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 午前中の授業は十分前で終了し、今は自習という名目のフリーな時間であった。数学の教師曰く『キリがいいから』ということだが、生徒にとってそういうことほど歓迎すべきものもないだろう。だって、授業はだるいもんね。そして、それを証明するかのように、みんなの表情は授業中よりも生き生きとしているのであった。実に素直で現金なもんである。
「おい、章。聞いてんのか? お〜い」
「んー?」
 相変わらず机に突っ伏したままの少年。……章と呼ばれた彼は、親友の問いにけだるそうにほお杖をついて適当に相槌を打つ。
「お〜い、っつってんだよ」
 ああうるせぇ。折角うとうとしてて気持ちいい一時だっつーのに、と彼はちょっぴりイラつきながら思った。
「俺の前で『お〜いお〜い』云わないでくれ。死んだじいさんを思い出す」
「なんでやねん」
「いやな。うちのじいさんが死ぬ前に、俺んちで介護してた時期があってな。夜な夜な叫ぶんだよ。『お〜い、お〜い』って、誰かを呼ぶようにさ」
「あのなぁ」
「だから俺は『お〜いお茶』飲めないんだ。じいさんの顔が頭をよぎってなぁ」
 ううううと、トラウマになっているかのように悲しそうに呟く。
「……」
 呆れた調子の親友。
「うるせぇなぁ。さっきから何だよ?」
 彼は長髪を後ろで結んでいて、一見すると軽そうでかなりのキザ野郎に見えるけれど、中身は硬派で真面目な性格なのであった。
「やっぱさぁ、ありゃやばい思うっての」
「何が?」
「わかってんだろ。春音ちゃんのことだよ」
「はーぁ?」
 彼は名を久里浜章といった。通称章ちゃんである。そしてその章ちゃんに話しかけている親友は天空橋隼人君であった。
「あのお猿さんの何がやばいって?」
 お猿さんと呼ばれた春音という名の女の子は、章ちゃんの彼女である。彼女をお猿さん呼ばわりする不届きな彼氏なのであった。
「そのお猿さんなところがやばいんだって!」
 彼氏の親友にもお猿さん呼ばわりされる可哀想な彼女。
「わーっとりまんがな。んなことくらい」
「だったらなんとかしろよ! 俺はな、お前と春音ちゃんのことを思ってだな! 放っておくとそのうちやばいことになるかもしれんぞ!」
「へいへい」
 どうにかできたらしてるわい、と彼は心の中で思うのだった。
「章ちゃん。天ちゃん。何話してるの〜?」
 そこに、彼らの云うところのお猿さんがひょこっと現れた。
「……別に」
「あ、あはははは。な、何でもないよ〜」
 無関心に素っ気なく返答する章ちゃんと、笑って誤魔化す天空橋君であった。







-MySweetBanana-









 成績はめっちゃ優秀で、でもその割に全然気取らなくて……。髪を後ろでまとめているだけという、素朴だけれど可愛らしい外見で……。大多数の女の子と同じように甘いお菓子が大好きで……。幼なじみの彼氏がいて、小柄で元気にぴょこぴょこ走り回る兎のような、どこにでもいそうな女子高生。それが章ちゃんの彼女、三崎口春音という娘だった。
「いっただきま〜す」
 ……ただ、彼女にはちょっとだけ変わったところがあるのだった。
「……」
 特に仲の良い親友同士、机を合わせてお昼ご飯を食べるという、ごく普通の昼食風景。春音は朝早起きして作ったお手製のお弁当に、最後にはデザートのバナナまで用意していた。用意周到である。
「あ〜〜〜ん」
 とッても美味しそうにバナナを食べようとする。おーーーきく口を開けてうれしそーーーに食べる様は、かなり天然入っている性格が見て取れる。
「おいまて。春音」
「んん?」
「お前。何をどう食べようとしているか」
 食べようとして、彼氏の章ちゃんに何か突っ込みを受けて、口を空いたまま一時停止する。
「ほよよ? バナナだよ? ほらほら〜。おっきいバナナだよ〜♪ おいしそうでしょ? いっただきま〜す。あ〜〜〜ん♪」
「だから待てつーとる!」
 時既に遅し。ぱくっと大きく口を開けて噛みついていた。
「あむっ♪ ……ん〜ん、な〜にぃ?」
「その食い方やめろと何度言ったら分かるかっ!」
「ん、ん? ん〜〜〜ん? んんん?」
 彼女が食しているデザート。それは……。
「なんで〜? ただのバナナだよ〜? バナナ食べちゃダメなの〜?」
 バナナを両手で握って、アイスキャンディのようにぺろぺろしゃぶりながら首をかしげる。
「おまっ! ……だから、そのな」
「変な章ちゃん〜。ん、ん……ん〜ん」
 ぺろぺろ、ぺろぺろ、ぺろぺろ。ピンク色の小さな可愛い舌で、とっても嬉しそうに、美味しそうにバナナをなめる。気分はもう完全に、トロピカル!
(春音ちゃん〜〜〜っ!!!!)
 既に恒例行事となっており、周りの極めて健全な男子達は……かなり興奮してはあはあと荒い鼻息をつきながら視線を集中させるのだった。そして、彼女が確信犯などではないだけに尚更背徳感が増すのである。
「あ〜おいし〜。えへへへ」
「だから……っく! い、云えないっ! 云えないぞ、こんな公衆の面前じゃ!」
「ん〜? あ、そっか。そ〜だよね〜。ごめんね〜」
 にっこり微笑む春音は、弁当箱を入れていた袋をごそごそとあさり。
「はいっ♪ 章ちゃんの分〜。章ちゃんも食べたいよね?」
 にっこりと差し出す。二つ、三つくらいは持っていそうである。
「は?」
「バナナだよ?」
「見りゃ分かる」
「一緒に食べよ♪」
「なんでじゃ」
「食べたいんじゃないの?」
「いや、あのな」
 彼女はバナナを心の底から愛しているのであった。そして、うっとりときらきらした瞳でその魅力をとくと語ってくれるのである。
「バナナ美味しいよ〜? あたしバナナ大好き。皮をこーやってやさしくむきむきするだけでね、とっても幸せ〜な気分になっちゃうの♪ だから〜章ちゃんも一緒に食べようよ〜♪」
(ぶはっ! む、むきむきだなんて!)
(春音ちゃんったらえっちすぎっ!)
(あーもうかわいいっ! 手ぇだしちまいそっ!)
(あのなっ! そーいう云い方も人によっちゃ卑猥でやらしくてセクハラ発言に聞こえるんだよッ! 分かってねぇだろこの天然!)
 そんな彼の苦悩などつゆ知らず、彼女はスルスルと丁寧に優しく皮を剥きはじめるのであった。
「ほら。こんなにおっきいんだよ〜。ぱくっと食べると、お口いっぱい幸せ〜な気持ちになっちゃうよ〜」
 にっこりと、無邪気な笑顔。純粋で、まさに天使の笑顔といったところなんだが。
「いやだから、あーのーなー……」
「あーーーんっ♪ はむっ……んにゅーにゅーにゅーん」
 ぺろぺろ、ぺちゃぺちゃ、ぴちゃぴちゃ……。舌で回りをぺろぺろと舐めてから、口でくわえておしゃぶりのようにしゃぶる。
「ん、ん……ん……」
 甘く、とろりとした快感が口内に広がり軽く目をとじてうっとりとする。逆に、そんな様子が男子生徒達には悶絶ものの可愛らしさというべきか、ある種の色っぽさ……最近の言葉で云えば最高に『萌え』る仕草なのであった。
(おおおおおおッ! は、春音ちゃんッ!)
(は、は、春ちゃんったらそんな大胆な……ッ!)
(可愛い顔してなんてイケナイ食べ方をするのッ!?)
 以上。ごく一部……いや、大多数の男子生徒……の、思考である。極めて健全である。
(ほれみろ。みんなに変な目で見られてるんだっつーの! いい加減気付けバカ春音!)
「ん……ん。おいし〜……ん〜♪ バナナ大好き♪」
 彼が云わんとしていることはみんな分かっている。ただ、それ以上にみんながみんな春音の性格というのも分かっていて、止められないというか純粋な彼女に変なこ とを云ってはいけないのではないかと思ってしまったのであった。
(あの二人。まだ経験済みじゃないんだな)
(うるせぇ畜生)
 章ちゃんにとってはそのように微笑ましく見られてしまうのがちょっと悔しくもあるのだが。だが、それ以上に『お前の行為が周りにどうみられているか』を、彼女に 教えたら、純情で天然な彼女が汚れるような気がしてしまって気がひけてしまうのである。自分以外の誰もがそうだということくらい、章ちゃんの把握済なことではあるのだが。
「あむあむ。おいしい〜」
「お前は猿かっ!」
「ほにょにょ?」
 謎な言語を喋る春音。
「何語をしゃべっておるかおのれは」
「ほにょにょにょにょ? ん〜んっ。あーおいしかった。……お猿さん語?」
「……。まぁ、猿もバナナが好きだからな」
 彼女は猿か。
「だよね〜。あたしと気が合うかも〜。うきうき、なんちゃって」
 そしてそれに反論しない彼女。
「というわけで今日からお前のことを、春音改め沙留音(さるね)に改名しよう」
「え〜〜〜!」
「日本語の使用も不許可とする。一生うきうきいっとれこのお猿」
「や〜〜〜!」
 周りのみんなは、そんなやりとりを見てクスクス笑っているのであった。
「いいもん。そういうこというならもう、テスト勉強のお手伝いしてあげないもん」
 それはかなりクリティカルな脅し文句だが。
「……あっそ。じゃあ恒例のバナナクレープいらんのな。交換条件の」
「はうっ!」
 逆に墓穴を掘ってしまった春音。
「う〜〜〜う〜〜〜」
「冗談だよ」
 それでもやっぱりもぐもぐとバナナを食べる。やっぱり彼女は根っからの天然系娘のようである。















