Back






















-MySweetBanana- AfterDaysその1




















 衣替えも既に済んだ。半袖の制服は通気性も良くて肌に当たる風が気持ちいいけれど、ちょっぴり布地が薄くて恥ずかしいかもしれない。そんな感じを慣れていきながらいつの間にか夏が訪れるのだろう。徐々に暑くなり始めてきたなと誰もが実感するような、そんな頃のこと。

「おいそこの子猿」

「うき?」

 道を行くのは二人の男女。男の方に呼びかけられて、とぼけた調子で首をかしげて答える女の子。その様は本当に子猿のようで愛らしい。『小柄』と云えば聞こえはいいけれど、こいつの場合は単なる『ちびっこ』だなとか、失礼なことを章ちゃんは思った。云うまでもなく、背後を向いてお猿さんの仕草を真似ているのは春音。

「悪い。やっぱテスト勉強、頼むわ」

「うん。おっけ」

 章ちゃんは当初、自分一人で頑張ってみようかなと、ちょっと迷ったようだ。考えた結果、結局彼は協力を依頼してきた。春音はもちろん二つ返事で了解。

 今はテスト前故に授業はお昼までで終了。そんな、まだ明るい帰宅時のこと。目前に控えている中間テストの対策を真剣に考えてはいるのだが、なかなかに頭が痛いところなのはどうしようもない。章ちゃんは、授業はきちんと真面目に受けてはいるものの、不得意教科はどうしてもあるわけで、正直なところ不安で仕方がなかったのだった。それもそのはず。今度のテストの結果は進路にも響くし、はてさてどうしたものやら。

 けれど、章ちゃんには心強い味方がいた。子猿で天然で一見お馬鹿っぽい見た目にそぐわない(失礼だとはわかっているけれど、章ちゃんはそう思ってしまう)成績優秀な少女、春音と一緒に勉強すれば大抵の難局は乗り切れた。これまでも、これからも多分そうだろう。彼女はいつも助けてくれた。性格もあるだろうけれど、決して天狗になったりしないで優しく、楽しそうに教えてくれる。実のところ、教えるのが上手いから教師とか向いてるんじゃないか、等と章ちゃんは思いかけたけれど、まてよ、とも思った。春音のことだから、生徒のおもちゃにされそうな、そんな気がしたのだ。思えば思うほどその予想に確信を抱いていく。

「章ちゃんち? それともうち?」

 春音はどっちでするか、と聞いているのだった。最も、二人の家は極めてご近所さん故に、どちらでも大した差はないのだけれども。

「うちでいいか?」

 その一言で章ちゃんの家に決定。互いにお付き合いをしていて、尚かつ両親公認の仲だからか、抵抗はなかったけれど。それでも、女の子を自分の家に連れ込むのはちょっとアレかな、デリカシーに欠けるかな、と章ちゃんは思った。

「いいよ〜」

 章ちゃんがストイックな考えになるのも無理はなかった。当の彼女さんこと春音は無邪気と云うか、無防備すぎると云うか。とにかく無邪気で子供っぽかった。そんな春音が弾むようにとことこと歩く度に、セーラー服のスカートがちょっぴり捲れて白と水色の鮮やかな縞模様のパンツが見えてしまい、ついでに鞄につけたバナナのストラップがぷらぷらと揺れるのだった。それ(主に縞パンの方)を見る度に、我が彼女ながら色気がないな〜と、しみじみ思う章ちゃんだった。

「んじゃ。ごはん食べて、シャワーあびてくるねー」

「ああ」

 二人そろって帰宅完了。





…………





「おまたせー」

「おう」

 早速とばかり、私服に着替えた春音はやってきた。片手にはノートとテキスト、それに加えて筆記用具を持参。勝手知ったる我が家とばかり、章ちゃんの部屋に上がり込む。

「ほよ? そういえば、おじさんとおばさんは?」

 思い出したようにきょろきょろ辺りを伺う春音。何故か今日は見知った二人の気配を感じないのだった。それもそのはず。

「親父は出張中。お袋は友達数人と旅行中。つまりー」

 だから誰にも気兼ねすることなくできるから、今日はこっちでやろうぜ、と云うことなのだった。

「つまりー?」

 ほへ? と、首を傾げる春音。

「俺とお前はこの家に二人きりと云う訳だ」

「二人きり〜。わ〜い」

 無邪気に喜ぶ春音。章ちゃんはわざと低い声でくっくっくと笑いながら意味深なことを云ってみた。……のも関わらず、春音は全然危機感が無いと云うべきか、あまりにも無防備だった。わざと変なことを云って春音の反応を試してみたつもりの章ちゃんは『だめだこいつ。全然(体も心も)成長しちゃいねぇ』と、改めて思って顔を手で覆う。出来の悪い教え子を思う教師、あるいは子を持った親はいつもそのような思いをしているのだろうか。

