-それYUEに!-
『彼』には、幼なじみの女の子がいる。
彼女との出会いは、記憶に残っていない。 だって 物心ついた時から、一緒にいたのだから。 彼女は、いつもいつも側にいて、子犬のようについてきて いつしかそれが、当たり前なことになっていて あまりにも近すぎる関係で 自分が、彼女に想いを寄せていることに気付いても ただ一言が、どうしても云えなかった。 「お前が好きだ」と そんな状況が一変したのは、ある日のことだった。 むかしむかし。……ではなくて、現在進行形の物語故にいまいま、という現代話的に話をスタートさせるべきだろうか。 前置きが微妙にほんの少しだけ回りくどくなったがとにかく今、ある所にとってもかっこいーおにーちゃんと、その幼なじみでとってもかわいーおねーちゃんが、諸般の事情というようなご都合的な大人の事情により、一つ屋根の下に住んでいたのであります。恐らく多分まあ、彼女は両親の仕事の都合という設定で、なおかつ幼なじみの家に下宿させてもらっているとかいう、そういう類いの追加オプション付きなのだろう。とにかくも、この手のお話でありがちな『両親は彼女の小さい頃に事故死or病死』という、お約束設定では無いから、まだ良心的というものだろう。設定やお約束のためとは云え、人様を勝手に殺しちゃいかんよ。 そういうわけで、おにーちゃんは毎日学校に勉強をしに、おねーちゃんも毎日勉強をしに行っていたということになりました。ちなみに、やはりというべきか、二人とも同じ学校でしかも偶然同じクラスだったとさ。ご都合主義はここに極まるのだった。 それはまあさておき、彼らはそんな、リアルじゃぜってぇあり得ねぇぜ畜生! 的な、妄想の中にのみ存在するような学園生活……つまるところ、最初から可愛くて魅力的なメインヒロインがいるのはお約束というかデフォルト設定としてだ、ゲームスタート後になると僅か数日で何人もの魅力的なヒロイン達が向こうからわざわざ主人公にお近づきになってきてとにかくまあもてもてでうはうはなような、そんなそれなんてエロゲ? 的生活を送り続けていたわけなのだが。異変が起きるのはいつも突然のことなわけで。やっぱり、ある日のことでしたとさ。 「た、大変だよ〜! 高善〜! たかよし〜! た〜か〜よ〜し〜!」 よく晴れたお昼時のこと。おにーちゃんの方が屋上にて一人、ペットボトルの緑茶と共に、購買で買った極めて量産型なコロッケパンをもさもさもぐもぐごっくんと食って芳醇な匂いとさくさくした食感を楽しんでいると。息を切らしながら、紺色の標準的とも云えるデザインのブレザーを着た美少女なおねーちゃんが、とてとてとことこと可愛らしく走って来た。ロングヘアのきれーな黒髪と、結構ふくよかな胸をぷるぷる揺らしながら……。泣きそうになって、というか少し泣きながら悲しそ〜に叫んでいる。 「ん。あー? 柚恵か。んなに慌ててどーしたん?」 と、あからさまにやる気ナッシングな、かったるくも怠惰な学園生活を送る主人公的返事を返すと、柚恵(ゆえ)と呼ばれたおねーちゃん……本名・北本柚恵(きたもとゆえ)は、血相を変えて答えたのだった。 「た、高善のお父さんとお母さんが、今日からいきなりフィジーに引っ越すって! 電話かかってきたの〜〜〜!」 そりゃあもう、一言でわかるくらい大事だったとさ。というより、どーいう親だそれは! 「……はあ?」 当たり前のことであるが、いきなりの事に、鳩が豆鉄砲くらったよーな表情になってしまうおにーちゃん。 それはそうと、ここではじめて判明する事実があったので、補足説明をしておこう。おにーちゃんの名は南森高善(みなみもりたかよし)なのだった。そいでもって、彼と彼女の関係は現在、単なる幼なじみ同士でありそれ以上でも以下でもないのだった。お互いに気にし合ってはいるものの、現状維持という名の均衡的な、東西冷戦のような緊迫した……してない関係がずーーーーっと続いてきたのだった。 「親父もお袋も何でまたいきなり。っていうか、フィジーってどこだっけ?」 フィジーの位置は……とにかく、ひたすら南の方に位置していることは確かだ。世界は結構広いのだ。 「お、おせあにあの方だったっけ……。って。とにかく電話に出てよ〜。ほら〜! かかってきてるんだからぁ〜!」 それより。彼の親は何故、そんな重要なことを息子の方ではなく彼女の携帯にかけてきたのかというと? 「高善。いつも携帯忘れてきちゃうんだから……。だめだよぉ。こういうことも……あ、あるんだから〜。ちゃんと持ってこなくちゃ」 反論しよう。んなこと普通はありません。あり得ません。あってたまるもんですか! あるわけないっしょ! と、ビシッとつっこみを入れたくなるくらいあり得ない! ……もっとも、彼女自身も電話でその事実を聞かされたとき『あるわけないよね? 冗談だよね?』と、最初はそう思ったのだけど。ともかくそれだと話が進まないので、とりあえずそのような異常事態が『存在する』という仮定で話を強引にすすめていくのだった。 「へいへい。もしもーし」 彼女のお節介なご忠告をやはり投げやりに聞き流し、電話に出るのだった。 『おーう。高善か。実はなー。父ちゃんと母ちゃんは今日からフィジーに移住……もとい、長期出張することになったんだ。エメラルドグリーンの海と、青い空が最高に綺麗でさわやかだぞ〜! わっははははは!』 「ほー。そうなんだ。そいつはいいなあ。時差ボケ大丈夫〜?」 『はっはっは! 時差は三時間程度だから大したことはないぞ。そっちはお昼だな? 飯でも食っていたんだろ?』 「うんうん」 今日から予告も無しにイキナリ引っ越すというとんでもねぇ暴挙に出た親に対し、彼は何も疑問を持たなければ反対すらしないのだった。肝が無駄に座っているのだろう。一方、彼の両親はもう既に現地に到着している模様だった。穏やかな波の音が電話の向こうに聞こえるから、早速ビーチにでも出向いてアロハシャツでも着てサングラスかけてパラソル広げてトロピカルジュースでも飲んでいるのだろう。リラックスしまくりなのだろう。何というか、老後はそんな生活を送りたいものである。 「はぅっ! そ、そうなんだ〜、じゃないよ〜! どうして驚かないの〜!?」 平然としている彼に対し、動揺しまくる柚恵。その反応だけでも、どちらが常識人なのかは一目瞭然である。それも、柚恵が一般人なのは確かだが、高善が非常に『オカシイ野郎』だというわけだ。 『はっはっはっは。いいだろいいだろうらやましいだろ! まー。仕送りはちゃんとしてやるから余計な心配はいらないぞ』 「本気でうらやましいが、そうか。仕送りしてくれるのなら全くもって心配なしだな」 うんうん、と納得する高善。かなりのマイペースさである。とりあえず、彼にとっては現在と同じような生活が保障されていれば、親がいようといまいと何も問題がないのだった。自立心旺盛というよりか、我関せずなのだった。親がいなくても勝手に育っていくような、そんなタイプの人間なのだった。 「はぅぅっ! し、心配だらけだよぉ……!」 『ああ、それと。このことについては柚恵ちゃんのご両親にもちゃーんと許可は取ってあるからな。その点についても問題は全く無いぞ!』 「おお! おおおおっ! 柚恵のご両親の公認とは、そりゃあ大いに助かる! もし何かあったら申し訳がつかないからな〜。懸念してたよ〜」 「はぅぅぅっ! ぱ、パパとママも勝手に許可しないでよぉ〜! 何考えてんの〜! って、高善も安心しないで〜! 何でそうなるの〜〜〜!」 彼女の良識的な叫びは全て、軽〜く聞き流されるのだった。また、彼女にとっては悲しいことに、高善の両親と柚恵の両親は共にそーいういい加減な面において、とても波長が合うのだった。いわゆる似た者同士であるが故に、こんな無茶な事態でもOKにされてしまうのだ。 「あー。そうそう。父さん。俺、云いたいことがあったんだ。えっとね〜。俺だけじゃなくて、柚恵もすんごく云いたそうにしてることなんだけどさ〜」 『おう。何だ?』 「た、高善! お願いだからちゃんと云って!」 今までのやり取りは全部ボケか冗談か漫才かドッキリカメラか何かで、やっとこさまっとうな主張を云ってくれるんだ。と、常識人な柚恵は希望的観測から、そう思った。恐らく柚恵も、高善のところに来るまでにそういった至極まっとうかつ常識人な若者の主張を彼らにぶつけたのだろうが、合気道の有段者よろしく全部受け流されたのだろう。 とにかくも、何の前触れもなく予告もなくいきなり引っ越すなんてあんまりにもむちゃくちゃなことしないでください。お願いだから、後生だから帰ってきてください! と、彼女は高善にはっきりと云って欲しかった。別に柚恵に限らなくても、このようなシチュエーションに置かれたらそう思うもんだろう。 「えっとねー。夏休みにさ。俺と柚恵の二人でそっちに行ってもいいかい? 俺も南の島に行きてーよー! 泳ぎてー! な? 柚恵もそう思うだろ〜? 思うよなー? 水着とゴムボート持ってさ〜」 「はうっ!」 その瞬間、柚恵はのけぞった。それはあたかもバレーボール部のエースあたりが放った豪快なミスショット、あるいは野球部のスラッガーが放ったライナー性の強烈なファールボール、あるいはあるいはサッカー部のストライカーが放って外した渾身のミドルシュートあたりが思いっきり顔面に直撃したかのように、柚恵には感じられた。