-Colorful party Vol.5 編み物日和・前編-
登場人物:
●更志野 新奈(さらしの にいな) 色彩屋根裏図書館司書見習いで花鈴や美穂の親友。 仕事熱心で勤勉で優秀。金髪碧眼な美少女なのだけど国籍も趣味も趣向も言語も日本人。必要に迫られた故に身に付けた合気道や関節技については達人レベル。 日々繰り出される館長の陰湿かつ性的な嫌がらせを溜息一つで受け流すスキルを持ち合わせている常識人。 ●沖野 花鈴(おきの かりん) みんなの優しいお姉ちゃん。黒髪と一本の三つ編みが特徴といえば特徴だけど、やっぱり特大のバストサイズが最大の特徴。 時にお人好しと言われるくらい親切でほんわかしていて、みんなからとても慕われている娘。『そういう奴に限って、よく凶悪犯罪に巻き込まれて惨い死に方するよな』と、身も蓋も無いことを館長が言っていた。 家庭的で家事も万能で、基本的にすごく器用な娘なのだけど完璧超人ではなくて、時折天然さんなドジっぷりを発揮してしまうことがあったりする。 ゆーくんこと悠希とはまだまだ清く正しい関係で、キスを含めたいちゃいちゃ止まり。結婚でもしない限りそれ以上進展しないのではなかろうか。 ●沖野 鈴那(おきの れいな) 花鈴の妹。お姉ちゃんのことが大好きな甘えん坊娘。 背も胸もちっちゃいお子様。人懐こくて、ふにゃふにゃと仔猫の鳴き声のようなのが口癖で、いっつもにこにこと周囲に愛嬌をふりまいてる元気な娘。一見すると何も考えて無さそうなお馬鹿さんなのだが、実はゲームの腕だの数学の才能だのが頭抜けている。けれどあんまり知られていない。 大好きな人に笑顔で飛びついてはスキンシップするのがご挨拶となっている。皆に可愛がられているマスコットのような女の子。 ●鞠音(まりね) オッドアイな猫又娘で花鈴や鈴那の親友。通称鞠ねこ。愛らしい外見の割に戦闘能力は結構高く、噛み付きや引っ掻きといった野性味に溢れている攻撃を得意とする。 彼女にとっては鈴那も花鈴も大好きで大切な人達なので、その二人をいじめたりちょっかいを出したりすると烈火の如く怒る。その様はとっても恐い。暴走した館長から花鈴を守るのに欠かせない希有な人材。 鈴那と違い警戒心は結構強いのだけれども、大好きな人には安心して懐いて猫耳をすりすりしていくのがご挨拶となっている。 ●館長・ご主人様(かんちょう・ごしゅじんさま) 色彩屋根裏図書館館長にして花鈴小屋ご主人様。つまりは新奈の上司であり、花鈴のマスターでもある。一見すると緑色をした謎のクリーチャー。 強いようでいて結構色んな人にどつき回されたり吹き飛ばされたりしてやられている不思議な人。傍若無人なようでいて、ある意味常識的でもあるかもしれないとても矛盾した存在。 結構打たれ強くて頑丈なのは確か。今回はどのような騒動を巻き起こすのか? ●新沼 美穂(にいぬま みほ) 花鈴のクラスメイトで親友。ひょんなことから新奈とも知り合い、今では親友という関係になっている。 男勝りでさばさばとした性格の姐御肌で、喧嘩も口喧嘩もめっぽう強い。が……心の底では、ちったぁ女らしくせねばとか、色々と思う所があるらしい。乙女心は複雑。 鞠音や新奈と共に、花鈴防衛網の一角をしめていて、男子連中が花鈴をいやらしい目で見ていたりすると毎度の如く睨み付けて一喝してくれる。 ●魁納 悠希(かいな ゆうき) 通称ゆーくん。花鈴の一歳年下な彼氏さん。とってもらぶらぶ。美少年で純情で熱血漢。 鈴那と鞠音にとってはまさに優しいお兄ちゃんみたいな存在。 花鈴との清く正しい関係をこれからも続けていくであろう。でも、それでお互いに満足しているようだしいいのではないか。 「うーむ」 明るい日差しが燦々と差し込む土曜日の真っ昼間。