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-びー・えす・ゆないてっど 後編-















「うふふふふ。私のセーラー服」

「いいえ。それは私のブレザーよ」

 勝利宣言の後の大観衆による大歓声の中、喜びはしゃぎまわる明日子の背後から立ち上がった二人がそろりそろりとほふく前進をしながら近づいてきているのでありました。その二人とはいうまでもなく、羽子様と蛇子様でありました。そして、がしっとおもむろに明日子の制服に手をかけて……。

「あにゃ!?」

「私のセーラー服ううううううううっ!」

「私のブレザーあああああああああっ!」

 何しろ、明日子が今着ている制服はセーラー服だかブレザーだかはっきりせぃ、と云いたくなるような制服なわけでありまして。良く云えば斬新、悪く云えば中途半端なデザインのそれは、制服原理主義とも云える二人にはあまりにも挑発的なようでございました。

「いけないあすねん! 振りほどいてこの場を離脱するんだ!」

 何やら血相を変えて焦りまくる島流君でございます。一体どうしたのでありましょうか?

「かいちょ? ど〜したの〜?」

「これは……! これは紛れも無く、制服原理主義者による禁断症状!」

「はふぅ?」

 彼女たち二人の目は血走り、は〜は〜と荒い息をついており、とにかくも殺気に満ちておりました。そして……。

「私のセーラー……。今こそ邪悪なブレザーから引きはがしてやるわああああああああっ!」

「あにゃにゃにゃにゃっ!?」

「いいえ。私のブレザーよ。……セーラーなどという前時代の代物から解放させてあげるわああああああっ!」

「あ〜あ〜あああああ〜〜〜! だだだだ、だめだめだめぇ〜! 引っ張ったら服がの〜び〜ちゃ〜う〜! やぶれちゃう〜〜〜!」

 二人とも何を思ったのか、明日子の制服をつかんで思いっきり引っ張り始めたのでございます。当然のことながら、やがてめりめりと繊維が悲鳴を上げ、破れる音がしはじめます。危うし明日子! このまま数千の視線が集うリング上にて、欲望と好奇心に飢えた男性諸氏により合法的かつ徹底的に視姦されてしまうのでありましょうか!?

「いかん! あすねん、緊急離脱するのだ! 危険だ!」

 制服禁断症状。それは、世に数多く存在する制服マニア特有の病魔ともいうべき現象でありました。島流君の解説は続きます。

「一つの制服にこだわり過ぎたものは……『純粋な制服』以外を認めなくなってしまうっ! つまり、このままだとあすねんは、セーラー服とブレザーの融合たる制服を着ているが故に……羽子と蛇子によって、純粋なるセーラーとブレザーの要素をそれぞれ取り出すために、引き裂かれてしまう!」

 服装がどうこうではなくて、明日子はかなりずれたところはあるものの一般的にはごくふつ〜の女の子なわけでありまして、大衆の目前で服をはがされるのはそれはもうショックなわけでございます。

「そそそ、そんなの嫌嫌嫌だぁ〜〜! だめだめだめぇ〜〜〜! 破れちゃうよ〜〜〜! ふえええ〜〜〜ん! や〜め〜て〜〜〜!」

 が、悲しいかな。暴走した二人の腕力は非常に凄まじいものでありまして、明日子の叫びも空しく、繊維に高圧付加をかけ……やがてかわいらしいリボンもスカーフも無惨なまでにびりびりに引き裂かれてしまったのでありました。

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」

 ですが……ここでまた奇跡が起こるのでありました。涙どばどば状態の明日子がびええええんとばかりに泣き叫んだその瞬間……会場内は爆発光に包まれることになるのでありました。その爆発は主に、明日子を中心にしてどきゅーーーーん、とばかりに広がっていったのでございます!

「な、何っ!?」

「うわああああっ!」

「ふにゃにゃにゃにゃあああああんっ!」

 爆発の中、三人の叫び声が入り交じっておりました。

「そ、そうか! ……アレがあった!」

 島流君は何かを悟った様子で確信したのでありました。それはあたかも、忘れていた何かを思い出したような、気付いたような……そのような感じに。

「ふえぇえぇ〜〜〜ん! 怖かったよぅ〜〜〜!」

 爆発が収まり、リングの上には吹き飛ばされて横たわる蛇子様と羽子様。そして、全く無傷の何事も無かったかのよーな天然娘明日子がひっくり返ってでんぐり返し状態になっておりました。不思議なことに、明日子のびりびりに破られたと思われた制服も完全に元どおりになっておりました。何故なのでしょうか?

