【小鳥ちゃん危機一髪!】
事情(=大人の //▽//)により、破棄されていたとらいあんぐるハート1のろりろり少女こと、野々村小鳥のお話です。
HP公開に当たって復活させてみたので、よろしければ読んでやってくださいませ(^^;)
それでは。どうぞっ♪
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「真く〜〜〜んっ!」
たったったったっ…
通学途中。遠くの方から聞こえてくる女の子の声。幼なじみの『野々村小鳥』だ。
それはいつものこと。毎日の日課みたいなものだね。
手を振りながら俺に追いつこうと必死に走ってくる。
うーむ…我が彼女ながら実に健気なやつだ。
たったったったっ…
でも!
ダダダダッ!
「はややややっ!?し、しんく〜〜〜〜〜〜っ!ま、まって〜〜〜〜〜〜っ!いかないでよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
俺はいぢ(じ)わるだから簡単には追いついてやらないのだっ♪
ダダダダッ!
「あううう………お、おねが〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!まってよぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
俺と小鳥では足の速さは歴然としてるから、徐々に遠ざかっていく小鳥の声。
…………
ガラガラ…
「ありゃりゃ。早く着きすぎちゃった」
調子に乗って本気で走ってきたら早く着きすぎてしまった。教室にはまだ数えるくらいしか人がいない。
手持ちぶさたになって椅子に座ってみたのだが、はっきり言って、ヒマ。
することがな〜〜〜んにもないぞ。
「む〜。…これは全部小鳥のせいだな」
うん。きっとそーだ!
「オシオキしなくっちゃな〜。むふっふっふっふっふ♪」
手をコキコキ鳴らしながらウォーミングアップ♪
おおそうだ!この間テレビを見て修得したとっておきの新必殺技を小鳥で試してみよう!
楽しみ楽しみ。
ガラッ!
「はぁはぁっ。し、真君ひどいよぅっ!」
勢いよくドアが開き、小鳥が息を切らしながら入ってきた。
「何が?」
「あぅぅ。…何が…って。待ってくれてもいいのに。一緒に行きたいから、必死で真君に追いつこうとしたんだよう〜。なのに…」
むっ!こいつ反抗的だぞ!
「どーして俺がお前のために待ってやらねばならないんだ?」
「そ、そんなぁ…。だって…一緒に登校したかったんだよ〜〜〜!」
「そんなことより、お前のせ〜で俺は学校に早く着きすぎてしまったぞ!」
言うが早いか間合いを詰め、一気に技をかける。
ガシッ!
「うぎゅ!?はややややっ!?ななななっ、なにすんのうっ!?」
ギュムウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!!!
「…というわけで、悪い子にはオシオキなのだ〜♪」
「ど、どどどどどっ!?どーいうわけなの〜〜〜〜〜〜っ!?」
「うるさい黙れ!俺がお前をいぢめたいときはいぢめていいと決まってるのだ〜♪」
「そそそそっそんな理不尽な〜〜〜〜っ!」
「ふははははっ!俺が生み出した新必殺技をじっくりとくらうがいい!悪者め〜〜♪」
「やっ!いっ、いたい〜〜〜〜〜〜〜っ!真君いたいよぅ〜〜!やめて〜〜〜〜!」
* * *
そんなこんなで。
「あ〜面白かった〜♪」
「くすん。ひどいよ真君。…いじめっこ」
涙を浮かべながら怨みがましい目で俺を抗議する小鳥。
「どうして…どうして真君はそうやっていつもいつもいっつも私をいじめるの?」
そんなの決まってる。
「日課だからだ」
聞くまでもないことだね、うん♪
「そ、そんなこと日課にしないでよう〜!」
「いやぁ…昨日テレビで見たプロレスが面白くてね〜。かなり白熱した試合でしまいにゃ乱闘騒ぎになってね〜。思わず深夜まで見ちゃった♪で、トドメの技がこれまたすごかったんだよ。オリジナルのチョークスリーパーホールドでさぁ。さっき小鳥にかけたみたいに『ぎゅううううっ!』ってな感じでさ〜。かけられた方のレスラーが白目向いて流血して担架で運ばれちゃったくらいだからね。相当強烈な技だったみたい♪」
回し蹴りからの連携技がすっごくかっこよかったんだ♪
「あぅ…そ、そんなコワイ技。私で実検しないでよぅっ!」
「まあそう怒るなよ。俺は何て言うかその。面白そうなことがあるとやってみたくなる『好奇心旺盛』な少年なのさ♪笑って許してくれたまえ小鳥君♪」
ぽんぽん!
俺はどんなに歳を取っても、決して少年の心を忘れない男なのさっ♪
「真君反省してないでしょ?」
「あれ、バレた?」
「あ、あのねっ。その…危険なプロレスの技は他人で実検しちゃいけないんだよ〜!」
「ほほぅ。で、その規定は六法全書に載ってるのか?」
「そ、そんなのしらないようー!」
「じゃあレギュレーションブックに載ってるのか?」
「そ、そんなのもしらないようー!」
「じゃぁじゃぁ…」
「あぅぅぅ…」
う、いかん。必死に抗議する小鳥を見ているとまたまたいぢ(じ)めたくなってきてしまった。昔からの習性というやつだ。
「いつどこで誰がどのようにして、地球が何回回ったときに決めた?」
「あううう〜〜〜!」
「さ、原告の野々村小鳥君!相川真一郎君の意見に対し何か反論すべきことや証拠物件などはありますか?」
「あ、あううう………」
「はいっ!証拠不十分で俺は無罪♪」
「ううううっ!いじわるっ!もう真君なんて知らないっ!」
ぷんっ!