それが冬だったりしたら跡が付きそうなくらい痛くてたまらないだなこれが。 『おお。来い来い! 待ってるぞ!』 「ち、ち、違うよ違うよ違うよよよぉ〜! そそそ、そんなことじゃなくて〜! はぅ〜〜〜ん! ふぇぇ〜〜〜ん! たかよしぃぃいぃ〜〜〜! いきなり引っ越したりしないでくださいって、お願いだから云ってよぅ〜〜!」 完全にズレまくっている彼に、泣きそうになりながら突っ込みを入れる柚恵。演技でも何でもなくて、本気で云っているのに、彼は漫才のボケ担当のようにズレた答えをぬかしまくる。 「あっはっは。うんうん。もちろん柚恵もすんごく喜んでるよ〜! 泣き出すくらいに感激してるよ〜! ってなわけで、夏休みを楽しみにしているよ〜」 「喜んでないよぉ〜〜〜〜〜! 感激してないよぉ〜〜〜〜〜! はう〜〜〜〜〜ん!」 既に、彼らは彼女の常識とは遙かに次元の違う会話をしていたのであった。 『ああ、そうだ。高善よ。俺も一つ云うのを忘れていたぞ』 「なんだい?」 『決まってるだろう! 避妊はきちんとしろよなッ!』 「避妊? ああ! そいつぁ全然全く持って完璧なまでに大丈夫だ! まかせてくれ!」 グッと気合を込めて、左手の、握った拳の人差し指と中指の間に親指だけ入れるという、とっても卑猥なポーズを取る。今まさに彼らは貫通を果たしたのであります! というよーな……。下品だから、そういうポーズはあんまり人前でやってはいけません。 「な、な、な! お、おじさん何云ってるんですかぁ〜! 高善も何がまかせてくれ、なの〜!? な、な、何でそんな……こと……はふぅ〜……」 何だかよくわからないけれど、高善と彼の父との会話で邪な単語が飛び交っていると判断し、真っ赤になって云い返す柚恵。 『じゃ、そういうわけで。またな』 「あーい! 身体に気をつけてねー!」 「あああ、き、切っちゃだめぇ〜! いきなり引っ越したりしないでくださいっていわなきゃ……。あ、ああ〜〜〜! あぅ……うぅぅ……。き、切っちゃったぁ……」 彼女の悲鳴は最後の最後まで無視されて、ピッと音を立てて、通話モードを切る高善だった。結局肝心なことを何一つ話せずに激しく後悔する柚恵。というよりも、通話の権限を高善に渡した事自体が根本的な誤りというか、過ちだったのではなかろうか。 「ふう」 「ふう、じゃないよぉ! はぅぅ〜。ど、どうするの〜!?」 突然訪れた異常事態に対し、パニックに陥り動揺しまくる柚恵。相変わらず、目元にはすこーし涙を浮かべている。 「柚恵っ!」 突如高善は、真剣な表情になる。普段のおちゃらけムードとは一変して、人を怒鳴りつける寸前のような険しい表情に。 「な、何?」 「ちょうどいい。前からずーっと聞こうと思っていたことがある!」 「う、うん。……何?」 「お前。……俺のこと好きか?」 何の前触れもなく、いきなり恋愛小説の確信に迫るようなことを問うのだった。それもよりによりまくってこんな、両親がいきなり引っ越ししてしまったという、緊急かつ異常事態度120%な時に! 常識人な彼女がテンパりまくってる時に! 「ええっ!?」 度重なる異常事態により更に更に動揺し動揺しまくり、目線をあっちこっちに彷徨わせる柚恵。彼はそんな彼女に対しても、容赦しない! ダウンしたボクサーにのしかかって、制止するレフリーを振り切るどころか殺人フックの一撃でダウンさせて、邪魔者を抹殺したあとでマウントポジションでゲシゲシゲシゲシと恍惚とした表情でぐへへへへと笑いながらサディスティックに放つかのように容赦しない! 「え……え……えと、えと、えと……」 「俺のことが好きか嫌いか、どっちか答えてくれ! 『どちらでもない』という答えは無しだっ! 後でもなしだ! 今ここですぐに俺に聞かせてくれ!」 「え……。そ、そりゃ……えと……。す、好き……だよ」 嫌いなわけはなかったから、そう答えるのだけど。彼は更に鋭くえぐり込むように突っ込みを入れてきた! それこそ、RPGで最後の方に手に入る強力な武器、エクスカリバーとか村正の刀とかの最強装備を二刀流で振り回しまくってるくらい強力で鋭い突っ込みを! 「じゃあ、もう一つ聞きたい。今お前が云った『好き』という言葉は、恋愛感情ありか無しか? つまるところ、友人関係として俺のことが好きという意味なのか、あるいは俺に恋心という想いを寄せているという、恋愛要素としての『好き』なのか答えてくれ!」 もはや、彼にはデリカシーも何もあったものではないのだった。愛の告白シーンというよりも、法廷で強力な証拠を元に相手を徹底的に追い詰めていくような、そんな凄みがあった。重要参考人という名の容疑者を徹底追求させる尋問のよーな、そんなシチュエーションに追い込んでいくのだった。 「え……あ、う……。うぅ……。そ、れは……えと……えと……あぅ……うぅ。な、何で……いきなりそんな……。こんな、時に……はぅぅ……」 ウブで恥ずかしがり屋な彼女はもう耳まで真っ赤になっている。一気に逃げ道なしの袋小路に追い込まれてしまったのだから。 「何で? 決まってるだろう。気になるからだ。知りたいからだ。だから教えてくれ。俺のことが好きか嫌いかどっちだ。はっきり答えてくれ! 俺に対する『好き』ってのは、恋愛感情あり? 無し? YES? NO? 曖昧な日本人な『どちらでもない』的答えはなしだ!」 「はぅ……ぅ……。それは……」 なおも困りまくる彼女に対し、彼は更に追い込みをかける。 「じゃあ。云いにくいのなら、俺の方からも正式に答えよう! 俺はお前に対し、恋愛感情ありまくりのほのかな恋心を抱きまくっているんだ!」 「え……」 それはもう、聞き間違えなどぜってぇねぇくらいに、まくし立てる! どでかい声で叫ぶ! シャウトする! 「はっきり云おう! 柚恵っ! 俺はお前が好きだッ! 本気で好きだッ! 友達としてでも幼なじみとしてでもなく、異性として好きだ! 一人の女の子として、恋してる愛してるッ! つまり俺はお前が好きなんだッ! 大好きなんだッ! ガキのころからずっとずっとずっとずっとッ! 誰よりもどんな女よりも一番好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ大好きだ大々好きだ大々大々好きだッ! 付き合ってくれッ! ずっと一緒にいてくれッ! お前のことを考えるだけで、胸が締め付けられるような気持ちになるんだッ!」 ということだった。しかしこいつ、よく息継ぎしないで話せるな。本当にもう。 「はうううっ!」 マシンガンのように乱射される『好きだッ!』攻撃に、柚恵は体中をガクガクさせてしまうのだった。まるで怯えているかのよーに。 「で。……お前はどうなんだ? 恋愛感情ありっ? 無しっ?」 ここまで追い込まれると、もう云うしかない。もはやそれは告白ではなくて、脅迫入っています。 「……。あ……」 困りまくりながら口を開いて、小さくひねり出したような第一声だった。 「あ?」 「あ〜……あぁぅ……あぅ、あぅ……あぅぅ〜……」 力が抜けて、タコさんやイカさんのように体中ふにゃふにゃ状態にされてしまった。 「ぁ……り……だ……よ……」 「え?」 でも、悲しいかな。か細い声は聞こえない。 「あぅ……。あ、あり……って云ってるんだよぉ〜。はぅぅっ!」 あり、とはつまり、恋愛感情ありという意味での好き、ということ。なんだけど。 「ありっ? ありってことはつまりあれか? 恋愛感情が存在するという意味でのありだなっ? ありでいいんだな? 間違いないんだな? 俺の聞き間違えなんかじゃないんだな!? 実は好きと告白した瞬間世界が真っ白になって目覚めて『何だ夢か』というよーななめくさった夢落ちシチュエーションなんかじゃないんだなっ!? 北本柚恵は南森高善とかいう野郎こと、俺さんのことが好きで好きで大好きなんだな!? 恋愛感情ありの本気汁出しまくりの好きなんだな!?」 野暮な彼は何度も何度も復唱して聞き返す。……こいつは乙女心というものを全くもって理解していない。 「うぅ……。そ、そう……だよ。わ、私も……た、高善のことが。す、好き……だよ。えと……と、友達として……じゃなくて……あぅぅ。ほ、ん……き……で。はふっ! あぅ……」 「てことは。俺たちってひょっとして、両想い?」 「……っ!」 それはもう、ひょっとしないだろう! んなこともわかっていながら聞き返すとはわかっていない! それでも柚恵はビクッとしてから、うんうんうんうん、っと首を上下に振る。振りまくる。もはや恥じらいモードがメーター吹っ切れるくらいのレッドゾーン(危険領域)に達し過ぎていて言葉すら出ない。出せない。でも、そんな彼女に対し、彼は尚も続ける。たたみ込む! 「じゃ、お願いだ! 俺と付き合ってくれ! お付き合いをしてくれ! 正式に交際を申し込む! 俺の……俺の彼女さんになってくれッ!」 もどかしくてくっつきそうでくっつかないような、つかず離れずな恋愛話など、彼の前には存在しない。 「え、えええっ……!?」 「嫌なのか? ……それとも、もう誰か他の男と付き合ってるとか?」 「……っ!」 長くて艶のあるきれーな黒髪を振り乱しながらふるふるふるふるっと、何度も頭を振る。