「そーか。うれしいか。そーかそーか」

「うん〜」

 笑顔の春音にゆっくりと近づいていく章ちゃん。

「んにゅ? な〜に?」

 春音の小さな体をずりずりと押し込むようにして、壁際まで追い込んだ。決まり手は押し出しと云ったところ。

「こらお猿」

「うき?」

 こいつ、あくまでボケる気か。懲らしめてやる。と、なぜかお仕置きタイム。教育的指導のはずがいきなり懲罰扱い。おいコラ、もー許さねぇぞと云ったところだろうか。

「二人きり、ってことはだな。何でもできるってことなんだぜ? わーってんのか?」

「何でも? って。あ……」

 章ちゃんは尚も近付く。やがて、互いのおでことおでこがこつんと当たってくっついた。視線が数センチのところで交差する。瞳の色さえはっきり見えるくらいの距離。春音はようやく章ちゃんがどういうことを云っているのか理解したのだった。慌てて逃れようと……したけれど、時既に遅し。逃げようにも抱きしめられ、体をがっちりと固定されてるので身動き一つ取れない。

「し、章ちゃん〜」

「何だ?」

 ふに、と柔らかな感触。今度は互いの鼻の頭がくっついた。そして今度はその下……唇が近付いてくる。何だかとてもいけないことをしているような、そんな気持ちになって春音は戸惑う。

「く……っついちゃう、よ?」

 このままじゃ……と、どこまでも純粋な春音は、正しいけれど間抜けな事を聞いてしまう。

「いや、くっつけようとしてるんだが?」

 章ちゃんも呆れて、そのまんまの答えを返す。

 二人の唇の距離、約二センチメートル。呼吸の温もりさえ熱く感じる。

 春音にとっては章ちゃんの一言が確信になった。やっぱり〜と、そんな感じに。春音と章ちゃんはキスをするのは初めてじゃなかった。それどころか、どきどきの初体験は既に経験済み。けれど春音は、ファーストキスの時よりも遥かに緊張して、恥ずかしがっているのだった。普段、滅多に……と云うよりも初体験の時以来キスなんて、はてさて何回したっけかな? とか、そう思う程度の回数だったのだから。これまで何故か彼氏と彼女が行うような事はスルーしてきたのだった。

「ぁ……」

 ゆっくりと、数ミリ単位で距離は更に狭まる。……一センチメートル……五ミリ、三ミリ辺りにまで達したところで、春音は堪えきれずに目を閉じた。チキンレースは章ちゃんの勝ち。もうだめ……もう恥ずかしすぎて目を合わせてられないよと、春音は強く思った。

 私、もう数秒もしないうちにキスされちゃうんだ。恥ずかしいから、お願いだから焦らさないで早くしてよ〜と、春音は悶えそうになりながら、頬を真っ赤に染めながらそう思ったところだった。異変は訪れる。

「とあっ!」

「うきゃっ!」

 突然、春音のおでこにぺちんと痛みが走る。章ちゃんがデコピンをかましたのだった。いきなりのことに、お猿のよ〜な奇声を上げてしまう春音。

「とあっ! とあとあとあとあとあっ!」

 そして更に章ちゃんの攻撃は続く。ぺちぺちぺちぺちぺちと、連打。

「あぅ、あぅ、あ〜ぅ〜」

 その度に春音は目を回してのけぞり、両手でおでこを抑える。そんな様子がコミカルで可愛らしい。

「ったーく、お子様なんだから。これに懲りたらもうちったぁ警戒せぃっつーの」

「う、う〜う〜」

 とっても不満そうな春音だった。





そして改めて、お勉強開始。





「ここは、こうだよ」

「なるほど」

 とても。

「ここは?」

「こうなるの」

「そうかー」

 淡々と。

「これは、こうだろ?」

「正解〜」

「よし。わかってきたぞ」

 試験勉強は着実に進んでいくのだった。

 二人とも揃って集中していたのか元から息が合ってるのか、とにかくてきぱきと過去問をこなしていき時間は進む。そうしてキリの良いところまで進んだので、そろそろ休憩しようか? と、章ちゃんは云うのだった。……云いながら、あることに気付く。春音が何故かとてもおとなしく、神妙な表情を見せていることに。普段なら『バナナ』と、一言云えば無邪気にはしゃいだりするのに、今日に限って云えば。

