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魅惑の胸元










「来ヶ谷さん。返してよ」

「返すとも。ほら、受け取ればいいだろう?」

 困り果てた理樹と、満面の笑みで状況を完全に楽しんでいる唯湖。

「なあに。簡単なことじゃないか。いつもしているようにお姉さんのおっぱいの谷間に手を奥まで突っ込んで、おもむろにむんずとつかみ取れば良いのではないのかな」

「してないから。完全に誤解を招くような云い方はよしてよ」

 理樹が困り果てている理由。それは唯湖がしている悪ふざけに他ならない。中庭にて、たまたま一緒にいる時に、僅かな隙を突いて理樹が気付く暇すら与えずにポケットから携帯を奪った唯湖。その手口はまさにプロの犯行で、私のテクニックもなかなかだろうと、呆然とする理樹に対し誇らしげにはっはっはと笑いながら云うのだった。

『あっ! 何すんのさ!』

『ふふ。無防備だよ理樹君。世の中には狼さんがいっぱいいるんだから、注意しないといけないな。何なら、お姉さんが美味しく食べてしまおうかな?』

『何だか卑猥な意味に聞こえるよ』

『どれ。理樹君とその思い人との甘くも熱々なやりとりを拝見するとしようかな』

『ないから! そんなのないから!』

 ……そうしてしばらく理樹をからかい、そのまま携帯を返す所だった……のだが。唯湖はふと思い立ち、ふくよかすぎる胸の谷間に携帯を挟んでしまったのだった。突然のことに理樹は呆然としてしまう。そんなことをしておいて、いけしゃあしゃあと云い放つ。

「遠慮なく取ればいいじゃないかね」

「……と、取れるわけないでしょ!」

 頬を赤らめる理樹。とても可愛らしいなあと唯湖は思う。美少年とはまさに彼のような男の子の事を云うのだろう。

「そうかな。おっぱいを触らないように取れば全く問題ないだろう?」

 挑発するように云う。携帯の殆どが胸元に埋め込まれているために、物理的にかなり難しい。

「わかってて云ってるでしょ!」

 唯湖の流儀なのか、リボンなどするつもりは毛頭無く、制服の胸元が開いている。僅かに見える谷間にほぼすべて携帯は埋め込まれてしまっていた。場所が場所だけにじっくり見る訳にはいかない。しかし、見せびらかすようにしているから見えてしまう。

「ちなみにこんなこともあろうかと今日はとっておきの寄せ上げブラを着けてきた」

「どんなことを想定しているのさっ!?」

 ただでさえボリュームのある膨らみが徹底的にぎっちりと寄せ上げられ、更に大きく見える。もともとハリのありそうな胸だけに、完全に埋め込まれて挟まれている携帯はさぞかし窒息死しそうな状況にあるのだろう。

「迷うこともないだろう? ちょっと手を突っ込めばいいだけじゃないか」

 さぁいつでもいいぞと誘惑の眼差しは、とても理樹と同い年とは思えない程に艶めかしい。

「できないよっ!」

「そうか。お前のような下品な胸など触る価値もないぜベイビー! さっさと携帯返しやがれこの腐れアマ! と、そのように思っているのだな。悲しくて泣いてしまうよ私は」

「思ってないから!」

「とすると、両手でむんずと揉みしだいて乳首をこね回し、私を散々いかせてあんあん淫らな喘ぎを上げさせたいぜ、と。そう思っているのだね?」

「だから! もう……!」

 理樹はもはや突っ込む気力すら失せてしまう。唯湖はにんまりと笑い、理樹が頭を抱える。まさに八方塞がりの状況。傷をつけたりしたら大変だから工具だの器具だのを使う訳にはいかないし、かと云って間接的だとしても結局は女の子の大事な所にふれてしまうわけだから箸なんかの使用もNGだ。仮に触れずに取れるにしても、取ろうとした拍子に胸がふるふると揺れることになるだろう。それもだめだ……。

「もう許してよ。お願いだから」

「はっはっは。ここは一つ、是非とも理樹君のとんちを利かせて欲しいな」

 屏風の中の虎じゃあるまいに、と理樹は思った。特大おっぱいに挟まれた携帯を如何にして救出するのか。果たして理樹に秘策はあるのか!?