それはすなわち、嫌じゃないということと、誰とも付き合っていないということ。 「じゃ、いいんだな? 云っておくが、俺はえっちが目的でこんな事云ってるんじゃないぞ。本気だぞ。柚恵の事が本気で好きだから、こんなことを云ってるんだ!」 その目に嘘はない。本心からして、本気なのだ。 「う、んっ……。い、いい……よ……。んぎゅっ!?」 以上。心の準備をさせてもらう暇すら与えない、不意打ちのような告白だった。 「……。いやったぁぁぁぁっぁっっぁっぁっぁっぁっぁぁ! やっほおおおおおおおおおいっ! 柚恵えええええええっ! 好きだ好きだ大好きだあああああああっ! 恥じらいで真っ赤なお前最ッ高ーーーーに可愛すぎっ! 愛してるぞおおおおおおおおおっ!」 柚恵の華奢な体を、ぎゅむーーーーーっと抱き締めて、持ち上げて、振り回しまくりながら学校中どころかご近所に響き渡るくらいでかい声で叫ぶ! ぶんぶん振り回しまくる! 遊園地のコーヒーカップを思いっきり振り回すくらい、目ぇ回しまくるくらい振り回しまくる! おぇぇぇぇっと嘔吐感に苛まされても知ったこっちゃねぇってなくらいに振り回しまくる! 凄まじい遠心力がうれしさの表れだから! 「はうううううっ! おおおお、おっきな声で叫ばないで〜〜〜〜〜! それにそれにそれに、ははは、離してぇぇぇ〜〜〜! 恥ずかしいよぉぉ〜〜〜! 誰かにみられちゃうよぉぉぉ〜〜〜! はう〜〜〜〜〜〜ん! めめめ、目が回るよぉぉ〜〜〜!」 高善は一見冷静なようでいて、内心はドキドキ状態だったのだ。その緊張がほぐれた反動は、とてもエキサイト! 「くうううう! 云っちまった云っちまった云っちまった! どさくさ紛れにガキのころからずーーーっと云おうとしてて云えなかったことをあっさりすっぱりはっきり云っちまった! 云えちまった! 云いきっちまった! もうなんつーか、俺柚恵のこと本気で愛してるぜって気分! 俺はお前にほのかな恋心をずっとずっとずーーーーーっと抱いていたんだよぉっ! なさけねーことにお前が誰か別の野郎とくっついちまったらどうしようなんてずーーーっと分かっていながら、ずーーーっとずーーーーーーっとずーーーーーーーっと告白できなかったんだよおう! 好きだ好きだ好きだぞおおおおおおおっ! 俺はああああっ! 南森高善は北本柚恵の事が大好きなんだああああああああああっ!」 もはや気分は、何でもいいから何かしらの世界大会を初制覇したような感じだ。意味もなくチャンピオンって感じだ! 「た、高善ぃ……。恥ずかしいよ……。わ、私……も、その……えっと。小さいころからずっと……。あぅ……はふぅ……。でもやっぱり、その……。恥ずかしいよぅ……うにゅぅぅぅ……」 片想いじゃなくて、両想い。着かず離れずな関係は、瞬間接着剤でもつかったかのように、あっさりとがっちりとくっついた。 「じゃ、そういうわけでー!」 「……?」 すとんと、柚恵を降ろしてやってから、満面の笑みを浮かべて云う。 「帰ったら早速、しようなっ!」 「な……な、にを?」 「んなこと決まってんだろっ! 熱々らぶらぶのえっちことせっくすだよせっくすっ! お互いの愛を遠慮無く思いっきりぶつけ合おうぜ!」 「はふぅっ!」 身も蓋もない云い方をしまくる。 「というわけで、帰りにちょっとナカハタキヨシまで付き合ってくれ! 帰ったらずんずんがんがんぱんぱんいっぱいいっぱい愛し合いまくろうぜっ!」 ナカハタキヨシとは、全国チェーンのドラッグストアのことである。とにかく絶好調なドラッグストアなのである。 「はぅ……」 「そのためにも早速。コンドームと、スタミナドリンクをいっぱい買ってこないとなっ!」 うんうん、とこれからの(勝手に立てた)予定を確認して頷くのだった。 「はううっ!」 あまりにもあからさまに云い切る高善に対し、絶句するしかない柚恵。 「あ、あのね高善。えと……。そ、それは……こっちに、お、おいといて。えとえと……。こ、この事はね、だ、誰にも……云わないで」 強引に、重たい荷物という名の『えっちしよう!』を倉庫に詰め込んでから、柚恵は別の話題を切り出した。彼と付き合うこともさることながら、二人きりで生活することなど当然のことながら、友人やクラスメイトには内緒にしておいて欲しい。しどろもどろでそう云おうとしたのだけど……。 「みんなには内緒に……して、ほしい……んだけど……」 「お。高善ー。こんなとこで飯食ってたのか」 そんな時、たまたま彼の友人達が数人、やってきた。 「おうッ! おめぇらいいところに来た! 超号外級の大ニュースがあるから聞いてくれ! 俺はつい三分ほど前から、ここにいる可愛い可愛い美少女な女の子で俺のクラスメイトで幼なじみな北本柚恵ちゃんと、正式にお付き合いすることになったんだ! 彼氏と彼女の関係になったンだッ! な〜〜っ!」 「はうぅぅっ!」 「ほー」 「な、内緒にしてって云ったのにぃ〜! どうしていつもそうなのぉ〜!? 何で〜!? どうして〜!? いきなり何でそうなのぉぉぉ〜〜〜!?」 「んでもってそいでもってその上にだなっ! 大ニュースはそれだけじゃないんだっ! うちの親がおあつらえむきに今日からいきなり二人で海外出張という名目で移住することになっちまってな! まあ、今までも一緒に暮らしていたわけなんだが。俺と柚恵は晴れて同棲することになったんだ! 一つ屋根の下で愛し合う男女が二人きりで生活することになったんだ! もうなんつーかサイコーにハッピーだぜ!」 「ほぉぉぉ」 「たたた、高善のバカぁ〜! そそそ、それも云っちゃダメって云おうとしたのにぃ〜!」 とっても恥ずかしい秘密はあっと言う間に知れ渡る! 「ちなみにな! 両親公認だぜ! そしてな、告ったのは俺の方からなんだ! 柚恵のことが好きだって云ったら、柚恵も俺と同じ気持ちだったって云ってくれたんだ! もう最高に嬉しい気分だっ! 宝くじの一等が当たったより嬉しい気分だっ! この思い、お前らもわかってくれっ!」 云う必要の無いような事を次々とばらしていく高善。それはまさに暴走機関車! 「おめでとう!」 「いいなぁ高善! 可愛い彼女ができて!」 「本気でうらやましいぞ!」 「うぅぅ……。みんなはみんなでどうしてそんなに冷静なのぉ……」 どうにもこうにもならなくて疲れ果ててしまったような、そんな彼女に対して、友人の一人は冷静に云うのだった。 「柚恵ちゃん。みんなね、高善と柚恵ちゃんが付き合ってなかったことの方が不思議だ、って思ってたんだよ」 「うん。二人とも、やっとくっついたかーって、俺も思った」 みんなの見解はそんな感じ。 「そうだろそうだろそうだろ。というわけでなー。早速帰りに、ナカキヨに寄ってコンドームとスタミナドリンクを買って来ようかなと思っているんだ。柚恵! 今夜は俺と一緒に一つのベッドでえっちしてから朝まで添い寝しようぜ!」 「あぅぅ……。はぅぅ……」 「うっわ。高善やる気満々だな」 「じゃー。邪魔者達は去るとしますかねー」 「そだな。柚恵ちゃん、高善のことをよろしくね」 「高善も柚恵ちゃんも、お幸せに〜」 そうして友人達はみんな云うだけ云って、去って行ったのだったとさ。後に残されたのは暴走し続ける高善と、脱力した柚恵の二人だけ。 「あぅ〜。うぅ〜……。高善のバカぁ。デリカシー全然ないよぅ……。みんなに知られちゃったよぅ……。恥ずかしいよぅ……」 「いいじゃないか。いずればれそうな事なんだしさ。隠しておく必要もないだろう」 「そう、かもしれないけどでも……」 「柚恵。……俺のこと、嫌いになったか?」 いじけてしまったような柚恵の様子を見て、不安になったようだ。 「な、ならないよ!」 「云っておくが柚恵。俺は軽い気持ちでお前に告ったわけじゃないぞ」 「え……」 これまでの状況が状況だけに、あんまり説得力がないけれど、それは真実だ。 「触ってみろ」 「あ」 高善は柚恵に、自分の胸を触らせてみる。 「どきどきしまくってるのがわかるだろ?」 「う、うん……」 冷静なようでいて……暴走しているようにみえて……本当にドキドキ状態。その証拠に、柚恵の手にも鼓動が伝わって聞こえてきた。 それはドキドキなどという生やさしい鼓動ではなく、ばっくんばっくんとフル稼働状態! 百メートルを全力疾走した後のような! 冷却機能と回復機能が全開で作動しているような、そんな熱すぎる状態! 「柚恵! 本気で好きなんだ! 言葉で何度云っても云い足りないけれど。情けないけどお前に『好き』って云った瞬間、心臓が破裂しそうなくらい、緊張しまくってたんだ……。ああ俺、好きな女の子に何て恥ずかしい事云ってんだろ、ってもう一人の俺がどっかにいて頭抱えながらそう思っていたくらい!」 「そう、なんだ……」 「なので、お付き合いの印に、な」 「う、うん……」 「目ぇ閉じて」 「……え?」 「いいから! 云うとおりにしてくれたのむ!」 「う、うん!」 柚恵は云われるままに目を閉じて、上を向く。高善は優しく、手を軽く添える程度の力で抱きしめてきて、柚恵もそれに合わ せる。 「……」 「……」 身長差十数センチを埋めるため、高善は少し身をかがめる。 (え……。あ、あ、あ……。こ、これってこれってこれって……ももも、もしかして……その。