「春音」

「……?」

「どうしたんだ?」

「別に。どうもしてないよ」

「……バナナ、食うか?」

「ん。いい」

「!?」

 そっけない返事。何ぃぃぃっ!? 何だ!? 何があったんだ!? 章ちゃんは衝撃を受ける。がーーーんとショックを受ける。とにかく普通じゃない。バナナをすすめてもNo thank youな意味での『いい』とは、今の春音は何かがおかしい。はてさて、俺は何か悪いことをしてしまったのだろうか。今日の春音は実は体調が悪いのではなかろうか。もしくは何かまずいことでも起きてるんじゃないか、と、深刻に考えてしまう。春音は本来お猿で子猿で天然なアホの娘のはずなのに、いきなりシリアス路線に転向か!? と、失礼なことを。

 が。真実はまるで違った。

 春音は勉強中、ずーっとあることを思い浮かべていたのだった。

(キス……きす……キス……)

 つい先程の事。不敵な笑みを浮かべながら近付いてくる章ちゃんに、逃げることもできず、目を逸らすことも出来ず、瞳の色すらはっきり分かる距離で見つめ合った。いつもの天然ボケな答えも許してくれないような、ちょっと怖いくらいに真剣な雰囲気だった。

 そうして抱きしめ合った。章ちゃんの体は大きくて、力があって太い腕をしていて。それに対して春音はクラスでも一番小さな体。章ちゃんくらいの力があれば、軽々といとも簡単に持ち上げられてしまうし、強く抱き締められたら痛くてたまらない。がっちり固定されようものなら絶対に逃げられない。圧倒的な力関係だった。

(キス……して欲しかった……)

 絶対に逃げようのない状況で、もうだめ。唇同士がくっついちゃうよと、そう思ったから、素直に云ったのに、章ちゃんはからかうようにあっさりと、そのつもりでこういうことをしているんだ、と云った。心の準備なんてできなかった。する時間すら与えられなかった。

 だから思わず覚悟をして目を閉じた。もうどうにでもなって、と思ったから。

 それなのに。

『とあっ!』

『うきゃっ!』

 おでこにぺちんと痛い感覚。罰ゲームのでこぴん。

 相変わらずお前はあまりにも無防備すぎるのだ、と、章ちゃんの教育的指導が入ったのだった。全ては春音を戒めるための脅しと云うべきか、お仕置きだった。けれど。

(ひどい、よ)

 春音は本気になっていた。キス、して欲しいのに。と、何度も思った。だからか、休憩中のおやつに大好きなバナナのことを云われても、情報が頭に入っていかなかった。つまりは、ぽけーーーっとしてしまっていた。最も春音は普段からそうだけど、今はもう顔が火照ってしまってどうにもならなかった。力強い体で抱きしめて、自分の小さな体を包んで欲しかった。

(無防備で、いいもん)

 章ちゃんが望むなら、何をされても平気。むしろ、して欲しい。春音は心底そう思った

「春音。春音〜。春〜。お〜い」

 章ちゃんが呼びかけるも、反応が無い。

「てりゃ!」

「ん……」

 業を煮やした章ちゃんは、バナナの皮を向いて春音の口内に突っ込んだ。

「んにゅ、んにゅ……ん、ん……」

 そうして春音はようやく気が付いて、もぐもぐと食べる。それはもう、何事もなかったかのように。そして食べたバナナは普通においしい、と思う。思うけれど、こんな事では誤魔化されないもん、と思った。

「やっと気付いたか。変だぞ春音」

「あたりまえ、だよ」

 ちゃっかりごっくんと飲み込んでから、まじめな顔をして云う。

「章ちゃんがキスしてくれないからいけないんだもん」

「……は?」

「あのね章ちゃん。子供っぽいけど、ちっちゃいけど、お猿だけど。私だって女の子なんだからね。章ちゃんと同い年の」

 少し強気に乙女心を主張してみる。自分が小動物的だと云う自覚はあるようだった。

「もしかして、さっきのことか?」

「もしかしないの!」

 ぷーっと頬を膨らませて拗ねてみせる。そして、章ちゃんに抱きついた。

「キス」

「春音?」

 目を閉じて章ちゃんの顔の方を伺う。完全に、普段と立場が逆転してしまっていた。章ちゃんは呆然としている。

「してって云ってるの〜!」

 春音はちょっと苛立ってしまったのか、普段絶対云わないようなきつめの口調になってしまった。自分が自分ではなくなっていくような気がしていた。でも、今はいいと思った。こうしないと、頭に浮かんだもやもやは晴れないだろうから。