食事のあと、章ちゃんは男子諸君に呼び出されたのであった。





みんな曰く『俺らが変な気起こしちまう前に、どうにかしろ!』ということだった。





実に素直で純情な男子諸君である。……が、それはともかく。





(仕方ねえなぁ)





かったりぃとは思いつつも





何度となくそのような日常を繰り返すうちに、





彼は一つの決断に至ったのであった。















 休日を利用してパパもママも旅行に行っていて、今日は誰もいない。そんな日に春音は、サビシイからというのでお隣さんである章ちゃんをお家に呼び出したのであった。……そういう動機で呼び出されるのも問題有りかもしれないが、と彼は思った。
(うちの親にもこいつの親にも、互いに公認の仲ってのもなんだかなぁ)
 そんなわけで、春音が作ったおいしいご飯を食べ終えて、ソファーで紅茶を飲んでくつろぎタイム。春音は不器用そうに見えて料理も得意なのであった。章ちゃんにとってもかなり意外に感じることだった。
(俺が狼さんになって手ぇ出してもしらねーぞっての)
 とか思いながら、いかがわしいことは何もしていないのが彼であった。意外と硬派なのである。
「おい春音」
「んん?」
「お前な。今から再生するものをじっくりと見てみろ」
「え、なぁに?」
「いいから見ろ」
「……?」
 ガチャンとビデオテープをデッキに入れて、再生ボタンを押す。
「……」
 テレビでは春音とあまり年齢差の無さそうな女性が、男性の性器を口で愛撫していた。もっとも局部にはモザイクがかかっていて、いわゆるアダルトビデオというやつである。
「つまりだな。お前がバナナ食ってるところは、周りからはこのような目で見られてきたわけだ。特に男子連中にはな」
「……」
「すんげぇ恥ずかしいだろ? さすがのお前もそう思うだろ? 赤面ものだろ?」
「……」
「これに懲りたら、少し食べ方の工夫というか考えを改めてだな」
「……」
「いやな。何もバナナを食うなとはいわん。ただ、少しだけ食べ方を卑猥モードからノーマルモードに変換をだな。それだけでいいのだよ」
「……」
「春音?」
「……」
「おーい。春音〜?」
 反応は、ない。
「……」
「春〜? どした〜? ……って、固まってる!? 気絶してる!? おおおおおいっ!!」
「……」
 あまりにも過激な映像をいきなり見られて、彼女の思考は完全にストップしてしまったようなのであった。カチンコチンにフリーズしてしまっている。
「おいしっかりしろ春! ったく、純粋培養もほどほどにしろっての!」
 慌てた章は、ゆさゆさゆさゆさと凍り付いたように固まった春音を揺さぶる。
「んにゅ? あれ? あれぇ? 章ちゃん? どうしたの〜?」
 そしてまた、いつものようにほわ〜んとした笑顔。
「お前。……あのな」
「あれ? あれ? あれれれ? あたし、何していたんだっけ〜?」
 すっとぼけてるわけではなく、本当に記憶は全く残っていないのであった。
「あ、そだ。章ちゃん、バナナ食べない〜?」
「……」
 全然効果ねぇじゃん。と章ちゃんは思った。俺の説明、骨折り損ってやつ? と。
「とってもおいし〜んだよ〜♪」
 そして、昼食の時と同じように優しく皮を剥いていく。とっても楽しそうに、嬉しそうに。
「ほら。おっきなバナナ」
 既に幸せいっぱい気分。春音はほわわ〜んとうっとりした表情になるのであった。目はもう、きらきら輝く少女漫画のようになっている。
「はい、章ちゃん。あ〜〜〜ん」
「……」
 あ〜ん、しない章ちゃん。ノリがよろしくない。
「いらないの〜?」
「……」
「ふ〜んだ。いいもん。あたしが食べちゃうもん。あ〜〜〜ん♪」
 そして、ぱくっと口に入れる。
「ん〜ん。おいし♪ んーん、んにゅんにゅ」
 でも、すぐには食べずにまたぺろぺろしたりぺちゃぺちゃしたりして口で弄んでいる。それを凝視していた章ちゃんも、いつしか昼頃の男子生徒たちと同じ気分になってし まい。
「おい」
「んにゅん?」
 バナナをくわえたまま、きょとんとする。
「お前。誘ってんのか?」
「んん?」
 なんだかよく分かってない春音は、おいしいバナナをかんでごっくんと飲み込んで。
「誘ってるって、何を?」
 にっこりと無邪気な笑顔。
(こいつ……)
 次の瞬間。章ちゃんは春音をグイッと思いきり引き寄せて、強く抱きしめて強引にキスをしていた。
「ん……っ! んんんっ!? ん〜〜〜っ! んーーーんーーー!」
 いきなりのことに驚いて赤面する春音。
「し、章ちゃん! い、いきなり何するの〜!?」
「うるさい」
「ち、ちょっ……あっ!」
 そして、華奢な体をどさっとソファーに押し倒す。
「章ちゃんっ! ……んっ! んっ! んんん〜!」
 立て続けにキスの嵐。唇を重ねるというよりも、しゃぶりつくような、奪い取るような……。
「わからんちんどもはとっちめちんする必要があるだろ」
 支離滅裂な章ちゃん。
「な、何それ? んっ! ぁっ! だ、めぇ……んんっ! んぐっ!」
 ファーストキスをして以来、何もやましいことなどしてこなかった仲だったのに。……プラトニックな関係はあっと言う間に崩されてしまった。
「お前。……可愛いよ」
「……ど、どうしちゃったの? 章ちゃん!」
「どーもしてねえ。お前が俺をこんな気分にさせちまっただけだ」
「え? え? んぐっ!」
 全く何も心当たりがない。その間にも彼はキスを叩きつけた。
「可愛いんだよお前は」
 ほめられてうれしいはずなのに、彼は何故か怒っている。春音は喜んでいいのか、ごめんなさいと謝らなければいけないのかわからず戸惑った。
「し、章ちゃん。あたし……何か悪いこと、した?」
 おろおろと困り果てて、ちょっと泣きそうになりながら問いただした。
「ああしたさ。極めて常識人な俺を、こんな野獣状態にさせちまったんだから……なっ!」
 常識人も暴走すればアブナイ人に早変わり。再度春音の口をふさぐ。
「ん! んん……んっ! んーーーっ! しょうちゃ……あぁっ! あっ!」
(泣いたり笑ったり怒ったり喜んだり、できなくしてやろうか?)
 そんな残酷な考えすら浮かんでくるほど、春音が可愛くみえた。……唇を重ね合わせるだけじゃない、ディープなキス。閉じようとする唇に舌を入れてこじ開けて、絡ませる……。バナナの味が濃厚なキスを一層引き立てる。
「可愛いよ。……可愛すぎるんだよお前は。だからいきなりこんなことしたくなっちまったんだよ。めちゃくちゃにしてやりてえなんて思っちまったん だよ」
 可憐な春音のすべてが欲しい。体中を徹底的になめ回してイカせまくってやりたい。そんな凶暴な欲求に支配されかけて、首筋にもキスをしまくった。
「ひゃっ! あっ! く、すぐったいよぉぉ……! や、め……あぁぁっ! ゆ、許して章ちゃ……んっ! ああっ! あ……んっ!」
 ビクビクと身体を震わせて、必死にこらえる。
「な、んで……。わ、わかんないよぉ……。章ちゃん、おしえて……。何が……あたし、何しちゃったの……? わからないの怖いよぉ……」
 純粋過ぎる彼女。その叫びは章ちゃんの心に響いて……。
「春……」
「う、う……おしえてよ……おしえてよぉ。あたし、ばかだからわかんないよぉ……なんで。章ちゃん……こわい。こわいよぅ……」
 しゃくり上げた彼女を見てハッとなり、やっと凶暴な気持ちは収まって……。彼は一転して冷静さを取り戻した。
「ごめん」
 大きくため息をついて顔を手で覆い、行為を悔やむ。『やってしまった』と云わんばかりに……。
「うっく……えっえっ……」
「ほんっとにごめん」
 彼女を泣かせるなんて、自分のことを最低最悪な大馬鹿野郎だと思い、自己嫌悪という名の泥沼にどっぷりと浸かっていた。
「許してくれ」
「うぅ……ぅ……」
 泣きじゃくる春音を優しく抱きしめて、許してくれと繰り返した。





