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-Colorful party Vol.1 Friends-










登場人物:

●館長(かんちょう)
色彩屋根裏図書館館長。
いろいろとすけべであり、頭のネジが三本くらい抜けている。
更に、いろいろと最強なはずなのに、よくやられてる男。
曰く、ボスを倒すのは大得意だが、強い雑魚は苦手とのこと。

●更志野新奈(さらしのにいな)
色彩屋根裏図書館司書見習い。見習いにしてはとても優秀。
金髪碧眼でツインテール。髪質はふんわり。館長曰く足がとても綺麗、らしい。
外見的にはつり目でツンツンしていそうな割に実はそうではない穏やかな常識人。
館長にいじられ、セクハラされては必要に迫られて覚えてしまった体術を駆使して見事に撃退する日々。

●沖野花鈴(おきのかりん)
新奈の親友。花鈴小屋のヒロイン。
おっとりしていて家庭的で巨乳の三つ編み娘。とっても優しい性格で、みんなに慕われている女の子。
新奈の館長ことご主人様にいじられ、セクハラされては新奈と違い抵抗できずに胸とか触られてしまってる日々。

●沖野鈴那(おきのれいな)
花鈴の妹。
ちびっこくて元気いっぱいなお子様。人懐こい子猫的なおかっぱ妹。
可愛いものが大好きで、よく抱きついてはすりすりしている。姉とは対照的に極度のつるぺた。

●鞠音(まりね)
オッドアイな猫又娘。鈴那達の親友。鞠ねこ。
短気な性格で、館長の横暴に反抗できる貴重な人材。そしてポニテ。
ねこぱんち、ねこきっく、噛みつきに引っ掻き等、多彩な攻撃を誇る。










 更志野新奈(さらしのにいな)。それが私の名前。正確には、名字の更志野(さらしの)と名前の新奈(にいな)との間に『ヒストリー』なる奇妙なミドルネームが入ることになり、総合すると『更志野ヒストリー新奈』というのが正式なフルネームとなるのです。……なるのだけれども、名付け親のあの人には本当に悪いのだけれど、外では大体『更志野新奈』という日本人的な名前で通させてもらっています。何故そうするかと言うと、そうしなければ名乗られた側から必ずと言っていいくらいに返答があるからに他ならないからです。英語で言うならパードンミー? 日本語で言うならば、もう一度言って? 何という名前? ……はい? え? と、聞き返されるのです。私としては再度説明するのが面倒というよりも、またですかと思ってしまうので仕方がないのです。

「新奈ちゃん、こんにちは」

 ――穏やかな優しい声で名前を呼ばれた。それは長く艶やかな黒髪をリボンで可愛らしくまとめ、一房の三つ編みにしている女の子の声。その日、私は彼女と会うために外出したのでした。彼女は私を一目見て、いつものようににこっと微笑みながらご挨拶をしてくれました。その笑顔はきっと無意識なのでしょう。何と言うべきか、彼女は声もだけどふわりとした柔らかな雰囲気を漂わせていて、側にいるだけでほっとするような、優しさに包まれていくような、そんな気持ちにさせてくれる娘だと思います。

 彼女は私のお友達です。それも特に親しくて仲良しな、いわゆる親友だと思っています。多分、彼女の方も私の事を同じように思ってくれているんじゃないかな。

「花鈴ちゃん、こんにちは」

 可愛らしい素敵な笑顔でとっても優しい気持ちにさせてくれたので、私も同じように微笑んでみせながら挨拶をすることにしました。そうすることで、私が彼女からもらった優しさのお返しをできたらいいな、と思ったから。

 ……この娘は沖野花鈴ちゃん。本当に可愛い娘だと心の底から思います。そしてとても優しい人だとも。もしも私が男性だったと仮定してみたら、確実に思うであろうことが一つあります。この娘の彼氏さんとなる男性がうらやましいな、と。女性としてもそう思えるのだから男性にとっては尚更でしょうね。……もっとも、花鈴ちゃんの彼氏さんのことも、私はよく知っているのですけれども。悠希君という名のとっても可愛い男の子で、もちろん花鈴ちゃんととっても仲良しで、見ていて微笑ましくなるような甘々カップルなのです。けれどそれはまた、別のお話。どこかでお話できたらいいな、と思います。あ、でも。そのお話、花鈴ちゃんには内緒ですよ?