…………





 さて、実際の所どうするべきなのか。理樹は思考を整理することにした。

 手段の一つとして最も合理的なのは、強引に奪い取る。これが一番手っ取り早い。無論、できる訳がないのも分かっている。女の子の恥ずかしいところに触れてしまうわけなのだから、理樹はそんなことできなかった。

 ではどうするか。次に現実的な案として、ペンチや菜箸のようなものを用いて携帯を抜き取ること。しかしこれも間接的にとは云え、どうあがいても触れてはいけない肌に触れてしまうことになるから不可能だ。それに、万が一工具なんかを使って怪我でもさせてしまったらとんでもないことになる。やはり不可能。

 そうなると、第三の案。事の顛末を説明し、誰かに取ってもらう。最も効率的で無理のない現実性の高い案だろう。さて、そうなれば誰に取ってもらうか人選を行う必要がある。理樹の中に何人かの候補者がリストアップされる。

 その顔触れとは……ええと、小毬さんと、それとクドと、鈴。葉留佳さんは……悪いけれど色々と後が大変そうなので除外しておこう。それと西園さんも、だな。除外した理由は云わずもがな。まあ、みんなが理由を聞いたら何となくうんうん納得しれくれそうな気がする。あと最後に……真人。って、おい! と、理樹は心の中で自分自身に突っこみを入れる。

「ぶっ!」

 授業中に突然むせ返ってしまい、何人かの心配そうな視線が集中する。

(僕は一体何を考えてるんだろう?)

 それでもどうにかこうにか気を取り直して脳内シミュレーションを行う。――小毬の場合。事情を説明すればきっと快く引き受けてくれることだろう。おっけー、とか云いながら。

『唯ちゃん。理樹くんの携帯を返してもらうよ〜』

 そして、にこやかに唯湖の胸元へと手を入れる。が、問題なのはそれからだった。……唯湖の手が小毬の腕をがっしりとつかみ、合気道でもしているかのように素早く引き寄せ、素早く背後に回る……。そうしてやることは決まっている。

『ほわあああああああっ!』

『ふふふ。小毬くんの胸はふにふにだなぁ』

 とっても気持ち良さそうに小毬の胸を揉み回すのだった。

(だめだ。ミイラ取りがミイラになる……)

 続いてシミュレーション……するまでもない。クドも、鈴も同じようにされるのは既に規定路線だ。

 身長差故に必死に背伸びしながら小毬の時と同じく唯湖の胸元に手を入れようとして、思いっきりハグされて、逆に来ヶ谷さんの胸元に顔を埋めさせられて『わふ〜〜〜っ!』と、子犬のように叫びながらもがくクド。

 強気そうでいて警戒しつつも腕を伸ばし、結局掴まり耳元をふにふにいじくられて息を吹きかけられぞくぞく全身を震わせながら『は、離せ〜〜〜っ!』とじたばた暴れる鈴。無論どっちの例も共に強烈なセクハラ各種が同時進行されているに違いない。ああもう、どうすればいいんだ! 理樹は頭を抱える。

 だったら、こうなったらダメ元で最後の選択肢ならどうだ! 理樹は頭を抱えつつもやがてはやけっぱちになり、親友の真人をチョイスした。

 冒頭から緊迫した空気が流れていく――。例えるならここは最後の決戦を行う場所、バトルフィールドである。

『へっ。親友の理樹の為に俺が一肌脱いでやるぜ。……女の胸のような柔らかいもんより、やっぱり男の筋肉が最高だって事を教えてやる。堅い胸板こそが最高だって事をな! いくぜ来ヶ谷! うおりゃああああああっ!』

