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悪夢ー青い果実の散花ー 二次小説
『陵辱三昧なのはダメですよ。』 一話











 少女達の目の前には、不気味なまでに暗い空間が広がっている。木造の床はおろか、空気すら冷たい牢の中にて、囚われの身となって久しい紫音に対し、直人が顎をしゃくって命令する。西九条財閥の令嬢たる少女はしかし、今では『かつては財閥令嬢だった』と、過去形にでもしなければならないくらいの惨めな立場に身をやつしていた。

「これを着ろ」

 ――紫音は他のクラスメイト達同様、勝沼紳一をはじめとする男達によって強引に制服を剥ぎ取られて丸裸にさせられ、挙げ句の果てに純潔を奪われた。陵辱が終わった後、地下牢の中に監禁され、破瓜の痛みに加え、処女を奪われたという屈辱にまみれた失意の時を過ごしながら、浅い睡りについていた。そんなところを直人によって突然叩き起こされ、別の牢へと移動させられた。牢の広さは六畳一間といったところで、紫音と直人の他には誰もおらず、がらんとしている。小規模であるとはいえ元々は学校だったからか、部屋数は多いようだが、紫音にはそんな事を考える余裕などありはしなかった。

(え?)

 直人はそう言うや否や、手にしていたものを無造作に放り投げた。バサリと音を立てて木製の床へと落ちるそれは、紫音達がかつて着ていた聖エクセレント女学園指定の制服だった。

「着ろと言っているんだ」

(……?)

 一体どういう心境の変化なのだろうと紫音は思う。ほんの数日前の事。この直人という男の主君たる人物……紳一が大広間にやってきて、紫音を指名したという記憶が蘇る。それは、思い出すのですらおぞましい程、痛々しい記憶。処女を破られ、避妊などされることなく膣内へと大量に射精され、目を見開いて絶望の叫びを上げた。

 今更どうして? ――とは思ったが、服を返してくれるのは悪い事ではない。紫音はそう思うことにした。

「どうした。着ないのか? 折角返してやると言っているのに」

「う……」

 腰を屈め、改めて受け取る。手に取ってみてすぐにわかる。違う。恐らくそれは自分が着ていた制服ではない。また、上着とスカートを見るだけではわからなかったけれど、明らかに違う物も一つ、二つ紛れ込んでいる。ショーツと、かなり大きめのブラジャーだ。それが誰の物なのかは流石にわからないけれど、クラスメイトの中で胸の大きな娘は何人かいるから、その誰かから、男が無理やり剥ぎ取った物なのだろう。何と酷い事をするのだろうか。

「着ろよ。全部な。着ないのなら……そうだな」

「ひっ!」

 紫音は思わず息を飲む。直人が肩に担いでいた日本刀を鞘から引き抜き、ぎらりと鈍く光る刃を見せつけてきたのだから。

「その制服を、お前の目の前でずたずたに切り裂いてやるとしようか?」

「あ……」

 そうして紫音の鼻先に刃が突きつけられる。突然に訪れた恐怖と緊張感によって、紫音は一歩も動けなくなってしまう。切るのが制服だけとは思えないのだから当然だ。あの時……バスジャック事件の際に、担任の先生を惨殺したように。

「くくく。勿体ないと思わないのか? 折角の制服なんだぞ? この機会を逃したら、お前はもう一生服なんぞ着られんのかもしれんのだぞ?」

 そうなのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。いくら世間を知らない箱入りのお嬢様であっても、そんな事は容易に理解できてしまう。剥き出しにさせられた素肌が余りにも惨めに、頼り無く感じる。幾度待っても、助けなどは来ないのだ。現に、紫音が監禁されていた牢の中は、処女を破られてしまったクラスメイト達でひしめきあっていて、誰一人、衣服を身に纏っている者はいないのだ。年頃の、多感な少女達にとっては余りにも過酷な現実だった。

(そんなの嘘。嫌……)

 決して認めたくないけれど、こんな目にあわされた挙げ句、恐らくは一生ここから出られないのなら、それならばせめて、一時とはいえ、当たり前の安らぎを得たい……。

「う……」

 状況はどうあれ、久しぶりに服を着られる。人としては当然の事だけど、この場所においてはその限りではなかった。だけど、誰の物かわからない制服を着ろだなんてと、紫音は迷い、ためらいつつもゆっくりと制服に身を通し始める。くしゃくしゃに丸められたショーツをはき、スカートを腰に巻いてしっかりとホックを閉じる。そして制服の上着を着ようと手に取るが、そこで直人が一声かけてきた。