一人、ガスコンロにかけられた鍋の中身がぐつぐつと煮えたぎっていくのを極めて哲学的な視点で見つめる漢(おとこ)がいる。色彩屋根裏図書館館長にして花鈴小屋マスターみなるでぃ改は何故か昼飯の用意をしているのだった。通常であれば職場こと、私営の貸本屋である図書館の館内にて昼食をとるのだが、今日に限っては予定が違っていたようだった。実のところ彼は、相棒であり仕事の同僚であり部下であり司書見習いである金髪碧眼の美少女、更志野新奈に対し気紛れで言ったものだ。 その内容は『あー新奈君、聞きたまえ。君がいつも必死こいて作ってる平凡極まる味の昼飯も毎日毎日いい加減食い飽きてきたので、今日はちょっくら気晴らしに家に帰って食ってこようと思うのだ。ま、普段からの無駄な努力に免じて君にもちょっぴり小遣いやっから、よかったら何か好きなものでも食ってきたまへ。きっと、君が自分で作るより美味いもんが食えるのではないかと期待されるはずだからな』と、思いっきり挑発でもしてるのか喧嘩でも売ってるのか、ともかくも配慮するそぶりすらなく酷い事を面と向かって言うのだった。それもあろうことか、わざわざ新奈が料理を作り終えそうになってから言ったのだから尚更酷いものである。 そして更に彼は続けて堂々と言ったものだ。『ちなみにだな。説明すると極めて長くなるのだが、これはとても陰湿な嫌がらせなわけであり、決して君を侮辱をしているわけではあるわけだが』と。ぬけぬけと悪びれるそぶりも見せなかった。そんなこと、わざわざ口に出して言うようなことじゃないでしょうと新奈は思ったが、しかし彼女はそんなことを言われても別段憤慨するわけでもなく、理不尽さのあまり悲しそうに泣くわけでもなく、はたまた小さな子供のように舌を思いっきり出してあっかんべーをするわけでもなく、何かを悟ってしまったかのように、大事な物を失ったかのように、大袈裟に言うのであれば全てを諦めてしまったかのように深〜く溜息をつき、最低野郎な上司を見つめながら言った。じっとりとした目はせめてもの抵抗なのかもしれない。 『そーですか。言われなくてもわかってますよ』 と、そのように至極淡々と答えたのだった。新奈としては、自分に対してはまあいいんですけれど、他の女の子にそーいうことをしたり言ったりしてはだめですよ、といつも釘を刺すように注意をするのだった。そんな事を言われたりされたりした娘はきっと泣くか悲しむか、怒るか傷つくかするはずなのだから。そうして館長は新奈の優しさとおおらかさと心の広さに気づくこともなく、自宅へと戻って行ったのだった。 『……はあ。ああもう』 常日頃顔を合わせて付き合っているせいか、ああいう傍若無人なところは痛いほどわかっているけれどもため息が止まらない新奈だった。 『でも、困りました。折角いっぱい作ったのに、一人じゃとても食べきれない量ですし……』 しかしながら、館長は新奈が毎日のように作ってくれる昼食をまずいだの平凡だの個性が無いだのぶつくさと散々ケチをつけつつも、何だかんだで食い始めたら決まっていつも三人分くらいはおかわりをしているわけで。そんなのが突然いなくなればいなくなったで今度は逆に料理が大量に余ってしまい、それはそれで新奈は困ることになったのだった。けれど、結論から言うとその問題は大丈夫だった。 『あの……』 新奈は思い切って声をかけてみる。それはいつも図書館に本を読みにやってきてくれる常連さんで、新奈と同じくらいの年頃で読書好きというよりは実際には新奈自身の事が大好きな、つまるところ新奈に会うのが真の目的で来ているという、いわゆるファンの男の子……無名なモブキャラ一号と言うべきか、仮名としてA君(あーくん)とでもしておこうか、ともかくそんな彼が丁度いい具合にやってきたのだから。新奈はちょっと申し訳なさそうにしながらも、A君に包み隠さずかくかくしかじかと事情を説明してから言ったのだった。 