…………





 子供をあやすようにして落ち着かせて……。
「……つまりだ。お前がバナナをうまそーに食う様がな」
「うん」
「あのな……あれだ。その……男のアレをくわえてるように見えるんだよ」
 覚悟を決めようがどうしようが、非常に云いづらいことには変わらず、遠回しに表現してしまう。
「アレってなぁに?」
 きょとんとする春音。素で気付いてないのである。
「ッ! あ、アレっつったらアレしかねーだろがっ!」
 日本国の性教育は一体全体どーなってやがんだ文部科学省の大馬鹿野郎ッ! なんで一彼氏の俺がわざわざこいつに性教育をアホみてーにかましてやらなあかん ねんッ! ゆとり教育なんてやってる場合かくそったれが! ……と、彼は心の中で由々しき日本の教育問題に鋭く突っ込みを入れるのであった。
「だ、だから。アレって何なの〜?」
 こいつわッ! こんだけ大量のヒントを示していながら尚わかんねーぬかすかっ! ……と、章ちゃんはキれかけた教師のような心情になってしまい、答えに最も近いヒントを ぶちまけた。
「男にあって女にねえもんだよッ!」
「え」
 それを聞いた途端に真っ赤になる春音の頬。さすがの彼女も答えがなんであるかわかったようだ。そしてそこに彼が駄目押しの突っ込みを入れるのであった。
「そうだっ! 耳の穴かっぽじってよく聞けこのお猿! ち○こだッ! お○ん○んだッ! ペ○スだっ! ち〜○ち〜○ぶらぶらそ〜せ〜じ〜だ!」
 がしっと春音の頬を両手で掴んで引き寄せて、聞き間違えなどあり得ないような大きな声で叫ぶ! 喚く! 主張する! 常識人という名のイメージがガラガラと崩れていくけれど知ったこっちゃねぇ、と彼は思った。
「……っ!」
 燃え上がりそうなくらい真っ赤になって恥じらい、おろおろあたふたと視線を走らせてひたすら動揺する。
「さすがのお前もわかったか!」
「そ、それくらいあたしだって知ってるよ! で、でもでもでもっ! そ、そのっ! お、男の人のそ……それを、女の人の……く、く……口でなんて……そん な……そんなっ!」
 どうやら彼女はそういう行為は知らないようであった。
「あるんだよ、そーいう行為が! 男のアレを口でおしゃぶりしたり舌でなめなめたりして気持ちよくさせてイかせる行為がっ!」

「……」
「いいかよく聞け。それをフェラチオってゆーんだよ。ふぇ・ら・ち・お! おめーがバナナ食うときやたらぺろぺろしたりしゃぶったりしてる行為が、それを連想させて非常に卑猥なんだよ! クラスの男連中 みんなおめーの姿見て興奮してんだよ! この間なんか携帯で動画撮られてたぐらいになっ! ぜってーいかがわしい行為に使われてるんだっつーんだこのアホ春〜〜〜っ!」
「はうっ!」
 更に更に真っ赤になる春音。
「ったく。毎度、昼時のおめーを楽しみに待ってる連中がいたのも知らないとはな」
 春音の純粋培養ぶりに完全に呆れ果てた章ちゃんであった。
「そんな……。あたし、そんなつもりは」
「つもりがなくてもそー見えるんだよ。下手したらお前、犯されっぞ。っとに……。発情した野郎は怖いんだからな!」
「そんなぁ。うぅぅぅ……。ぐっすん……」
 春音はすっかりいじけてしまった。かなりショックだった模様である。
「でも、なァ」
「章ちゃん」
「俺はお前のそんなとこが好きなんだけどな。昔から」
 章ちゃんはクラスの男子達が、春音……彼女のそんな『純粋なところが好きだ』と、口々に云い合っていたことを思いだした。
「いつまでもガキっぽくてさ。かわらねぇとこがな」
 きゅ、と……優しく抱き締めてあげる。
「章……ちゃん」
「なんだ。天然さん」
「あたしに……教えて」
 何を? と問う章ちゃんに。
「えっちな……こと」
 彼のために、したいと強く思ったから……。





