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ばるさみこす〜
「あは」
「……ん? つかさ?」
「ばるさみこす〜」
「つ、つかさ!? 何よいきなり勉強中に奇声発して!?」
「あ……。お姉ちゃんごめんね。えへへ。つい、声に出ちゃった〜」
「出ちゃった〜、って。何なのよ。『ばるさみこす〜』って?」
「えっとね。この前テレビでね……」
「テレビで?」
「ばるさみこす〜って、云っていて。何か、癖になっちゃって〜」
「はぁ!? ……っていうか、ばるさみこす〜ってだから一体何なのよ? バルサン!? バルタン!? バルカン!? 気になるから早く説明しなさい
よっ!」
「ふふん。それはだね、私が説明してあげよう、かがみ君」
「わっ。こなちゃん〜」
「おわっ! こ、こなた!? どいつもこいつも何なのよいきなり」
「ばるさみこす〜とはだね〜。サッカーのバルサことバルセロナというチームが〜」
「その時点でかなり怪しい!っていうか、それはあれでしょ。あれ……えーっと! 怪しい文献の……何だっけ!」
「ある年、どうにも調子が悪くて連戦連敗のどん底にあったとき〜。スーさんという名の巫女さんが現れて〜……」
「あは。そっか。それでばるさみこす〜、って云うんだね、こなちゃん」
「そ〜そ〜。それ以来、チームの調子が悪いときは決まって『ばるさみこす〜』ってスタジアムでコールされるんだよ。数万人のサポーターが優しくね」
「嘘だ嘘! 絶対嘘! 騙されんじゃないわよつかさ!」
「え? そうなの?」
「そんなことないってば〜。かがみは疑り深いなぁ。ちゃ〜んと、本に載っているんだよ? 民朋書房っていう会社のね〜」
「ああっ! それだそれ! トんでもない蘊蓄ばっかり載ってる出版社!」
「そうなんだ〜」
「つかさっ! 納得するんじゃない!」
「え? どうして〜?」
「本屋で取り寄せてもらえるよ。面白いから」
「うん。そうする〜」
「そうするんじゃない! つかさぁっ!」
「え? どうして〜?」
「かがみはカリカリしてるなぁ。こんな時はね、つかさ。一緒に『ばるさみこす〜』って云ってあげるんだよ〜」
「うんっ! ばるさみこす〜」
「あ゛ーーーーーっ! 何なのよこの歪んだボケボケ空間はぁっ!」
「はいはい、つかさもご一緒に。ばるさみこす〜」
「あはは。ばるさみこす〜」
「うぎゃーーーーーっ! ついていけんわーーーーーーっ! 一体何なのよばるさみこす〜って!!」
「ふふん。説明しようかがみ君。ばるさみこすとはだね……」
張鎖神子守(ばるさみこす)
かつて古代中国に張 膏雛(ちょう こうすう)という少年がいた。
膏雛は生まれて数ヶ月で会話出来るほどの言葉を話し、
5歳になる頃には、今で言う中学生ほどの学力を持っていた。
更に10歳になる頃には、当時誰も知らないような薬を作り人々の病気を治したと言う。
そのせいもあって、人々は膏雛を神の子と崇めていた。
それを聞きつけた当時の皇帝が膏雛を我が物としようと連れ去ってしまう。
その皇帝は膏雛を奉り上げ、彼のため神殿を用意するほどであった。
しかし、その神殿を他の者に入らせないために呪術を用いて鎖で封じたという。
その呪術が後に張鎖神子守(神の子、張を守る鎖)と言われるようになったと伝えられる。
その後、膏雛は神殿で一生を暮らすことになるが、皇帝のために様々な薬を作り上げては献上していたと言う。
余談ではあるが、その献上物の中に果実を醗酵させた液体があったと伝えられている。
これがバルサミコ酢の原型である事は言うまでも無い。
(民朋書房刊:「酸いも甘いも薬のうち」)
「ということなんだナ〜実は」
「そうなんだ〜。こなちゃん物知り〜」
「んなわきゃないっしょ! いい加減にしなさ〜〜〜いっ!」
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