「あ、ああ」

 それでも、こんな気持ちになるのは全部章ちゃんが悪いんだよ、と。免罪符のように、自分に言い聞かせて大胆な事をしてしまう。

 やがて章ちゃんの腕に抱かれて、頬と頬が触れて、キスをした。

「ん……」

 ようやくしてくれたと云うべきか、念願のキス。暖かくて柔らかな感触に、春音は無意識のうちに小さな声をもらしてしまう。そのまま、触れ合ったまま数秒が経過する。長い長い、硬直したような時間。

 二人揃って思い出したかのようにして、ようやく離れる。抱きしめ合っていた体も解放されたように力が抜ける。すぐさま春音は顔が熱くなる。

「……あ、あ、あ」

「春音?」

「はぅ〜。あああ……。う〜〜〜。はううう〜!」

 恥ずかしいことしちゃったと、今更ながらに実感したから。

「は、恥ずかしいよ〜。あああ、あああ、あああ〜ぅ〜!」

 おろおろ、じたばた、そんな表現がぴったりの春音。勢いに任せて何て事しちゃったんだろう。章ちゃんに何てこと云っちゃったんだろう。私、一体どうしちゃったんだろう。そんな思いが駆け巡り、ひたすら戸惑う。

「落ち着け。まあ、バナナでも食え」

「え? え? バナナ?」

「ああ。ほれ」

「う、うん。あ〜ん」

 こんな時はやっぱりバナナ。甘〜いバナナを一口かぷっと食べる。もぐもぐすると、口の中に心地よい味が広がる。春音はそうしてようやく落ち着いた。

「うまいか?」

「うん。おいしー」

 しかしまあ、と章ちゃんは苦笑。

「キス一つでこんなに慌てふためいて動じるとは」

「だってぇ。恥ずかしいものは恥ずかしいんだもん」

「でも、普通はキスだけじゃ終わらないんだぜ? わかってるか?」

 そう云って章ちゃんは大人ぶる。先程と同じ展開だ。また誤魔化されるのは嫌だった。だから春音は云った。

「わかってるもん! 無防備で……いいもん! 章ちゃんなら、どんなことされても平気だもん」

「おわ」

 本気の言葉。今度は春音の方から飛びかかるようにして、キス。

「逃げないで」

 何故だろう? 春音は悲しくないのにとても切なくなって、涙がぽろぽろとこぼれて落ちた。そんな自分自身に戸惑って、章ちゃんをぎゅっと抱き締めた。離しちゃ嫌だよと云うかのように。最後までしてくれなきゃ嫌だよ、と……。

「わかったよ」

 春音の中に何か強い覚悟のようなものを見たのか、章ちゃんも真剣になった。

 改めて、とばかりにもう一度キス。何度しても飽きないキス。こんなに心地良いのに、どうして今まで全然してこなかったんだろう。とても不思議に感じた。

「……ん」

 春音は目を閉じて、自然に受け入れた。さっきとはちょっと違うどきどきの中に、今度は嬉しいと云う感情がミックス。とても楽しいキスだった。相手を好きだと思う気持ちと相手から好きだと思われる気持ちを互いに感じ合う、キスでのコミュニケーション。





一枚、一枚。





ゆっくりと、優しく。





章ちゃんは、春音の服を脱がしていった。





カラフルで可愛らしい、柔らかい布地の服を。





「あぅあぅ」

 いつしか春音は一糸まとわぬ姿にさせられていた。春音は思う。これってこれってこれって実は実は実は……とってもとってもと〜っても恥ずかしい格好にさせられちゃった? と。今更気が付いたように。後悔しても、まさに手遅れだった。まさに、まな板の上の鯉と云ったところ。

 そんなわけで春音は恥ずかしくてどうしようもないので、ソファーに横になって足を閉じ、もじもじとしながら小さな胸と股間を手で覆う。

「隠さないで、見せてくれよ」

「うぅ……」

 好きな人が望んでいる。私の恥ずかしいところを見たいと云っている。だから春音はきゅっと口を噛み締めながら手をどける。と、ほんの少しだけ膨らんだ胸が見える。けれど、章ちゃんはそれだけでは許してくれなくて追加要求。