…………





「じゃ、予行練習だ。せんせーと呼ぶよーに」
 えっへんと、偉そうにふんぞり返る章ちゃん。
「う、うん」
 章ちゃんは、テーブルの上のバナナを手にとって一房もぎ、皮を剥く。そして剥き終わって。
「落ち着いてやればできる!」
 と、章ちゃんは不安そうな春音を貫禄のある親方のような口調で勇気付けるのであったが、行為が行為だけにあんまり格好良くは見えない。
「あ〜んて目一杯空けて、歯を当てないようにくわえるんだ。歯医者で治療受けてるときみたいに」
「あたし、虫歯ないよ……」
「例えだ例え! ほれ、あ〜ん!」
「……あ〜ん」
 春音は云われた通り従順に思いっきり口を空ける。そしてそこに章ちゃんのバナナがぐにゅっと突っ込まれて。
「最初はゆっくりやるからな。本物は歯を当てたら痛いんだから。気をつけろよ」
「う、ん。わはった。しょーしゃん」
「しょーちゃんではない。せんせーだ」
「へんへい」
 バナナを突っ込まれてくぐもった声を出す春音。苦しいのか、少し涙目になっている。
「歯を立てるなよ。奥までいれるぞー」
「ん、んん。……ん、ん」
 くちゅ、くちゅ……柔らかいバナナの果肉が同じく柔らかい春音の口内で唾液と交ざり合い、とろとろに濡れていく。
「ん、ん……んく……ん、ん……ん……うんん……んっ」
 二度、三度、四度……奥まで突っ込んで春音の口内をかき交ぜた後で、今度は引き抜いてスキルチェック。
「……。よーし。歯は当たってないみたいだな」
「う、ん。でも……あごがいたいよぉ」
「つべこべ云わない。今度は少し動きを速めるぞ」
 再度ずにゅっと挿入。
「んぐ……んく、んく、んくく……うっん……」
「春音。舌も使うんだよ。舌でぺろぺろなめ回すんだよ」
「う、ううん……ん、ん、ん、ん……んぅぅ……ん……」
 丁寧に優しく、バナナを唇で包みながら下の部分を舌でなめ回す。
「うまいぞ春音。さすが、日々練習してるだけあるなぁ」
 うんうんと頷く章ちゃん。完全にからかっているのであった。
「……っ! ちがうもん!」
 ずにゅっと引き抜かれるバナナ。とろとろと唾液で濡れている。
「こら。だれが離していいなんていった?」
「だって、ホントに……知らなかっただけだもん」
 必死に抗議する春音をみて、章ちゃんはにたにた笑ってからかう。
「え? 俺のために練習してきてくれたんじゃないの? お口のご奉仕の」
「ちがうよ〜〜〜!」
 それは絶対に違う、と春音は主張する。
「ま、どっちでもいいけどさ」
「よくないもん」
「いいからいいから。さ、次はマックススピードで行くぞ」
「え?」
 春音の反応も無視してまたまたずにゅっと入れる章ちゃん。
「本番では口でいかせるんだからな。本気で動かすぞ」
「んぐにゅっ! ええっ! ちょっとま……まっへ……んふぅっ〜!」
「いくぞ〜! おらおら! おらららら!」
 ぐちゅっぐちゅっぐちゅっ……。激しく春音の口内をかきまぜる。
「んーーーんんーーーーーんんんーーーーー!」
 顔を赤くさせて苦しそうに、涙目でバナナをくわえ続ける。
「よしよし。これだけできれば上等上等。予行練習終〜了〜。食っていいぞ」
「うーうー。苦しかったよぉ。それに……バナナはやっぱり普通に食べたいよぅ」
 更にとろとろになったバナナ。でもしっかり食べるのが彼女であった。
「では、食ったら今度は俺のだぞ」
「え?」
 章ちゃんはずるっとズボンをおろす。トランクスごと一気に。躊躇することなくあっさりと。
「……っ!」
 既にそそり立ち、ふるんと震えて出てきたそれを見て、目が点になる春音。
「どした?」
「……し、章ちゃん! あたし」
「どした?」
「こ……怖いよぉ!」
 さすがにいきなりは怖いようだ。
「うぅぅ……うぅぅ。ふぇ……ふえぇ〜〜……」
「あー。よしよし。いい子いい子。いーこいーこ」
 章ちゃんは春音をぎゅっと抱きしめてあげて、優しくキスをした。
「章ちゃん……」
「っとに可愛いやつだな。ぷにぷにしててさー」
 そういって、春音の小振りな胸を服の上から掴んだ。
「あ……ん。し、章……ちゃん。胸……触って……る」
「触りたいからな」
 いけしゃあしゃあと云うのであった。
「さ、触っていいなんて……云ってないよ」
「俺も聞いてない」
 許可など最初ッから求めちゃいないのである。……ふさふさ、もみもみ。揉まれる度に春音は、こそばゆくてかすかに震える。
「し、章ちゃんのえっち。……うぅ……うぅ」
「えっちしてるんだからえっちじゃないとおかしいぞ」
 かなり開き直ってるのであった。
「ふくらみかけだな。お前の乳は。今、ブラのサイズ何カップなんだ?」
 遠回しに『小さいな』と云っているのである。
「教えてあげない」
 胸が小さいというようなニュアンスのことを云われて、ぷーっと頬を膨らませてすねる。
「A?」
「ふんだ」
「B?」
「知らない」
「じゃあC。って。……そんなにないだろ?」
 図星だからか、泣きそうな顔になってしまう。
「……」