「いこっか」

 待ち合わせの時間より少し早いけれど私がそう言うと、花鈴ちゃんは頷いてくれました。楽しさに心がはずみます。

「うん」

 花鈴ちゃんと私には、とても奇妙だけど決定的な共通点が一つあるのでした。それは仕える人と言うべきか、創造主と言うべきかが同じ人なわけで。つまりは、私にとっては上司であり創造主であり、絶対に頭が上がらない人が館長なわけで、花鈴ちゃんにとっても同じような感じで、私が『館長』と呼んでいる人を花鈴ちゃんは『ご主人様』と呼んでいるのです。そう言うわけだからかもしれないけれど、私と花鈴ちゃんは本当にお話が合うのです。苦労しているのは一緒だから、かもしれません。あの破天荒な人には本当に振り回されるばかりだからです。本当に、まったく、深く溜息をつきたくなるくらいに……。

 ――それはまたさておき。今日は二人でちょっとお買い物をしてから、花鈴ちゃんの家に行く約束をしていたのでした。途中、色とりどりの可愛くて、おいしそうなお菓子をいくつも買って、花屋さんに立ち寄って二人でお話をしながら何を買おうか選んで、綺麗な花束を買いました。

 そうしてすべての用事を済ませ、花鈴ちゃんのお家に到着。花鈴ちゃんがチャイムを押すと、数秒後にドアが開きました。すると……。

「ただいま〜」

「おねえちゃんお帰りなさいなの〜」

「花鈴お帰りだみゃ〜」

 待ち構えていたように中から小柄な女の子が二人、元気よく花鈴ちゃんに抱き着いていました。

「わっ。鈴那ちゃん、鞠ちゃん〜」

 抱き着かれた花鈴ちゃんはちょっとびっくりしたように微笑みながら、二人の妹を優しく見つめました。

 小柄な花鈴ちゃんよりも更に一回り小さな女の子は沖野鈴那ちゃん。その名の通り花鈴ちゃんの妹で、とっても元気で無邪気な女の子なのです。おかっぱの髪に小さな三つ編みを左右に編んで大きなリボンを付けていて、人懐こい子猫みたいな女の子。いつもにこにこしていて子猫みたいに鳴いてみたりして、本当に可愛い妹……って感じがします。鈴那ちゃんみたいな妹が欲しかったな、と私もよく思うのでした。

 ……私は今、鈴那ちゃんのことを子猫みたいな娘と云ったけれど、もう一人の女の子は本当に本物の、正真正銘の猫ちゃんなのでした。それは鞠音ちゃんと云う名の女の子。これは聞いた話だけれども、人になりたいと強く思った子猫がどこかで素敵な魔法の力を得て、本当に人になっちゃったのだとかで。鞠音ちゃんを見ていると本当にそうなんだろうな、と微笑ましい気持ちになりながら信じてしまいます。鞠音ちゃんは長い髪を大きなリボンでくくってポニーテールにして、鈴那ちゃんに負けず劣らず元気いっぱいです。ぴょこぴょこと動く猫耳に加え、やっぱりふさふさと動く二房の尻尾が本当に可愛いくて、この前触らせてもらっちゃいました。鞠音ちゃん曰く『耳と尻尾に触っていいのは大好きな人だけ』とのことで、好かれて嬉しく思います。