「おい」

「何よ」

「忘れているぞ?」

 遠回しだけど、からかうような口調。嘲笑交じりの言葉。

「何が言いたいのよっ!」

 紫音は流石に我慢できなかった。頭に血が上ったといっていい。直人が考えている事が手に取るようにはっきりとわかったから。

「全部着ろ。制服一つきちんと着られないのか?」

 直人はにやにやと笑みを浮かべている。

「くっ! ううっ!」

 馬鹿にしている! この男は完全に自分の事を馬鹿にしくさっている。余りの悔しさに紫音は目をつり上がらせながら歯軋りし、拳を握りしめて全身を震わせる。それでもブラを手に取った。この男は、思春期の少女が持つコンプレックスを完全に見抜いた上で侮辱しているのだ。紫音は、自分ではきっとまだまだ成長途中なんだと思っているけれど、バストサイズが心許ないのを気にしている。そんなところをあえて突っついてきたのだ。

「ほぉ」

「うううぅっ!」

 慣れない手付きで、あまりにも大きすぎて紫音のバストサイズと全く合っていないブラを胸に巻き付け、留める。確かめるまでもなく、カップは空洞だらけでスカスカだった。

「ふはははははっ!」

 直人の高笑いが聞こえる。何がおかしいというのか、聞くまでもなくわかっている。わかっていて大笑いしている。直人はただ、紫音が屈辱に打ちひしがれるのをみて楽しんでいるのだ。

(くっ……くっ……悔しいいいいっ! 悔しい悔しい悔しいぃぃぃっ! こんなっ! こんなことっ! こんな失礼な最低男っ! 馬鹿にしてっ! なによっ!)

 余りにも無礼な態度だった。これが今ではなく、平常時であれば思いっきり平手打ちをしているところだが、今はそれすらできはしない。

「ふははっ! ははははっ! これは傑作だ! お笑いだ! あはははははっ! 天下の西九条財閥の御令嬢様だってのに、乳の膨らみはどうしてこうも貧しいんでしょうってかっ? ふははははっ! 一庶民にも劣るとは、笑わせる! ふ、ふふ。ふははっ!」

 紫音はもう何も言い返す気にもなれずに唇を固く結び、怒りに身を震わせながら上着を着込んでいた。久しぶりに剥き出しの肌を衣服が覆い、暖かな温もりが懐かしく感じられるが、悔しさのあまりそんな事を考える余裕すらなかった。

「ふふ、ふふふ。くくく。あははは。……ちなみに誰の物だと思う? その制服。くくく」

「し……知らないわよっ! そんなことっ!」

「だったら考えてみろよ。それくらいの能はあるんだろう? 大きなブラがスカスカな寂しい胸と違ってよ」

 紫音が気にしていることを尚もねちねちと責める直人。言葉の暴力とはまさにこのことだ。紫音は悔しさに顔を紅潮させながらも考える。言いたくなんてないけれど、言わなければこの屈辱はずっと続きそうだから。最も、素直に言ったところで事態が変わるとは思えないけれども。胸の大きな娘……。確かにクラスには何人かいる。

(礼菜?)

 紫音と同じように強気な性格の、喧嘩友達とも言えるような親友の顔を思い浮かべる。今をときめく新人アイドルの礼菜もしかし、既に紫音と同じように陵辱されてしまい、牢の片隅で呆然としているのを思い出した。……けれど、礼菜のものなのだろうか? もし答えが外れていたら、何をされることか。しかし――。

(梅宮……さん?)

 大人びていて落ち着いた性格のクラス委員長も、胸は大きい方だ。しかし、そうなのだろうか? 再び疑問がわき上がる。

(桜乃森さん? 二階堂さん?)