 とか云いながら真人は全力で駆け出し、唯湖の胸元に手を延ばす。が……。真人の手が唯湖の胸元に触れる寸前。

『甘いな真人少年』

『ぐっ!』

 瞬間移動でもしたかのように回避され、真人は勢い余って体勢を崩し片膝を地に着かせてしまう。

『へっ。やるじゃねえか。……そこだっ!』

 跳びはねるように起き上がり、ラグビーかアメフトかと思わんばかりのタックルを見せつける真人。しかし――。

『白昼堂々女子のおっぱいに触れようとは。お仕置きの時間だ』

 唯湖は静止したままだった。がし、と真人の右手を掴み体を大きくひねらせる。瞬間……ぶん、と辺りの空気がかき混ぜられる音がしたように理樹は思った。真人の大きな体が空中でくるりと一回転する様がスローモーション映像のように見えていき、そうしてそのままバン、と大きな音と同時にぐえ、と蛙が潰れたような音がした。真人が背中から床に叩きつけられ、ダウンさせられたのだった。

(合気道を使う俳優。誰だっけ。ええっと、ああそうだ。まるでスティーブン・セガールみたいだよね。格好いい……って、そんなんじゃなくって!)

 結局良い案は出ないまま無為に一日が過ぎて行く。





…………





「何か良い案は浮かんだかね」

「全然浮かばないよ」

 放課後。今日は野球の練習もたまたまお休みだったので、理樹は唯湖といつもの場所でくつろぐことにした。中庭の隅っこにて……。

「考えるまでもないことだと思うのだがな。私は理樹君ならば触られても全く問題ないぞ」

「だめだよ」

 頬杖を付き、にやにやと笑う唯湖と諦めが入ってきた理樹。

「もう許してよ。諦めたから」

「ふふ。そう云って油断させながら絶対に諦めずに隙を狙うのが理樹君だと思うよ」

 何だか腹黒いと云われているようだった。

(お見通し……か)

 そな風に云えばどこかでちらちら見せたりして隙を露わにするかと思ったが、甘かった。

「そうだな。じゃあ、こういうのはどうかな。私に熱いものをいっぱい食べさせたり飲ませたりするんだ。そうすれば服を脱いだりするかもしれないよ?」

「だめだよ。……脱いじゃだめ」

「どうして?」

「そんな恥ずかしい所、誰にも見せちゃだめだよ」

「私は理樹君になら見せてもいいんだがな」

 間近でそんなことを云われると、からかわれているとわかりつつもドキッとしてしまう。

「返したくない理由でもあるの?」

 さりげなく聞いてみた。すると、あるさと軽く一言。

「これ返したら理樹君帰っちゃうだろう?」

 にやにやして余裕綽々だった唯湖の表情が、どこか寂しさを帯びたような、遠くを見つめるようなものに変わる。照れ隠しに云ったはずなのに尚更恥ずかしくなり、思わず答えてしまう。捨て台詞のような格好悪さを感じつつも。

「じゃ、取れるまで一緒にいさせてもらうよ」

「……それは、嬉しいな」

 理樹は視線を逸らしていたから、唯湖の口元が僅かに動いたのを知る術もなかった。

 唯湖は続けて『もしもだ』と小さく呟いたのだが、理樹には聞こえなかった。次の言葉のインパクトは理樹の思考を凍らせた。

「キスをしてくれたら返す。と、云ったら……?」

 え? と、理樹は思った。どうする? と、物語るようにいつしか唯湖の表情から笑みが消え、真剣な瞳が理樹を見つめていた。

 冗談でしょ……と、云おうとするために理樹が口を開こうとした寸前。

「冗談だろう、などと云われたら私は本気で泣いてしまうよ」

 先読みの能力でも持っているのだろうか、と理樹は愕然とした気分になってしまった。本気で云っているのか、あくまでもからかっているのか判別がつかないけれど、彼女のこんな表情を見るのは始めてだった。

「じゃ、聞くけど。キスしたら……返してくれるの?」

「さあ、どうだろうね」

「一回じゃだめ、とか?」

「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」

「はぐらかされてるなぁ」

「当たるも八卦、当たらぬも八卦。というところかな」

「占いじゃないんだから」

 とぼけるように云う。軽くいなされているようなので、理樹は積極的に出るようにした。押してだめなら引いてみる、と云うことになるのだろうか。

「じゃ、するよ」

 あっさりと呟く理樹に、唯湖は始めて戸惑ったような表情を見せ、口を開こうとした。『理樹君。キスは、本当に好きな人とするものだよ』と、たしなめるかのように。しかし、これまでとは全く逆の展開を見せる。