「そうか。Bくらいか。ふむふむ」
「バカ……」
 ぷいと横を向く春音に苦笑して、それでも服の上から胸をまさぐる。
「あのさぁ春音」
「……?」
「嫌ならさ。嫌って云えよ」
「え?」
 急に真顔で云われて、すねていた春音も意外に思って。
「成り行きでこういうことになっちまったけどさ。俺も暴走したし、お前の気持ちなんて全然考えて無かったからさ。嫌なら、何もやらなくてもいいんだぞ?」
「……」
 春音はゆっくりと首を振って。
「ううん。……大丈夫」
 思っていることを正直に打ち明ける。
「あたしの口で……身体で……章ちゃん、気持ちよくなって、欲しい」
 何故だろう。今はとにかく章ちゃんに、自分の身体で感じて欲しいと、春音は強く思うのだった。
「ならいーんだけどさ。本当に大丈夫か?」
「大丈夫」
 そういって春音は章ちゃんの前でしゃがみこみ、じっと見つめる。
「章ちゃんの。……ば、バナナよりおっきいよぉ」
「お褒めいただき光栄でございます」
 やっぱり少し嬉しいらしい。
「えと……。いくよ」
「ああ。いーぞー」
 つつ、と……小さくて桜色の可憐な唇が、章ちゃんのものに触れる。
「きゃっ!」
「春?」
 その刺激的な行為に、少しびっくりしてしまった。
「あっ……。だ、大丈夫」
「そか。バナナと違ってまずいだろ?」
「う……。にがすっぱい、よ」
「そういうもんなの」
「うぅ」
 触れた瞬間、ちょっとだけびっくりしてしまっただけのようで。
「ん……ん……」
 改めて口を開き、先端を口に含んだ。
「ん。上手いぞ春。……歯を当てないように、ゆっくりでいいからな」
「うん……うん……ん、ん」
 目を閉じて、ゆっくりと丁寧に……奥まで飲み込んでは、引き抜き……。
「舌も使って、な。気持ちいいから」
「う、ん……んく、んく……」
 じゅくじゅく、ちゅくちゅく……。体液が絡み合い、章ちゃんの陰毛が春音の唇を汚していく。
「動き、はやめるぞ」
「ん」
 章ちゃんは両手で春音の頭を掴んで、前後に動かし始める。
「んーーんーーん、ん」
 多少苦しそうにしながらも、春音は一生懸命だった。
「あー……。春音の口、気持ちいい。最高」
(男の人って、口で……されると、気持ちいいんだ……)
 ぐちゅぐちゅ、くちゅくちゅ……。上手にはできないけれど、大切な人を気持ちよくさせたいと強く思うから必死になれる。
「ん、ん、ん……んぐっ! こふっこふっ」
「あーこら。むせかえるなよ」
 奥まで限界までくわえ込んでむせてしまった春音。それをみて章ちゃんは自分のものをずにゅっと引き抜いて。
「う……。だ、だって」
「無理するなって。それに、いきなり口でやってもらうなんて順序間違ってるし」
「で、でも。……あたしの口、気持ちよくないの?」
「気持ちいいよ。春音、一生懸命してくれるし」
 背筋に続々と快感が走るのは確かだった。
「じゃあ、最後まで……させて」
「……ああ。わかったよ」
 そしてまた春音は口を大きく開いて、くわえ込む。
「あむ……ん……」
「可愛いなぁ。お前」
「ん……んく……ん、ん……ん」
 ほめられて嬉しいけれど、恥ずかしくて。ぽっとほほを赤らめる。
「口も唇もちっちゃくてさ。ほっぺた、ぷにぷにしてるし。子供みてー」
(もぉ……。あたしのこと、子供扱いするんだから……)
 春音が一生懸命口で愛撫する間、章ちゃんは人差し指で春音の頬をつんつん突いて、みずみずしい質感を楽しむ。
「ん。上手いよ春音。下の方のすじ、舌でぺろぺろして。そう。……唾、もっとつけて」
「うん……うん……んう……ん、ん、ん……」
 大切なものを扱うように丁寧に、優しく……。一生懸命に尽くす春音。口を動かす度にくちゅくちゅと、隠微な音を響かせる。唾液と先走り液が絡まり、ずりゅずりゅとイヤらしい音を立てる。
「そろそろ、いくよ」
「ん、ん、ん……ん、ん、ん……」
 愛撫の動きが早まり、章ちゃんは少しずつこみ上げてくる射精感を限界までこらえる。
「う、く……。そろそろ、出すぞ。離すなよ?」
「ん、ん?」
 何が起こるのか、理解していない春音。
「く……っ!」
 ず、ず、ず、ず。やがてこらえきれなくなった彼は、春音の口内に射精していた。
「んんんんっ! けふっ! げほっ!」
 驚いた春音は射精にむせかえって、くわえていたものをはき出してしまって……。つつ、と透明な糸を引く。
「あ、バカ!」
「ひゃ……あっ!」
 まだ射精は続いていて、春音の顔に勢いよくかかってしまった。
「あ、あ……。し、しょうちゃ……あ……うぅぅ」
 べっとりとかけられて、たらたらと垂れて落ちていく。そして、口からも涎のように落ちて……。
「ばーか。離すなつったろーが」
「だ、だって。いきなり……熱いのが。な、何これ……」
 目に入りそうで、きつく閉じる。
「俺の熱くたぎる漢の精液」
「え……」
「赤ちゃんの元」
「そ、そう……なんだ。これが……。うぅ……熱いよぉぉ……」
 性教育は実践あるのみなんだな、と章ちゃんはうんうんと思ったのであった。





