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-びー・えす・ゆないてっど ぷろろーぐ-















 どこかの大きな学園。……の中にある女子寮の、更に中の一室にて。

「ごはんごはんごはん〜ご〜は〜ん〜」

 ボーイッシュという感じの、ちょっとばかり無造作に切りそろえられたショートヘアの娘が変な歌を口ずさみながら食事の準備をしていた。

 時計を見て、ガスコンロにかけてあった飯盒をもってきて、小さなテーブルに座る。そして、おかずを並べてから……。

「いっただっきま〜す」

 飯盒の蓋を開けて食べ始める。その飯盒には名前がついてあって、飯盒なのでハンちゃん、とか云うそうな。彼女曰く、直火炊きが一番美味しいとかで。それにしても、炊飯器くらい持ち込んでも良いような気がしないでもないが、彼女はこだわる性格のようだった。

「あむあむ、あむあむ」

 ぱくぱくととっても美味しそ〜に食べる様はまさに愛らしい小動物。大きな寮なので、食事は毎回出るのだけど、彼女は時折たまに自分で作ってみたくなることがあるのだった。今日は、たまたまそんな日だったわけで。

「はむはむ、はむはむ」

 ほっぺたにご飯粒をつけながらもぐもぐと食べていると、ふと、テーブルの端っこに置いてあったチラシが目に入った。学校から帰ってくるときに配られていたものだった。

「ほよ? せーふくせんこーこんてすと……?」

 学園主催の新規採用制服選考コンテスト開催。明日の制服を決めるのは、君だ。by.学園長ペトロヴィッチ岩坂先生。という、何だかよくわからないけれどインパクトある一文が目に入る。学園が創設されたばかりなので、そういうこともあり得るんだ、とか彼女は思った。

「何だかよくわっかんないけど〜。おもしろそ〜」

 何となく、そんなことを思ったときだった。とにかく楽しそうな感じがしたので、興味を持った。

「あたしも作ってみようかな〜。新作の制服〜」

 うきうきわくわくと、好奇心に満ちあふれた眩しいばかりの笑顔を見せる。その瞬間、彼女の才能は最大限に発揮される。

「よ〜し! ご飯食べたらデザインだ〜! がんばるよ〜! お〜!」

 それが、学園における伝説の少女誕生の、ささやかな一歩なのだった。


















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