「僕は。来ヶ谷さんのことが好きだから。決して適当な気持ちなんかじゃないよ」

 意外な展開と戸惑い。唯湖は『え……』と呟こうとして失敗。理樹の唇が唯湖のそれと触れ合い、重なり合ったのだから。虚を突かれ、瞬きの暇すら与えられなかった。

「さ、携帯返してよ。約束どおりキスしたよ?」

「……っ」

 誘っているうちに、誘われはじめていた。もはや何と答えればいいのかわからない。一瞬にして理樹は唯湖から大切な物を奪い去っていたようだった。

「それにさ。携帯がないとさ、離れている時にお話もメールもできないよ。大好きな人とも」

 確かにその通り。だけど、だけどこうなったからには更に駄々をこねたくなる。無理もないこと。それが唯湖の照れ隠し。

「足りない。全然足りない。もっとしてくれないと嫌だ。絶対返さない」

 顔が熱くなっていく。意地を張る様はまるで子供のようだった。

「もう。わがままだよ!」

 理樹はムキになったようにキス。口を開いて被せ、奪い去るようにちょっと乱暴なキス。そんな駄々をこねる来ヶ谷さんにはこうだ、と云わんばかりに。

「……っ!」

 数秒間がとてつもなく長く感じられる。けれどやがては離れていく。

「これで、足りた?」

「……って」

「え?」

 あまりにも小さな声で聞こえず、理樹は問い返す。

「好き、って。……め、面と向かって……云ってくれないと返さない」

 意固地になり、どこまでも駄々をこねたくなっていた。理樹は少し呆れながらも生真面目に答える。

「……好きです。来ヶ谷さんのことが」

「……」

「心がこもっていない。とか、そんなこと云おうとしてない? 無理やり云わされている、だなんて思ってない?」

 理樹はずい、と前に出て目と目を近づける。戸惑う唯湖を見て、はっきりといい放つ。

「よく聞いて」

 有無を云わせないような凄みが理樹にはあった。

「僕は、来ヶ谷さんのことが、大、好き、です……って、本気で云ってるんだよ。大好きだよ。本当に」

 あえて単語を区切りながら強調して云う。こうして唯湖はついに折れた。

「理樹君……。ごめん。携帯は返すよ。……でも、返すから。もう少しだけ一緒にいて欲しい」

 意地を張って張りまくって、やっと本当のことが云えたような気がする。

「僕も、もう少し来ヶ谷さんと一緒にいたい。……今なら、何でも云うこと聞くよ」

 優しい声。理樹の甘い一言に、唯湖は年相応の少女らしいお願いをしてしまう。内心では、この戸惑いは何なんだと思いつつも。

「……強く、抱き締めて欲しい」

「うん」

 理樹は唯湖の黒い髪を押さえながら抱き締めて、そうしてキス。

「ん……」

「髪。綺麗だよね」

 自然な動作で唯湖の髪を人差し指の先で絡ませ、弄ぶ。長く艶やかな黒髪を。

「ありがとう」

 好きな人が自分の髪を誉めてくれた。素直に嬉しいと、唯湖はそう思った。だから今度は……。

「……あ」

 唯湖の方からお礼のキス。……してから込み上げてくる凄まじい恥ずかしさにちょっと後悔したけれど、暖かい感触が体の火照りを更に長引かせていったのは嬉しい証し。





…………





 抱きしめ合い、寄り添い合い、気紛れなキスを何度も交わした後のこと。

「触って欲しい」

 と、唯湖は云った。理樹は当初戸惑っていたけれど、そのうち唯湖の瞳を見てその気になっていった。で……改めて触れてみる。が。

「……っ!」

 服の上から一瞬触れた理樹の手を掴んで払いのけてしまう。本能的なものであり、覚悟とは裏腹に体の防衛機能は完全に健在。

「無理しなくても。嫌ならいいよ」

「違う。まだ、慣れていないだけだ」

 素直に慣れず唇を尖らせながらできると云い張る。そして、恥ずかしさの余り涙目になりながら強引に事を進める。負けたくない。何に、と問われたら知らんと怒った口調で答えるだろうけれど。