「あそこも」

「あぅ……」

 春音は両手で顔を覆いながら、股を開く。ゆっくりと露になるそこは、産毛のように薄い毛の中に、見間違えようのない一筋の割れ目。

「ああ、ああ、ああ……や、あぁぁ……」

 恥じらいに震える春音を見て、章ちゃんは極めて自然に……。

「やっ!? あっ!? しょしょしょ……章ちゃんっ!? ななな、何すんのぉっ!?」

 突然のことに目を見開いて動転する春音。今、章ちゃんは春音の股間に顔を埋め、舌で割れ目にむしゃぶりついたのだった。

 じゅぷじゅぷとなめ回されて、春音は絶叫を上げる。

「だ、だめーーーーっ! だめっだめっだめぇっ! そんなとこ汚いよぉっ! 恥ずかしいよおおっ! くすぐったいよぉぉっ! えっちえっちえっちぃぃぃ!」

 春音があんまりにも恥ずかしがってるので、章ちゃんは悪いことをしているような気になってしまう。

「えー。じゃあ、どんなことならしていいんだよ」

「そ、それは。えっと。えーと……あぅ。あぅ……あぅぅ……あ〜〜〜う〜〜〜」

 他のことを思い浮かべてみても、どれもこれも恥ずかしいことばかり。結局は同じことのようだった。

「わ、わかった……よぉ。うぅぅ。いいよぉ……」

 結局代替案は何も浮かばなく、再び足を開いて章ちゃんの愛撫を受け入れる。章ちゃんも愛撫を再開する。

「あぅ。はぅ。あぅ〜。くすぐったいよぉ。あ、あ」

 章ちゃんがなめる度にぷちゅ、ぷちゅ、と濡れた音が響く。

「み、ないでぇぇ。あ、あぁぁ」

「綺麗だぞ」

 章ちゃんは春音のとろとろに濡れた、熟れた果実のような秘所を指で押し広げてみせる。中まで見られてしまって、春音はきつく目を閉じている。

「やあぁぁぁ。入れちゃだめだよぉ。あ、あ……きゃうっ!」

 春音の拒否も虚しく、ずぷぷぷ、と章ちゃんの人差し指が奥まで埋まり込んで行く。

「濡れ濡れだな」

「あぁぁぁ。云わないでぇぇぇ。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいいいぃぃぃ。指入れちゃだめえええ」

「どーして?」

 その理由は簡単。

「お、んなのこ……なんだよ? 私……。女の子……だから、そこは……体、恥ずかしいとこ、なの。はぅぅ」

「そこって?」

「……」

 そんなエッチな言葉、云えるわけがない。だけど章ちゃんは挑発してくる。

「云わないとこれ、入れるぞ」

「う〜」

 そう云ってから、バナナの先端を春音の秘所にあてがう。

「お……」

「聞こえない」

 ずぷぷと押し込む。

「きゃふっ! う、うう……。お……ま、ん……こ」

 消え入るように、ノイズ混じりな一言だった。

「ま、いいだろう。合格」

 章ちゃんはとってもひどかった。意地悪だった。鬼だった。鬼畜だった。自分で合格と云ったのにかかわらず、春音の秘所にはずぷずぷとめり込むバナナ。先端部分が埋まり込むのだった。それを見てとーぜんの事ながら、春音は抗議する。

「あーーーーっ! 章ちゃんの意地悪ぅぅぅっ!」

「バナナと一つになった気分は?」

「えっちぃ!」

「えっち? 俺が?」

「えっちだよ〜。女の子の恥ずかしいとこに顔埋めてなめなめしたり、バナナ入れちゃったりするなんて……」

「ほぉ。じゃ、さ」

「え?」

 章ちゃんは、春音の体をうつ伏せにさせて。目前に……。

「男の子の恥ずかしいところに顔埋めてなめなめしてみようぜ」

「え……あ、あ、あ。んぷうううっ!」

 驚く春音の口内に、章ちゃんの太く大きくなったものがねじ込まれた。同意する間もなかった。

「んぷ、んぷ、ん……」

 それでも大事に、傷つけないように愛撫を始める。舌を使って優しく丁寧になめまわす。小さな口を目一杯開けて、一生懸命頑張る春音。章ちゃんが気持ちよくなれるのなら、と、ご奉仕モード。