あ、拗ねた。
でもま、いつものことなんだけど、一応ちょっとだけフォロー入れとくか。
「あははは悪ぃ悪ぃ。小鳥の姿を見るとどーしても技をかけたくなっちゃうんだよ〜。許せ許せ」
「うー。それなら唯子にかければいいでしょ!」
「いや〜。唯子は背が高いからな〜。ちっこくて力がなくってひっじょーに技をかけやすい小鳥の方がいいのだ!」
「あぅぅぅ…。もうホントに知らないっ!」
あららら…本格的に拗ねちゃった。
「あ〜悪い悪いっ!謝るってば。ことりさ〜ん?」
「知らないったら知らないっ!フンだ!真君のろりこんっ!」
「ろりこんって。小鳥、お前何も自爆せんでも」
ひょっとして自覚してんのかな?
「ま、確かに身長147cmでバストが70cmじゃぁ俺はろりこんと言われてもしかたないかもしれないよな」
「いいい、いつのまにはかったの〜〜!?ううう…真君のばかぁ〜〜!大っ嫌いだよぅー!…私、真君なんかよりずっと格好良くて優しい人と浮気しちゃうもんっ!」
たったったった…
ありゃりゃ…フォローするつもりが逆効果だったみたい。
小鳥は怒っていっちゃった。
「やれやれ。しかたねぇな〜」
俺は、苦笑いをするだけだった。
キーンコーンカーンコーン…
お昼休み。
いつもは真君と一緒にお昼ご飯を食べているんだけど、あんな意地悪な人と一緒に食べたくないもんっ!
誰か他の人を誘って一緒に食べようっと。
「うー。真君のばかぁ…いじめっこ」
昔からそうだけど、真君ほんっとにいじわるだよぅ。
もしかして…私のこと嫌いなのかなぁ。
「そりゃ…私はとろいし背も低いしドジだし子供っぽいけど」
真君の周りには綺麗な人が大勢いるから。私なんかが傍にいると鬱陶しいだけなのかなぁ?
うううこわいよぅ。
そんなことばかり考えちゃうよぅ。
「やっぱり謝ろうかなぁ」
はっ!ダメダメダメっ!
ブンブンっ!
「ううっ!ダメダメダメダメダメっ!!」
弱気な考えを頭を振って追い払う私。
「そんなコトしたら真君ぜったい今よりも調子に乗るもんっ!」
弱気になっちゃダメダメダメダメっ!
「ぜったいうわきしてやるんだから〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
絶対に真君を懲らしめてやるんだもんっ!
って、いけないいけない。思わず声に出しちゃったよ…あははは。
ピクッ!
「の、野々村さんが浮気ですって!?」
「はやや?せ、千堂さん?」
せ、千堂さんに聞かれちゃった…あはははは…。
わ、わたし、恥ずかしいよぅ…。
「うふふふ。丁度よかったわ野々村さん。久しぶりにピアノに合わせて歌いませんか?」
「はいっ!」
そうだね。
こーいう時は思い切り歌って憂さ晴らししなくちゃだめだよね。
「わかったわ。それじゃ先生から音楽室の鍵を借りてきますね。うふふふ〜♪」
「はい〜」
それからしばらくして千堂さんが音楽室の鍵を借りてきてくれました。
バタン…ガチャッ!
「あれ?どうして中から厳重そうに鍵をかけるんですか?千堂さん」
「あ、それはですね。野々村さんと二人っきりになるためなんですっ♪」
「ああそうだったんですか〜。………へ???」
千堂さんは恥ずかしそうに顔を赤らめて。
「実は私。ずっと前から…野々村さんのこと……ぽっ!」
「へ?……ええええ〜〜〜!?」
ぽ『ぽっ!』て…あううう〜〜〜〜っ!
な、ななななな…なになになになに〜〜!?
「驚かないでください。…思い起こせば二年ほど前のことです…。野々村さんが入学してきた頃のこと…」
−千堂瞳嬢の回想♪−
「はああああっ!!!!」
ずだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!!!
「きゃああっ!!!」
畳がズレるほど強烈な投げ技が炸裂し、辺りに鈍い音が響く。
「主将!技の返しが甘すぎですっ!これじゃ…」
『訓練にならない!』と言いかけて、寸前で我に返る。
これは…仕方のないことなのだから。
「は、はいっ!千堂さんすみませんっ!」
ぜえぜえと肩で荒い息をしながら胴衣で汗を拭い、年上の先輩にも構わず怒声を浴びせる。
今日もレベルの違う…格下の相手と闘わなければならない私。
別に自惚れているわけではありませんでした。
毎日。それも一年以上も特定の…限られた相手と組み手をしていると、勝負する相手の戦術から思考から癖から何から何まで見通せてしまう。
勿論『逆もまた真なり』という言葉の通り、対戦相手も私の実力をよく見極めている。ここにいる護身道部員全てがそう。
…そんな環境で偶然。私の実力…いえ、『才能』は飛び抜けていたようだったのです。
技のキレから体力から。技術から精神面に至るまで、私は飛び抜けていたようです。
そうしていつの間にか『この学校…いや、この地方全てを探しても、千堂瞳にかなうものはいない!』等という噂が暗黙の了解の内に生まれていたのです。
部員のみんなからも恐れられるほど。だけど全国を狙えるほどじゃない!
まだまだ、こんなレベルで妥協するわけにはいかなかったのです!
ざっ!!
「もう一本お願いしますっ!」
「はぁっはぁっ!ま、まってください千堂さん。そ、そろそろ休憩にしましょ……ぜぇっぜぇっ……」
「そ、そうですよっ。さっきから組み手一二人連続ですよ。少し休まないと」
「…わかりました」
そう言われて初めて気が付いた。私と組み手をしたみんなは息も絶え絶えの状態だということに。
私は溜息をつきながら渋々休憩を取ることにする。
その頃の私は、焦っていた。
決してみんなが組み手の時、手を抜いているわけじゃない。
むしろ実力以上の力を出し切り、本気で私の相手をしてくれているのです。とっくのとうに限界を越えるほど。
でも。
『こんなことでは…だめ!』
もっともっとレベルの高い相手と闘い、実戦経験を積み全国大会へのシミュレーションにしなければならない!