『もしよかったら、お昼ご飯ご一緒しませんか?』 と。そうしたら速効でOKを頂いたのだった。なにせ、A君にとってそれはそれはとてもとても大感激するほど嬉しいことなわけで、惚れ惚れするような可愛らしい笑顔でお誘いされて断る理由などどこを探してもあるわけがない。おいしいお昼ご飯に加えて憧れの女の子ととっても楽しくてほんわかほのぼのした時間が流れたのだけど、それはまた別のエピソード。 ――さて、新奈のような可愛いくもいたいけな女の子に日々陰湿ないじめをしては陰で喜んでる最低野郎の方に視点を戻してみよう。 「むぅ」 自宅のリビングにて、ずるずると安っぽいインスタントラーメンを食いながら、何か不満そうに唸る館長。それもそのはず。 「っかしいな。こんなに味気ないもんだったかなぁ?」 館長が食っているのは、定番中の定番とも言えるハコダテ一番塩ラーメンだったが、何故か今日はあんまり美味く感じなかった。別段食欲が無いわけでもないのに作るのに失敗したわけでもないのに、どうしてだろうかと首を傾げてしまう。確かにまぁ、適当に野菜をぶっこみメンマやらチャーシューやらを乱雑に混ぜ合わせた芸術性のかけらもない昼食ではあるのだがと自分でもわかっていつつ、それだけでは説明にならないと思うのだった。実際のところは、今まで散々罵倒し批判しコケにしてきた昼食……つまるところ、努力家の新奈が健気に作っているそれがどんどん美味しくなっていて、感覚が麻痺しているだけだったのだが、そんなわけがあるはずがないだろうと頑として認めることはない館長だった。 そんなこんなで新奈達とは正反対に、味気無い昼食の時間が過ぎていくはずだったが、しかし……。 「……何奴!?」 館長は背後に殺気を感じ、とっさに箸を手裏剣のように投げ付けていた。だが、それはことごとくはじき返される。 「ぬぅ! ……くぉっ!」 弾き返されるだけならまだしも、ビシッと鋭く飛んできた箸が館長の眉間をとらえようとして寸前で回避。そのまま壁に突き刺さる。その動きをみて、こいつはただ者ではない。相当な手練れであると館長は判断するのだった。それと同時にこれは極めてやばい、やられる! とも。それほどの脅威を感じていたのだった。 ――それから数時間後のこと。
とある学校の一室にて。授業も終わり、部活動の時間が始まっていた。 「今日は編み物の時間だよ〜」 みんなの前で、花鈴がとっても楽しそうににっこりと眩しい笑顔を見せながら今日の活動内容を宣言した。すると、周りのみんなも揃ってハモって『は〜い』と返事をするのだった。 それは空き教室の片隅にて、花鈴が会長さんを務めている手芸同好会の活動開始を意味していた。部外者も掛け持ち可能な課外活動で、文化祭とか特別な展示会の前くらいに限って活動するような、本当に地味で小規模なクラブ活動だった。主に、花鈴を中心とした仲良しな女の子達が何人か参加していて、その中には決まった面々もいるわけだが……。 「みゃーーー! ふみゃーーー! 手が勝手に動いちゃうんだみゃーーー! 止まらないんだみゃーーー!」 けたたましく鳴く猫。……もとい、猫又少女鞠音。当初は花鈴が器用に編み続けるのを見ていて感心して、自分もやってみようということになり、見よう見まねで頑張っていたはずが、いつの間にか本能で毛糸にじゃれついてしまい、全身毛糸まみれになっていたのだった。その行動はとても猫っぽいというよりも、猫そのものかもしれない。しかし、そんな困った状況に陥っていたのは彼女だけではなかった。 「ふにゃにゃにゃにゃ〜! 絡まっちゃうの〜!」 何故だか鈴那も鞠音と同じように糸に弄ばれていて、なかなか大変なことになっていた。いくら猫っぽい娘だからとはいえ、親友の鞠音と一緒にいる時間が長いからか、その習性まで似てきてしまった模様。