 他にも何人かいるが、最後に頭に浮かんだ人物がそうかもしれないと思った。……そうだ。きっと。帆之香は自分と同じように身長が高めの娘だ。だから、同じように長身な紫音が制服を着てもサイズがしっくりくる。多分、そうだ。クラスの中でもとりわけおとなしくて、あまり自己主張をしない少女の姿を思い浮かべる。
「二階堂……さん……?」

「ほぉ。正解だ。よくわかったな」

「正解だったら、どうだっていうのよ!」

「まあそういきり立つなよ。折角だから本人に会わせてやるよ。……おい、入ってこい」

「え……?」

 あらかじめ、ドアの外に控えていたのだろう、古手川老人が現れると同時に、じゃらりと金属が擦れる音が聞こえる。それは、鎖のついた首輪を首に巻かれ、犬のように引きずられている帆之香の姿だった。紫音と同じように制服を着ているけれど、表情はまったく冴えない。

「ほれ歩け」

「うぅっ。い、嫌ぁ」

 鎖を強く引っ張られ、帆之香は苦しそうに首元を押さえながら目を細める。

「ふふっ。おい帆之香。お前のブラ、こいつにはでかすぎるんだってよ」

「に、二階堂さん!」

「う、う、痛いいぃ! ひ、引っ張らないで。うぅぅ!」

 帆之香が苦痛に満ちた呻きを上げる。その胸元には、紫音がいつも着用しているブラジャーが無理やり巻き付けられていた。古手川が帆之香の上着をまくり上げていった。

「逆にお前さんのブラはこれこの通り小さすぎて、この娘のでかい乳にめり込んでしまって、困ったものじゃったよ。着せるのにえらく苦労したわい」

「ひあぁっ!」

 古手川がそう言いながら帆之香の首筋に舌を這わせていた。帆之香は紫音と全く同じことをされてきたのだとわかる。きっと、紫音とは逆に、胸が大きいことを散々馬鹿にされたりからかわれたりされてきたのだろう。その証拠に帆之香は目を大いに潤ませていた。

「こ、こんな事して何になるのよ!」

「別に何にもならんさ。ただ、こうやって惨めなお前らを馬鹿にしていると楽しいんだよ」

「なっ……!」

「覚えておけ。お前らは俺達の道具に過ぎん。何をされても仕方がないのさ」

「く、うっ! 嘘よ! そんなの……」

「お父様が助けに来てくださる、と? そう思い続けて何日が経っている? もう、俺達がお前ら全員の処女穴をぶちやぶってやってからどれだけ時間が過ぎているんだ? とっくに諦めて、探すのもやめているはずさ」

 そんなことは……ない、とは言えなかった。もしかすると、そうなのかもしれない。もはやどれだけ時間が経った事か。警察による捜索活動など、打ち切られているかもしれなかった。そして、クラスの全員が犯されてしまったというのもまた、本当だった。どれもこれも、信じたくない事実ばかりが積み重なり、猛烈なストレスとなって少女を苛む。

「ううぅっ!」

 そんな時、がちゃりと音がして、牢の中へ古手川と帆之香が入ってきた。すぐさま古手川が帆之香の、リボンで一房に纏められた長い髪を乱暴に掴み、床に組み伏せる。更に直人も同じように紫音の髪を掴んで組み伏せる。こうしてまた、新たな陵辱の時が始まった。

「い、痛っ!」

「痛あああい! 何するのっ! か、髪を引っ張らないで!」

「よし、お前ら。シックスナインで乱れてみせろよ」

「ふぉっふぉ。ええのうええのう。ほれほれほれ。仲良く絡むんじゃよ」

 直人と古手川は、じたばたと両手両足をばたつかせてもがく二人の少女を掴んで押さえ込む。

「やああっ! いやあっ! やめてえっ!」

「い、いやあああっ!」

「ほれ、暴れるんじゃないわい」

「無駄だ。大人しくしろ」

 男達の力は圧倒的で、乱暴だった。紫音も帆之香も揃って腕を捕まれて変な方向へとひねり上げられ、苦痛に顔を歪ませながら自由を奪われた。

「あぐぅっ!」

「むうぅっ!」

 そうして帆之香と紫音は床に横たえられ、体が交互になるよう重なり合わせられ、互いの秘所を舌で愛撫するよう強要された。……図らずも、お互いのものを交換して穿くことになってしまったショーツの上から、数日前に男の怒張した物をねじ込まれ、射精された恥部を愛撫することになった。

 もはや制服など着ていても、丸裸と何ら変わらない。紫音も帆之香も、男達の気紛れで服の着せ替えをさせられる人形に過ぎない。そう実感するしかなかった。服など、恥辱を煽る為の装飾に過ぎないのだ。










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