今が最も重要な時なのに。…部員達との才能のギャップはどうしようもないこと。それは痛いほど理解している。
誰のせいでもないことです。
だけど!
『このままでは私は…勝てない!』
そのような気の焦りが私を苛立たせていた。毎晩のように眠れず精神的にガタガタになるほど…限界なほど。
そんなふうに私の心が荒んでいったとき、野々村さんが現れたのです!
「はぁ。全然ダメ。…いっそのこと、もうやめちゃおっかなぁ」
今日もいつものように、イメージ通りのトレーニングが全くできず半ば諦めの気持ちで休憩していると。
ガチャン!
道場のドアが開いて、二人の女の子が入ってきた。
新一年生が部活見学をしている時期だから、何とも思わなかったけれど。一人は身長174センチメートルくらいの、ポニーテールの長い髪が特徴的な女の子。
ふ〜ん。結構護身道向きの体型だわ。体も締まってるし鍛えればかなり強くなるかもしれないわね。
もう一人は…えっ!?
「!?」
身長150センチメートルにも満たない小柄な…すっっっっっっっっっっごくかわいい女の子。全然格闘技向きな身体じゃないけど。あの娘も入部するというの?
か、かわいい…!
今思えばそれが私にとって鷹城さんと野々村さんとの、初めての出会いだったのです!
まさに運命の歯車はその時から動き始めたのですっ!
「すみませ〜ん。入部希望したいんですが〜」
「ゆ、唯子〜。もうちょっと他の部も見学していこうよ〜!」
「いいの。前から護身道部に入るって決めてたんだから。そだ。小鳥も一緒に入っちゃお〜よ」
「だだだだめだめだめっ!わわわわ、わたし…格闘技なんてやったら死んじゃうよぅ〜〜〜!」
慌てたようにぶんぶんと手を振って嫌がる小さな女の子。
「あはは。冗談だよ。小鳥はどう見ても格闘技向きじゃないもんね」
「はぅぅ。びびびび、びっくりしたよ〜。冗談いわないで〜」
…か、かわいい!
私は今まで護身道一筋でこんなに戦闘的で…ロクに恋愛もしたことなくて可愛らしさのカケラもない突っ張った女なのに。
ここまで可愛らしい娘がいるなんて。顔から仕草から声から何もかもが。
「かわいい」
本気でそう思いました。
「ねえあなた…」
思い切って声をかけようとした時。
「おーい。唯子、小鳥〜!入る部活決めたのか〜?」
「あ、真君だ〜」
「しんいちろーも一緒に入ろうよ〜!」
「あのなー。俺は男だっ!護身道部は女子だけだろがっ!」
「大丈夫♪しんいちろーなら女装すれば全然気付かれないよ〜」
「あはは。真君美人だもんね〜」
「…」
ぐりぐりぐりっ!!!!
「そんなヒどいことを言うのは誰かな〜!?」
「しししし、真君いたいいたいいたいよう〜〜〜っ!な、なんでもないです〜〜!」
「あう〜っ!しんいちろーいたい〜〜〜っ!!ごめんごめんごめんん〜〜〜〜っ!」
ぱっ
「ったく!俺は男だっつーのっ!」
「あはは。で、でもホントに真君には格闘技が似合ってると思うよ」
「そうそう。そうだよしんいちろー」
「…」
相川君と話す小鳥さんを見て、その時の私は嫉妬に燃えてました。今思うととても恥ずかしいのだけど。
な、なんて嬉しそうな顔なの!ううう…男なんかに!
「ま、負けてたまるものですかっ!!」
ばっ!
「先輩っ!休憩終了ですっ!」
「え?ま、まだはや…」
ギロッ!
「はわわわわっ!わ、わ……わかりましたっ!!」
ううっ!!!
男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかに男なんかにっ!!!!
「まけてたまるものですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ずばばばっ!!!!
「き、きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ〜〜〜!!!!」
ずだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!!!
「まだまだまだまだぁっ!!!!もう一本お願いしますっ!」
「ひ、ひいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!瞳ちゃんが暴走してるよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
後でわかったことですが。その日の私は感情を制御できなくて道場の中は部員達の悲鳴が響き渡っていたそうです。
「てえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええいっ!!!!」
ずだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!!!
−回想修了♪−
「…ということがあったのです。うふ♪」
「と、ということって。あうう…」
「うふふふ。野々村さん…。とってもかわいいわぁ。うふふふ…」
「は、はやややや!?せ、千堂さん!?」
い、いきなり。せせせせ…千堂さんの様子がおかしいよぅ〜〜!?
がしっ!
「うふふ。野々村さん…小さくてとってもかわいい。…うふふふふ〜♪」
せせせせ、千堂さんがおかしいよぅ。いいい、いきなり私に抱きついてきて…。
どどど、どうしよぅ!?
「せ、千堂さん」
せ、千堂さん…そそそそ、そんな〜〜〜!?
し、しんぞうが…ドキドキしちゃってるよぅ〜〜〜私。
ふうううう〜〜〜〜〜っ♪
「はややややっ!?せ、せんどうさぁぁん。み、みみに息を吹きかけないで〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「あら?うふ…ごめんなさい。つい…野々村さんが可愛らしくて、身体が勝手に動いてしまいましたの。…うふふふふ。すみません〜♪」
「わ、わたし…そ、その…ええとっ!すみませんっ!用事ができちゃったので…ししししし、しつれいします〜〜〜っ!!!!」
あ、は、反対側のドアが開いてるっ!
にににに、にげるんだよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!
「あ、野々村さ…ううっ。…逃げられたわ〜〜〜っ!」
バタンッ!
