【Sweet Kiss with You!】






















好き…。





大好き…。





愛してる。





そんなこと、くどいくらい云われても





『百言は一回のキスにしかず』





恋愛の諺は。





女の子の本音なの。




















「ふにゅ〜ぅ♪」

もそもそ

じゃれつく仔猫のように寝ころび、猫撫で声をあげながら彼の側へと近づいていく。落ち着きのない子供みたいだけれども、これが何よりも楽しいことだから仕方がないと思う。
「ゆういちぃ〜♪」

ちゅ♪

そして、彼の元にたどり着き、世界で一番好きな人と楽しいキスをした。唇が触れる瞬間はうきうきしちゃって、甘いお菓子を食べるみたいに止まらない。
「祐一、すきすき〜♪」
そんなことも知らずに、祐一は気持ちよさそうに眠っているけれど。私は気にせずキスの嵐をぶつけるの♪

ちゅ♪ちゅ♪ちゅ♪

…どうしてキスって、こんなに胸がドキドキするんだろうね? (理由を教えてね…。ゆ・う・い・ち♪)

ちゅ♪

理由を知りたいキスは、イチゴ味のキス。
(えへへへ♪)

ちゅ♪

……ちょっぴり、怪盗気分でキス♪
(祐一の唇はいただいた、なんてね♪)






















『好き』という気持ちは





甘い甘いお菓子のように





暖かくて





優しくて





心地よくて





いつまでも、私を包み込んでくれる。





『好き』イコール『KISS』という方程式は





学校では教えてくれない





不思議なおまじない。




















日曜日の朝はとても静かで明るくて、木漏れ日を浴びながら眠りにつく。
「暖かくて気持ちいい〜♪」
夢を見られる、浅い眠りへと…ダイビング。

きゅっ♪

コロンと寝返りを打ちながら、大好きな人と一緒に添い寝。
「う……ん」
こっそりと、祐一のお布団に入ってみたの。
「だいすき♪」
夢の中でも現実でも、祐一は暖かくて…優しくて。
「ゆういちぃ」

きゅっ♪

こんなこと、しちゃいけないことだってわかってはいるけれど。私の心は止められない。
「もっと…抱きしめてお〜」
聞こえてくるのは、トクントクンと規則的に鳴り続ける鼓動と…スースーというかすかな寝息。……何か、可愛いなぁ。何て思っていると。

ぺちっ♪

(誰が可愛いって?)
(………あ、れ。ゆういち?)
自分が今、夢を見ていると自覚することはよくあるけれど。私は今、夢に落ちていく瞬間にいた。
(う、う……んっ)

ぐっ!

夢の中の祐一はちょっぴり大胆で。私はあっという間に唇を奪われてしまう。
(もぉ。ちょっと強引だよぉ)
と、少し拗ねて抗議してみると。祐一は『ごめんごめん』と笑って誤魔化して。

ちゅ♪

唇と唇が触れるか触れないかわからないくらいの、優しいキス。……焦らされて焦らされて、物凄く恥ずかしい。
(〜〜〜っ)
祐一の笑顔に、いつも顔が熱くなる。…やっぱり、祐一の方が一本上手みたいだね。
(私の顔、林檎じゃないもん〜…)
見透かされたように、『真っ赤な顔』が林檎みたいだなんて馬鹿にして……。
(祐一なんて、しらないもんっ)
ぷーっと頬を膨らませてぷいと視線を逸らし、突き放すようにちょっぴり強い言葉で反撃してみると。

ぐっ!

(きゃっ!)
急に身体が引き寄せられて。

ぐっ!

(…冗談、だよ)
勿論本気なわけない。……それなのに、祐一は怖いくらい真面目な顔をして私の身体を抱きしめる。
(ん…ん………)
ちょっぴり真剣なキスは、少しだけ酸味がきいてて。少し緊張する私は、硬直したように視線をそらせられない……。
(祐一)
祐一の、まっすぐな瞳の中に。不安という要素が少しだけ。
(ごめんね…)
そうだよね。
(いつもいつまでも私のこと、本気で好きでいてくれるのに…。ごめんね)
悪いことしちゃったな……。