「上手だぞー」

「んん、んん」

 春音の可愛らしい顔に陰毛が当たり、じゅぷじゅぷと淫靡な音を立てている。つるつるの肌を犯すかのように背徳的だった。

「気持ちいいぞ。春音のお口は」

 章ちゃんは春音の頭を掴み、ゆっくりと腰を前後に振り始める。

「ん、ん、んーっ」

 くぐもった声を上げて頑張る春音。

 動きは段々と早まっていく。慣れていないせいもあって、章ちゃんはすぐに達してしまった。

「出すぞ」

「んぐぐ。ん、ん、んーーーっ!」

 そして射精。章ちゃんはちょっと迷った後で、春音の口から引き抜いて。

「あぷ。あ、あ、わっ! あふ〜〜〜っ!」

 二度、三度、四度と春音の顔を汚してしまった。

「う、うう。ひどいよ〜。けほっ。べ、べとべとだよ〜」

 垂れる精液を指で拭い、少しむせながら抗議する春音。

「これで春音もえっちで変態だな。男の股間に顔埋めてなめなめしたりしちゃったんだから」

「し、章ちゃんからしてきたんだよ〜」

「その割に一生懸命お口開いて、舌でなめなめしてくれたじゃないか」

「だっ……て。それは」

 反論できない春音の顔に、章ちゃんは再び股間を押し当てる。

「さすがはバナナフェラ検定一級保持者だな」

 完全に馬鹿にしてる章ちゃんだった。春音は反論しようとしたが、できなかった。

「んぶ……」

「玉、なめて」

 春音はちゃんと云うことを聞く。その度にいい子いい子と章ちゃんは頭をなでる。小さくて可愛らしい舌で一生懸命なめる。それはあたかも春音を従順な奴隷にしてしまったかのような、そんな背徳感。

「じゃ、そろそろ」

「……」

 遂に中に入れる時がやってきた。春音は押し黙り、目を見開いて緊張する。

 ソファーの上で、仰向けに寝そべったまま両足を開く。春音の割れ目辺りは充分過ぎるくらい濡れていた。もう、恥ずかしいとか恥ずかしくないとか、そんなことを云っている場合じゃなかった。

「春音。おねだりするんだ」

「え……?」

 章ちゃんは耳打ちする。

「ほら。云え」

「う……」

「云わないと、してやらないぞ」

「わ、私のお……こ、に。し、章ちゃんの……入れ、て……」

 ささやくように小さな声は聞こえない。

「聞こえないよ」

「うう、うう。い、意地悪ぅ! 恥ずかしがらせないでよぉ〜! し、章ちゃんのおち○ちんを私のお○んこに入れてって云ってるんだよぉ〜! いじめないでよぉ〜! 焦らしちゃいやだよぉ〜! お願いだから早くしてよぉ〜! ふぇぇ〜〜〜ん!」

 春音はいやいやと顔を振る。自分がえっちだと認めるから、お願いだから、と。そう云った。すぐさま、ずぷ、と挿入してくる感覚。入り口前で準備OKだったそれに、突入OKのサインが出たのだった。

「はう!」

「痛いか?」

「ん、あ……ううん。大丈夫。動いて」

「ああ」

 そして章ちゃんは力を込める。ぐぐぐ、と春音の中へと押し込まれて行く。

「あ、あ、あ」

 小柄な春音に章ちゃんが覆いかぶさると、すっぽりと埋まってしまう。その様が何だかとても悪いことをしているような、小さな子にいたずらしているような、そんな気になってしまう。

「……」

 ふと、何かを思い出したかのように、章ちゃんは春音の胸を見つめる。

「相変わらず。小さいな」

「ほ……ほっといてよぉ」

 春音の、殆ど膨らんでいない胸。淡い桜色の小さな乳首と乳輪が申し訳程度にちょこんと付いていた。

「普通。えっちするときは必ず胸を揉んだりいじったりするもんだが。ごめん。正直、すっかり忘れていた」

 どうも冗談ではなく本当だった模様。決して無視したわけではなかった。

「そ、そんなこと謝んないでよ〜!」

 春音も年頃の女の子なわけで、胸の大きさについては結構気にしているようだ。

 一つになりながら何をやっているのだろう。二人そろってそう思う。

「大体。これでも……少しだけ、大きくなったんだから」

「そうなのか?」

「そうだもん。毎日牛乳飲んで、もみもみマッサージしてるの」

 春音は涙ぐましい努力をしているのだった。

 云われてみれば、と章ちゃんは思う。初めてした時に比べて、ほんの僅かながら膨らんでいる。とは云え、その盛り上がりは殆ど乳輪と一体化したかのような程度のものだけれども。

