかを犯しているのは紳一。彼は背後からせりかの小さな胸が激しく揺れるくらい突きながら、耳元でささやいた。
「少しは男が好きになってきたか?」
「な、なるわけないでしょっ!」
挑発するような一言に対し、せりかは叫んだ。こんなひどいことをしておいて、この男は何を云っているのだろう。他の少女同様、せりかの衣服を強引にすべて剥ぎ取り、両手を背中で一まとめに縛り上げた揚げ句、鎖付きの首輪で犬のように繋ぎ引っ張っている。せりかは顔を仰け反らせながら苦しそうに肩で呼吸をしている。ゴージャスな巻きロールの髪はくしゃくしゃに乱れ、陵辱の激しさを物語る。
「それは残念だな」
「うっうっ! い、痛い……っ! 痛いいいいっ!」
せりかは背後から突き上げられると同時に、小ぶりな胸に触れられていた。それは既に揉むという生易しいものではなく、つねると云った方が正しいくらいだ。紳一はせりかの悲鳴も涙も全て無視して犯し続ける。
「い、痛いいいいっ! や、やめてぇっ! 痛い! 痛いよぉっ! いやぁっ!」
乳房ごと乳首を握り潰そうとせんばかりに、ちぎれそうなくらいに引っ張る。
「嫌なら云うんだな。私は男の人が好きになりました。私が間違ってました、と」
「……っ!」
何と云うことを。せりかは一瞬絶句する。紳一による侮辱だった。
「ふ、ふざけないで!」
そんなこと、云えるわけがない。到底受け入れられるわけがない事実。
「ふざけてなどいないさ。むしろ、お前の男嫌いを直してやろうと思って協力してやってるだけだ。感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないな」
「な……んですって。あ、あぐっ! い、い、痛いいいいっ! やめ……」
何と云う傲慢な男だろう。そう思うけれど、反論など許されない。紳一はまた、せりかの乳首を強く摘まむ。
「それにしても貧弱な胸だな。こんな体でよく女優業をやろうだなんて思ったな」
「ううっ! 悪かったわね! あ、うっ」
気にしている事を突っ込まれ、せりかは傷ついていく。その間も紳一はせりかの乳首をつねりつつ、乳房自体をねじり上げる。
「強がるな」
突如、せりかのなかから紳一のものが引き抜かれる。同時にせりかの体をまさぐる手が優しくなり始めた。撫でられ、くすぐったさにせりかはあえぐ。一転した動きにせりかは戸惑う。いきなりどうしたのだろう、と。
「あ、あっ……」
「本当は優しくして欲しいんだろう? こんな風に」
「な……にを」
「それともやっぱり痛いのがいいのか?」
「や、あ……っ」
優しい愛撫から更に一転。突然乳首をつねられて、せりかは顔をしかめる。
「優しくして欲しいか?」
「う、う。痛い……痛いいぃぃ」
紳一はせりかの乳房を握り潰すように強く揉む。そして、せりかの秘所に紳一のものが再び押し当てられる。また、入れられる。股間にこみ上げてくる熱く重い痛み。もう嫌とせりかはしみじみと思った。
「どうなんだ。答えろ」
鋭い声。痛みと恐怖に耐えきれず、せりかは遂に音を上げてしまう。
「……優しく、して」
「人に物を頼む時は『してください』だろう?」
明らかに見下した言葉だったが、せりかは唇を噛み締める。もはや従うしかないのだから
「……優しく、して……ください」
涙が頬を伝わりぽろぽろと流れ落ちて行く。紳一の低い笑い声がせりかの耳に響く。
紳一の愛撫は延々と続いた。
「あ、あ、あ……」
恋人同士が交わるかのような、優しい手つき。起った乳首を転がし、小さな柔らかい乳房をふるふると揉む。
「だ、め……。やぁ……」
その度にせりかは頬を赤らめ、甘ったるい声を出してしまう。出したくないのに出てきてしまうのだ。それがたまらなく悔しい。