ちゅ♪

ごめんねのキスで、許して……。




















ちょっぴり強引なキス。





少女漫画にあるような、優しいキス。





まっすぐに、真面目な『好きだ』と、訴えてくるキス。





少しだけ切ない『ごめんね』のキス。





私の唇は、奪われてばかり。





甘酸っぱくて、とろけちゃいそうな、私の心……。




















(もっともっと。もっといっぱい……キス、して)
好きなことに、理由なんていらないよ。
(祐一……。大好き)
理由なんてない。好きだから好きなの。……祐一のことが大好き。…優しい笑顔も、怒った顔も、真面目な顔も、ふざけた顔も、悲しそうな顔も、切ない笑顔も……全部、全部、大好き…。
(ムキになってなんて、いないもん……)
本音を云っただけ。……だけど、言葉だけじゃ物足りないから。

ちゅ♪

『大好き』なキス…。
(好き…好き……。ゆういちぃ………大好き。……だ・い・す・き…だよ)

ちゅ♪ちゅ♪ちゅ♪

熱帯地方のフルーツみたいに、熱くて、大胆で、開放的で…甘いキス。でも……。
(ちょっと……えっちだよぉ)
濃厚で、香りが強くて……。お酒みたいに、酔っぱらっちゃうみたいに。
(あふ…)
触れ合う素肌が、熱くて…。胸と胸から…鼓動が流れ込んで来て……。
(熱い…よ)




















嬉しさと、恥ずかしさで





おかしくなっちゃいそうな





私の心……。





だから、お願い。





あなたの夢の中で眠らせて…。





亜熱帯みたいに…





熱くなり過ぎちゃった、私の心を





あなたの夢の中で、冷まして欲しいの。





















ゆさゆさ…

「うにゅにゅにゅ……」
心地よい夢の中で、ゆさゆさと視界が揺れていき。
「お〜い、起きろ〜」
「く〜」

ゆさゆさ…

「祐一の顔が揺れてるお〜」
「完全に寝ぼけてるな」

ゆさゆさ…ゆさゆさ…ゆさゆさ…

「うにゅ〜〜〜………」
折角、気持ち良い夢を見ていたのに。……意識は段々と現実へ帰りはじめ。
「ほらほら、さっさと起きた起きた」
「く〜」
でも、悔しいから、固く目を閉じたまま寝たふりをしてやるんだもん。……私って、意地っ張り。

ちゅっ♪

「っ!」
……眠るお姫様を起こすのは、キスだって。祐一はよ〜く知っていて。
「〜〜〜〜っ!」
心の準備を整える前に、私の唇は襲撃されちゃった。
「ったく。よく寝るよな。人の布団で」

ぺちっ

祐一はおでことおでこを合わせて、呆れた感じの笑顔。
「……ゆ、祐一ぃ」
目を開けたら祐一の顔が目の前に…。寝顔を見ていたつもりが、逆に見られちゃっていて。恥ずかしさがこみ上げてきて…。
「しかも、俺を抱き枕にしてな」
「う〜〜〜……。だってぇ……」
だって…だってぇ…。祐一の身体、暖かいんだもん〜〜〜。なんて、心の中で言い訳。
「ま、でも。…俺も夢を見ていたからな」
「どんな夢?」
「名雪が出てくる夢」
「ほんと〜?私もだよ〜♪」
もしかして、同じような夢を見ていたのかな…なんて思って嬉しくなる。
「それで、どんな夢なの?」
「それはな」

ちゅ♪

「…ゆう…いち」
「名雪といっぱいキスする夢だったな」
…目覚めのキスは、ちょっぴり驚きのスパイス入り。
「えへへ♪」
「何がおかしいんだ?」
「秘密、だよっ」
何だそりゃ、なんて苦笑する祐一。
(同じ夢、見ていたのかな?)
嬉しくて、楽しくて、理由もなく笑顔になれちゃうキス。

ちゅ♪

「あっ。このっ」
「べーだっ。仕返しだよ〜♪」
朝から騒がしい私たちは、お部屋の中を追いかけっこしたのでした。





















もっともっと…キスをして…。





夢の中でも、現実でも…キスをして…。





もっともっと、キスをして…。





窒息したって構わないから。





強く、抱きしめながら…。





『大好き』の、キスをして…





甘い甘いキスは別腹。





ダイエットなんて、できないもん♪





だから……





最高のキスを、私にください。





















おしまい♪