そして……。





「とりあえず。手始めに春音よ」
「う、うん」
「脱げ」
 ストレートに云いすぎな章ちゃん。
「ええっ!」
「それが嫌なら三択だ。その一。自分で進んでやらしく脱ぐ。その二。俺が代わりにやらしく脱がしてやる。その三。着たままがいいので一気にGO! さぁどれだ!」
 そして立て続けに意地悪な質問パートワン。なにが『GO!』なのだろうか。
「そそそ、そんなの選べないよ〜〜〜!」
「選べ。さもなくば俺が選ぶ」
 もはや春音には三つの選択肢しか残されていないのであった。
「ち、ちょっと待ってよ〜〜〜!」
「待たない。カウント開始〜。十〜九〜八〜七〜」
 強引に春音を焦らせてからかう。
「は、はぅぅ〜〜〜っ! はぅはぅはぅ〜〜〜!」
「はぅはぅ云ってんじゃないの! 四の五の云わんと早く決める!」
「そそそ、そんなこと云われても! こ、心の準備がまだできてないんだよぉ〜〜〜!」
 はじめてなのだから当然のことだけど、章ちゃんはそんなことを構ってはくれないのであった。
「よし。では五秒やる。その間に準備だ」
「え?」
「五〜四〜三〜二〜一〜」
 そのカウントも、早い! 実際三秒もかかっていない。
「え? え? え? え? え〜〜〜!?」
「はい。準備中から営業中にモード切替はできたな?」
 彼の中では、準備中の看板はさっさと営業中もしくは商い中へと切り替わっていたのであった。
「で、できないよぉ!」
「我が儘なヤツだな」
「章ちゃんの意地悪〜!」
「ええい、ごちゃごちゃぬかすと初体験の相手をバナナにすっぞ!」
 そして、テーブルの上のバナナを一房もぎとって、じゃきんっと拳銃のように構えて脅す。……戦隊ものとかでありがちな、典型的な悪役風である。
「そ、それは嫌だよ〜〜〜!」
「でもお前。バナナ大好きなんだろ? 愛してるんだろ? てなわけで初体験の相手、バナナ♪」
「バナナは大好きだけどそれはやだよ〜!」
 さすがにそれはひどいというものである。
「っていうかさぁ。前から気になっていたんだけど。……お前。俺とバナナ、どっちの方が好きなんだ?」
「え……」
「じゃ、質問だ。明日からもし、バナナが食べられなくなるのと、俺がいなくなってしまうのと。選ぶとしたらどっち?」
 意地悪な質問パートツー。純情な春音には結構きっつい質問であった。章ちゃん的には『あたしとあの人……ではなくてバナナ、どっちを取るの!?』と、三角関係のもつれを問いつめる気分であった。
「そ、そんなの……決められないもん! バナナも章ちゃんも同じくらい好きだもん! どっちもいなくなったりなくなっちゃ嫌だもん!」
 章ちゃんはギャグで聞いているのに春音はマジになって涙目になって、泣き出してしまうのであった。
「そんなの選べないよ〜! バナナ食べられなくなるのやだ! 章ちゃんいなくなっちゃうのもやだ! どっちもやだやだやだ〜〜〜! そんな意地悪なこと聞かないで〜〜〜! ふええ〜〜〜ん!」
 ああ、これはまずかったな……。という風に、『失敗したー。アホなこと聞かなきゃよかった』と思う章ちゃんであった。
「あーあーわかったわかった。わかったから泣くな。悪かったから。今度バナナチョコ好きなだけ食べさせてやるから」
「……ほんとに?」
「ああ。それに、バナナクレープも、バナナパフェも食わせてやるから」
 ひたすらバナナづくしのメニューである。
「……うん」
「じゃ、そういうわけで。いざ!」
「……。シャワー。浴びさせて」
 つい先ほど、お風呂に入ったばかりなのだけど。
「じゃあ、一緒に浴びようか♪」
 笑顔で春音の退路を奪う章ちゃん。
「はうぅ……」
「じょーだんだよ。冗談」
「意地悪ぅ……」
「でもその前に、脱げ。ここで今すぐ、さぁ!」
「振り出しに戻ってる……」
「脱がないとシャワー浴びられないぞ」
 つまり、結局の所、章ちゃんの前で脱がないといけないのであった。
「そうだけど」
「春音の裸。見たいな」
「……えっち、だよ」
「そだよ。これからえっちするんだから。っていうかもう既にフェラしてもらったし」
「うぐっ。そ、そうだけど……」
「大丈夫。俺もちゃんと見せるから」
 そして、恥ずかしそうにババッとシャツを脱ぎ捨てるのであった。
「……もう。わかったよぉ」
 クスクスわらって意地悪する章ちゃんをみて、観念したのか。
「あんまり見ちゃ、嫌だよ?」
「いっぱい見たいから俺の目の前で脱いで欲しいんだけど」
 会話が全然かみ合っていない。
「恥ずかしいんだよ。……何から脱げば、いいの?」
「春音は上から脱ぐ派? それとも下」
「し、知らないもん」
「そうそう。折角脱ぐんだから、ほらほらここで」
「うぅぅ……」
 章ちゃんはそういって、リビングのテーブルをばんばん手で叩いて上に上がらせる。
「音楽でもならそうか? ちゃららららら〜って」
 ひたすらムードのかけらも無い章ちゃん。
「そんなのいらないよぉ!」
「折角、三崎口春音ストリップショーが開幕するというのに。しかもデビュー」
「もう、知らないもん……」
 そういって渋々テーブルの上に上がり、ブラウスのボタンをぽつぽつと、ゆっくり外していく。ゆっくりとためらいながら……。
「……」
「章ちゃあん。……は……ずかしいよぉぉ……」
 真っ赤になってもじもじしながら、ブラウスのボタンを全部脱ぎ終えた。染み一つない肌と、白い清楚な下着が露わになる。
「春音」
「な、なぁに?」
「肌。綺麗だな」
 じーっと見られて、恥ずかしくてぷいと顔をそらす。
「……」
 ブラウスを落とし、次にスカートのホックをゆっくりと外して。
「……」
 意を決して、落とすと……スカートがふわっと舞って広がり、足下に落ちた。
「章ちゃ……ん。もう、もう、許してよぉ……」
 下着と靴下のみという霰もない姿にある意味強制的にさせられて。
「ダメ」
「うぅ……」
「春音。何度も云ってるだろ? 嫌ならいいんだ、ってさ」
「い、嫌じゃ……ないんだよ。ただ、心の準備……させて欲しいだけなのに……」
 右腕で胸、左腕で股間を隠すけれど、隠しきれるわけがない。
「ンなもん、フェラチオとかする前にしとくもんだぞ」
 と、順序の誤りを極めて的確に突っ込む章ちゃん。
「うぅ……」
「で」
「……」
「お前はブラとパンツ。どっちから脱ぐ派?」
「……知らない」
 そして春音は、可愛らしいフロントホックブラを外して、足下に落とし……。
「……」
 右腕で胸を隠しながら、パンティをおろしていった。そしてやがて……靴下だけの姿になった。
「あぅ……あぅ……。はずかしいよぉぉ。だめ……みちゃだめ……だめ」
 遮るものが何もなくなってしまった春音は、恥ずかしくてたまらなくて、うずくまってしまった。
「春音」
「し、章ちゃん……。脱いだから……もう、シャワー浴びさせて」
「さっき風呂入ったばかりだろ」
「そ、うだけど!」
 あっさりと、却下される。
「恥ずかしがるなよ」
 それは無理というものである。
「しょ……。はぅっ! し、章ちゃんっ!!」
「可愛いな。春音のおっぱいは」
 章ちゃんは裸の春音を軽く引き寄せて、小振りな胸に顔を埋めて……ちゅるると乳首を舐めた。
「ひゃっ! あぁぁぁ……や、ぁぁ……」
「俺はな〜。春音の全部が欲しいんだよ〜」
 その言葉を拒否することなど、春音にはできないわけで。
「マジな話。お前はさー。無防備すぎるんだよ」
 ちゅる、ちゅる……小振りな乳房をまんべんなくなめ尽くす。
「はっう……んっ!」
「だーかーらー。誰か他の野郎に変なことされちまう前に……。俺が印を付けてやる。ハンコ注射みてーにな」
「は……ぁぁぁ……あぁ……あ、あ……」
 ぷちゅ、ぷちゅ……。小振りな胸を円を描くように舌で舐めて、かぷっと口に含んで……。空いた手で優しく揉んでやる。
「ひゃぅっ! あっふ……あぁ……や、ぁ……もぉゆるして……はずかしいの……はずかしくて、しんじゃう……」
 そういう表情が、嗜虐的で章ちゃんを喜ばせているのも分からない春音。
「春音のおっぱい。手のひらに丁度おさまるのな」
「さ、わっちゃ……ダメ……」
「柔らかいな。ぷるぷるしてる。ぷにょぷにょっと」
 春音の胸を寄せ上げて揉みしだく。春音は章ちゃんの頭にしがみついて、こみ上げてくる刺激を必死に耐える。
「しょーちゃ……あ、赤ちゃん……みたいだよ」
「大きくしてやるよ。こんな風に揉んでさ」
「あ、んっ!」
 両手でぐりぐりと胸を揉みまわす。そして、軽めに引っ張ってから離す。そしたら今度は人差し指でかき混ぜるように愛撫。ぷるぷるとゼリーのように揺れる胸。
「ん、んぅ……んんぅぅ……。あ、痛……」
「痛いか?」
「ん、うん。ちょっと、だけ。でも、大丈夫」
「そうか」
 ちゅぱ、ちゅぱ……。右の乳首に吸い付いては、左の乳首にしゃぶり付いて……また右の乳房、左の乳首……。交互に春音の胸をしゃぶり尽くす。
「あ、あぁぁぁ……。おっぱいばっかり……だめ……」
「そーだなー。他の所も愛撫してやらなきゃな」
 ひとしきり胸を愛撫したあとで、優しく包み込むように抱きしめてキスをする。