そうでなければ説明のしようがないのだが、あるいはもしかすると単なる天然ボケなドジっこなだけなのかもしれない。 「あーもー。うーん。どうしても上手く編めないなぁ。力の入れ過ぎなのかなぁ。ねー花鈴ちゃん、もっかいコツを教えて〜」 そして隣には花鈴の親友の美穂もいた。どうにもこういう器用さが求められるものは苦手なようで、表情は芳しくない。最も、本人も自分のそんなところは最初からわかっていつつ、あえて『ちったぁ女の子らしくあらねばいけないよね』とか色々と思うところがあるようで、勉強がてら参加してみたのだった。乙女心は色々と複雑な模様。 「あ、うん。ちょっと待っててね美穂ちゃん。……鞠ちゃん、じっとして」 「みゃあぁぁ……。花鈴ありがとみゃ〜。助かったみゃ〜」 「鈴那ちゃんも。ほら」 「ふにゃにゃ……。おねえちゃんありがとなの」 花鈴は鞠音と鈴那に絡んで絡んで絡みまくった糸をてきぱきと優しくほどいて助けてあげつつ、美穂へ的確なアドバイスをしてあげる。そんな様をみんな微笑ましく見守っている。花鈴が誰からも慕われていることがよくわかる光景だった。 と、そんな時突如としてドアがガラッと開く。そして……。 「ぐ……ぐふぅ」 両足を引きずり、杖に寄りかかるようにして何とか歩む緑色の姿。全身傷だらけの血まみれの、とにかくずたぼろ状態の館長がそこにいた。 「ご主人様?」 花鈴の一言に、周りの視線が集中する。が、あの緑色の丸っこい不思議生物もしくは謎な物体は一体全体何ぞや? という、一般の人であれば必ず抱くであろう至極当然の疑問に対し館長は、口元を緩めて不適な笑みを見せ、腰に両手を当て、颯爽とした赴きで……。 「いかにも。俺が花鈴小屋ますた……げふぅっ! いだだだだっ! 痛い痛い痛いっ!」 悲しいかな、もはや名乗る余力も残されていないのか、ぶっ倒れてしまった。 「ご、ご主人様! 一体どうしたんですか〜!?」 「だっさいやつだみゃ〜」 「ふにゃ? ご主人様お昼寝なの?」 「いや、それは違うと思うよ鈴那ちゃん……」 心配する花鈴。いつも通りとっても冷めた口調の鞠音。そして全然状況をわかっていないようで、無邪気な天然ボケを炸裂中の鈴那と、それに対して冷静な突っこみを入れてくれる美穂だった。 「ご主人様ぁ〜!」 慌てふためく花鈴の叫び声が空き教室内に虚しく響いていくのだった。 で……。
「何があったんですか、一体」 一通り治療も終わり、救急箱をパタンと閉める音。優しい花鈴によって介抱された館長はしかし、やれ消毒液が染みるだの痛いだのもっと優しく手当しろ馬鹿野郎だの、散々見苦しくも我が侭放題のまま喚きつつ、全身包帯やら絆創膏まみれになっていき、ようやく落ち着きを取り戻してきたようだった。 「う、うむ……。奴らだ。奴らが来たんだ。俺は奴らにやられたのだ。バックアタックを食らってな」 「何が奴らだみゃ。思わせぶりなこと言ってないでさっさと結論から言うみゃ」 せっかちな鞠音が苛つきながら言ったのに対し、館長は叫ぶように言った。 「うーるっせぇぞこの腐れ猫! あだだだだ!」 「ご主人様! 動いたらだめですよぉ」 心配した花鈴が止めるも、館長は信じてもらえない悲しさを堪えきれず、尚も青年の主張をし続ける。 「ええいやかましいわこのでかちち! 俺はだな! 家で昼飯食ってる時に奴らに襲われたんだ! 奴ら……恐ろしくも強大な力を持ち、今この瞬間も世界中に勢力を拡大しつつある奴ら! 編み物で世界征服を企む狂信的戦闘集団! その名もサード・ニット・エンバイアーの奴らにな!」 ……衝撃の事実だった。あるいは笑劇、かもしれない。みんな言葉を失い、ぽかーんとしてしまった。 「……アホだみゃ。アホがいるみゃ。場外ホームラン級のアホがいるみゃ。