ふ、ファーストキス……!? た、高善と……私……。ふぁーすときす……。はぅぅ〜……。う、嬉しいけどでもでもっ! こ、心の準備くらいさせてよぅ〜! どうしてこんないきなりなのぉ〜! わたし、恥ずかしくて死んじゃいそうだよぅ〜! 高善の意地悪意地悪いじわるぅ〜! それにそれにそれに、こんな所でなんて〜〜! だ、誰かにみられちゃう……ああ……で、でも。もう遅いよね……あああ、た、高善の息が……はうぅっ!) 近付く唇は、やがて……。 (えと、はう、あう……。た、たか……よし……ぃぃ。す、好き……だ、よ……す、すき……です……。ん……あ、あれ。まだ……? ファーストキスって、こ、こわいよぅ……。ま、だ? うみゅっ!? ……ぁ。お、お茶の味……?) かすかに重なり合った。ドキドキのファーストキス、完全達成! その味は甘酸っぱいレモンでも、甘い蜂蜜でもなくて、何故かちょっと渋めの緑茶だった。……高善がつい先ほどまで飲んでいたのだから。こんな時にそんなことを考える柚恵も、結構天然ボケさんなのだった。が……ここで一つ、事件とゆーか事故が発生する。 どんな事故か? それは、次の瞬間のことだった。どかーーーんと、漫画の効果音のような爆発音が辺りに響き渡る。学校の近くにあるガスタンクで、突然爆発事故が起きたのだ。 「きゃあああっ! はううううっ! な、な、な、な、何何何〜〜〜っ!? 何なの何なの何なのぉ〜〜〜!?」 甘い雰囲気をぶっ壊すかのよーに黒煙が上がり、断続的にどかんどかんどかんと爆発音が響き、近くの建造物が破壊されるずずーーーんという音やガラスが砕けるがしゃーーーーんという音や近くに停めてあった車が思いっきり豪快に吹っ飛ばされて潰されてぐしゃっと景気の良い音がするのだった。そしてまた更に誘爆が起こって、更に最初以上に巨大な規模の爆発が続いていく。突然の大爆発という異様な事態に辺りは一気に騒然とするが、全く動じてない奴もごく稀で一部ではあるがいることはいた。それは他でもない、一人の馬鹿野郎のことだ。 「ふふ。……柚恵。今日は最高にいい天気だなぁ。見ろよ! 青い空と鮮やかで花火のようなアツアツの炎が俺達のスタートを祝福してくれるようだぜ! なぁっ!」 彼は甘酸っぱい青春の一ページよろしく、前髪をかき分けてからふっとクールに笑って、のんきなことをぬかすのだった。雲一つない青い空に、太陽の光が燦々と照らす。そしてその横に、黙々と上がる黒煙と爆発音と炎……。パニック状態に陥り、悲鳴を上げて逃げ惑う人々……。 「そ、そんなこと云ってる場合じゃないでしょ〜〜〜〜〜!」 当然のことながら、慌てふためいて突っ込みを入れる柚恵だったとさ。 「柚恵? 何をそんなに慌てているんだ?」 「き、決まってるでしょーーー! ほらほらほらあっ! あそこのガスタンクが燃えてるよぉぉぉーーーー!」 背後でとんでもねぇことが起こっているのだから。 「あ、そうか。そうだな……うん。わかった」 さすがに彼も気付いて、行動を起こした。携帯(実は持っていた)を取り出して、警察だか何だかに連絡を取ろうとした……かに見えた。 「あ、父さん? 俺だけど、一つ云い忘れていたよ。今更だけど俺、柚恵と正式にお付き合いすることにしたんだー。うんうん。ついさっきからお付き合いを始めたんだけど、今更だよね? あははは。からかわないでよ〜。俺も柚恵も照れちゃうよ〜。というわけなんで、よろしくー」 と、一方的に電話して切った。あの親にしてこの息子あり! 「っ!? って、ち、違うでしょーーーー! 何がよろしく、なの〜〜〜!? そうじゃなくて今は〜〜〜! あぅあぅ……!」 もう、ついて行けてない柚恵だった。 「む。そうだな! そんなことをしている場合じゃないよな! 緊急事態なんだよな! やべぇんだよな!」 彼は再度携帯を取り出し、今度こそまっとうな行動を起こそうとした……かに見えた。救急車を呼ぶとか、警察とか消防に電話するとか。とにかく、ふつーの人がとりそうな行動を……。 「あ、北本さんですか? お久しぶりです。南森の高善です〜。……実はですね。俺、柚恵さんとその、改めてお付き合いすることにしたんです。認めて、もらえます……でしょうか?」 今度は柚恵の両親に報告の電話。 「た、高善ぃ〜〜っ! 何でいきなりそんなこと電話してんの〜! だから今はぁ〜〜! あぅ〜〜〜!」 「はい。はい。ドキドキしましたが、歓迎していただけて、ほっとしてます。……ええ、はい。はは。もちろんです。式の方には是非、いらしてくださいね。ご存じでしょうけれど、ウチの両親がフィジーに引っ越したので、そちらでしたいなと思います〜。はい〜」 「何の式なのぉ〜っ!? 勝手に話進めないで〜〜〜! どうしてそうなるの〜〜〜! だからそうじゃなくってぇ〜〜〜! あぅ〜〜〜〜〜っ!」 背後の大惨事も何のその。どんどん話は飛躍していくのだった。 そして、夜が訪れる。
「しっかしま。ウチの親ったら、本当に一日で引っ越しやがったさ。さすが俺の親。やることなすことすべてイカレテいるぜ」 お前にだけは云われとうないわ! と、普通の親だったら突っ込みの一言でも入れるだろうが、彼の両親にはそのような事を云う資格はないだろう。でだ。驚くべき事に、彼の両親は夜逃げでもするかのよーに一日にして引っ越しを済ませていた。それは冗談でもなんでもなく、厳然たる事実そのものだ。がらんとして寂しくなった両親の部屋が、その事実を克明に物語っている。 それ故に、愛しい人と一つ屋根の下に二人きり、という状況が完全にできあがったのだったが。 「そんなささいな事はさておいて。さてさて」 ささいでは全然ない。のだが……。彼は改めて彼女の部屋の前に立つ。 「コンドームはたんまり買い込んだしー。スタミナドリンクもウンゲル皇帝液を既に三本飲んだしー。シャワーもちゃんと念入りに浴びたしー。髪は整えたしー。口臭も体臭も対策万全だしー。抜かりはなしだしー。準備はOKだしー。フォーメーションラップをこなして、シグナル・オールグリーンってなところだしなー! いざ、踏み込もうぞ! 愛の巣へ!」 ……云うまでも無いけれど彼は本当に、彼女を連れてドラッグストアに避妊具を買いに行きやがったのだった。 お買い物の最中、彼女はもう真っ赤になって他人の振りをしていたのだが……高善はお構いなしに聞くのだった。『どのメーカーのがいい? おすすめの商品はどれ?』とか何とかでかい声で。セクハラというか、もはや完全に羞恥プレイと化していた。誰か蹴りを入れてでも止めて欲しい。 「そんなわけで柚恵〜。来たぞ〜。来たよ〜。来たわ〜。来たさ〜。来たなり〜。来たぞな〜。ゆ〜え〜。あ〜そ〜び〜ま〜しょ〜♪」 こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんとドアを穴でもあけそーなくらい非常にしつこくしつこくひつこく執念深くノックしながら、室内にいるであろう彼女に問いかける。 「柚恵〜。柚恵〜。柚恵ちゃん〜。柚恵さん〜。柚恵様〜。柚恵殿〜。柚恵たん〜。いるんだろ〜? 恥ずかしがってないで開けてくれ〜。そして俺と熱くらぶらぶな濃厚えっちをしようぜぃ〜! がっつんがっつんやりまくろうぜぃ〜! 朝までやりまくろうぜぃ〜! あっっっついモーニングコーヒーを朝日を見ながら一緒に楽しもうぜ〜! 思い出の初エッチを楽しもうぜい〜!」 相変わらずでかい声でえっちしようえっちしよう抜かすとは。本当に、デリカシーのカケラもないやつである。しかしながら、彼は非常に純粋な感情で一連の行為をやっているので、尚更タチが悪いのだ。 「はぅっ! し、シャワーくらい浴びさせてよぉ〜! 心の準備させてよぉ〜! 高善の意地悪〜〜〜!」 当然のことながら、恥ずかしがり屋さんな彼女はそのようなことを云って、心の準備をする時間を欲しがった。あまりにも当然すぎる要求だった。 「シャワー? 大丈夫大丈夫。そういうことならこの道六十年の実績と経験をもつ俺に万事お任せあれ。ぽちっとな!」 何の道だかは不明だが、彼は得意げになって、何かボタンのようなものを押す。すると、ぴぴっと電子音が鳴り。 「はぅぅっ! な、な、何〜〜〜!?」 柚恵の部屋の天井から突然、大量のお湯がぶわーーーっぶしゃーーーっざばーーーっと、降ってきた。ご丁寧に、柚恵がいる方に照準を合わせて。 「きゃあああ〜〜〜〜〜! あ〜あ〜あ〜う〜! はう〜〜〜〜〜〜! ふえええ〜〜〜ん!」 柚恵はそのお湯の集中攻撃によって、瞬時にびしょびしょにされてしまうのだった。 「きゃーーーーーっ! はうーーーーっ! あーーーーーんっ!」 「ふっふふふ。こんなこともあろうかと、防火用のスプリンクラーをこっそりと仕込んでおいたんだ。火事があっても、エッチ前のシャワーが必要になっても無問題なようにカスタムメイドしてね!」 それから程なくしてシャワーが止まる。改めてドアを開けて入ってくる高善は、やはり笑顔でさわやかさんなのだった。人の気も知らねぇで本当に……。 「う、うぅぅ……。た、高善のバカぁ……。意地悪……ひどいよぅ」 部屋の中ではびしょびしょになった柚恵が一人、いじけていた。……もっとも、彼は決して意地悪な気持ちでやったわけではないのだが。多分……恐らく……きっと、ないはずであるし思われるのだが! 