「んんっ!」
突然、キスで唇をふさがれる。あっさりと奪われたそれはファーストキスだった。男なんて、と常々思ってはいたけれど……ショックだった。まさか、こんな男にこんな形で奪われるなんて、と。いつかまともな男が現れて、閉ざされた心を開いてくれる日が来るかもしれない。……せりかも心の底ではそんなふうに思っていたのかもしれない。
「や、めて……。あっあっ」
「やめてと云う割りには感じてるじゃないか」
「か、感じてなんて。あ……」
せりかの目前に紳一の手が突き付けられる。粘りけのある糸を引き、とろりと湿ったもの。せりかの秘所を覆う愛液だった。
「お前は男が嫌いとか云いながら、現実には男の愛撫で散々感じまくってま○こを濡らしてる。まったく素直じゃない淫乱娘だ」
「ち、違う……わ」
「いい加減認めろ。そうだな。今度は『私は男の人が大好きなんです』と云え」
「う、う……。嫌ぁ」
そんなこと云えるわけがない。そう思った途端、鎖を引っ張られる。せりかは首ごと顔を仰け反らせてしまう。
「うぐっ! うあ、あ、あ……っ!」
「痛い目に遭いたくないのなら云え。じゃなければずっとこのままだ。それでもいいのか?」
紳一は同時にせりかの左右の胸をねじり上げた。痛みと悲しみにせりかは叫ぶように云った。
「う、うぅっ! わ、たしは男の人が大好きなんですっ……。こ、これで……これでいいでしょ! もう、やめて!」
散々いたぶられ、せりかは頭を振る。ぽろぽろとこぼれ落ちていく涙。紳一は満足そうに頷き、更に残酷な事を云った。
…………
「うぐうううっ! ぐ、む……っ!」
椅子に深く腰掛ける紳一。その上にはせりかが重なり合っていた。固定した部品のように一つにされたまま、揺さぶられる。そしてせりかの前には三人の男が近付いてきた。
「いいぞ。もっと舌を使え」
直人という名の若い男がせりかの口に大きくそそり立ったものを突っ込んで、かき混ぜていた。
紳一があの後云った言葉。
『男の人が大好きなのなら、呼んでやらないとな』
そうして木戸、古手川、直人。部下達三人を呼び寄せ、せりかの口を代わる代わる犯させた。既に何度目かの射精を受け、せりかの顔は白くどろどろに汚されていた。
「おぼっちゃま。今度は爺に」
「ああ。好きにしろ。何度でもしてやれ。この娘をどうしようとお前達の自由だ」
ありがとうございます、と三人とも血走った目で云った。出したばかりだというのに既に古手川のものは大きく復活していた。紳一達はそれを見て苦笑するが、せりかの瞳は絶望に彩られていく。
「そらっそらっ! 出るぞぉっ!」
「ぐっぐっ! うぐうううっ!」
今度は直人が射精した。せりかの口内にどっぷりと出し、吐き出すことを許さない。ようやく全てを飲み干して、直人のものが引き抜かれる。唾液と精液が混ざり合って糸を引き、せりかの体を汚す。猛烈な嘔吐感にむせ返るせりか。
「げほっげほっ! う、っぐ……うううっ! も、もう……もうやぁぁ……」
「ふぉっふぉ。今度はわしじゃ! ほれ、ほれ! 休んでる暇はないぞ」
「や、や、やめてぇぇぇっ! う、う、うううううっ!」
せりかは必死に顔を背ける。だが、微動だにしなかった紳一がいきなり腰を突き上げた。
「はうっ! あ、ぐうううっ!」
突然の衝撃に驚いたせりかは口を開けてしまい、古手川はその瞬間を見逃さなかった。
「んぐうううううっ!」
がくがくと揺さぶられるせりか。しばらくして、紳一は達した。体の中にじんわりと熱い感触が広がるが……紳一のものは勢いを失うことなく留まっていた。そしてまたすぐに動き始める。
(もお……やだ。しにたい……。男なんて……嫌い。……大嫌い。悔しいいいいいっ! 悔しいよおぉぉぉっ!)