タタタタッ!!
「はぁはぁ…はぁはぁ…。ああああ…びびびび、びっくりしたよぅ」
千堂さん、すっごくうっとりした表情で…こわかったよぅ。そりゃ…気持ちはすっごくわかるけど嬉しいけどっ!
でもでもでもでもっ!私は真君が。
「はっ!?」
ぶんぶんっ!
だ、だめだめだめっ!
「う〜。こんなんじゃだめだよっ!浮気してやるって決めたんだから!浮気するって〜っ!忘れちゃだめだよう〜〜〜〜〜っ!」
浮気して真君をぜっったいに懲らしめてやるんだから〜〜〜っ!
ぴくっ!
「浮気?」
ありゃりゃりゃ?か、階段の所にさくらちゃんがいた。
「はやや?さくらちゃん?こんにちは〜」
「くすっ。野々村先輩こんにちは」
『浮気』するってこと、さくらちゃんに聞かれちゃった…はずかしいよぅ。
「さくらちゃん、こんにちは。あっ…痛っ」
「野々村先輩、血が?」
「あは、あはは…ちょっと、転んじゃった。私、あわてんぼさんだから」
千堂さんの猛烈な『愛』のアプローチから逃げるとき、階段でちょっと転んじゃった。
膝小僧をすりむいちゃったよぅ…あうう。
「…」
「あ、でもでもでも大丈夫。大したことないから。あはは」
そう言っても心配そうなさくらちゃんは、私に近づいてきて。
ペロッ!
「はやや!?」
さくらちゃんが腰をかがめて、いきなり私の擦り剥けた膝小僧をぺろっとなめてきました。
「ど、どどどどど…どーしたのっ?さくらちゃん」
「こうすれば消毒になるから」
「で、でもでもでもっ…きたないよう!ばいきんがはいっちゃうよう!」
「いいえ。野々村先輩の血ですから汚くありません。でも、保健室で手当しましょう」
「う、うん」
ガラガラ…
「先生はいないのかな?」
「ええ。ここはいつも誰もいませんから。ベッドに腰掛けててください。バンソーコー貼りますので」
「あ、うん」
ガサゴソ。
さくらちゃんは戸棚からバンソーコーを出してくれた。
ペタっ
「さくらちゃん、ありがと。わざわざ保健室まで来てくれて…」
「いいえ。だって、伺っていたのですから。野々村さんと一緒になるチャンスを…ぽっ」
「あ、そうなんだ〜。…………へっ?」
さくらちゃんは、頬を赤らめて。
「実は私。野々村先輩のことが………ぽっ♪」
「え?え?え?ええええええ〜〜〜〜〜〜〜!?」
ぽ『ぽっ』って!?さ、さくらちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!!!
「勿論。野々村先輩には、相川先輩という恋人(ヒト)がいること…充分にわかっています。だけど」
「だ『だけど』何???」
な、な、なになになにっ!?!?なんなの〜〜〜っ!?
「私。もう………この胸のときめきを制御できないのです〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
じりっじりっ!
「さ、さくら…ちゃん。あああ、あのあのあの……その………えっとえっとえっと………あうう〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
だめだめだめ…私ビックリしちゃって…気が動転しちゃって…全然まともに日本語がしゃべれないよぅ〜〜〜!
これじゃまるでゾマ○ンさんだよう〜〜〜〜〜っ!!!
「あ、あの。さくら…ちゃん…」
「ふふ。野々村先輩……すごくかわいいです。……小さな胸……小さな唇……小さな手……なにもかもが…うふふふ」
はやややや…さ、さくらちゃん……うっとりした表情で……。
がばっ!
どさっ!
とととととと、とびかかってきて、わわわわ…私を…べべべべ、べっどに押し倒してきたよう………はうう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
ぺろっ!
「ああああ…さくらちゃ…はううッ!…く、くびすじをぺろぺろなめないで〜〜〜〜っ!」
くくくく…くすぐったいよう〜〜〜〜っ!!
「んふ。ごめんなさい。刺激が強すぎましたね。の・の・む・ら・せ・ん・ぱ・いっ♪」
ま、満面の笑みで私を後ろから羽交い締めにするさくらちゃん。
はうう〜〜〜〜っ!
「うふ。野々村先輩の髪…いい香りがします…」
「さ、さくらちゃん・・・耳としっぽが出ているよう〜〜〜〜っ!!!」
ささささ、さくらちゃん!いいいい、いつのまにかすっごくせくしーな、黒い下着姿になってしっぽとみみがぴょこぴょこしてるよう〜〜〜〜〜っ!!!!
ふさふさ…ぴょこぴょこ〜♪♪♪
しししし、真君からさくらちゃんの『耳』と『尻尾』の事は聞いてたけど…!
もももも、もしかして…いいいい、今のさくらちゃん……はははは『発情期』!?
「あら。野々村先輩は、私のような尻尾とか耳とか嫌いですか?」
ぶんぶんっ!
「そそそそ、そんなことないっ!すっごくかわいいと思う。だけどだけどだけどっ!おねがいはなしてよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
いいいい、今のさくらちゃん…目が据わってるよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
「うふふふ。だめです〜…。野々村せ・ん・ぱ・い♪かわいい…うふっ♪」
ふうううう〜〜〜!
「はうう〜〜〜〜!耳に息吹きかけないで〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!くすぐったいよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!あはははははははは〜〜〜!」
「はあああっ。び、びびびび、びっくりしたようーーーーーーーーーーっ!!!!」
あ、あのあと何とか保健室から逃げ出してこれたけど。れ、連続で女の子に告白されるなんて〜〜〜〜っ!!
う、うれしいんだけど………でもでもでもっ〜〜〜!
「はぁ…」
どうしよ。困ったなぁ。一人暗い通路を歩く…。って?