「そっか。そいつは悪かったな」

「あぅぅ」

 その努力に免じて指で左右の乳首をこね回してやる。春音はくすぐったそうに震える。胸は小さい方が感じやすいのかな、とか章ちゃんは思った。胸を触れられて、目を細めて感じる春音は可愛くて、ついついいじめたくなってしまう。

「可愛いよ。お前」

「ん、ん」

 そうしてまたキスをした。

 春音は章ちゃんにとって小さな彼女。昔からずっと見てきた。いつも側にいた。今更ながら、愛しさが込み上げてくる。思わず膨らみのない胸を強く揉んでしまう。

「あ、あ」

 同時に少し動くだけで、春音は切なげな声を上げる。

「可愛いよ」

 章ちゃんはまた同じことを云って、キスをした。

 きつく目を閉じ、必死に耐えている春音を見て、少しでも苦痛を和らげてやりたい。まだまだ感じさせたりいかせたり出来る程し慣れてはいないけれど、せめてそれだけはと思う。

 自然と動きが早くなる。徐々に射精感が込み上げてくる。

「あっあっあっあっあっ」

 おもちゃのように、いいように揺さぶられる春音に章ちゃんは云った。

「いくぞ」

「う、ん……あっ!」

 一際強く突いた後、引き抜いて、射精。春音の小さな胸にぶちまけた……。





それからしばらくして。ソファーに腰掛けて寄り添う二人。





「章ーちゃんっ」

「ん」

 理由もなく楽しそうな春音は章ちゃんの左肩の上に自分の顎を置いた。

「何だお猿」

「うきうき」

 お猿の鳴き真似をしてみると、章ちゃんは苦笑しながらバナナの皮を剥いて差し出した。

「ほれ、食え」

「あ〜むっ……むむむむっ!?」

「甘いな」

 春音が大きく口をあけて一口ぱくっとしようとしたところで、章ちゃんはバナナを引いた。お陰で春音は勢い余って……。

「ほにゃ!」

 ソファーの上から落ちそうになり、慌てて章ちゃんの体にしがみついたのだった。そして、そのどさくさに紛れて。

「お」

「てりゃ〜!」

 春音の方から章ちゃんの頬にキスをした。

「お猿はキス魔か」

 春音はすっかりキスが気に入ってしまった模様。

「うききうきうき。バナナをくれるまでキスし続けるのだー……んひゃっ!?」

「いたずら子猿はお仕置きだな」

「はうっ!?」

 しがみついていた春音の体を軽々とひっくり返してソファーに押し倒し、そのまま唇をふさぐ。今度は我慢比べのように離さない。五秒、十秒と続く。

「うぅ、うぷ……んん、ん、ん、ん……んーーーーっ! ぷはぁっ!」

「ギブアップしたか?」

「しない、もん……負けない、もん」

 そしたら章ちゃんは、お仕置きが足りないとばかりに今度は、春音の上着をぐいと一気にたくしあげる。小さな小さな粒のような膨らみが二つ露になる。

「ひゃっ! あ、ああ……し、章ちゃ……はうううっ!」

 突然のことに、さすがに恥ずかしくて春音の敗北。

「ブラいらずのエコロジー乳だな」

 失礼なことを云いつつ、舌先でぺろんと乳首をなめた。先程忘れていた胸への愛撫をしてやろうと、章ちゃんはそう思ったのだった。

「ひゃうんっ!」

 春音の乳首は起っていて、舌先でつっつかれてぷるると形を変え、揺れる。

「す、吸っちゃやああ」

 章ちゃんは乳首に吸い付いた。ちゅーちゅーと赤ん坊のように吸ってみる。春音はその度に恥じらい、頭を振る。

「おー。伸びる伸びる」

 散々吸い付いたあとで。今度は春音の乳首を唇で摘まんで引っ張った。

「ひゃああああ! お、おっぱいだめぇぇ。おもちゃにしないでえええ」

 ほんの僅かな膨らみだった。春音の乳房は、乳輪よりわずかに大きな円を描いて盛り上がっていた。章ちゃんが春音の乳首を引っ張ると、それに付随した脂肪がぷるんという感触とともに伸びた。そうして離すとぷるると揺れる。小さいけれど柔らかな弾力だった。