男嫌いのせりかは何人もの男との交わりを強要され続けた。それでも、こんな最低最悪な状況にあっても心の底まで紳一のいいなりにされたくはない。だから耐えていくつもりだった。いつかは終わるときが来る。そう思い続けて。
ほんの数週間前まで、せりかは汚れなき少女だった。
「いい加減にして!」
ぱし、と乾いた音が辺りに響く。それは決して大きいものではなく、強いわけでもない。ましてや勢いなどありはしない。周りに誰もいなかったのは幸いだった。誰かに見られようものなら、どんな噂を立てられることか。普通の少女なら問題ないが、彼女は有名人だった。
せりかが男を平手打ちをしたのだ。本人にとっては単なる正当防衛。あまりにも我慢ならなかったから意思表示をした。ただそれだけのこと。失礼な男に対してそうしただけ。未だむかむかする気分を払うかのように早足でその場を立ち去る。かつかつと靴音が硬い床を砕きそうなくらい細かく響く。
せりかの父は映画監督で母は女優。当然の如く、芸能界とは幼少の折りより接してきていて、どういう世界だか多少なりとも知っていた。クラスメイトや友達、所謂普通の女の子が抱いているイメージとはかけはなれていた。つい今し方近付いてきた男。醜くて嫌らしい下衆な目でせりかの体をなめ回した挙げ句、あまりにも失礼な言葉を吐いたのだ。
男なんて大嫌い。ずっと昔からそう思っていた。これからも変わる事など無いだろう。改めてそう思う出来事だった。せりかはそういう姿勢を隠さなかった。もっとも、同じ芸能人であり親友でもありクラスメイトでもある礼菜は業界の実情に嘆息しつつ、あまり公言はしていなかったけれど。せりかのスタンスは違ったのだった。
男は皆女の子を見下していて、性欲の対象にしか見ていなくて、ちょっと優しい声をかければすぐに思い通りになると思っている。ふざけるのもいい加減にして。冗談じゃないわ。と、いつも思う。絶対に男なんか信用するものか。男なんか大嫌い! せりかは強気だった。
…………
「おらぁっ!」
「あひぃっ! ひいっ! ひいいっ!」
四つん這いにされ、激しく挿入されながらお尻を平手打ちされる。相変わらず両手は背中で縛られたままで、苦しそうに顔を床に押し付けられていた。木戸のものは衰えることをしらず、勢いを増す一方だ。
「ほら、嘗めろ」
「う、うあ……う、う」
苦痛に歪むせりかの前に突き出されたもの。それは見るからに高級な革靴だった。犯され続けるせりかを見下すようにして紳一は豪奢な椅子に腰掛けていた。
紳一はせりかに云っているのだ。服従しろ、と。自分を主人として認めろと。男嫌いを公言しているせりかのプライドをずたずたに引き裂きながら『俺の所有物になれ』と、云っているのだ。
(嫌だあああああっ! 絶対に嫌嫌嫌ああああっ! 嫌いっ! 大っ嫌いッ! 最低っ! 誰が……誰がこんな最低男なんかにぃっ! うああああっ!)
最後の意地だった。せりかは歯を食いしばりながら紳一をにらみつけた。だが……。
「はうっ!」
ずぶ、と突き刺さるような感触。せりかの秘所を貫いている木戸の指が一気に何本もせりかのアヌスに侵入する。そのまま太い手を腕ごと突っ込むかのような圧迫感。そんなところにそんなことをされたらお尻が……裂けちゃう! せりかは歯をかちかちと鳴らしながら震え、叫び続ける。
「おい、さっさと嘗めるんだ! おぼっちゃまの靴を!」
「ひぎいいいっ! や、め、てええええっ! ぎゃあああああっ! あーーーーーっ!」
痛みと苦しみと恐怖。せりかは半狂乱になっていた。涙の量は更に増え、顔中を濡らしていく。
「あ、うううううっ! もうだめええええっ! 助けてええええええっ!」
堪えきれなかった。だから、差し出された靴を必死に嘗めた。あまりにも惨めだ。けれどこれで……これで少なくともお尻を引き裂かれるような苦しみからは解放される。そう思ったのに……。
「宣言しろ。お前の主人は俺だと」
「う、えぇぇぇ! やだよおおおおおっ! いやだあああああっ!」
革靴の靴先はせりかの涙と唾液で濡れていく。
(いや、だぁぁ……。やだやだやだああああ! 負けたくないいいいっ! こんな男なんかにいいいいっ!)