二人の初体験はまだ、はじまったばかりだった。





「春ー。座って」
「え?」
「いーから、ほら。ここに」
 そして章ちゃんは春音をソファーに体育座りさせて……。
「あ、だめ……。見えちゃう……」
 既に見えている。
「春音のあそこ、一応毛も生えてるのな」
「っ!」
 実際の所もう既にというか、かなり前から章ちゃんには見えていたのだった。薄い毛で覆われた春音の秘部が。
「だめ! だめぇっ! はずかし……あっ!」
 閉じようとした両足をがしっと抑えてロックして、大股開きさせる。
「でも、綺麗だぞ」
「う……れしくないぃ〜。う〜」
 そんな春音を無視して、つんっと触って……つつーとすじを指でなぞる。
「きゃああっ! やっああああ!」
「開いてみるか」
「う、うぅぅ……や……やぁ……。はずかし……」
 両手の人差し指でくにくにとほぐしてから、花弁を剥くように秘部を軽く開いていく……。
「章ちゃん……! しょうちゃ……! や、やぁぁ! はずかしいよぉっ! はずかし……やめ……てぇぇ!」
「もっと春音の恥ずかしいところ、みたい」
 真顔で云われて……春音が反論できるわけがなくて。
「う……うぅ。い、意地悪……だよぉ……」
「味はどうかな」
 ぺろっと舌で舐める。
「ひぁっ! あっ! やっ! きたないよそんなとこっ! なめちゃダメッ!」
「風呂入ったばかりだろ」
 ぺろ、ぺろ……つ、つ……。すじの部分を舌でなぞったり、少し中に入れてみたり……。
「うあ……うあぁぁ……。く、すぐったいいぃ……。もう……ダメ……」
 あまりの刺激に身体を震わせて耐え続ける春音。
「ん。……このくらいに、しとくか」
「章ちゃん……」
「はじめてだし、充分ほぐれたし。もういつでもOKだろ」
 もっともっといろんな事は、今後……という気分だった。
「お楽しみはとっといてもいいしね♪」
「章ちゃん。バカ……」
 二人には、時間はたっぷりとあるのだから。
「春音。おいでー」
「う、うん」
 そして、ソファーの上で……春音の身体を引き寄せて。
「はじめてだからな。自分から入れな。痛くないように」
「うん」
「っと。そうだ。忘れてた」
「……?」
 章ちゃんはごそごそと財布の中から何かを取りだして。
「……」
「いつかこういう日が来るんじゃないかって思っていただけだからな」
「章……ちゃん」
 笑いながらペりぺりと袋を破り、中に入っていた避妊具をきちんとつける。
「装着♪ ずっとお前と一緒に居たいからな。……まあその、やらしいことしたいと思ったこともまぁ、いっぱいあるけどさ」
「うん。ふふ……。章ちゃんらしいよ」
 緊張していた春音も、幾分気楽になれたようだ。
「見損なうなよ」
「わかってるよぉ。章ちゃん、優しいもん」
 春音も連れられて笑顔をみせる。いつの間にか裸になって横たわる章ちゃんの上に、春音はぎこちなくまたがって。
「……い、入れるよ」
「どーぞー」
 つ……つ……。戸惑いながらもゆっくりと、薄い秘部にあてがって……。
「う、ん……。あ……っく」
 少し間をおいて、腰を落としていく。
「ゆっくりな。ゆっくり」
「うぅ……。痛っ!」
「春。大丈夫か?」
「うっあ……。だい……じょぶ。……だいじょぶ、だい……ぅぅ」
 言葉とは裏腹に、目からは涙がぽろぽろと落ちていく。かなり痛がっている証拠。
「うぅぅ……。あぅぅ……」
 一定程度落ちきって、それ移行動けなくなってしまう。
「あ、あああっ! い、たい……痛い……たい……うぅっ」
 それでも意を決して、思い切って腰を落としていく。明らかに無理をして、痛みをこらえて。
「ううっ……うっ! ああっああっあっ! あっぐ……うぅぅっ! いたぁぁ……あぅあぅ」
 やがて、ぶつっという感覚のあと……奥まで滑りがよくなり、全て入り込んだ。春音の処女が敗れた瞬間……。
「春音! 春っ! ……バカ!」
「し、章ちゃん……。うぅ……」
「無理するなって云ったろ!」
 春音が無理をしていることくらい、章ちゃんにはお見通しだった。
「だって」
 なるべく動かないように春音を抱きしめて。
「章ちゃんに……あたしの初めて、あげたかったんだもん」
「ホントにバカだお前」
「バカでいいもん。……痛っ! う……」
「動くなって」
 少し動いただけでも、凄く痛がる春音。
「バカだよ。ホントに。すげぇ可愛いくらいバカ。やっぱお前お猿さんだ」
「ほめてるのかバカにされてるのかわかんないよぉ」
「バカにしてんだよ」
 抱きしめたままキスをしてあげて、背中を片手でさすってあげる。
「章ちゃん……」
「大好きだぞ。春音」
 見つめ合って、堂々とそんな恥ずかしいことを口にする。
「あたしも。大好き」
 痛がりながらも一つになれて、互いの温もりを感じ合う二人。
「それにしてもお前、ちっちゃいな……。身長何センチだっけ?」
「そうかな? 身長……150cm、いってない」
「……なんか俺、犯罪者みてー」
 くすくす笑う章ちゃん。
「うー」
「牛乳。飲んでるか?」
「飲んでるよ。朝と晩にカルシウム強化牛乳を」
 結構気にしているらしく、毎日飲んでいるようだ。
「てことは。効果なし、と。あるいはもう、成長止まった?」
「章ちゃんの意地悪」
「……てかさー」
「なぁに?」
「俺ら。くっついたまま、何話してんだろ」
「あはは。そうだねー」
 裸で抱き合い、一つになりながら笑う二人。
「ムード全然無し」
 全く持って、ムードの欠片もないけれど、逆にそれが二人らしくて。可笑しくて笑ってしまう。
「ね。章ちゃん」
「何だよ」
「あたし、気持ちいい?」
「ああ。凄くきつくて熱くて、気持ちいいぞ」
 本当に気持ちいいと思う章ちゃん。
「そうなんだ。ねえ。……章ちゃんって、他の娘とえっちした事って……ある?」
 結構鋭いことを突っ込む春音。
「ばーか。あるわけねーだろ。正真正銘、お前が初めてだ」
「そうなんだ。章ちゃん、すっごく落ち着いてるから……そうなのかなって」
 プレイボーイに見られてちょっと心外な章ちゃん。
「落ち着いてなんてないやい。ほれ」
「わっ」
 そういって章ちゃんは、春音の手を自分の胸に当てさせる。
「ほら。ばっくんばっくんいってるだろ。これでも結構緊張してるんだぜ?」
「そ、そうなんだ」
 鼓動を感じて、意外に思う春音。
「でも、何でンなこと聞くんだよ」
「だって、章ちゃん……みんなに人気あるから」
「はぁ? そうなん?」
 本人は全くそのような意識はないのであった。
「そうだよぉ」
 女の子はそういうところをよく見ているのだった。春音のようなぼーーーっとした娘であっても。
「まぁ、告られたことは何度かあるけどさ。全然興味ねーけど」
 興味がない理由は一つだけ。
「お前が一番好きだからなー。誰よりもな。ダントツに」
「章ちゃぁん……」
「何だよ、甘えん坊春音」
 スリスリと首筋にすり寄って甘える春音。
「あたしも。章ちゃんが一番好きだもん」
 黒くてさらさらして、柔らかな髪……。
「春。髪、解いちまえよ……」
 子猫のような春音。彼女の髪を留めているリボンを解き。
「あ……」
「綺麗だなー。髪」
「ありがと」
 これがもう何度目か。そんなことわからないけれど、キスをする。
「じゃ。そろそろ動くぞー」
「うん……きて」
 言葉が溢れ出た後で、互いの温もりを更に感じ合うために……ず、ず、と……ゆっくりと動き始める。
「ううっ! 痛ぁい……」
「大丈夫か?」
「う……ぅ。だ、いじょう……ぶ」
「じゃ、なさそうだな。やめとくか?」
「ううん。最後まで……して」
 必死にこらえる春音。最後までして欲しいから、涙をぽろぽろ流しながらも我慢を続ける。
「そうか。……春音。しっかり俺に抱きついてろよ」
「うん」
 章ちゃんも意を決して、破瓜の血を見ないようにゆっくりと動かし始める。
「うぅぅぅ! う……っぐ……ぅぅ」
 爪がめり込むくらい強く、章ちゃんに抱きついてこらえる。
「もう、少し……。もう少しだから、な」
 ぎゅうぎゅうと締め付けてくる春音の中。熱くて、こみ上げてくる快感を制御しながら動き続ける。
「う、ん! ……ああああっ! 章ちゃんっ! 章ちゃ……んっ!」
ず、ず、ず、ず……。ゆっくりと、だんだん早く……。
「あっぐ……ぐ! ああっ! 章ちゃん……っくぅ!」
 痛みを忘れさせようと、息を止めてキスをして……やがて……。
「春音っ! 出る……よ」
「あぐっ!」
 春音の痛々しさの前には快感も罪悪感にしかならなくて……。一気に引き抜いて、春音のお腹に白いものをぶちまけた……。