救いようがないみゃ」 館長をじとーっとした目付きで見つめながら呆れ果てる鞠音と。 「ふにゃにゃ?」 相変わらず何もかもさっぱりわかってなさそうだけど、にこにこと可愛い笑顔のまま首をかしげている鈴那だった。 「アホじゃねぇ! マジっつーか、本当なんだよ! 信じろよおい!」 必死に主張するものの、普段の人徳故か全然信じてもらえない狼少年状態の館長だった。やはり人は普段からの行いが重要であるということがよく分かる実例であり、この様な無様なことにならないためにどうすればいいか、教訓とすべきであろう。 「あーのねぇあんた。誰だって信じられるわけがないでしょうに。そもそも、一体全体どーやって編み物で世界征服するっていうのよ?」 ため息をつきながら、至極ごもっともな突っ込みを入れる美穂に対し、館長は一瞬答えが出ず、どもりまくってしまう。 「それは……えーと。あー。うー。だ、だからほら! そう! 編み物をすることによって生じるスーパーオーラによって相手を撃滅していくんだよ! こう……体の内側からわき出る、上手く説明できねぇスーパーオーラによって!」 具体性皆無。論理性もまるでなし。とても苦しく、何一つわけのわからん説明だった。 「元からだけどとうとう頭がおかしくなったみゃ」 やれやれと呆れる鞠音。普段から喧嘩ばっかりしている仲だからか容赦ない。 「何を言っているんだか」 更に深くため息をつく美穂。 「ふにゃにゃ???」 相変わらずよくわかってなさそうに首をかしげる鈴那。 「畜生。おい花鈴。てめぇだけは信じてくれるよな? あァコラ」 「はい。まあ……」 みんなの中でただ一人花鈴だけが理解していると言うべきか、現実を受け入れていると言うべきか、きちんと話を聞いてくれていた。……実際には何と言っていいのかわからないけれど、館長が重症を負ったのは事実なわけで、とても心配そうに呟く花鈴だった。 「そーだ。そーなんだよ。わかったかこのでかぱい娘。おーい、他の連中も本気で信じろよ! っつーか頼むから信じてくれよ! ……って、また来やがるっ! 奴らがここに来るぞ! すぐそこまで来てる! 総員対ショック対閃光防御……っ! うお! やばいまた吹っ飛ばされる! ぬぐおぉぉぉぉっ! ぐおおおおおおおおっ! ぎゃんっ!」 バン、と激しい音を上げながらドアがぶちやぶられて吹っ飛ばされ、瞬時に辺りが光に包まれていき、吹っ飛ばされたドアがさりげなく館長に直撃し、ずがしゃ、と盛大な音を立てながら椅子や机を巻き込んで壁に叩き付けられてようやく止まった。こうして館長は、治療してもらった矢先にまたまたダウンしてしまうのだった。 「ご、ご主人様〜〜〜っ!」 「みゃーーー!? 何なんだみゃ一体!? 何が起こったんだみゃーーーー!?」 慌てふためき叫ぶ花鈴に、混乱する鞠音。 「何!? 嘘!? マジ!? すっごく胡散臭かったのにほんとのことだったの!?」 「ふにゃにゃにゃにゃ?」 とんでもなさそうな事態に遭遇し、流石に驚く美穂ちゃん。未だに全然状況がわかってない鈴那はある意味、将来結構な大物になるのかもしれない。 「フッ。……先程の男か。編物戦闘力5とは、何ともろい男だ」 とっても戦闘能力が高くて強いはずの館長を見下し、吐き捨てるように言い放つ女性の声。つまるところ、館長のように編み物など全くしない男等は無力なようで、彼女達が言うところの戦闘力的にはカス以下の存在であるということらしかった。 「ぐふぅ……。痛い……。死ぬ……。編み物怖い……。もうやだ……」 結局館長は舌を出しながら伸びてしまった。 奴らとは? 館長が言うところのサード・ニット・エンバイアーとは一体何なのか? そして、館長達の命運やいかに! 後編に続く!
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