「云え」
(いやあああああっ! 悔しいいいいいいっ! 悔しい悔しい悔しいいいいいっ! 負けたくないいいいっ! まけたく……う、う、う……)
せりかの自我は必死に堪えようとするけれど、無意味だった。堤防が決壊するかのように、こぼれ出た言葉。絶対に屈したくなかったのに、体が勝手に言葉を発していた。
(だ……め……)
もはやせりかに抗う力は残されていなかった。
「わたし……の、ごしゅじんさま……は……あなた、です」
捻り出すような言葉だった。喉を焼き切ってしまうような、劇薬のような言葉。これ以上云ったら自分が自分では無くなってしまう。そう思ったのに、紳一は追い込んできた。
「何だその嫌そうな顔は!」
「う、うぇ……や、あぁぁ」
不合格との宣告だった。革靴でせりかの顔を乱暴に踏みつけながら云う。心の底から思え、と。嬉しそうに笑いながら云え、と。身も心も全て捧げろと紳一は云っている。
「わたしの……ごしゅじんさまは、あなた……です」
だらだらとよだれをこぼし、大粒の涙を流しながらも無理やり作った笑顔は狂気に満ちていた。
終わった。もう、自分はおしまいだ。この世で最も嫌いで、下衆な最低男によって屈服され、全てを奪われて陥落させられた。もう、生きている意味などない。死にたい。けれど、それすらもかなわない夢だろう。
「あひぃ」
自我を失ったせりかはひたすら紳一の革靴をなめていた。その間も木戸の巨大なものがせりかのアヌスと秘所を出入りし続け、汚し続ける。
「男のものはどうだ?」
「だいすき、です……」
いつしかせりかは自ら腰を振っていた。どうしてこんな事をしているのだろうと疑問に思うことすらなく。
「おとこ……のひとが……すき、です。う、う……」
「そうか。やっと認めたか。いい子だぞせりか」
男嫌いで強気のせりかは変わり果てていた。柔順な奴隷と化したせりかを見て満足した紳一は立ち上がる。木戸が射精したのを見て、今度はせりかのアヌスに押し込んだ。
「あひいっ!」
せりかは目を見開いた。同時に首輪についた鎖が引っ張られ、じゃら、と金属の擦れる音が響いた。熱くて太い感触がお尻の割れ目に突き刺さる。更に強い力で胸を揉みつぶされる。
「あひいいいいいっ! ひいいいいいいっ!」
せりかはもう、何がどうなっているかもわからずに悲鳴を上げた。捕らえられた獲物のように哀れな姿で。
…………
「んく、んく、ん」
せりかは小さな口を目一杯あけて、桜色の可憐な唇で男のものを包み込む。せりかのまわりには男達が数人取り囲んでいる。紳一を筆頭に、木戸、直人、古手川。全員例外なく、股間のものを限界まで膨らませていて、にやにやした目でせりかを見下ろす。
空洞と化した瞳はあらぬ方向を向き、何も映してはいない。ただ、本能の赴くままに男達の欲望を満たすのだ。
やがて男達は達し、思い思いにせりかの顔や口、体に向けて射精し、汚して行く。
ずっとこんな日々が続いて行く。誰もがそう思っていた。けれど、異変はすぐに訪れた。
ある日を境に、男達は来なくなったのだ。理由は少女達にわかるはずもない。
少女達は放置された。全員凌辱の限りを尽くされたあげく、鎖で繋がれ、更に堅い牢の中。全員死亡するのは時間の問題だった。
誰もしゃべれない。身動きすら。意識はおぼろげ。最初の頃は誰もが泣き叫び、悲鳴を上げ、必死に抵抗したのに。すぐそばにいる親友に助けを求め、両親の名を叫び、嗚咽まみれの空間があったはずなのに。今では沈黙が全てを支配していた。
引きちぎられた制服のリボン。破られた下着。放り投げられたソックスの破片が散乱している。
そんな中。
「ね、ぇ」
夢遊病のようなせりかはぼぅっとしながらつぶやき、床をはいずり回る。
「どこ、ぉ」
男たちが来ない事をせりかは知っていた。だから探しているのだ。
「知ら……なぃぃ?」
友達に聞いてみる。無論、返事などない。
「……さまぁ」
わたしには尽くさなければならない人がいたはずだ。けれど、どこにもいない。
「あ、ぅ」
しばらくしてせりかは諦め、近くの友達に話しかけた。やはり返事はない。
「うふふ」
せりかは更に移動し、壁によりかかったまま呆然としている少女に話しかけた。食事も与えられなくなった今。せりかは意味も無く笑いながら友達に触れる。すると、その友達は力なく崩れ落ちる。どさりと軽い音を立てて床に転がった。触れてみると、冷たい体。
「みつけ、たぁ。うふ……ふふふ」
