ゆらりと炎が不気味に揺れながらその規模を拡大し、旧校舎の全てを焼き尽くしていく。捕らえられた揚げ句強引に素肌を晒され、徹底的に犯された上に無残に壊された少女達の夢も体も、無念な気持ちすら全て跡形もなく炎に包まれていく。――後には魂の欠けらすらも残されないことだろう。
ある日のこと。とある学園にて、テレビ局のスタッフががこぞって集まり何かを中継をしていた。正真正銘の生放送であり、現在進行形の事件。題材はこのところ世間を騒がせている連続婦女暴行事件についてだった。
非常に不可解で、謎の多い事件であると誰しも頷かざるをを得なかった。大々的に報道がなされているのに全てが曖昧なまま、何一つ証拠がないのだ。それでも警察当局は必死の捜査の末にようやく犯人一味と思しき人物を特定し、潜んでいるであろうアジト……学園の閉鎖されて久しい旧校舎を突き止めたのだ。
状況証拠ではあるけれど一通り必要な情報が揃い後は突入を敢行するだけ。今はそんな時だった。事件の首謀者は草陰茂という名の浮浪者だった。その他にも複数名いるようだが、詳細は今もって不明。誰もが犯人グループを一網打尽にて万事解決という青写真を描いていた
「おい、何か焦げ臭くないか?」
「お、おいあれ! 火だ」
誰かが云った。気のせいではなかった。爆発でも起こったかのように方々から火の手が回る。男たちは逃亡が不可能であることを悟ったのか、旧校舎に火を付けたのだ。
当局の行動は後手に回り、後に大きな批判を浴びることとなる。人知を越えた現象故に、どうしようもなかったのにしても、その結果はあまりにも無惨だった。
とある病院――。
ベッド脇の机においてある小さな卓上テレビ。緊急速報と書かれたテロップが画面の端にあった。映っているのは近くの学校。
『――犯人は逃走を諦め、潜伏先の建物に火を付けた模様』
それを見つめる少女の顔が見る見る青ざめていく。
「あ、あ……」
ニュース番組は更に報道を続けていく。
『――旧校舎の中には現在も人質が数十名残されており』
見ただけでも分かる。火の勢いがあまりにも激しく、もはや救出は不可能だろう。消火活動など何を今更と云ったところだ。
ショートヘアのボーイッシュな少女。美雪。
「同じ……や……」
あの中にはきっと、自分と同じような目にあわされた少女が大勢いる……いたのだと、過去形になってしまう。皆、焼け死ぬのだ。もしかしたら自分もあの中に連れ込まれていたかもしれない。今の境遇が幸せ等とは絶対に思えないけれども。
「……」
悪夢のような記憶が蘇る。塾からの帰り道。誰も居ない暗い街角での出来事。背の高い男に犯された時のこと。
『い、やぁ。お、かあちゃ……ん……。た、助け……て』
圧倒的な力で服を引きちぎられ、貫かれるように処女を奪われた。余りの恥ずかしさに声も出なかった。そして、ショックに激痛。助けを呼ぼうにもにも口の中にハンカチを突っ込まれ、くぐもった声しかでなかった。
男はかまわずに腰を振る。めちゃくちゃな勢いで美雪の中を汚しまくる。そして突如男の動きが止まる。同時に熱いものが体の中に注がれて行く。射精……。全てが終わった気がしてしまう。
『あ、あ……。中に……あぁ』
あまりのショックと激痛のあまり、美雪は意識を失った。そうしてそのまま裸のような格好で数時間もの間道ばたに放置されていたそうだ。服をはだけさせ、お尻を丸出しにしながら……。
「ひどい……」
他人事のはずなのに涙が込み上げてきて止まらない。燃え盛る校舎の中には自分のように傷つけられた少女たちが大勢いたはずなのだ。それがはっきりとわかる。その上、何故この様な残酷な目に遭わせるのだろう。世の中はあまりにも理不尽ではないかと思わずにいられない。
「どうしたの?」
美雪の様子に気づいたのか、女性の看護士が声をかけてきた。出会って間もないけれども、とても優しい人だった。
「あの中に……。あの中にまだ人が……。いっぱい……」
うわ言のように云いながら泣きじゃくる美雪。
「そう」
眼鏡をかけた看護士は事件の全てを理解しているかのように、悲しげに目を伏せる。そしてテレビを消し、美雪の体を背後から優しく抱き締める。まるで自分もかつて美雪達と同じ目にあわされたかのように。優しさに包まれて悪夢から解放されたのか、美雪は泣きじゃくった。
「もう、大丈夫よ」
炎の中にいる人達は……本当に気の毒だけど、と心の中で付け加える。
気のせいだろうか? このところ美雪のように街中で突然襲われて身も心も壊された娘が何人も入院していた。
きっと気のせいなんかではないのだろう。すぐに身をもって知ることとなる。
偶然。――たまたまだった。
「う、ふ……ぐ……」
真夜中。ベッドの上にて美雪は全裸にさせられて犯されていた。犯しているのは白衣を着た男性の医師。ご丁寧にも美雪の口には下着が丸めて押し込まれていた。声すら上ることができず、ただぎしぎしとベッドがきしむ。
「また会えるとは思わなかったぞ」
美雪の方はこの男の事など知らなかったが、男は構わず腰を進める。誰だろうか等と考える余裕はもうなかった。どのような経緯で病院のこの部屋に入り込んできたかなど、今となってはどうでもいい。一度ならず二度までも……もう美雪は生きる意志すら感じなくなっていた。
「あ、あぁぁぁ……! うぐぅぅぅぅっ!」
同時に隣のベッドから声が女性の声が聞こえてくる。男性の患者二名、男性の医師二名。美雪に優しくしてくれた女性の看護士が一人、姦されていた。男たち数名によってのしかかられ、身動き一つとれない。白衣を引き裂かれ、露わになった大きな胸をおもちゃのように扱われ、口もお尻も秘所にも男達のものが突っ込まれ、激しく出入りを繰り返していた。
「おぼっちゃん。この娘」
男の一人が報告する。
「ほう? 生きていたんだな。偶然が続いたな」
美雪を犯している男が理解したように頷いた。そうして部下らしき男達に云い放つ。お前達の好きにしろ、と。
女性看護師の名は帆之香。学生の頃、修学旅行中に連れ去られて陵辱の限りを尽くされながらも運良く生き延びた一人。思いがけない再会だった。
(ああああっ! もういややぁっ! こんなのもういややああああっ!)
一人の男が美雪の中に射精した。じんわりと広がっていく熱い感覚に美雪はわなわなと震え、泣きじゃくった。
(どう……して)
同時に他の男達も帆之香の体に向けて欲望の限りをぶちまけていた。もはやその瞳には何も映ってはいなかった。