「あ、あれ?」
そういえば、夢中で走ってきたから気が付かなかったけど。ここは?
「あうう。こ、ここは?き、旧校舎?」
あううう…ここここ、こわいよう〜〜!寒いし暗いし静かだし〜〜!
「おおおお、おばけがでそうだよう〜〜〜〜〜〜!!」
ここここ、ここでオバケを見たって人が結構いるんだよう〜〜〜!こわいよう〜〜〜!
ぽんぽんっ!
「そそそそ、そうそうそうっ!こんな風に後ろから肩を叩いてくるんだって」
それでそのままその人の背中にのし掛かって…だんだん重くなっていって…そのうち死んじゃうんだって。
「小鳥ちゃん♪」
…はい?
「…き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!でででで、でたよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
おおおお、おばけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!
ほほほほ、ホントにおばけがでたよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!
「ちょっと!」
「あううう、たたたた、たべないで〜〜〜〜〜〜っ!!おねがい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「人をバケモノみたいに言わないでっ!!!!」
「はううう………って、あれれ?………は、春原さん?」
「そうよっ!私は春原七瀬よっ!」
はぁ…びびびび、びっくりしたぁ。
「はや。な、なんだ…春原さんか。ほっ」
「…そりゃ確かに私はゆ〜れい(=自爆霊)みたいなものだけどさ。こんな美人を捕まえて『おばけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!』は無いでしょうがっ『オバケ』はっ!!!」
「あは。ごごごご、ごめんなさい〜。慌ててたから、つい…」
「ま、そんなことはどうでもいいわ。小鳥ちゃん、今日は真一郎君と一緒じゃないの?」
あう。痛いところを突かれるなぁ。
「うん。ちょっとその、喧嘩しちゃって…あはは」
「そう。じゃあ、私も小鳥ちゃんの言う『浮気相手』の候補に名乗りを上げてもいいかしら?」
「へ?」
は、春原さん…い、今…なんて?
「じつはねぇ〜。私もあなたのことをずっと狙っていたの。…真一郎君がいるから諦めてたんだけどね」
「え?え?ええええええ〜〜〜〜〜っ!?」
ひょ、ひょっとしてっ!はははは、春原さんもそうなの〜〜〜〜っ!?
「だってだってだってぇ〜〜〜〜!かわいいんだもん〜〜〜〜〜〜〜〜!ぎゅっ!と抱きしめたくなるほど〜〜〜〜!」
「はううう〜〜〜〜!!!!まままま、まってよう〜〜〜〜〜!」
ざ…ざ…ざ…
思わず後時去る。
「はううう、どどどど、どーしてこーなるの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
ダダダダッ!
バタンっ!
空き教室のドアを開け中に飛び込む!
「はぁはぁっ!…こ、ここなら…隠れられるよね?」
春原さんには悪いけど、やっぱり私は真君のことが。
「そうね」
ぬっ!
「…へ?」
ガシッ♪
「つ〜かまえたっ♪うふふ、逃げても無駄よ〜。小鳥ちゃん。だって私自爆霊ですもの♪」
「あ、あううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!かかかか、壁をすり抜けてこないでよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「はぁはぁはぁはぁ…ぜぇぜぇぜぇ…。こ、ここまでくればだいじょうぶだよね…。はうう〜〜つ、つかれたよう〜〜〜」
ま、またまた何とか逃げてくることはできましたけど…何だか私、さっきから走りっぱなしだよう。
千堂さんとさくらちゃんと春原さんに追いかけられて、気が付いたら今度はあんまり人の来ない後者裏に来てました。
「うう…二人の気持ちはすっごく嬉しいんだけど」
千堂さんもさくらちゃんも、真剣な感じだったし。
「はぁ〜…。やっぱり真君に、素直に謝ろう…」
私が『浮気してやるんだから〜!』なんて、馬鹿なこと言ったからこんな事になっちゃったんだよね。うう…ノノムラは、はんせいします〜〜〜。
タッタッタッタッ!
「ほえ?」
「の〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜の〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜む〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
びくっ!
「はや?…み、みつるぎさん〜〜〜〜!?」
すっごい勢いで御剣さんが走ってくる!
も、もしかしてもしかしてもしかしてっ!…みみみみ…御剣さんもっ!?!?
「野々村頼むっ!かくまってくれっ!!唯子が来ても私は帰ったと言ってくれ〜〜〜〜〜!」
ざっ!
そう言って近くの物陰に姿を隠す御剣さん。
「あれれ?どしたのかな?」
タッタッタッタ!
「いづみちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!どこにいっちゃったの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
「ほえー。唯子?」
「あ、小鳥。ぜぇぜぇっ。い、いづみちゃん見なかった?」
「御剣さん?ええっと…そのぉ…。さ、先に帰ったみたいだよ…」
唯子には悪いけど、私はいづみちゃんに『かくまってくれ』と言われているから。
ゴメンね唯子…。
「あう〜…いづみちゃんヒドイよ〜〜〜!」
「唯子。御剣さんがどうかしたの?」
「あ、ええと。何でもないよ何でも…えへへへ」
変に作り笑いする唯子。どう見ても空元気だった。
「あ、そだ。唯子一緒に帰らない?」
「うん。そだね…教室に鞄取ってくる。ちょっと待ってて」
タッタッタッタ!