「爆発反応装甲、さ。こんな事もあろうかと実装させておいたのだ。私としたことが、今の今まですっかり忘れていたよ」

 島流君は不敵にフッと笑い、メガネを光らせて語るのでした。

「ほひょ? ばくはつはんの〜そ〜こ〜??? ……って、な〜に? 教えてかいちょ〜」

「説明しよう。爆発反応装甲とは、二つの布地の間に爆薬を仕込んでおき、砲弾被弾時に起爆させて外部装甲を押し上げ威力を減殺させる装甲だ。あすねんの制服は新素材の特殊結晶繊維を使用しているが故に、反応装甲特有の見苦しいつぎはぎなど一切無く、上部に薄い新型装甲をコーティングするだけで済み、超軽量なコンパクト設計になり……」

 ……島流君による細かい技術解説が延々続いておるようです。が、かなり意味不明なのでチュートリアルモードをSKIPするといたしましょう。

「更に、あすねんの制服は自己修復機能が備え付けられていてだね。ちょっとやそっとの破損なら自動修復されてしまうのさ」

「そ〜だよ〜。ちょっとくらい破れただけなら大丈夫〜」

 と、SKIPしたものの未だにどこか異次元空間のような会話が繰り広げられている中で。羽子様と蛇子様は流石に痛みを覚えたようで、よろめきながらも立ち上がったのでございます。

「くっ。……さすがね。この学園に、私たち以外にもこんな強力な娘がいるなんて、思っていなかったよ」

「ええ。私も。……貴方を最強の制服娘として認めますわ」

 爆風を背に現れしは、我に帰った蛇子様と羽子様。二人はもうあすねんを無視することなく、最強のライバルとして認め、果敢にも再戦を挑んできたのでございます。

「私としたことが無様ですが、先ほどは少しばかり不意打ちを食らっただけ」

「この程度の事で敗北を認めるわけにはいきません!」





二人はやる気満々。……と、いうことは。





「勝負、継続であります!!」

 誰からも忘れ去られていた司会者がリングに立ち、そう叫ぶ。と……会場からは割れんばかりの大声援がわき起こるのでございました。誰もがやっぱり『そうこなくては!』と思ったのでありました。

「うおおおおおおおおお! 蛇子蛇子蛇子おおおおおおおっ!」

「ヴァコ様あぁぁぁぁぁぁぁ! ばこばこばこばこおおおおっ! ずっこんばっこんずっこんばっこんんんんっ!」

 会場のボルテージは再び最高潮にまで上がってまいりました。





そうして決着をつけるための、次なる勝負は……。





「靴下脱がせ合戦!」

「望むところ!」

「今度は絶対に負けませんわ!」

「え? え? 何なに〜? まだ何かやんの〜? あたしも〜おなかすいたからお部屋に戻ってご飯食べたいよぅ〜」

 とかなんとか、そんなものに決まったのでございます。誰もが拍子抜けするくらい単純かつ、あまりにもわかりやすい勝負内容でございました。やる気満々な羽子様と蛇子様と、さっきまでいっぱいぱくぱく食べてたのにもうお腹すいた様子の明日子でございました。

「勝負……開始いいいいいいっ!」

 ルールは説明無用。相手のソックスを脱がせた方が勝ち。そんなわけで、突然に勝負は開始されたのでございました。

「ほよ? はふっ!? ええええっ!? 何何何〜っ!?」

 勝負開始の合図と共に、蛇子様と羽子様は二人がかりで明日子を強襲するのでございました。今度はもう、手加減などせずに……窮鼠猫を噛むという諺の意味を封じ込めるよ〜に、本気で襲いかかったのでございます。

「悪いけど」

「あなたには、倒れてもらいますわ」

「はややややっ!? ああああんっ! あーーーーあーーーあーーーーーんんんんっ!」

 そして、蛇子様が華奢な明日子をあっと言う間にリング上に押し倒し、両腕を掴んで押さえ込み……羽子様が明日子のソックスを無情なまでに手早く、靴ごと一気に脱がせようとしたそのときでございます。ここでまた、一つの奇跡が起こるのでございました。

「っ!?」

 セーラー派急先鋒の羽子様の目を釘付けにするものが、そこにはあったのでございます。青く、爽やかな縞模様。……それは下着……ショーツと云いますか、パンツといいますか、とにかくも明日子が今現在はいているそれが見えまして、羽子様はふと……ほう、とばかりに戦いの中で戦いを忘れて見入ってしまい、そしてそのまま手は自然にかかっていき……。