せりかはそれが探していた男の体と勘違いしたまま、股間にしゃぶりついた。じゅぷじゅぷと音を立てながら、友達の股間に。
礼菜、紫音、文、帆之香……。せりかによって股間を愛撫され尽くした娘たちは皆、大股開きしたまま絶命していった。
せりかは夢をみていた。
ばんばんと音を起て、男たちが欲望をたたきつける。廃ビルの一室。闇の先には全裸の少女が一人。
「あ……あ、あ……」
その一人はかつて、せりかに頬を叩かれた男。せりかにとって最低最悪の下衆。自業自得と云うべきか、度重なる不祥事が明るみに出て、表舞台から姿を消さざるを得なくなり、底辺の生活を送っていた。
……せりかは二十数人いるクラスメイト達の中でただ一人助かり、生還したのだ。せりかは死を向かえる寸前に助け出された。木戸と古手川によって。そして治療を施され、生かされ続けた……。
紳一の死と、その後を追って殉死した直人。他の二人の男は直人とは違い、紳一の死後も少女達を犯しつくしていった。そうして飽きた頃に廃校舎を出て行った。……それから数日後のこと。木戸は思い出したように云った。今度は芸能界から青い果実を捜し出そう、と。若手も現役も問わず、美少女達を合法的に食い散らかそうと提案し、古手川は同意した。そのためには下衆な輩共をあえて餌で釣って取り込んで、芸能界の内部に食い込んでいくのが一番効率が良いだろうと古手川は判断したのだ。そしてその取引材料として、置き去りにした少女達のことを思い出した。あのクラスの中にも芸能人の娘達が何人かいたのだから当然の事だ。
そして男達は山奥の廃校舎に戻った。横たわる少女達の中、せりかだけがまだ生きていた。幸か不幸か、それは誰にも分からない。手間が省けたわい、と古手川は云った。
男嫌いで有名な美少女女優せりか。彼女にアプローチをかけては断られ、果ては平手打ちをくらう等していた男達を木戸と古手川は探し出した。そしてせりかを文字通り餌にした。恐喝、ストーキング、果ては殺人まで、下衆な男共は何でもすることだろう。用意周到な計画により、木戸と古手川の身分が世に知れる事は絶対にない。
「あ、ふ……う、く……」
せりかは今も寝そべる男の上に跨がされ、揺さぶられる。休む間もないくらいひっきりなしに口内に突っ込まれ愛撫を要求される。一人の男が終わればすぐ他の男。代わる代わる、入れ替わり立ち替わり。せりかは大嫌いだった男達によって汚され続けた。
古手川も木戸も、性奴隷と化したせりかを犯すことはもうなかった。目の前で行われている行為などに関心はなかった。新たな興味は芸能界の美少女達。
「わしはこの娘がいいのう」
「そうか? 俺はこいつだな」
写真を物色し続ける二人をせりかの悲しげな瞳が見つめていた。
…………
どうする? と木戸は問うた。それに対し、そうじゃのうと考えながら答える古手川。男達が立ち去った後には精液まみれのせりかが横たわっていた。
殺したり捨てたりすれば、下手をすれば足が付く恐れがある。たとえ動くことも話すことすらできなくても、だ。しかし、従順な性奴隷と化した彼女はまだ役に立つかもしれない。少なくとも、男を満足させられるうちは利用価値があるだろう。ならばリスクは少ない方がいい。
こうしてせりかは生かされ続けた。どこかも知らない地下深く。絶望に満ちた部屋に繋がれて。だけど時折人がやってくる。
「せりか。客だ」
ガチャリとドアが開き、木戸と見慣れぬ男が数人入ってくる。木戸は顎をしゃくる。今更云うまでもない。男の相手をしろということだ。
「……あう」
せりかは首輪を外され、四つん這いのまま男達に近付いていき、ゆっくりとズボンのチャックを下ろし、出てきたものを口で愛撫し始めた。男達から歓喜の声が上がる。うひょーとか、すげーとか、こんな可愛い娘とセックスしてもいいのかとか。木戸は頷き、低い声で云う。その代わり、わかっているな、と。
男達は何度も頷きながら嬉しそうにせりかを汚し始める。知るわけもなかった。木戸と古手川に関わりすぎた男が何人も行方不明になっていることなど。
(おとこ……の……ひと……。すき……)
痛みも苦しみも悲しさも。もう何も感じない。ただわたしは男の人を喜ばせないといけない。それが出来なくなったとき、捨てられる。死ぬ事を意味している。
せりかはひたすら腰を振り、喘ぎながら口での愛撫を続ける。既に媚薬漬けにされていて、痛みなど感じない。
道具と化した少女、せりか。
その涙はもう、乾ききって流れない。
-了-