それは決して薄れることのない記憶。

 あの時の悪夢。彩乃は今も思い出す。

 勝沼紳一によって力尽くで組み伏せられ、犯された時の事を。

 苦痛と恥辱に満ちた地獄の日々を。





 紳一はゆっくりと立ち上がる。恐怖におびえながら後ずさりする彩乃を追い込むかのように近づいてくる。既にファーストキスを強引に奪われ、彩乃は泣いていたが、そんなものはデモンストレーションに過ぎなかった。少女がショックに打ちひしがれる暇も与えずに手を伸ばすのだった。

(や、だ……)

 考えたくないのに染み付いてしまった記憶。紳一は彩乃の上着を掴み、ブラウスごと引き裂いた。バリッと音を立ててボタンがまとめて飛び散る。ナイフで突き刺されたかのような衝撃的な出来事だった。

(いっ……いやああああああっ!)

 彩乃の人生で、自分に対し明確な悪意を持って接してくる男などいなかった。多少意地悪な男でも嫌いな男でも、いきなり自分の服に手をかけて引きちぎるような真似はしないだろう。突然そんなことをされ、彩乃は半狂乱になって叫んだ。引き裂かれた布地の下には素肌と縞柄の小さなブラジャーが露になり、彩乃は慌てて両腕を組むようにして隠そうとした。

 しかし、紳一はそんな彩乃を見て上着を剥ぎ取るのを後回しにし、スカートに手をかけた。明らかに手慣れている調子でホックをはずすとスカートはあっさりとずり落ちてブラジャーと同じく縞柄のショーツが露になった。

(あ……っ!)

 引き裂かれた上着に気を取られて上半身をガードしていたら、あっと言う間にスカートを脱がされてしまった。スカートを取り戻すべきか上半身を押さえるべきか戸惑う彩乃を無視して、紳一は柔らかい布地のショーツを掴み、一気に引きちぎった。ショーツに包まれていた秘所は薄い毛が覆っていた。彩乃はとっさに両手で隠す。

(きゃああああっ!)

 わずか数秒間で、彩乃は下半身の衣服を剥ぎ取られていた。半狂乱になりながら頭を振る。

(いやあああああっ! やめてええええっ!)

 裸……。何も遮るもののない姿。それは死にたくなるくらいの恥ずかしさ。可愛らしいお尻の割れ目も秘所の毛も露にさせられた。彩乃は完全に混乱し、泣きじゃくりながらもがくけれど、小柄な体はベッドに放り投げられてしまう。そして圧倒的な力で組み伏せられ、今度は上着を剥ぎ取られた。両腕で体を抱え込んでいたのに簡単に引きはがされてしまい、ブラウスごと放り投げられた。

(やめてええええっ! うああああああっ!)

 後に残されたのは小さなブラジャーとソックスのみだった。見られたくない。胸も秘所もお尻も……。どこを隠せばいいのか、どうすればいいのかわからずに戸惑っている間に、紳一は彩乃のブラジャーを難無く引きちぎった。更なるショックに動けなくなってしまった彩乃はあまりにも無防備で、ソックスも脱がされてしまう。飾り気のない彩乃はアクセサリも何も身につけていない。文字通り生まれたままの姿。





(素っ裸にされた気分はどうだ)

(やっあっ! あ、あぅ……やぁぁ)

 見知らぬ男に襲われて衣服を剥ぎ取られた。あまりの恐怖と恥辱。彩乃はただ涙をこぼしながらしゃくりあげるだけだった。

 ベッドの脇には彩乃が着ていた衣服が散乱している。できるなら取り返して肌を包みたい。けれどそんなことを考えるまもなく凌辱の時が幕を開けてしまった。

(おごおおおおおっ!)

 仁王立ちする紳一の股間のものを咥えさせられた。男の性器を口で愛撫させられた。屈服させられてしまった事実に彩乃の頬を涙が伝う。

(悔しいよぉっ!)

 あまりの気持ち悪さに彩乃は嘔吐感を覚えるが、止めることなど許されなかった。歯でも当てようものならどんな扱いされるだろう。そう思うと柔順に愛撫を続けるしかなかった。結果的に、『解放してやるぞ』との甘言を信じて裏切られた。猛烈な嫌悪感に耐え、必死に男のものを口でくわえてしゃぶってきたのに。

(い……っ! いやああああああっ! 入ないでえええええっ!)