「も、もお……おっぱいいじっちゃだめ。はずかし……うぅ」

 いまさら隠すまでもないのに、胸に腕を当てる。乳首責めがよほど恥ずかしかったのだろう。章ちゃんは、呆然として身動きしない春音の体を持ち上げて。

「え……あ……は、恥ずかしいよおおおおっ!」

「さっきからお前恥ずかしがってばかりだな」

「だってだってだってぇぇ。こ、んな格好……あぁぁぁ」

「ただのまんぐり返しだろ」

 ……ただの格好ではないのは確かだ。章ちゃんは春音の中に指を突っ込み、激しくかきまぜながら云う。

「ひあっ! ひはぁぁっ! やああああっ! だめええええっ!」

「何がだめなんだか」

 じゅぷじゅぷと音を発てる春音の秘所。何度となくかき混ぜてから、章ちゃんは春音を立たせて、背後から一気に挿入。すぐさま動く。その度に春音の柔らかなお尻がたゆみ、ぱんぱんと音が響く。

「はう! はぅ! はぅっ!」

 春音は涎を垂らしながらあえぐ。一度火が付いたら、二人は止まらない。第二ラウンドの開始。春音は完全におもちゃにされていた。

 二人の交わりは続く。

「好き。好き……好きいいい」

「おいお猿。もっと腰振って」

「う、ん。お猿、がんば……る。はう! あふ! あっあっ!」

 両足を腕で抱え込まれ、宙に浮かされる。そのままゆさゆさと揺さぶられて、春音は喘いだ。

「はうっ! あぅっ! こ、のかっこ……はずか……し。あうっ!」

 そうして散々いろんな体位で乱れた後、射精。

「ご褒美」

「あむぅっ! ん、ん」

 それと同時に、春音の口に、バナナのようにでっかいものが押し込まれるのだった。熱いものが喉の奥に出されて、軽くむせながらも頑張って飲み込む。

「んむ、んむ、ん」

 傷を付けないように、大事に、一生懸命ほお張る春音。

(好き……。好き……。好きぃぃ……)

 そしてしばらくして、今度はどぷっとたっぷり顔に出されても、春音は笑顔。

「章〜ちゃん。大好きぃ……」

 笑顔はべとべとの精液に汚されていた。ぺろりと舌を出す春音。

 好奇心旺盛な子猿のいたずらに、章ちゃんもま、いっかとか思うのだった。





その日の夜。





「章〜ちゃんっ」

 ソファーの上にて、じゃれ合うように章ちゃんに抱き着く春音。テーブルの上にはバナナのデザート。試験勉強も充分すぎるほどやったので、今はくつろぎタイム。

 いわく、章ちゃんのご飯を作ってあげたいということを口実にして、お泊まりすることにしてしまったのだった。そんな事にあっさりOKを出す春音の両親もどうなのよ、娘の貞操が心配じゃないんかいと章ちゃんは思わないでもなかった。最も、今更そんなもっともらしい事を突っ込む権利などありはしないけれど。

 何しろ、章ちゃんの両親も公認している仲なわけで。

「えへへへへ〜」

「はいはい」

 思う存分甘える春音を見ていると、ま、いいかと思えてくるのだった。

「好き〜」

「おいお猿。だんだん抱き着き魔になってきたな」

「うき? それだけじゃないんだよ〜。お猿さんのキスをくらえ〜!」

 そう云いつつ、章ちゃんの頬にキス。

「――訂正。キス魔にもなってきた」

「あは。キス好き〜。大好き〜。うりゃうりゃ〜。えっへっへ〜」

 キスの嵐のどさくさに紛れ、章ちゃんは抱き着く春音の胸をさりげなく触った。が……本気で気づいていない模様。やっぱり無防備だった。

「小さいなぁ」

「はにゃ?」

「いや、お前の乳」

 春音は笑顔で開き直る。

「えっへっへ〜。小さなおっぱいには切ない想いがいっぱいなのら〜」





飽きるまでじゃれ合い続けて。





疲れたら、一緒に寝てしまうのだろう。





そんな風に、夜は過ぎて行く。





甘いバナナの味。余韻のように浸る。





春音と章ちゃんの一時。





それは、かけがえのない夏の一頁だった。




















おしまい























Back