何か、とてつもなく悪人のような感じがする。というか普通に考えれば充分過ぎるほど悪人だわな。 「柚恵。シャワーはどうだった?」 「もう知らないよぅ……!」 「どうして拒むんだ? そんなに俺とするのがいやなのか?」 どうして怒られたのかが全く持って分からない彼。本気で分かっていないのだ。そんな彼が真顔になって云うと。 「違うよぅ……。そうじゃなくて、心の準備くらい、させてよぉ……ってことなのに」 「……。そう、だな。俺はガキだから、女心っつーもんがよくわからなくてな。ごめんな」 分からないにも程がありすぎるわ! と、誰もが突っ込みたくなる。 「……」 「ごめんな。でも、本気でお前のことが好きだから。こんなことをしてしまったんだよ。……俺のこと、嫌いになったか?」 でも。その問いに対する柚恵の答えは否。嫌いになんてなりはしない。昔から、ずーーっと昔からこんな調子なのだから。いつもいつも振り回すのは高善で、おとなしい柚恵は巻き添えをくってきた。当たり前すぎる関係。 「でも、高善らしいよ……。はちゃめちゃで」 真剣に悩んで落ち込んで、シュンとなる彼を見て、彼女はくすっと笑った。笑うしかなかったから。おかしかったから。 「柚恵。ごめんなさいのキスをさせてくれ」 「う、ん。高善……。怒ってないよ、のキス……だよ」 二人は見つめ合って、二度目のキスをしようとした。その時。 「その接吻、待たれよ!」 「きゃああ!」 「んがっ! 邪魔すなああああああああああああああああっ!!!!」 叫び声と共に突然がしゃーーーーんと、これまた漫画の効果音のような感じで窓ガラスをぶちやぶって、鮮やかな紅白の巫女装束に身を包んだ女性が乱入してきたのだ。 「てめぇ何者だァッ! なんでこう、俺が愛しい人と甘いスウィートなキッスをしよーとすると邪魔が入りやがるんだ! ふざけんじゃねーぞこんにゃろう!」 突然の侵入者に、当然のことながらブチ切れして怒鳴り返す高善。甘い甘いキスを邪魔されて相当ご立腹だ。 「私の名は神薙依代(かんなぎいよ)。退魔を生業とする巫女。この辺りに強力な邪気を感じてのぅ、やってきたのじゃ!」 依代と名乗った彼女は、黒く長い髪の美人だった。人呼んで、アサルト巫女さん神薙依代! 「はぅぅぅ……。びびび、びっくりしたよぉ」 「ほぉう」 いきなり凄まじい現れ方をした彼女に驚いて、びくびく震えてる柚恵。正反対に冷静沈着というか、むかむかしている高善。 「で。その退魔師な巫女さんが俺らに何の用だってんだ。明確な理由がなきゃ住居不法侵入罪で通報した上にぶち割ったガラス代を請求すっぞ!」 「理由ならある。そなたは、そのおなごと接吻をしてはならない!」 「んだぁ!? てめぇ、俺が自分の愛しの彼女ちゃんとらぶらぶなキスをしちゃいけねぇってのか!? 舌入れて絡ませて糸引きながらくちゅくちゅぐちゅぐちゅのーこーなでぃーぷキッスを俺の大好きな愛しの北本柚恵ちゃんと楽しんじゃだめだっつーのか!?」 「はぅ……。か……かの、じょ……」 改めて、そういう関係になったことを実感して赤面。 「左様。そのおなごには今、かつてこの地にて非業の死を遂げた怨念共が大勢取り憑いておるのじゃ。その怨霊共はどいつもこいつも悲恋など、恋愛沙汰で無念の死を迎えた者達故に、そのおなごが誰か殿方と愛し合う度に、嫉妬の感情を怨霊のパワーで増幅させて周りに振りまき、大災害を引き起こし……」 と、シリアスに説明するのだが、高善は完全に無視して。 「柚恵〜。柚恵ちゃん好き好き〜だいすき〜! 俺といっぱいキスしようね〜〜〜!キスしようね〜! 夢でも現実でもキスキスキス〜〜〜! キスキスキス〜♪ ちゅっ〜ちゅっ〜ちゅ〜♪ キスで一緒に気持ちよくなろうね〜♪」 「ん、ん、ん〜〜〜っ! ふにゅ〜〜〜っ! んんーーーーっ! ぷはっ! たたた、高善えっちいぃぃ………! あ、ああっ! あああ〜〜〜んっ!」 愛しの彼女を抱きしめて、嬉しそ〜にちゅちゅちゅと立て続けにキスをした。唇だけじゃなくて首筋に噛みつく吸血鬼のよーにはむっとキス! で、次の瞬間、漆黒の闇に一筋の巨大な稲妻が走り……ズガシャーーーンと、落ちた。辺りが一瞬、昼間のように明るくなるくらい巨大な稲妻が。そしたらすぐさま部屋の電気が消えて、土砂降りの雨が降ってきた。 「人の話を聞けいっ!」 「ぐおっ!」 背後からどげすっ……と。思いっきり蹴られる高善だった。 「見ろ! 貴様の軽率な行為によって巨大な雷が落ちて、街中が停電してしまったではないか! これはまさに天変地異の前触れぞ!」 「あらまぁ、ホントだわ」 真っ暗になった窓の外を見て、やはりのんきに云い放つ。 「あ、あの………私、その……怨念に取り憑かれてるって、本当……なんですか?」 「本当じゃ。その証拠に、昼間も近くにあったガスタンクが爆発したのだろう? お主達がはじめての接吻をしたその瞬間にな」 「はうっ!」 昼間の大騒動を思い出して絶句してしまう。そして今回の大稲妻。もはや偶然とは……思えないのが普通なのだけど、中にはやっぱり思えてしまう馬鹿がいた。奴である。 「けっ! そんなのたまたまだろ! 偶然偶然ったら偶然に決まっておろうが! その動かぬ不動産な証拠を今からじっくりたっぷりねっちょり見せてやるさ! 必殺、でぃーーーーーぷきっすあたーーーーーっく! おりゃあっ!」 「はみゅんっ!」 三度目の正直とばかりにキス。 「はみゅみゅみゅみゅ〜〜〜〜〜!」 「んむむむむ! んむんっ! ぷはっ。柚恵のお口。最高に気持ちよくて可愛いぞ。んでも、舌も絡ませてな! ワンモアトライ! んぶっ! んむっ! んぐじゅっ!」 「んふ〜〜〜〜〜! んふ〜〜〜〜〜! んふ〜〜〜〜〜! んみゅみゅみゅみゅ〜〜〜〜〜!」 柚恵の唇を食べてしまうかのように、大きく口を開けて舌を中にいれてれろれろぐちゅぐちゅかき混ぜるよーな、激しいキス。 その瞬間……。先ほどより更に巨大な稲妻が、ずがしゃーーーーーんと落ちた。それも一回二回三回と連続で。そして、落ちた建物から火災が発生して、ガスにでも引火したのか、どがーーーーーんと大爆発! あっという間に、絵に描いたような大惨事状態になってしまった 「きゃあああーーーーっ!」 「どわぁっ! 嘘だろおい!」 「本当だと何度も云っておろうがあッ! この愚か者っ!」 「ぐほっ!」 どげしと高善の背中をけっ飛ばす。 「何ぃぃぃぃっ! 何てこったい! じゃー一体全体どーしろってんだ! 俺はこのまま彼女とエッチはおろかキスすらできねー運命にあるってのか畜生ォ! ふざけんなああああーーーーーっ! 俺はぜってー柚恵と結ばれてらぶらぶな新婚生活を送るんじゃあああああああ! 仕事から帰ってきたら『お帰りなさいあなた。お風呂にする? 夕飯にする? それともあ・た・し?』てな、すっげぇ甘ったるい生活をするんだああああああっ! エプロンつけてお料理をしている柚恵に背後からこっそり近付いてパンツ脱がしてお尻さわさわ触って『もう。だめだよ〜』とか照れる柚恵と甘いキスをして立ちバックでエッチするんだああああああっ! ええい、こうなったらもう世界なんぞどーなってもかまわん! 世界が滅びてでも俺は柚恵とえっちを……ぐはっ!」 「やめんか馬鹿者!」 もう、なんというか、だんだんと頭が痛くなってくる……。 「はううううっ! たたた、高善いい加減にしてよぅ〜〜〜! ででで、でもでもでも……ししし、しんこんせいかつって……。はふぅ〜……。でもでも、怨霊が……。あうぅあぅ……」 「落ち着け! 取り憑いている霊を祓うのじゃ! さすれば、どうにかなる!」 「うぅぅ。私……私。祟られてるんだ……うぅぅ……」 祟られてることを知って泣き出す彼女を優しく抱きしめて、彼は云った。 「泣くなよ。俺がその腐れ霊をちゃちゃっとどうにかしてやるから。そしたら、ずっこんばっこん思いっきりやりまくろうぜ。んで、柚恵のお○ん○の奥の奥に優しく入れて出して入れて出してしてからどぴゅっと濃いいのいっぱいたっぷり中出しして、明るい家族計画として女の子と男の子を一人ずつ産んで明るく幸せな家庭を築いていこうぜ! 俺は頑張るぞ!」 「あぅ……。え、えっちなことばっかり……いわないで」 「よぉっしゃあ! そうと決まったら俺はやったるぜ! 柚恵とえっちするために!」 目的が既に、純愛路線からはかけ離れているようなことを堂々と叫ぶのだった。 「あぅぅ……。で、でも。どうやって?」 「心配するな。こんな事もあろうかと俺は今! 一見普通の高校生だが、実は高レベルな霊剣を自由自在に操る選ばれた凄腕天才剣士という設定を思い出したのだっ!」 どこからか大きな日本刀を取り出して、ジャキンと構えた。それはもう、メガトン級の衝撃の事実だった! ……って。わけねーだろ。何でそういう設定をずーーーっと忘れていて、今こういうややこしい状態の時に思い出すのだろうかこいつは。 「だったら最初から退魔くらいすればよかろう! 何でそんな重要な設定を忘れるのじゃ!」 第三者として、至極もっともな突っ込みである。が……。 「退治する方法がわからん!」 「……」 「で。どーやって柚恵にひっついた怨念だか悪霊だかを祓うってんだ? 教えろ」 「それはな……」 その方法とは、果たして……?
