-はじまり-
お昼時の教室。
どこにでもあるような黒板と、学習机。 良くも悪くも、無個性な場。 当然のことながら、制服を着た男女達がいるわけで。 その中の一人であり『彼女』は今、昼食中だった。 「柚恵〜。またピアノ教えてよ」 「うん。いいよ」 笑顔で、親友からのお願いを快く引き受ける。 彼女はおとなしくて、おっとりしていて、優しくて。そして、可愛くて。 男女例外なく、クラスメイト達にとても人気があるのだった。 「さんきゅ! じゃ、今度の日曜ね〜!」 「うん」 五人分。机を五つ合わせて一緒にお昼ご飯を食べる。 みんな仲良し同士。 「そういえばさー。柚恵、最近ぬいぐるみ作りしてるの? 見たい見たいー!」 趣味のぬいぐるみ作りは、同性のみんなにも好評で。 「うん。今かわいいのを作って……あ、ちょっと待って」 そんなお話をしていたとき ポケットに入れていた携帯電話が、バイブレーション機能でぶるぶると震えた。 ディスプレイを見ると、見知らぬ番号で着信が来ている。 (誰からだろう?) 受け取ろうかどうか少し迷いながらも、席を立ち 「もしもし〜」 廊下の方に小走りで向かいながら、ささやくように答えた。 「……え?」 通話の内容は、とても刺激的だった。 彼女の笑顔が引きつるというか、硬直してしまうような。 「ええっ!? な、何ですかそれ〜!?」 騒がしい一日のスタートは、突然のものだった。 |