「わっ!」

 制服の黒い上着の前を完全に開け、ブラウスのボタンをもう一つ、二つ手早く解く。ブラに包まれた大きな膨らみが二つ露わになる。そして……。

「ちょ……」

 唯湖は理樹の腕を取ったまま自分の背後に回らせる。そうして理樹の手首を掴み直し、素早く自分のブラの下部へと潜り込ませ、二つの膨らみを完全に覆わせる。そして息を止める。

「……。五秒、七秒……。ほら。触られても平気だ」

「全然平気じゃないでしょ」

「平気だっ! 平気だったら平気だ!」

 ムキになっているのが平気じゃない証拠。ものすごく早く高まっている鼓動は嘘をつけなかった。

「無駄に柔らかいと思っているだろう。無駄にでかいと思っているだろう。みっともないと思っているだろうそうだろう。笑うがいいさ」

「思ってないよ」

 じゃあ、どう思っているのかと問うと。

「可愛いよ」

「……っ」

「大きくて、柔らかくて、暖かくて。……優しい」

「そっ……」

 いやらしさのない純粋な言葉。そんな風に胸を誉められたのははじめてだった。優しい、だと?

 理樹は何をするわけでもなく、ただ触れるだけ。本気で可愛いと思っているのだ。唯湖はもう、恥ずかしさの余り髪を掻きむしりたくなった。

「り、理樹君!」

「何?」

「か、かたくなっているぞ……」

 背後に立っているのだから当然の事ながら、スカートの辺りに当たる物があるわけで。それは理樹の軟弱そうな外見とは裏腹に長く太くでっかくボリューム感溢れる豪快なものだった。むくむくと盛り上がって行くのがはっきりと分かる。

「そうさせたのは誰だよ!」

「私なのかっ!? 私が理樹君のをそんな風にさせてると云うのかっ!?」

「当たり前でしょ! ……本当に、可愛いんだから」

「か、可愛いって云うな! この!」

「わ、わ、わーーーーっ!」

 唯湖は突然理樹の股間に手をやり、膨らんでいるところをギュッと掴んで前後に揉みしだいた。……が、ズボンの感触で滑ってしまい上手くいかず、再度握ろうとしてもやはり上手くいかなかった。そもそも唯湖の手が震えているのだから仕方がない。

「ちょっと! いきなり触ったりしないでよ!」

「うるさい。私のおっぱいを触りまくって揉みまくって、先端からだくだく先走り液なんか出してパンツを汚しまくっているえろ大魔神の理樹君など私の手で出し尽くしてくれる!」

 強気な台詞とは裏腹に、手の震えは止まらない。片方が胸を揉み、もう片方が股間を揉もうとする奇妙な光景がそこにはあった。

「だ、出してないよそんなの!」

 強気でいなければ、気付かれてしまう。

(な、んで……っ!)

 理樹が触れている柔らかい胸の先端。手の平の丁度中心に当たる所が固くなっていく。……けれど、そんなのは些細な事だった。

(な、んだ……。これ、は……)

 じゅん……と、突然ショーツが湿りを帯びた感触があった。お漏らしでもしたかのような気恥ずかしさ。つまり、濡れてしまったと、そう云うことだった。

「理樹君なんか……理樹君なんか……」

「もう。素直になってよ来ヶ谷さん」

「唯湖!」

 来ヶ谷じゃない! 私のことは名前で呼べと、命令と云う名のお願い。

「もう。……好きだよ、唯湖」

「〜〜〜っ!」

 余りにも甘い一言に、悶絶。

 このままではいずれどこかで、股間の秘密にも気付かれてしまうことだろう。そうしたら、どうする? とりあえず理樹の側から逃げ出して、携帯で文句を云ってみようと思ったけれど。

(あ……)

 そう云えば理樹の携帯は未だふくよかな唯湖の胸の谷間に挟まれ、窒息死していた。

 ああ……。ものすごく心地良い気持ちが続く。ずっとこのままでいたい、起きたくない浅い眠りのようだ。けれど余りにも恥ずかしくて逃げ出したくもある。楽しいもどかしさが延々と続いていく。

 悪戯のお仕置きは、余りにも甘ったるい時間。


























----------後書き----------

 姉御と理樹君のほのらぶもの。



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