【く・ろ・か・み♪】










初夏の、暖かい風に揺れるのは










さらさらの黒髪♪










誰よりも、大好きな人の…










黒くて、長くて。










とても綺麗で…










思わず友達に、自慢したくなっちゃうような。美人の彼女は…










「みさき先輩っ!」










振り向きざまに、髪が揺れ…










「浩平君〜っ!」










早足で駆け寄り、微笑みながら腕を組む二人。










これはそんな、幸せいっぱいの…お話。




















「みさき先輩ってさ」
「なぁに?」
腕を組んで公園をお散歩。デートとしては少々安上がりですが…。
「髪、凄く綺麗だよね」

さらっ

呟きながら、人差し指ですくうようにみさきの黒髪に触れる浩平。
「ありがと。ふふ、嬉しいよ〜」
誉められて、本当に嬉しそうに…浩平の左腕に抱きつくみさき。
「手入れとか…大変じゃない?」
「うーん。…そうだけど。でも」
「でも?」

ふいっ

鈍い浩平に突っ込まれ、僅かに頬を赤らめながら横を向き。
「手入れも。浩平君の為だから楽しいんだ…よ」

さらっ…

初夏の、暖かい風にかき消されてしまいそうなくらい…小さな声。
「え?」
「えへへ。女の子の内緒、だよ♪」
人差し指を口に当て、ウィンクをするみさき。
「教えろよ〜!」
「嫌だよ〜♪」

たたたたっ!

刹那、鬼ごっこのように駆け足で…浩平から離れるみさき。

「ふふっ。私を捕まえられたら…教えてあげるよ」
「よぉし。じゃあ勝負だみさき先輩!…十秒数えるから、そしたら捕まえるぞっ」
「うんっ♪私、負けないよ〜!」
二人とも、子供のように…やる気満々です。
「い〜ち…」

たたたたっ!

一目散に駆け出すみさき。ところが…。
「にーさんしーごーろくしちはちきゅーじゅ〜っ!」
浩平は、とても早く十秒を数え終え。

だだだだっ!

「……え?」
「捕まえたーっ!」
「わ、わわわわっ!浩平君…ひ、卑怯だよ〜!」
「俺はちゃんと十秒数えたぞ」
イタズラ小僧のような浩平に、流石のみさきもたじたじのようで。

ぐっ!

「ふはっはっはっは♪つーかーまーえーた〜♪」
「きゃっ」
捕まえた弾みで…みさきの体が傾き…転びそうになってしまいました。
「危ないっ!」

ふにゅっ♪

「あっ。こ、浩平君…ありが…と」
「う、ううん。俺のせいだし…」
危ないところを支えられて…みさきは感謝したのだけど。すぐに…。
「浩平…君。あの…」
「な、何?」
「む、胸…。触ってる…よ」

ふにゅんっ♪ふにゅんっ♪

とてもふくよかな、みさきの胸を…両手で受け止めた拍子に、掴んでしまったようでした。
「…………あっ。ご、ごめ…ん!」
直ぐさま手を離し…謝る浩平。みさきは正反対に、胸を両腕で押さえて…。
「あの…。みさき先輩、俺…その、悪気は…無かったんだ」
「う、うん。…わかってる、よ」
二人とも恥ずかしさで真っ赤になったまま、視線を逸らしています。
「…………」
「…………」
奇妙に固まってしまった二人。何とか話題を変えようと…一生懸命なのですが。
「あ、あの…」
「う、うん…」
誰も悪くないと、二人ともわかっていて…だけど。恥ずかしくて…。
「み、みさき先輩っ」
「浩平君っ」
思い切って話題を変えてみよう…その思いがシンクロしてしまったようです。
「あ、あ……え、えっと。…みさき先輩からどうぞ」
「う、う……ううん。こ、浩平君から…言って。…い、いいよ」

すっ!

「みさき…先輩…」
「浩平君…」
微笑ましくなるほど不器用な二人は、そのまま抱きしめ合って…。
「……」
「…ん」
瞳を閉じ…自然に、キスをした。
『困ったときは…キスをしよう』何て台詞が、ぴったりの…。










* * *










「さて、じゃ。お話願えますな。お姫様♪」
「何だか恥ずかしいよぉ。浩平君〜〜〜!」
みさきは恥ずかしがりながらも、まんざらじゃない様子です。
「う、ん。…私、捕まっちゃったからね、お話ししてあげる」
再び、腕を組んで…お散歩の続きをしている二人。鬼ごっこの勝敗は、ともかくとして。
「髪の手入れはね、毎日やってるんだよ〜」

さらっ

相変わらず、暖かい風に揺られ…さらさらと音を立てながら。
「毎日、お風呂でシャンプーとリンスをいっぱい使ってね…」
「お風呂…ぽっ♪」

ぷいっ

「浩平君、えっちだよ〜!」
今度は真っ赤になりながら、非難するみさき。
「あはは。ごめんごめん、それで?」
「バスタオルでよく拭いて。お母さんにお願いして、ドライヤーで乾かしてもらって…」
見えないから…。だから。
「櫛でとかし終わったら、いっつもお母さんに聞いてるんだよ〜。『私の髪、変じゃない?大丈夫〜?』って」
みさきのお母さんはいつも、微笑みながら『大丈夫よ。自信持ちなさい』と。勇気付けてくれる。
「それから。…リボンを付けるの。雪ちゃんに教わった髪型にして、ね」
「ふーん」
後ろ手にリボンを握り。笑顔を見せるみさき。
「こ、浩平君は…こういうの。好き?」
このリボン、子供っぽくないか…。少女趣味じゃないか…。と、みさきはいつも、不安を抱いてきたのです。
「浩平君が…嫌いだったら、変えるから。教えて。お願い」
見えないから…。だから、勇気を振り絞って、大好きな恋人……折原浩平に、聞いてみる。
答えは勿論…。
「可愛いよ」
不安そうなみさきの唇を…優しく重ね合わせてあげる浩平。
「………うんっ。ありがと〜」




















大好きな人がいるから










もっともっと、綺麗に…なりたい。










女の子の心は










いつも不安と隣り合わせ










だから…










せめて、貴方だけは…気付いてあげて。










風に髪を揺らしながら…










いつも一緒の…










女の子の…想いに…






























おしまい♪




















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

(後書き)

前に書いた即興SS『お・で・こ♪』の別バージョンということで(--;;;)
激甘話でしたとさ♪
別キャラでもやろうかな?(^^;)