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書感・その15:公権力横領捜査官中坊林太郎




銀行度(5):★★★★★
葉巻度(5):★★★★★
打切度(5):★★★★★



 おれの中で銀行物っつったら、半沢直樹よりも断然中坊林太郎なのである。爽快感が違うと思うのであります。何故今こっちの方をドラマ化しないのかと大いなる疑問を感じるのであるが、でもまあ、内容的にあんまりにも漫画漫画しすぎているやもしれぬなぁ。そもそもが、この主人公。蒼天の拳における、霞拳志郎の元ネタになったキャラでもあるわけで、どれだけぶっとんでるかは推して知るべし。そして、北斗に代表される原哲夫作品なわけで。シリアスな中に笑いあり。同氏の作品『阿弖流為II世』には色んな意味で笑わせてもらった次第。

 とにかく、銀行という限られた舞台の中で終始せず、やりたい放題やってるところが良いのである。ネチネチした気にくわない相手や強面の相手にもおちょくりまくったり、あるいは一切構わず武力行使も辞さないところが。ぶん殴ったり足蹴にしたり銃ぶっぱなしたり、挙げ句の果てには建物ごと爆破しようとしたり。

 そして、敵対する相手が何らかの拍子に『親』というキーワードを言葉にした途端、終始にこやかな雰囲気を漂わせていたのが豹変して取り立て屋の本性を現すところがよいのである。親は関係ねえだろ親は! とかそんな感じのわけのわからなさもまた、良いのである。まあ確かに、親からは、いつかどこかで精神的にも経済的にも自立せねばならんよねとは思うけど、それでもこんなとんでもなくヤバイ奴を敵に回した日には、父ちゃん母ちゃんと泣き叫びながら助けを求めたくなるのもわかるってものである。

 時代背景としては大分古いものになるのだけど、読めば読むほど銀行って組織の嫌らしさというのか、できるものであればこんなところにてめぇの金預けたくねぇなぁと感じるのである。銀行も、下っ端への締め付けはえらい厳しいくせに、上の方は好き放題やってたりとかするようで、その見事なまでの腐りっぷりってのは脚色はあれど現実も似たようなものなのだろうさ。税金で保護されつつボロ儲けしおって、まったく。

 二巻ですっぱり終わるので、ダラダラ続かないのは好印象。土木建築業のおっさん方と林太郎が、あの後どのようなやりとりをしていくのかなと、そんなところがもうちょっと読みたいなと思った次第。最終話なんて大分駆け足だけど殆ど全部の伏線は回収できて、いい具合にまとまってるんじゃないかな。まったく、こういう主人公補正が大前提なヒーローも恰好いいなと思う。何もかもが思うようにいかない時代だからこそ、ね。






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