「あぅぅぅ……。はぅぅぅ……」 真っ赤になって、目には涙を浮かべている柚恵と。 「ななな、何とぉぉぉ……!」 興奮しまくりな高善がいる。 「さあ、はじめるのじゃ」 「ででで、でもでもでもぉ……」 「この男とできなくても良いのか?」 「うぅぅ……。それは……」 「なれば、後は成すだけぞ」 「ゆゆゆ、柚恵。俺を……信じろ。多分、いや、恐らくきっと……大丈夫だ」 「信じられないよぉ〜」 「そそそ、そんなことは無いぞぞぞ」 じゅるり、ごっくんと、唾を飲む音が生々しく聞こえて、のど仏が動いたのも見えた。こらえ性のないやつだ。 「うぅぅ……」 「大丈夫だ! 信じろ! 絶対絶対、多分そんなに、いやいや恐らくきっと……変な事を考えたりはそんなにしないつもりだから!」 柚恵に取り憑いた怨霊達を祓う方法。それは……柚恵に、高善の目の前で自慰行為……つまり、一人えっちをさせることだっ た。淫らな行為という『欲望』エネルギーを表に出す事により、怨霊達をおびき寄せるというか呼び出す餌とし、食いついたところで依代が法力を使って制御するのだ。 そして、その行為の一部始終を高善がじーーーーっと見つめ、柚恵が絶頂に達する瞬間にキスをする。……その時に『柚恵を守る!』という、優しい感情を抱いていれば……怨霊は浄化される。良き心のエネルギーをキスによって注入させ、怨霊達の邪なエネルギーを中和し、鎮めることができるのだ。 冗談のよーな売れない三流えろ漫画の設定みてーな、正直なところかなりうさん臭くてあやしい儀式そのものだったが、他の方法を知る者がいるわけでもなく、そもそも他の方法があるのかすら分からないため、今はとにかく依代を信じるしかないのだ。やるしかないのだった。 「でもでもでもぉ……。高善、エッチなこと考えるでしょぉ〜。絶対だよ〜……うぅぅ」 しかしながら、もしも万が一、いやいや千が一、いやいやいやいや、こいつの場合百が一どころか十が一くらいかもしれないが。とにかく、もしもこのどすけべ野郎がキスの瞬間に邪な感情を抱いていたとしたら……。 「もし貴様が邪なエネルギーを注入したら。それが具現化し、おぞましくも恐ろしい化け物が出現することじゃろう。注意することじゃ」 「あぅぅ……」 もはや完全に追い込まれてしまった柚恵だった。 「だーーーーー! いいから俺を信じろっ! えっちのことを考えていないと云えば嘘になるがとりあえず今は除霊してからえっちのことを考えるようになんとかしてみるからっ!」 散々えっちしようだの何だの云っているから、全く説得力がないのだ。自業自得という言葉がよく似合う。……が! そんなことばかり云っていては何も事は進んでいかないので、柚恵はとほほほとため息をつきながらも高善を信じる事にするのだった。 だが、ここでまた一つ別の問題が発生することになる。 「わ、わかったよぉ。……でも、あの。私その。し、したことないから……どうすれば、いいか……わからない」 初な柚恵は一人エッチなど、したことすらないのだった。 「……。マジ? お前、ももも、もしかしなくてやっぱり……一人えっちするの初めてなのか? いや俺は、柚恵はぜってーはじめてのバージンの処女さんだと思っていたんだがやっぱりそうなん?」 だれかこいつにデリカシーってもんを教えてくれ。スパルタ教育で! 場合によっては(よらなくてもいいか!)鉄拳でも体罰でも許可してやる! 「そうだよぉ! 当たり前でしょ! ……そんなこと、聞かないでよぉ」 えっちどころか……。云うまでも無いけれど、恥ずかしがり屋でストイックで一途な彼女は……。 「私。お、男の人と……お、お付き合いするなんて……。はじめて、なんだよ?」 ということなのだった。 「柚恵……。ごめんな。疑ったわけじゃないんだ。っつーか俺は、柚恵のことが好きなんだ。はじめてだろーとそうでなかろーとんなこたどーだっていいんだ。でも、初めてを俺に……。本気で嬉しいぞ」 「うぅ……。だ、だって、高善がえっちしたいって云うから……」 「よしわかった! ならば俺が本当の本場物の純正なお付き合いというものを体で教えてやろう! お付き合いお付き合いお付き合いぁたたたたたたたたた!」 そして高善は、柚恵の豊満なバストを指でツンツン突っ突くのだった。ふにゅふにゅぷるぷるぷるるんと柔らか〜い感触で、弾力を感じる! 指がめり込みまくる! 「はぅっ! はふっ! はぅぅ〜〜〜〜んっ! はぅぅぅぅっ! たたた、高善いいい、いきなりどどど、どこ触ってんの〜〜〜!? ええええ、えっちぃぃぃ〜〜〜〜! はぅーーーーーーっ!」 「って、うわ俺どさくさ紛れに何やってんだ馬ッ鹿野郎ぉ! ゆゆゆ、柚恵のおおおお、おっぱいいっぱい無許可でいきなり触っちまった! 柚恵のおっぱい触っちまった! 柚恵のおっぱい触りまくっちまったあああああっ! おっぱい触ってごめんよおおおおおっ! おっぱい許してくれええええええっ! 柚恵のおっぱいおっぱいおっぱいいいいいいっ!!!!」 もう、何というか……。高善は申し訳なさのあまり号泣し続け、同時におっぱいおっぱい絶叫し続け、更にまた同時に柚恵をぎゅむーーーーーっと抱き締めるのだった。 「はふううううっ! んぎゅ〜んぎゅ〜! おおお、怒ってなんていないから離してえええ〜〜〜!」 「いい加減にせんかいっ! そのおなごは非常に困っておろうが!」 ゲシッと引き剥がしの一撃。どつかれるの何度目だ? 「ぐおっ!」 ようやく我に返る高善だったが、冷静になれるわけもない。 「し、しかし! じゃああれかっ! 柚恵がえっち未経験の清らか処女さんでおっとりほのぼのさんだからってんで、くそったれな悪霊だか人魂だか亡霊なんぞにっ!?」 「そうじゃ。身も心も清らかであるが故に、行き場のない怨念共に狙われてしまったのじゃ」 「そうか。そうか。そーかそーかそーか。なればこそ、俺が手取り足取り、懇切丁寧かつ優しく教えてあげよう。一人えっちのやり方ってのをな。むふふふふ……ぐはっ」 今度はグーで殴られるのだった。こいつは何度どつかれたら気が済むというか、反省するのだろうか。 「馬鹿者! 貴様は煩悩を抱いてはいかんと云っておろうに!」 「だあっ! そ、そうだった!」 「うぅ……。高善ぃ〜」 仕方なく、依代に指南してもらうことにするのだった。事の趣旨を全然理解していない高善に比べて、遙かに信頼が置けると思ったから。 そして……。
「ん……。ん……。こ、これで……いいの……かなぁ?」 困ったような顔をして、服の上からも膨らみがわかる胸を掴んで揉む。 「そうじゃ。ゆっくりとでいいからな」 「気持ちいいというか……くすぐったいよぉ。うぅ……」 「服の上からだけではだめぞな。中に手をいれて、直にまさぐってみるのじゃ」 「は、いぃ。高善ぃ。見ちゃ……だめだよ」 「やだ! みせろ! 柚恵のおっきなぷるぷるおっぱいを生でみせろおおおおおおっ! 」 「はぅっ! 恥ずかしいことおっきな声で云わないで〜〜〜!」 「黙らんかい!」 「ぐおっ!」 今度はチョップを脳天にくらう。 「あ……。ん、んん……。あ、あ、れ……」 徐々にこみ上げてくる妙な感覚に、明らかに戸惑う柚恵。 「乳首を指で掴んで転がせてみるのじゃ」 「は、い……。ん、あ……ふ」 大きな胸の小さな乳首を指で摘んで転がせてみる、と……くすぐったさとはちょっと違った感覚が柚恵の背筋に走る。 「私……ど、どう……しちゃったのかな。おかし……はふぅ〜」 「おかしくはない。お主の体はそれだけ敏感なだけじゃ。……ああ、胸だけではだめぞよ。下もじゃ」 「え……」 下着の下も、刺激しろと云われて。 「そ、そんなぁ……。そんなの、恥ずかしすぎますよぉ……」 「この男と結ばれなくても良いのか?」 「はぅ……。あ……ぅ、あぅ……あ、あ……」 そして彼女はスカートの中に手を入れ、下着の上から秘部を指でまさぐる。彼と結ばれるために死にそうなくらい恥ずかしい 行為を続ける。とても健気なのだが、それに対して彼の方は。 「な、なんとゆうえっちさだ柚恵……。見てるだけで一発出せそうだぜ!」 「煩悩を祓えゆうとる!」 「ぐおっ! そ、そうだった!」 「うーう〜。高善のバカぁ〜……」 そんなことをやっている間にも、柚恵の敏感な体は反応して。 「あ……あ……。恥ずか……し……」 「良い感じじゃぞ。そのまま、絶頂に達する瞬間を云うのじゃ」 「は、いぃぃ。あ……あ、も、もう……す、こし」 「そのまま続けるのじゃ。止めてはいかんぞえ」 「あ、あ、あ……。だめ……。あ、あ……い……ちゃうよぅ……」 彼女はもう、絶頂に達する寸前だった。 「貴様の準備は良いのか?」 「おう! 全然全く持って完璧なまでに大丈夫だぞ」 一見冷静を装って煩悩を払っている。ようにみえる。 「あ。あっ! あくっ! こ、んな……えっちなとこ……見ちゃいやだよぉ……あぅっ!」 ひくひくと震え、そのまま絶頂に達しかけていた。 「柚恵。心配するな。お前とお前の処女は、俺が全身全霊を込めて守ってやる」 「あうぅぅ……。高善のえっちぃぃ……。あんっ! も、もおいっちゃうぅぅっ! は、恥ずかしいよおぉ! おかしくなっちゃうよぉっ!」 「よしよし、もう少しじゃぞ!」 その時の、彼の思考はというと。 (ああ……。柚恵感じてる。えっちな柚恵も可愛い! 可愛すぎ! 柚恵守って、したい! えっちしたい! ずこばこずっこんばっこんしたいしたいやりまくりたい! がっつんがっつん突きまくりたい! バックでパンパンぱっちゅんぱっちゅん湿った音立ててやわらかお尻もみまくりながらやりまくりたい! ちっちゃな可愛い口でもあむあむくわえておしゃぶりしてもらいたい! おっきなおっぱいでぷるんと挟んでしごいてもらいながら奥までんぐんぐくわえてもらってちゅぷちゅぷくちゅくちゅれろれろおしゃぶりしてもらいたい! 柚恵の体中優しく撫で回したいしなめ回したい! ぷっくらお尻もぷるぷるおっぱいももみもみふさふさもみまくりたい愛撫したいキスしたいさわりまくりたい! 綺麗な髪も可愛いおでこもぷにぷにほっぺも首筋もうなじもおっぱいの谷間も二の腕も指もおへそもお腹も脇腹も太ももも足も背中も肩もお尻もちゅーーーってキスしまくりたいっ! 柚恵の全身をれろれろ優しくなめ回したい! 俺の可愛い柚恵えええええええっ!) ……というような、健全とはかけ離れたものだった。この馬鹿の暴走は、もはや誰にも止められはしない。 「よし。貴様を信じる! 行け!」 「おお! おりゃあっ!」 「あみゅっ……んッ!」 その瞬間……。