「はぁ〜〜。助かったよ野々村」
唯子がいないことを確認して、おそるおそる出てくる御剣さん。
「御剣さんどうしたの?唯子と一緒に帰る約束してたんじゃないの?」
「ああ。そうなんだけどさ。…唯子のやつ、ここのところしばらく…ずっと不調みたいで、その…えっと…」
言いかけて真っ赤になる御剣さん。
「はや?」
「えっと、その…。そのせいなんだろうけど最近物凄く。……は、『激しい』んだよ!異常なくらい!」
すっごく恥ずかしそうに言う御剣さん
。
『激しい』って、もももも……もしかして、そーいう行為のこと?わわわわ…私も急に恥ずかしくなってきたよう。
「あ、あー。…そ、そおなんだ。あはは…あは…は…」
「はぁ〜。唯子のやつ大会が近いのになかなか調子出ないで…焦ってるみたいなんだ。かといって私が励ましてやろうとすると…」
「…」
ど、どんなふうに励ましてあげてるんだろ?
そう言おうと思ったけど、御剣さんが恥ずかしそうなのでやめておいた。
「うう…。この前ウチに泊まりに来たときなんか、連続十回以上ぶっ続けで…して。…それでも離してくれないんだ。夜中の二時になろうが三時になろうが。私もそりゃ…体力には自身があるけど…でも。さすがに黄色い太陽をみたよ。あの時は…」
きききき、黄色い太陽ってなに〜???
「よ、よくわかんないけど。ゆいこ…タフなんだね〜」
「ああ、半端じゃなくタフだな。こう言うのもナンだけど…あいつはそれだけの体力と才能を備えているんだ。だけど、うまくいかなくて相当苛ついてる。…ホントはもっと親身になって構ってやりたいんだけど、私も昇進試験が近いからなるべく体力を温存しなきゃいけないんだ。…今のままじゃとても持たないしね」
「ふ〜ん」
はうう。御剣さん、そこまで考えてるんだ。御剣さんと唯子。二人も結構大変なんだね〜。
「二人とも大事な時期だから。野々村の方からも唯子に直接言ってくれないかな?『ご褒美は成すべきことを終えてから』ってね」
「…そだね。うん、わかった。説得…あや〜…難しそうだけど、唯子に言っておくね」
「助かる。ああそれと、これだけは絶対忘れずに言っておいてくれないか?私は『唯子のことをきらいになったわけじゃない。むしろ、感謝しているくらいだ』ってね。…あいつ、そこまで深く考えてしまう性格だから…」
御剣さんも唯子も、すっごく優しい性格だから。すれ違っちゃかわいそうだよね、お互い。
「うんっ、任せておいて♪」
ここは野々村小鳥。しっかりまかされます〜!
「野々村、迷惑かけてごめん。そういうわけで私は唯子に見付からないうちに帰るよ」
「ううん。全然迷惑なんかじゃないよ。私もちょっと悩んでいたことがあったから頑張ってる御剣さんと唯子のこと聞いてすっごく勇気づけられたよ〜」
「あはは。ありがと。じゃ!」
「うん。御剣さんまたね〜」
もう夕暮れ時。下校時刻はとっくにすぎていましたけど、私は校門で唯子が戻ってくるのを待ちました。しばらくすると唯子の大きな体が目に入りました。
「お待たせ小鳥」
「うん」
とことこ…とことこ…
「なんだか久しぶりだね。唯子と一緒に帰るの」
「そーだね。最近忙しくなってきちゃったから、久しぶりだね」
そうやって、しばらくお互い何もしゃべらずに歩く。
「…小鳥さ。しんいちろーと喧嘩したの?」
「はりゃ?・・・。ばれちゃったかな」
「当たり前だよ。昔からのつきあいじゃない。何を考えてるか手を取るようにわかりますよ〜」
あははは。そうだね。
「で、原因は何なの?」
「真君にいじめられた」
「あらま。相変わらずだね〜。しんいちろーも」
「それで私。真君にひどいこと言っちゃったんだ」
「なんて?」
「『真君よりも優しくて格好いい人と浮気してやる〜!』って」
「ぷっ!」
あ、唯子ひどいよう。吹き出すなんて。
「ど、どーしてわらうんだよう〜!」
ぽかぽかっ!
「あははは。ごめんごめん、つい…。でもさ、それくらいのことはしてもいいと思うよ」
「そうかな?」
「うん。だってさ。たとえばの話だけど…私がいづみちゃんに向かって『浮気してやる〜!』って言うのと、小鳥がしんいちろーに『浮気してやる〜!』って言うのとじゃ…真剣味というか…相手の受け止め方が違うでしょ?」
「唯子ひょっとして、ばかにしてる?」
「あ、いや。そそそそっそんなことはないよ野々村小鳥君っ♪」
ぽんぽんっ!
私の頭をポンポンと撫でてくる唯子。
う〜!
「そりゃ。…私は見ての通りのお子様だから『浮気する』何て言っても誰も真剣に相手にしてくれないけどさ」
「あれ〜?もしかすると。今までしんいちろーが必死に小鳥を探してたこと、知らなかったの?」
「真君が?」
「そ。校内中。裏校舎から道場に至るまで徹底的に探してたよ。私のとこにも来てたよ」
「し、しらなかったよう…」
「ふふ。しんいちろーはすっっごい照れ屋さんだからね。小鳥をいじめるのは全部優しさの裏返し。照れ隠しなんだよ。ほら、よく小学生の男の子が、好きな子をついついいじめちゃったりするじゃない」
そ、そーだったんだ。
「わわわわ、わたしわたしわたしっ!真君に謝らなくちゃ。私が『浮気してやるんだから〜!』なんて変なこと言ったから、いろんな人に迷惑かけちゃった」
「大丈夫だよ。小鳥としんいちろーの関係は♪」
全てを知ってるかのように微笑む唯子。むう〜…少しは私も反撃しなくちゃっ!