……。










「あれ?」
 それを見れば一人限らず、クラスのみんなは同じように思った事だろう。けれど、そこは教室ではなくて中庭だった。暖かくて気持ちのいい陽気だからか、結構な数の生徒が中庭でお昼ごはんを食べていた。そして彼らも例外ではなく……。
「春。今日はバナナ持ってこなかったのか?」
 ベンチに腰掛ける二人。弁当をとっくに平らげて、ペットボトルのお茶を飲む章ちゃん。
「そんなわけないじゃん。もってきたよ〜。ほら」
 取り出した小さなお弁当箱には、きれいに切られたバナナ。春音のお弁当に抜かりはまったくないのであった。
「さすがにお前も懲りたか」
「んーん。……一人の時だけ、かな。そのまま食べるのは」
 恥ずかしそうに微笑む春音。さすがに自分がどのような目で見られていたか気づいたようだ。
「ま、わかればよろしい」
「はあい」
 木々の緑が吹いている中、日光が眩しく照らす。
「しょーちゃん。はい♪ あ〜ん、して」
「あ? あ〜ん」
 フォークに刺したバナナを突き出され、ぱくっと食べる章ちゃん。
「おいしい?」
「あー。おいしいよ」
「えへへへへ」
 それを聞いてうれしそうに頷くバナナ愛好家の春音。
「ばななんばななんばっなっな〜♪」
 などと口ずさみながら食う。
「ば〜な〜な〜♪ なぜおいし〜の〜♪ ばななのかってでしょ〜♪」
 とっても無邪気でかわいらしいのだけど、微笑ましすぎて周囲のみんなはくすくす笑っていた。
「ばななばななばなな〜♪ ばななをたべ〜ると〜♪」
「おい春」
「んん? なぁに?」
「口をおーーーーきく思いっきり開けろ」
「え?」
 ガサガサと鞄を漁り……。
「んにゅにゅにゅにゅっ!?」
「せぇーのぉ」
 章ちゃんは、よく分かってないけど云われるままに開いた春音の口に。
「おりゃ!」
「んにゅぅっ!!」
 隠して持ってきていたバナナの皮を手早く剥いて、春音の口に思いっきり突っ込むのであった。
「んーーーんーーーんーーー」
「……ふ。いい天気だな」
 何事もなかったようにベンチから立ち上がり、風に揺れる髪を抑える章ちゃん。なかなかキザだけどシリアスかつ格好よく決まった。
「し、しょーはん! んぐ、むぐ……。なに……んんぐ、すんの〜!」
 それとは正反対に、ギャグテイストな彼女。
「いやなに。春音が恥ずかしい歌歌うからな。口に栓をしただけだ」
「も〜!」
 怒った春音は、ぴょんっと章ちゃんに飛びついた。そして……。
「おーい。お猿」
「お猿さんじゃないも〜ん」
「戻るぞ」
 昼休みは終わりに近づいていて、辺りに残されたのは彼らだけ。ひっついた春音を引きずるようにして……。
「しょ〜おちゃん」
「はいはい」
「好き♪」
 奇襲攻撃のようなキス。
「んぐっ! お前……。少しは恥じらいってのをだな!」
 言葉に意味は無くても、ただ、そういいたくて。
「今日もね〜。パパもママも、旅行行ってるんだー」
 またご飯一緒に食べて、一緒にえっちなことをして、一緒に同じベッドで寝て……。そんな夜になるんだろう、と彼は想像した。
「……。何か最近多くないか?」
「そうだよね。でも、章ちゃんが一緒にいてくれるから」
 本当は寂しい夜も、楽しくなる。……遠足の前日みたいにワクワクして。
「はいはい。わーりやしたよ」
 寂しいときも、一緒にいてくれるから。春音はいつも笑顔。
「今日は〜。バナナ料理作っちゃうよ〜」
「……。一人でお留守番、できるだろ?」
「え〜! できないもん!」
「バナナ料理は却下!」
「う〜う〜!」
 青空の下をぎゃあぎゃあと騒ぎながら、教室に戻っていくのだった。















バナナ味のキスは





何よりも甘くて、心地良くて……





とろけてしまいそうなくらい、優しかった。















 日曜日の昼下がり、暖かく明るい街の中で二人はデート中。屋台で売ってたチョコバナナを頬張る春音。
「あ〜〜〜ん♪ おいし〜〜〜♪」
 全身で美味しさを体感する春音。もう完全に別世界モード。
「春音ー」
「んにゅんにゅんにゅ♪ あむあむあむ♪」
「春ー」
 章ちゃんの声も聞こえていない。ちゅぷちゅぷ、ぷちゅぷちゅ……。ぺろぺろと、無意識のうちに何度も何度もしゃぶり……。
「春音」
「んんんん?」
「俺はこの前、あれほど云ったよなー」
 ハッとして、やっとこさ我に返った春音。
「外でその食い方はやめぃっつーとるだろがこのお猿!!」
「ひぅっ!」
 しまった〜〜〜! つい、やっちゃった〜〜〜! と、思ったのも時既に遅し。
「うるぁーーーーー! この馬鹿たれがーーーーーーっ!」
「はぅぅぅぅーーーーーっ! ごめんなさいぃぃぃ〜〜〜〜〜!」
 頭を両手でぐりぐりされる刑に処せられていたのであった。















今日も明日も、いつまでも二人は平和……





バナナのようにとろけそうな甘い恋





それが、二人の関係……。






























おしまい

































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