「あにゃっ!? ちちょちょちょちょちょ! そそそそ、そこは違うよおおおお〜〜〜! そそそそそ、それはソックスじゃないよおおおおお〜〜〜〜っ! ぱぱぱぱ、ぱんつぱんつぱんつうううっ! それはあたしのぱ〜〜〜〜ん〜〜〜〜つ〜〜〜〜だよおおおお〜〜〜〜〜〜〜! あああああ〜〜〜〜〜〜ん!」

 明日子が顔を真っ赤にしてびええええんと涙をどばどば流しながら大混乱に陥る中、一気にぐいっと降ろしてしまったのでございます! ……幸いなことに、とってもふつ〜な女の子・芹沢明日子ちゃんの大事な所はスカートの布地で隠されて公衆の面前に晒されることはなくて大丈夫だったのではありますが。

「ふふ。それは偶然でも何でもないさ。僕の開発した自動プロテクション機能が働いただけ……」

 とかなんとか自信ありげに島流君が何かぬかしておりますが、今はそんな妄言(?)に構っている場合ではございません。

「ああああああ〜〜〜ん! ええええ、えっちえっちえっちぃぃぃぃぃ〜〜! 脱〜〜〜〜が〜〜〜〜し〜〜〜〜たああああ〜〜〜〜〜〜!」

「ちょっと羽子! 貴方は今何をやったの!?」

「……ハッ!? わ、私としたことが……縞模様に魅せられて、つい間違って下着を」

 それは、制服原理主義者にとってよくあるケアレスミスとも云える単純な間違いでございます。セーラー派の人々は例外なく縞模様をこよなく愛するが故に、明日子がたまたまはいていた縞ぱんつは彼女を完全に魅了してしまったのでございます。……しかしながら、狙われた方……明日子はとっても多感で花も恥じらう乙女なお年頃故に、みんなの目の前でそーいうえっちなことをやられるとそれなりっていうか、かなりショックだったわけでありますが、とにかくも今の事実として明日子はぱんつを完全に脱がされてしまいいわゆるのーぱん状態にさせられてしまったわけでありました。

「うぅ〜〜〜〜〜〜〜〜! 許さないもん……許さないもん……。制服は……制服は……」

 可愛らしい口をへの字に曲げてぷく〜〜〜っと頬を膨らませて、目尻に涙を溜めて、そして明日子は遂に覚醒するのでありました。

「制服はっ! みんなが仲良くするため……世界の平和のためにあるんだよ〜〜〜っ! 喧嘩したりしちゃだめなのっ! それと、あたしのぱんつ脱がしちゃだめ〜〜〜っ! 今日のぱんつはあたしが作ったとってもお気に入りのものなんだからああああ〜〜〜っ!」

 気合いの入った叫び声と共に、会場内は静まりかえり……明日子の制服は赤く燃えさかるかのようなオーラを発したのでございます。

「あ、あれはまさしく。リミッター解除だ!」

 またもや何かしら怪しげな解説をする島流君でありました。

「あすねんの制服に対する愛情がマックスまで高まった時、あの制服に埋め込まれた全センサーが発動して、リミッターを解除して全機能全エネルギーを解放し、凍てつく制服波動砲を……」

 熱く語っておりますが、もはや彼が何を云っているのか何が何だかさっぱりわかりません。

「はおあにゃあああああああああああーーーーーっ!」

 とにかくも、明日子の気迫は凄まじいばかりのオーラと化し。

「な、何ですの!? あ、あああああああっ!!」

「くううっ! うああああああっ!」

 そして……羽子様と蛇子様に襲いかかり、ロープ際まで吹き飛ばすのでございました。絶叫をあげながらロープに叩きつけられた二人は失神してしまいました。

「はぁっはあっ! せ、成敗! しちゃったよ〜」

 流石に明日子も息が荒くなり、疲れているようでした。リミッターの解除は想像以上に高負荷をかけてしまい、疲れるようでございます。

「あすねん! 今だ! 二人の靴下を脱がすんだ!」

「ほえほぇほへ〜」

 まだダウンを奪っただけで、勝負の決着が着いていないことを島流君に突っ込まれ、明日子は目を回しふらつきながらも二人に近づいて行くのでありました。が……悲しいかな。明日子の意識も既に限界にまで達していたのでございます。