 処女を奪われた時の絶望感は二度と忘れられないだろう。足を閉じようとする力すら奪われて、大きくそそり立ったものを入り口に当てられて……そのまま彩乃は貫かれた。ずぶずぶと自分の中に異物が入ってくる感触。男に征服されてしまった感覚。

(女になった気分はどうだ?)

(あ……あ……。いたい……)

 もうおしまいだ、と思った。こんな見ず知らずの男によって犯されてしまった。彩乃は絶望感に苛まれ、弱々しくかぶりをふる。

(ぼ、ボク……もう……だめ……)

(何だか男を犯してるみたいだな)

 その一言に彩乃はキッと目をきつくしながら紳一をにらみ付ける。

(お、女の子だよ! 女の子が自分の事ボクっていったっていいじゃないか! あ、あぅっ! 痛いいぃぃっ!)

(黙れ)

(あっ! あぅっあぅっあぅぅっ! 痛いいいいいっ! やめてぇぇーーーーっ!)

 うるさいとばかりに紳一は深く突き上げる。彩乃の小さな体はガクガクと揺さぶられる。痛みと苦しみにのたうちまわり、その衝撃で更に結合部がよじれて新たな痛みをもたらす。小さな胸も散々揉まれ、乳首を引っ張られていく。恥ずかしい。痛い。悔しい。どんなにやめてほしくても手が動かなかった。そしてふいに熱い感触が体の中にこみ上げてきた。紳一が中に射精したのだ。

(あ、あああ……。ひ、ひどい……ひどい。こんな)

 しかしそれだけでは終わらなかった。射精の後、紳一は彩乃のアヌスを貫いたのだ。

(ひ、いいいいっ! そんなのいやあぁあぁぁっ! ぱ、パパぁぁぁ……。助けてえぇぇぇ……。痛いいぃぃぃっ)





 それからのことは覚えて居ない。散々アヌスを突かれた後で彩乃は途中で失心してしまったのだ。

 気が付いた時、彩乃は地下牢に閉じ込められていた。服すら着させられず全裸のまま、首輪を着けられ鎖でつながれていた。

(う、あ……。痛っ!)

 秘所とお尻に鈍い痛みと違和感。貫かれ、射精された記憶がよみがえる。僅かに滲む破瓜の血と、同時に口内にもむせ返るような感覚。精液を飲まされたから。

 彩乃は自分の体をまじまじと見つめる。夢だったらよかったのに、そうではなかった。自分は確かに紳一という名の暴漢によって汚されたのだ。

(う、ああ……あ、あ……! い、いやあああああああっ! こんなっ! こんなぁっ! こんなの……ないよぉおっ! ひどいいいいいっ!)

 静まり返った牢の中に彩乃の絶叫が響いた。彩乃のすぐ周りには柚流、礼菜、文……。共に同じような目にあわされたのであろう、全裸のクラスメイト達がうつむいたまま、泣きじゃくっていた。誰も何も答えない。視線すら合わせようとしない。

 どうしてこんなことになってしまったのか。なぜこんな目にあわされないといけないのか。あまりの理不尽さに彩乃は嗚咽を漏らし続けた。

(うう……。出して……。ここから出して……。お願いだよぉ……。か、帰り……たい)

 あまりにも堅くて取れない首輪。がしゃがしゃと揺さぶってもびくともしない牢。諦めがすべてを支配していった。

 この牢の中にいるクラスメイト達は全員、一人の男によって処女を破られ、犯されたのだ。まるでみんな仲良しと云わんばかりに一カ所に集められ、監禁された。

 俺はお前達を女にしてやったんだ。感謝しろ。……犯された直後に云われた一言を思い出す。どうしてそういうことができるのだろう。

 もちろん一度だけでは終わらなかった。





(犯された……。レイプされた……。もうやだ……もうやだ……もう、いやだあぁぁ……)

 彩乃は紆余曲折をへて、奇跡的に助かった。けれど、悪夢は今も続く。

(返して……。みんなを返して……。ボクの未来を……返して)

 ほとんどのクラスメイトは死んだ。生き残った彩乃は学校に行けるわけもなく、ずっとこうして入院生活を送っている。時折発作的に悪夢がフラッシュバックされ、病室の中をのたうちまわる。そうしてやがて取り押さえられ、鎮静剤を投与されるのだった。

(怖い……怖いいいいい! 嫌! 来ないでええええっ!)

 男が怖かった。大好きな父も、好きだった人も……同じだと思った。彩乃は男の姿を見る度に恐怖に震えるのだった。

 いつか、普通の生活に戻れることはあるのだろうか……。