書感・その10:ガンダム・センチネル―ALICEの懴悔
試作機度(5):★★★★★ 軍隊度(5):★★★★★ NT度(1):★☆☆☆☆ それは、RGM-86Rというとっても典型的な地球連邦軍製の量産型機特有の型式番号で有名な、実態はカラバ及びアナハイムエレクトロニクスによる共同開発なものだけど、結局は地球連邦軍正式採用となった量産型モビルスーツこと、ヌーベルジムスリーの胸部排気ダクトの数が、ZZのアニメ版というべきかノーマルタイプの二つと比較して倍の四つある件について詳しく解説がなされている、モデルグラフィックスの書を以前買い、それの内容と比して本作は若干の訂正や加筆等は行われている(例.ソヴィエト地区→ロシア地区といった表現)とはいえ、内容は大体それで網羅されているとわかっていつつも購入した一冊。まったく時代を感じさせるもので。 つまるところは、ガンダム版幕末偉人伝というわけであり、特に坂本さん対ニューディサイズ版な新撰組局長における月面でのインコム合戦が数ある見所の中で、最もいいところであると当方は思うのだった。それはもう、北辰一刀流と天然理心流の使い手による激突なわけであるが、リョウ・ルーツが搭乗するSガンダム対ブレイブ・コッドが駆るガンダムMK-5となり、ひいてはアナハイム製ガンダム対オーガスタ製ガンダムでもある、ここら辺、相当に因縁を感じてしまうものだった。で、勝ったのは実力じゃなくてモビルスーツの性能のお陰だろうとなんだろうと勝ちは勝ちで負けて死んだら全てが終わりなんだぜと、かのファーストガンダムにおけるランバ・ラルの一見すると格好いいけれども、実はかなりオールドタイプによる負け惜しみ入ってる名台詞に反論してみたくなりつつあるあったりする。人の技量なんて、技術やシステムの進歩によっていかようにも変えられてしまうのは事実であろうとさ。沖田さんことジョッシュも作中でそんなことを考えたりしていたっけな。 とても漢の世界であり、萌え要素など皆無。女と言えば擬人化されたコンピュータALICEくらいだがあれは女と言っていいのかどうかかなり疑わしいところでもある。それ程までに登場人物のほぼ全員が男。汗くさくむさ苦しく渋く地味だが漢の世界。戦艦の中は汗のにおいがするとかなんとかそんな描写があって、ああ、そうなんだろうなと容易に想像が付くくらいに、はっきり言って地味だがしかし、どの男の生きざまに共感するかによって本作の楽しみ方は大いに変わるであろう。α任務部隊の若くも素行不良な愚連隊連中か、機甲教導団という選ばれしエリート……ではあるが、時代に乗り遅れてしまったニューディサイズの人々か。そのように、ゼータとダブルゼータとの間に当たるストーリーは、とても重厚でそれでいて切ない最期を向かえることとなるけれど、だけど最後は少しばかり希望を感じさせてくれる、気がする。きっと生き残った彼らがその後GMVかジェガンにでも乗って、伊達じゃないガンダムと共にアクシズを押してくれていることだろう。きっと。 ダブルゼータは色々と言われてしまっている問題作ではあるのだが、当方としても一つ不満に思っていることとして、エゥーゴの組織がいくらガンダムチームというスーパーな戦闘部隊であるとしてもアーガマ一隻だけだったりや中立派な連邦軍が全くもって動かなかったり、そりゃさすがにねぇんじゃねと思う所があるのだった。そういうわけなので、月面都市エアーズ市制圧作戦『イーグルフォール』に参加した歴戦の戦士達がダブルゼータ時にどうしていたのか。そう言ったことがたとえサイドストーリーであれあるのは嬉しい限り。 きっと、連邦軍もZZの裏で色々大事があってなかなか余剰戦力をエゥーゴに向けてあげられなくて、それで結局ZZの最後にてブライトさんがジュドーくんにぶん殴られるきっかけになったのではないのだろうか。 了
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