絶頂に達した柚恵に、煩悩溢れまくる高善がキスをした瞬間……。辺りに雷鳴が轟きまくった! 大地に穴のあきそーなくらいでっかいやつが! 「お、おおっ!? おおおおおっ! ななな、なんだぁーーーーー!」 「な、何という……何ということをっ!」 「ひっ! き、きゃあああああっ! な、な、何なの何なの何なのぉぉぉ〜〜〜!?」 高善と柚恵の純愛パワーによって具現化された怨霊は、高善の邪過ぎる膨大な量の煩悩エネルギーにより、力が更に増幅されて、ずがーーーーーーーーーーんと巨大化した。具現化したそれはウォォォォォォォと、大きなうなり声を上げて。 「た、高善いぃぃ〜〜〜〜! たたた、助けてえええ〜〜〜〜!」 そして、柚恵は『そいつ』によって一瞬のうちに拘束されてしまった。 「き、貴様の煩悩丸出しの心が、このやうなとんでもない化け物を産んでしまったのじゃぞ!」 「そんなん俺が知るか! し、しかし、触手うにょうにょの淫獣とはなんとゆー素晴らしい……もとい、けしからん! 柚恵を離せえええええ! 俺の可愛い柚恵ええええええ!」 そしてそのまま、巨大な触手の化け物は屋根を破って外へと出ていき、街を破壊し始めた。その間にも……。 「や……! あ……あ、やああああ〜〜〜〜〜ん!」 柚恵を拘束した何本もの触手が、服の中に入り込み……みし、みし……ぶきゅ、ぶきゅ、びりいいい、と内側から引き裂いていった。服も下着もあっという間にぼろ着れと化してしまった。 「むぅう……! ぼろぼろの服に触手とは、何たる萌ゆるシチュエーションだ。うらやましすぎて許せねぇぜ!」 「ふええ〜〜〜〜〜〜ん! 高善のばかばかばかぁ〜〜〜〜! そんなことばっかり云ってないでお願いだから助けてよぅ〜〜〜〜! 恥ずかしいよぅ〜〜〜〜〜! 怖いよぅ〜〜〜〜! きゃああああ〜〜〜〜ん!」 もはや泣き笑いのような顔。淫獣の触手についているぬるぬるぬめぬめどろぐちょした透明のえっちな液体が、柚恵の体をぬらしていく。まんべんなくべっちょりと! 「今助けてやるからな! たとえ全世界を敵にまわしてでも、俺はお前とえっちをするのだ! 絶対してやるのだからな!」 高善はこんな時も、おめでたい思考の持ち主なのであった。 「うぅぅ。高善のえっちぃぃぃ〜〜〜!」 このようなシチュエーションにおいても彼はクールにアホなことを云っているが、そんな彼のところにも、ヒュンっと鞭のように鋭い触手の一撃が降り注ぐ。容赦のない一撃が! 「ふっ! そんなちゃっちい一撃が俺に当たると思うかっ! 受け止めてやる! ……とみせかけて三十六計逃げるにしかず! 回避じゃい!」 高善は受け止める振りをして、軽々と避けた。身のこなしは凄まじい程俊敏だったが……だが、高善のちょうど後ろにいた彼女、依代は不意を付かれたというか、いきなり避けられたから、ビシッと一撃を食らってしまった。 「ぐ、あ、ああああっ! こ、このおおおっ! 貴様何を考えておるかあああっ!」 何を考えているか? そりゃもう、柚恵を助けてえっちをすることだけだろう。あるいは百歩譲っても、何も考えていないとしか思えない。ここで確かなのは、高善の思考にはどう考えても依代のことなど眼中にはないという、絶望的な事実だけだ。 ともかくも、拘束された以上持っていた長刀をびゅんびゅん振り回してどーにかこーにか薙払おうとするも、時既におそし。完全に拘束され動きをロックされ、柚恵と同じように持ち上げられて、びりいいいいっと豪快に巫女装束をボロボロにされてしまった。 「むぅ。おのれ! 淫獣対巫女とは何という絵になる風景……じゃなくて、何という卑怯な奴だ! か弱い女性を拘束するとはっ!」 「貴様のせいじゃ! 貴様が受け止める振りをしておいてイキナリ避けるからじゃ!」 ぬるぬる、ぬめぬめ、にゅるにゅると淫靡な音を立てて、触手が柚恵と依代の体中をはいずり回る。 「ひっ! い、いやぁっ! やああああっ! やめてえええっ! だめえええ〜〜〜! くすぐった……ひああああ〜〜〜〜んっ!」 「ぬっ! こ、このぉっ! 離せっ! 離せ離せ離せぇぇっ! くおのおおおおっ! やめぬかああああっ!」 ひたすら嫌がって頭を振る柚恵。それに対し、必死に堪えてひたすら長刀を振り回し、どうにか自由の身になろうと必死の依代。 「い、嫌……っ! 嫌だよぉ! そんなのやああっ!」 触手は柚恵の体中を這いずり回り、そして……。 「やっ! 嫌嫌嫌ぁっ! やだっやだっ! そんなのいやだぁっ! やだよおっ! やだ〜〜〜〜〜っ!」 触手の一つが柚恵の恥ずかしい場所こと秘部を見つけ、ぴとっとくっついてから一気に中に潜り込もうとした。 (そこは……はじめては高善に……高善にあげるって、決めたの……。や、やあああっ!) 柚恵の貞操、大ピンチ! このままでは柚恵の初めてが奪われてしまう! 「おのれぃ! えろ怪獣め! 心配するな柚恵! 今俺が助けてやるからな! とうぁっ!」 彼は霊剣を鞘に入れて掴み、上空へ大きく跳躍した。そして……。 「てやあああああああっ! 俺の、俺の! 俺だけの可愛い可愛い柚恵ちゃんを離しやがれこのくそったれのでかえろイソギンチャクやろーがあああああああっ! 俺の、中学二年生あたりのガキが考えそーーーな完全無欠の最強必殺技をくらいさらせやああああああっ!」 シャキーーーーンと素早く鞘から引き抜き……。 「高善ぃ・最強ブレイドォッ! 斬ッ!!!!」 気合い入れまくりの一線! ずばっと鋭く斬り付けた。見事なまでの居合い抜きである。……霊剣を使うから和風なはずなのに、何故か横文字な技だったがそれはともかく、その一撃により、柚恵を拘束していた触手は全て切断され。 「あ……きゃっ!」 落ちる地点にて、高善が柚恵をがっちりキャッチ。 「きゃっちぃ! ふっ。柚恵と柚恵の貞操は、俺のものだぜ。柚恵……心配するな。お前に涙を流させるような奴は、俺が断じて許さねぇ!」 こーいうことになった原因は、すべてこいつにあるのだけどな……。 「あぅぅぅ……」 「柚恵。無事でよかったぜええええええええっ! お前に、お前にもしもの事があったら、俺は……俺はあああああっ! うおおおおおおおんっ! そんな悲しくも切なくもバッドエンドな鬱シナリオなんて見たくもなけりゃ聞きたくもねぇええええええっ!」 「あぅ〜。た、高善ぃ〜」 丸裸にされて弱々しく華奢な体の柚恵にシャツをかけてあげて、優しく抱きしめる。 「高善〜。あ、ありがとう。でも……でも、あれ……放っておいて、いいの?」 ちなみに。巨大な触手淫獣はその間も街中を破壊しつつ、女性達を次から次へと拘束しては、卑猥な行為を行おうとしていた 。いくつもの悲鳴が響いているのがその証拠だ。だが……。 「あー。いいのいいのいーのいーのあんなの気にしないでいいの! じゃ、鬱陶しいのもあっち行ったし、部屋に戻って改めてえっちをしようね!」 高善。触手淫獣を完全無視。とんでもねぇ! 「で、でもでも。あの巫女さんも他の人もみんな助けてあげてよぅ……。はぅっ!」 とても優しい彼女だったが、彼にはその思いは届かない。高善は外の惨状などどこ吹く風で、感動のキスシーン気取りで柚恵の唇を奪う。 「さ。いざ行かん。愛の巣へ! 大丈夫大丈夫。俺がちゃーーーんと優しくリードするからね!」 「だ、だ、だめだよぉ〜〜〜! ふぇぇ〜〜〜ん! 高善が暴走しちゃってるよぅ〜〜〜!」 何を今更、と云いたくなるくらい既出な事実。 「くおのおおおおっ! 貴様、わしを無視するでないわああああああああっ!」 ひたすら触手淫獣を放置し続ける高善をみて、依代は遂にキレて覚醒した。そしてそれは、ついに奥義を発動させる原動力となった。 「つおおおおおおおおおおおおおおっ!」 巨大な稲妻が、触手淫獣を直撃し、黒こげにして絶命させた。 「何だ。簡単に勝てんじゃん♪ おっけーおっけー。これで何もかも無問題!」 「貴様はッ! 簡単ではないわいっ!」 「あぅ〜。はぅ〜。高善ぃ〜。怖かったよぅ〜」 「よしよし。もう大丈夫だ。悪い奴らは俺がかっこよくやっつけてやったからな」 「貴様があれを呼び出したんだろうが! そしてやっつけたのは私じゃ!」 「じゃ、柚恵。そういうわけで邪魔者も去ったから、早速しっぽりたっぷりぬっぽり、愛のえっちタイムと洒落込もうな」 「人の話を聞けぇっ! 私が勝てなくてアレが暴走を続けていたらどうするつもりだったのじゃ!」 高善はフッと笑い。そんなん放置に決まってるじゃねーか、とかそういう類の事を云った。 「いいんだ。お前を……柚恵を愛せない世界なんて、終わってしまったって。……ぐおっ!」 「何思い込みの激しいストーカーみたいなことを云っておるか貴様わっ!」 とか云われながら、背後から頭をばごっと殴られたわけである。少なくともこいつは正義の味方とか、そういうタイプじゃあないな……。 そして……。