 鞠音ちゃんにとって花鈴ちゃんは大好きなお姉ちゃんで、鈴那ちゃんはかけがえのない大親友。家族なんだなとわかります。

 さてさて、鈴那ちゃんと鞠音ちゃん――。二人のとびきり可愛い妹はひとしきり優しいお姉ちゃん――花鈴ちゃんに抱き着いて甘えた後で、ふと花鈴ちゃんの後ろにいる私の事に気づくのでした。二度、三度と大きな目をぱちくりさせた後、私に向かって飛びついてくるのでしょうけれど、一つ一つの仕草も可愛すぎます。

「ふにゃ! 新奈おねえちゃんなの〜!」

「新奈だみゃ! 遊びに来たのかみゃ〜! こんにちはだみゃ〜ん!」

「あは。こんにちは〜」

 もちろん私も花鈴ちゃんと同じように二人を優しく抱き締めてあげました。ああ……本当にもう、みんな可愛い! 大好き! と、強く思います。そんな私達を見て、花鈴ちゃんもくすくすと微笑んでいました。どうしてなのでしょう。ここにいるとこんなにも優しくて幸せな気持ちになっていくのは。勿論色んな要素があるのだろうけれど、その中でも花鈴ちゃんの人柄と優しさの影響は極めて大なのでしょうね。

 花鈴ちゃんがくすくす笑いながら、私に上がってと促してくれました。

 これから美味しいお茶と甘いお菓子と、楽しいおしゃべりが待っています。館長には悪いけど、少しの間だけ男子禁制にさせてもらうとしましょう。折角の、女の子だけの楽しいおしゃべりタイムが始まるのですから。え? どんなおしゃべりをするかと云うと……? そうですね。例えば、そう。まだ説明していなかったけれど、花鈴ちゃんは料理の達人なのです。それに対して私の技量は館長に云わせれば『料金分は何とか食べられるが、可もなく不可もない独創的に欠けるつまらん味』だそうで。これでもそれなりに努力はしているつもりなのだけれども、そう言う風に言われるとやっぱりとても悔しい。なので時々花鈴ちゃんに先生になってもらって、極意を教えてもらったりしているのでした。だからそんなお話を、甘いお菓子とおいしいお茶をお供にしていきたいと思います。

「おねえちゃ〜ん」

「花鈴〜」

「わっ」

 みんなで楽しくお話をしている最中に、鈴那ちゃんと鞠音ちゃんは何度も花鈴ちゃんに抱き着いては甘え、花鈴ちゃんは優しく笑ってる。その様はもう、見ているだけでこっちも笑みがこぼれてくるくらいに可愛い。……と、そんなことを思っていると、二人は今度は私の方に抱き着いてきた。本当にもう退屈知らずの元気な二人ですね。

「ふにゃ〜」

「みゃ〜ん」

「あは」

 可愛い子猫のような妹達。……二人とも小さくて柔らかくて暖かい感触。ああもう、最高に幸せ。可愛いぬいぐるみを抱いているみたいな気持ち。ついつい私も二人をぎゅむっと抱き締めてしまいました。

「新奈おねえちゃんの髪、きれいなの〜」

「そうだみゃ〜。きらきらしてるみゃ〜」

「ありがと〜」

 懐いてすりすりしてくれる二人。私達を見て、花鈴ちゃんもおかしそうに笑ってる。と……。ぴんぽーんとチャイムが鳴り、男の子の声が聞こえました。

『こんにちは〜』

 誰かが来たようです。私も聞き覚えのあるその声は、先程お話ししました花鈴ちゃんの彼氏さんこと、悠希君でした。

「ゆ〜君だ」

 ぱあっと一段と明るい笑顔を見せて、そのまま玄関へと向かう花鈴ちゃん。勿論その後に鈴那ちゃんと鞠音ちゃんも楽しそうな笑顔でとことこ着いていきました。鈴那ちゃんも鞠音ちゃんもきっとまた、悠希君に抱きついて甘えるのでしょう。

 ひだまりのような明るい日差しが差し込み、穏やかな暖かい風が頬を撫でていきます。……ああ、何だか気持ちがほのぼのしてくるのがわかります。ずっとここにいたくなっちゃうような、そんな幸せな気持ちに私は包まれていくのでした。










おしまい













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