「はふふ。おめめぐるぐる〜」

 そして、羽子様と蛇子様のソックスを脱が……そうとして彼女はお約束の如く根本的な間違いを犯すのでございました。

「うにゅにゅ……取った〜よ〜ぉ〜〜。はふふ。……あにゃ!」

 ずしゃっとリングに倒れ落ちる明日子でございましたが、彼女の手に握られていた二つの布のようなもの。それは……。

「あ、あすねんそれは違う! それじゃない! それじゃないんだああああっ!」

 会場内は割れんばかりの大歓声に包まれました。白いのと黒いのと。つまり、ソックスと間違ってパンツを脱がしてしまったのでございます! 何と云うことでしょう。人は過ちを繰り返すとはまさにこのことでありましょう!

「はふはふはふぅ……。いい気持ち〜」

 冷たいリングの感触に火照った体を癒されながら、戦いを終えた戦士のように眠る明日子でした。

「う……」

「ここはどなた。私はどこ……ですの」

 ちょうどそのころ、失神していた二人は目を覚ましたのでございます。目の前には自分たちの下着を手に握りながら眠りこける明日子の姿。

「ま、さか……」

「そ、んな……」

 それを見て、何が起こったか想像がつき、青ざめる二人でございます。逆転のまた逆転。明日子はまたまた大ピンチに陥ったのでございます。だって、勝利フラグ=ソックスを脱がす、というわけでありますから、今の明日子はあまりにも無防備過ぎるというわけでありますね。

「あすねん起きろ! 起きるんだああああっ!」

 まさにまな板の上の鯉。島流君の絶叫も空しく、二人は完全に我にかえり、ゆっくりと明日子の前へと向かい。そしてそのままソックスを脱がして……しまいませんでした。

「はにゅにゅ……かいちょ……あとごふん〜。あむあむあむ……ちりめんじゃこのおにぎり……おいし……んにゅ〜」

「ふふ。芹沢明日子さん、ね」

「もう、忘れることはないさ」

 蛇子様と羽子様は明日子のソックスを脱がすことなく、それはそれは穏やかな微笑を浮かべて、眠りこける明日子の右腕と左腕を掴んで立たせて。

「こんなにも可愛くて強い娘が、この学園にもいたのね」

「そうだね。それに、強いばかりでなくて、優しい。とても……」

 セーラーとブレザーを愛すがあまり、間違った方向に進もうとしてしまった二人を救ってくれた。明日子の勇気とまっすぐな心に、二人は感謝し何かから解放されたかのように清々しい笑顔を見せ、尊敬の念を抱くのでありました。

「一本取られた、ではなくて……」

「一枚脱がされてしまったね。それも、制服乙女にとって、最終防衛ラインとも云えるものを」

 乙女にとっての最後の可憐な壁。それを明日子は一人で奪い去ってしまったのでございます。とてつもなく大変なものを、明日子は奪い去ってしまったのでございます。

「はにゅにゃ……。せ〜ふくは……やっぱりぃ・かわいくなくちゃ……だめ、だよぉ……。うにゃうにゃ」

 夢見心地で寝言を呟く明日子の両手を掴んで高く上げさせて。

「皆さん聞いてくださいまし! 今ここに、私立聖摩多川最西東京EFJ高校の真の制服女王が誕生しましたですのでございますですのよ!」

「その名は、アパレル同好会・制服研究会合同チーム代表、芹沢明日子!」

 その後に、割れんばかりの大歓声が会場内を埋め尽くしたのは云うまでもございません。今度こそ正真正銘の勝利宣言でございます……!





それからあっと言う間に一カ月が経過いたしました。





「何というか」

「あっと言う間だったよね〜」

 誰もが思い出したかのように、そんなことを呟きあう今日この頃で、特にここは平和なアパレル同好会でありました。ミシンの音が小気味よく響き、しゃきしゃきと布きりバサミが思い切りよく布地を切っていきました。

「あの狂乱の宴は何だったんだろうね」

 女生徒は皆、明日子がデザインしたプロトタイプ制服(の、廉価型改良版)を着用しておりました。あの馬鹿騒ぎの後、明日子と島流君が設計開発製造を行った制服は私立聖摩多川最西東京EFJ高校・工業科の技術研究部に製造開発を移管され、コスト削減の為に不要な機能を廃され簡略化され、マスプロダクションタイプとしてリファインされたのでございます。

 斬新そうだったデザインは、案外ふつーに受け入れられて、人気を博しておりました。





そして今。真の制服女王となった明日子は……?