「唯子こそ。御剣さんのこと、大切にしてあげなくちゃだめだよっ!」
「うっ!そ、それは」
反撃成功〜♪
「御剣さんからの伝言は『ご褒美は成すべきことを終えてから』だからね唯子。くすっ(笑)」
慌てふためく唯子がかわいくて、ついつい笑っちゃった。
「は、はぁい。わかったよ〜…いづみちゃぁん…」
「あ、それともう一つ伝言。『私は決して唯子のことを嫌いになったわけじゃない。むしろ感謝しているくらいだ』と、伝えてって言われてたんだ」
「うん。…それも、わかってるよ。あはは」
かなわないな〜と言った感じではにかむ唯子。
「唯子。今は…その。きつい時期なのかもしれないけど、頑張って!」
「ありがと。うん!大丈夫だよ。なかなか調子が出なくてひたすら焦ってたけど、もう大丈夫。勇気づけてくれた小鳥といづみちゃんに感謝しなくちゃね」
久しぶりに見たような、唯子の『本当』の笑顔。きっかけはほんの少しだけど、唯子の中で何かが吹っ切れたみたいな気がしました。
ホント。人と人の関係なんてそんなちっちゃなことが積み重なって変わっていくんだね。
ノノムラは、ちょっと勉強になりました〜。
トコトコ…トコトコ…
さっきまでと違って、いつもの私達に戻ったように、女の子同士の他愛のないおしゃべりが花を咲かせる。
「それでさ〜。あのお店、また新しいオリジナルケーキがメニューに加わるんだってさ〜」
「へえええ〜。おいしそうだね〜。食べたいよう〜〜〜〜」
あううう…もう辺りは真っ暗。おなかすいたよう〜〜〜〜。早く帰ってご飯つくろ。
トコトコ…トコトコ…
しばらく歩いていて気が付くと、私達は暗い公園に入ってました。
「小鳥。そ、そいえばさ。あの噂…聞いた?『また』で、出るんだってさ…」
「はや?な、何が出るの?」
「えっと、その…またこの近くに痴漢が出るらしいんだって…」
「へ?ええええ〜〜〜!」
や、やだなぁ。
「ゆ、ゆいこ。そんなこわいこと言わないでっ!」
「だだだだってさぁ…私、前にあったことがあるんだもんっ」
「もももも、もし出たら…唯子得意の投げ技でやっつけちゃってよう〜〜〜〜!」
「だだだ、だめだめだめ。私、痴漢になんて出会ったらこわくてわけわかんなくなっちゃって全然ダメだよ〜」
「そそそそ、そんなぁ…」
こ、こわいよう〜!
「は、はやく公園から出ようよ!」
「う、うん」
そう言って二人そろって早足になり公園から出ようとする。だけど。茂みを通りかかったその時。
がさっ!
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!!!」
「ひ、ひいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!ま、またっ!?またでたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「…はや?…き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
でででで、でたよう〜〜〜〜っ!
帽子を被ってサングラスにマスクをしてコートの前を全開にした変態おじさんが〜〜〜〜〜〜〜〜!
「ゆゆゆゆ、ゆいこ。……たたたた、たすけて〜〜〜〜〜っ!」
「β×Σ◇●☆■εω〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
だ、だめ。唯子、完全に混乱しちゃってるよう〜〜〜っ!頭がメ○パニ状態だよう〜〜〜っ!!!!奇声を上げて辺りを走り回ってるよう〜〜〜〜っ!
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
痴漢に追い回される唯子。
どどどどどどどどどどどどっ!…どーしよーどーしよどーしよーーーーーーーーっ!!!!あうううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!
「フオ?」
あぅっ!
「あ、あう…!?」
き、きききき…きづかれちゃった。にににに、にげなきゃ。で、でもでもでもっ…私。足がガクガクしちゃって………う、動かないよう〜〜〜〜〜っ!
ジリッジリッ!
「ふぇ。………ぁ……ぁ…」
や、やだ。…やだ…よう。こわい………よう………。
少しずつにじり寄ってくる痴漢さん。
わ、わたし………全身がガクガクしちゃって動けなくて………ううう。…………こ、こわい。こわすぎるよう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!
痴漢さんの手が私に触れる寸前!
「フオオオ…」
スッ!
「い………や………」
私は怖さのあまり思わず目をつむった。
「だ……め……。ぅっ!」
その時、後ろから。
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!俺の小鳥に手を触れるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
ばきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ〜〜〜〜〜っ!!!!」
どさっ!
「しししし、しんくんっ!?」
間一髪…真君が痴漢を殴り飛ばして助けてくれたよう〜〜〜。
「はぁっはぁっ……だ、だいじょうぶか小鳥!」
「え?…う、うん。だ、だいじょうぶ。…ぐすっ…ひっく…こわかったよう…ふぇぇぇ…」
「よしよし。唯子は?…って」
「εθ★◇※η×γζΔμπ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
どげしっ!
「おい、そこの馬鹿者!さっさと我に返ってお前のピッチ貸せ!」
「きゃぁぁぁぁぁちかんんんっ………って!………ありゃりゃりゃ?し、しんいちろー???いつのまに」
「お前らが心配だから知らない間に来たんだよ。この痴漢野郎をけーさつに通報してしょっぴいてもらうからピッチ貸せ」
「あ、うん…」
ピッピッピッ
それからしばらくして。
警察の人に呼び出されて事情聴取など受けて、お家に着いたのは深夜になっちゃいました。
気を遣ってくれたのか唯子は一人で帰っていきましたが。私は真君に送ってもらいました。
「ったく。あの痴漢野郎!執行猶予期間中だってのにまたやりやがって。しかも二度目だぞ二度目っ!二度も俺達に手間をかけさせやがって!今度は実刑判決だぞっ!」
怒り心頭の真君。
でも私はまだ胸がドキドキしちゃってて…何も答えられなかった…。
「…」
それからしばらく、お互い何も話さず…気が付いたら家に着いてました。でも、謝らなくちゃ。
「真君…あのねっ!」
「小鳥…あのっ!」
あう…タイミング良く(?)…二人の声が重なった。
「…あ…う…。…し、真君から言っていいよ」
「こ、小鳥から言っていいぞ」
あうう…またシンクロしちゃったよう。すっごく気まずい雰囲気…。
「じ、じゃあ私から。ごめんなさい…。『浮気してやる』なんて馬鹿なこと言って…」
「小鳥」
「さっき…痴漢に襲われたとき。すっごくこわかった。真君が来てくれなかったら私…。なのに………ぐすっ」
私…最低だよ…。
「ぐすっ。ごめんなさい…ごめんなさい…。わたし…心細いのに…弱いのに…意地張って。…ぐすっ…生意気言って。…ぐすっ」
私…馬鹿だよ。
「小鳥」
「わがままばかり言って真君を困らせて。いつもいつも助けてもらってばかり…なのに。なのに私は………ひっく………ぐすっ……」
「小鳥っ!」
ぐっ!
真君は私の肩に両手を置いて、真剣な表情で話してきた。
「あうう……。し、しんく…ん……ぐすっ」
「謝るのは俺の方だよ。ごめんな。いつも意地悪して」
「しんくん…ぐすっ」
「ほら。泣きやめって!ええと…ハンカチはどこやったかな?」
ハンカチを探してあたふた慌てる真君。優しい。
「ぅ…」
ばふっ!
「わっ!こ、ことり?」
「ありがと。ありがと………ぐすっ。……ひっく……たすけてくれて………ありが……と…」
「小鳥。もういいって。いいって言ってんだろ」
ひょいっ!
「わっ!?」
いきなり両手で私の身体を持ち上げた真君。
「ふっふっふ。部屋まで送ってやるよお姫様」
「や、し、真君。私、恥ずかしいよう。ぐすっ」
「なに、全然軽いから大丈夫だ」
「そうじゃなくて」
無理矢理マンションの階段を昇っていく真君。でも、なんだか落ち着く。
「私達って…昔から全然変わってないね」
「そうだね」
無言のままゆっくりと階段を上っていく。
すとっ
そして。私の部屋の前に着いて、真君は私を優しく下ろしてくれた。
「真君。今日はホントに・・・ありがと」
くいっ!
ちゅっ!
「あっ」
いきなりのキス。それだけで、何もかもが信じられる。
私達の関係も何もかもが。何度と無く繰り返されてきた『仲直り』。
昔も今も真君と私の関係は…変わってないんだね。
私と真君は互いの温もりを確かめ合うように、抱き合いながらキスをしました。
長い長い…キスを。
「…おやすみ。お姫様」
「うん。おやすみ。私の…王子さま」
チュンチュン
朝!
いつものように学校へと向かう私。そして、いつものように真君と出会うんだ。
だけど私だってたまには仕返しくらいするんだから。
「しんく〜〜〜〜〜んっ!えいっ!」
バッ!
ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!
「ぐえっ!?…こ、ことり!?」
「えへへ。いつもの仕返しだよっ!真君っ!」
「いでででっ!ど、どこで覚えた?こんな技っ!?」
「この技はね。この前テレビでやってたグレ○シー柔術って格闘技の技なんだよ〜〜!」
「そ、そんな危険な技かけるんじゃな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!!!!」
「いたいでしょ〜。えへへへっ♪」
ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!
「…」
あれ?
反応が無いよ?
だ、大丈夫かな?もももも、もしかして…強くかけすぎちゃったのかな?
「し、しんくん?」
「小鳥よ」
「ど、どしたの?」
「お前、昔に比べて少し。胸、大きくなったろ?」
ええっ!ああっ!…せせせせ、背中でっ!?
にやにやしながら言う真君。
「なななな、なんてこというんだよう!しんくんのえっち!セクハラだよう〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
ぱっ!
思わず身体を離して抗議する!
そりゃ…。ずっと悩んでたから大きくなって嬉しいけど。だけどだけどだけど…そんな恥ずかしいこと面と向かって女の子にいわないでよう〜!
「くっくっくっく。馬鹿め。引っかかったな。ふはっはっはっはっはっは♪」
「はやや?し、しんくん?」
し、真君。どどどど、どしたのかな?いきなり笑い出したよ〜〜〜っ!!!
真君が変だよう〜〜〜っ!
ぎゅっ!!
「あうっ!?」
ああっ!う、腕離しちゃったから真君が反撃してきたよう!
わわわわ、わなだったんだぁ〜〜〜っ!
「ふはははっ♪馬鹿めがっ!『お前の胸が大きくなった』なんざ嘘にきまっとるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!お前が俺に技をしかけるなんざ一兆年早いんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
ぎゅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!!!!
「はややややっ!?!?!?いいいいい、いたいいたいいたい〜〜〜っ!!!真君いたいよう〜〜〜〜っ!!!やめて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「ふはははははははっ!!悪い子はみっちりとオシオキ(いぢめて)してやらなきゃなぁっ!!!!てええええええええええええええええいっ!!!」
「あううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!しんくんのいじめっこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「ありゃりゃりゃ。しんいちろーと小鳥。毎朝よくやるね〜」
「ほんっと。昔っからああなのか?唯子」
「うん。その通りだよいづみちゃん。全然、全く。何もかも変わってないよ。あの二人は」
登校途中の学生がいっぱいいるのも構わず、ひたすら道ばたでじゃれ合い続ける二人を見て微笑む唯子といづみ。
「やっぱり野々村先輩は相川先輩さんと一緒の時が一番幸せそうですね」
「そうですね。残念だけど相川君にはかなわないみたいです」
「うんっ。やっぱり二人は私の見込んだとおり、お似合いのカップルのようね」
さくら、瞳、七瀬も同じように微笑む。
永遠に変わることのない、二人の関係を見守るかのように。
「あううう〜〜〜っ!しししし、真君のいじめっこ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!いたいいたいいたいよう〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
「ふはははは〜〜〜!お前は一生俺専用のいじめられっこなのだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
おしまい♪