「あすねん」

「かいちょ」

 見つめ合う二人美少女とむさくるしぃおにーさんはそのまんまドラマで云うところのキスシーンの様相を呈しているわけでございますが。

「隙あり!」

「芹沢明日子! 今日こそは貴方を倒す!」

 そんな甘ったるいラブシーンにそうは問屋が卸さないとばかりに蛇子様と羽子様が乱入し、すぐさまバトルが勃発するのでありました。

「んにゃ!?」

「あすねん。ここは私に任せて逃げ……ぐふ!」

 盾になる前に、蛇子様と羽子様が登場した拍子に巻き起こされた強風により明日子のぱんちらがもろに晒されて、島流君は鼻血を流して昏倒してしまいました。つくづく、よくおぱんつをもろに晒してしまう娘でございました。

「あややや! よくもかいちょ〜を! ゆ〜る〜さ〜な〜い〜ん〜だから〜! ぶーすと! ふるぱわ〜〜〜!」

 明日子はローラーダッシュを全開で繰り出して危険領域を脱し。反撃へと転じるのでございます!

「はぁーいカットぉ!」

 と、そんなところで監督のカットが入ったのでございます。そう。何を隠そうこれは、学園の映画研究会より頼まれて自主制作映画に出演していたのでございます。監督の名は、映画研究会会長白澤AKIRAであり、映画のタイトルは『水曜サスペンス・湯煙制服を巡る美少女集団密室殺人ラブロマンス事件奥摩多川天然日帰り秘湯宿巡りラストバトル、ゴングは今鳴らされた』という、誠にほのぼのほんわかしていそうなものでございました。

「皆さんお疲れ様でした! 今日の撮影はここまでです!」

 監督と映画研究会のスタッフさん達が労をねぎらうようにそう云うと、誰もがみんな肩の力を抜いてリラックスするのでございます。

「明日子さん。素晴らしい演技でしたわ」

「ふふ。まったく、惚れ惚れしてしまったよ」

 蛇子様も羽子様も、今では完全に明日子を尊敬しきっていたのでございます。

「ありがと〜。うれしいよぅ」

 ちょこんとしつつぴょこぴょこと跳びはねる明日子は、今では学園の誰もが知っている有名人でございます。たとえば、学園の生徒が彼女の姿を一目見たら……。

「あ。縞パンあすねんだ〜」

 と、誰もがあのときの死闘を思い出して、親しみを込めて声をかけてくれるのでございます。

「んみ〜〜〜! 今日は縞パンじゃないもん縞パンじゃ〜〜〜!」

 そして、お約束の如くムキになって反論するも……みんなくすくす笑いながら突っこみを入れてくれるのでございます。

「じゃあ今日は、紐パン?」

 何が『じゃあ』なのかはわかりませんが、そのように返してくるのでございますが。明日子も明日子で、一筋縄ではいきません。

「んん〜。えとねえとね。今日はちょっと違うよ〜……。って、ちょっとじゃなくって全然違う〜〜〜!」

「そうだよみんな! 何を失礼なことを云っているんだね! 今日のあすねんは、そう! 縞パンではなく、紐パンでもなく……いちごぱんつをはいているにきまっているじゃないか!」

 いつの間にやら起き上がっていた島流君は、つい先程まで自分が見ていた麗しき光景について熱く絶叫していたのでございます。そして、おおおお、とみんな明日子のスカート辺りを見つめて感嘆の声を上げるのでございます。とっても素直と云いますか、えっちでありますね。

「あややややっ! かかかか、会長のえっちえっちえっちぃぃぃぃ!」

 これまたまたまたお約束の如く慌てふためき頬を真っ赤に赤らめて、明日子はじたばたと体中を震わせるのでございました。

「やっぱり、制服最高! いちごぱんちらも最高! あすねん最高!」

 うんうんと頷く島流君に、誰もが同意して頷き返し……。

「いちごぱんちら云っちゃだめだめらめぇぇぇ〜〜〜! かいちょ〜〜のばか〜〜〜〜!」

 えっちな島流君を追いかけ回しながら明日子は叫び。それを見て、誰もが笑顔になっていきました。





雲一つない、爽やかすぎる快晴の中





小動物のよーにちょこまかと走り回る明日子は





それはもう、誰もが認める学園伝説の少女へと





なっていくのでございます。





制服少女たちの青春の日々は





今まさに、始まったばかりなのでありました!




















おしまい!



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