「ふぅ」 柚恵は少しため息をついて、キュッとシャワーの栓を閉じる。 幸い(?)なことに、彼らの家はほんの少しの破壊だけで済んでいた。一部屋分屋根を吹っ飛ばされる程度で。……もっとも、ご近所様は踏みつぶされたり倒されたり吹っ飛ばされたりと踏んだり蹴ったりの壊滅状態で、それどころじゃないようだったけど。 「もう。高善ったら」 彼はあの後すぐ、彼女とえっちしたいえっちしたいえっちしたいえっちしたいえっちしたいと、だだっ子のよーにわめきまくったのだけども『ちゃんとシャワー浴びさせて!』という一言で、とりあえず黙らせたのだった。 「あ。あれ……あ……れ」 突如、妙な感覚が身体を覆う。触手淫獣によって付けられたぬるぬるの液体を完全に洗い落とし、気持ち悪さから解消されたのに。 「あ、や。か、らだが熱……い。な、何……。何なの」 そのぬるぬるの液体は、実は強力な媚薬だった。皮膚の上からじっくり浸透していくような……。そんなものを全身に塗られてしまった柚恵は、堪え切れずバスルームで自慰行為に耽りそうになってしまう。 体が高熱にかかったように火照り、吐く息が熱く感じる。 (だめ……ダメ……だ……め。初めては、高善にあげたいから……だから) 必死に堪えて、よろよろとバスルームを後にする。その様は、とても健気。 そして、バスタオルで軽く体を覆い、リビングルームを抜けて、階段を上がろうとする。 「あ……あ。や、やぁぁ。はぅ……あぅ、く、苦しいよぉ。高善……たかよしぃ。たすけ……てぇ」 堪えないと、自分で処女を破ってしまいそうだから。耐える。ひたすら耐える。 バスタオルがはだけ、両手を使って数十秒もかかって何とか階段を上り終え、彼の部屋へと辿り着き……。 「高善ぃ」 コンコンとノックをすると、中から脳天気な馬鹿野郎の声がした。 「はいは〜い♪ 待ってました! さあさ入って入って入って〜。って、うのわっ! ゆゆゆ、柚恵さんんんん! ばばば、バスタオルがいいいいいきなりいきなりいきなりはだけておりまするで非常にせくしーでございますですぞ! ななななな、なんとゆう大胆なお姿でおじゃりまするか!」 彼女の裸は触手淫獣と戦ってるときに見たはずなのに、何故か動揺しまくる高善。あのときはそれどころではなかったからだろうか。 「た、高善。あの……。あのね……」 「うんうんうんうん! 何でありますかっ!」 「体が、熱いの……」 「むぅ。……まさかそれわ。あの触手淫獣にひっついていた媚薬のせい……だな?」 わかっているなら最初から助けてあげればいいのに。 「媚……薬?」 「うむ。えろえろな気分になってしまう薬だよ。あのぬるぬるはそんな素晴らし……もとい、けしからん代物だったのだよ。遅効性だったんだな」 「あぅ。ど、どうしよぉ……」 「大丈夫。俺がお前のえっちな気分をえっちをして鎮めてやるから。方法はそれしか、ない!」 「うう……。でも私、やっぱりはしたない……。もうお嫁さんにいけないよぅ……」 やる気満々な高善を見て、改めてとほほな状況であることを認識する。 「大丈夫ったら大丈夫だ! お嫁に行けないのなら、俺がお婿さんにいってやる! それにだ! 俺はえっちな柚恵も大好きだぞぉっ! 存分に俺とえっちをしよう、ということで何もかも全てオールナイトで無問題!」 そういう問題ではないのだが……。 「というわけで、改めてお前の火照った身体を静めてやる」 「……。うん。高善お願い。助けて」 「ああ。おいで柚恵。大丈夫。優しくするからね。怖くないから……ね」 こうなったらもう、高善に身を任せて鎮めてもらう。 「ん、んん……」 びしょびしょな体をバスタオルで優しくふいてあげてから、キスをした。 「柚恵。触っても、いい?」 「……」 こくんと頷いた。 「じゃ、そういうわけで。いただきます」 「あ……」 ベッドに座らせてあげてから、背後から胸を触った。 「高善ぃ。えっち……だよぉ」 「えっちするんだからえっちじゃなきゃおかしいっしょ?」 「そう、だけどぉ……」 揉むというより、ただ単に触るだけ。両手で柚恵のふっくらしたボリュームのある胸を触るだけ。 「むぅ」 「あぅ……あぅ……。は、恥ずかしいよぉ〜」 (あ……あああ……) 「はふぅ〜……」 (ああああああ。あああああああ。お、俺は今……柚恵の……柚恵の……ふくよかでふっくらしてて可愛い胸を。柚恵のおっきなおっぱいを手で触っているんだだだ。信じられん……。さっきの事故というアクシデントなどではなく柚恵のを俺が許可を得て和姦という合法的に触る日がまさか来るとは……。ゆゆゆ、柚恵のおっぱいいいいいいい!) 「さ、触るだけ……なの?」 答えてはくれない。彼は今、錯乱中だから。 (大丈夫だ。今日はいい天気だし……) 「た、高善ぃ。恥ずかしいよぉ……」 それでも彼は、ひたすらじーーーーーーーーっと触ってるだけ。 (柚恵のおっぱい。気持ちいいな。可愛いな。まんまるで、ぷるぷるで、ふにふにで。お饅頭みたいだ) 「な、何か云ってよぉ……」 どうすればいいかわからなくて、視線をあちこちへと彷徨わせ、彼の手にそっと手を重ねる。 「あぅ……。はぅ……。うぅ……。恥ずかしいの……。ぐす……」 「あ」 「あ、じゃないよぉ」 そんな柚恵をみて、やっと我にかえる馬鹿野郎。 「おっぱい」 何が云いたいんだ何が! 「……。じゃなくて。この後どうすりゃいい?」 「そんなこと聞かないで〜!」 「いや。柚恵のおっぱい、触り心地いいなーって」 「うぅ」 「あ。そうだ。聞くの忘れてた」 「え?」 柚恵の胸から手を離さずに、聞く。 「おっぱい。痛くない?」 「い、痛くないよ」 「そうか。よかった。……じゃ、少し強めにもみもみと」 「あ……あ……」 触っているだけの状態から、揉みはじめた。 「痛くない?」 「だ、いじょうぶ……だけど……」 「じゃ、もうちょっと強めに。もみもみもみ」 「あ、あふ……あ、や……」 もう少し強めに揉む。大きな胸をすっぽりと手で覆って、ゆっくりとこね回すように。 「痛くない?」 「……」 恥ずかしくて視線をそらしながら、小さく頷く。 「じゃ、もーちょっと強めに。もみもみもみもみ」 「…………。口に出して云わないでよぉぉ〜……」 パンの生地のように、ふにふにと形を変える胸。 「気持ちいい?」 「あ、ん……ん、ん……。う、うん」 「巨乳の人って、感度が悪いとか聞いたことがあるから。気になってな」 「巨乳って云わないで……」 かなり気にしている模様。 「いいじゃないか。俺は柚恵のおっきなおっぱい大好きだぞ。柔らかいし、可愛いし、ミルク詰まってるみたいでお得な感じだし。で、もっと強く揉んでも大丈夫?」 「あぅ……。大丈夫、だけどでも……。胸ばっかり、しないで……」 「ごめん無理。ずっと触っていたい。埋もれていたい」 「も、もう充分……。あ、あ……さ、触ってる……よぉ〜……」 「もっと触る! もみもみすると気持ちいいし。感じてる柚恵の声、可愛いし。それにほら、起っちゃった乳首……最高に綺麗だよ」 「あ……。ひ、引っ張っちゃ、だめ。お、おもちゃにしてるでしょぉ……。はう、はぅ……はぅん」 起ってしまった乳首を転がして、摘んで、引っ張って、押し込んで……。乳房を更に強く完全に形を変えるくらいに揉むと……。 「あ……。ちょっと、痛い……かも」 「……! ごめん」 少し痛そうな感じの柚恵を見て、ぱっと掴んでいた手を離す。彼女の事が本当に心配なのだった。 「え、あ。少しだけ、だから大丈夫だよ」 「そうなのか?」 「う、うん」 「じゃ、改めてもう一回」 「ん、ん……。あん……ん……。どうして、そんなに胸ばっかりなのぉ〜……」 「柚恵のぷるぷるおっぱいが、大好きだから」 「あぅぅ。……それって喜んで、いいのかなぁ」 いちゃつくようなやりとり。 「はぅ……あふ。……高善は、私の……どこが好きなの?」 柚恵は、胸を愛撫される恥ずかしさを少しでも紛らわすため、そんなことを云った。 「私……。ただの、普通の女の子だよ?」 どうしてこんなに好きでいてくれるの? と、聞いたのだけど、彼の答えは……。 「そんなこと口では説明できない。俺は柚恵という女の子が好きなんだから。……でも。いっぱい、色んなところが好きだ」 「……」 「可愛いところ、とか」 「……」 「一緒にいるだけで、ほのぼのした気分になれるところ、とか」 「……」 「じゃあ。他も全部、教えてやるよ。今からじっくりと」 「あ……」 そして高善は、媚薬でただでさえ敏感になった柚恵の体を優しく撫で回して……。どこが好きか、話始めた。 「おでこ」 「あ」 「ほっぺ」 「あ、あ」 「首筋」 「ひゃっ! あ、ああっ! だ、だめぇぇ……」 「うなじ」 「は、恥ずかしいよぉぉ」 「肩。二の腕〜」 「ひはっ! や、ああ」 「手の平、指〜」 「はふっ!」 「お待ちかね。柚恵のぷるぷるおっぱい〜」 「やああ……。は、恥ずかしいよぉ」 「ん、ん。桜色の乳首〜」 ちゅう、ちゅう、ちゅる、ちゅるるる、と音を立てて吸い付く。吸いまくる。しゃぶりまくる。 「す、吸っちゃだめぇぇ! あ、あ、あ、ああ〜! くすぐった……あ、ああっ! し、しゃぶっちゃ、だめぇぇ!」 「ほんっとに大っきいよな。柚恵のおっぱいって」 「云わないで。気にしてるんだよ……。これでも」 「俺は大好きだぞ。白くておっきくてまん丸で、ぷるぷるして可愛くて。優しくて。いい匂いがする」 「そう、なんだ……」 「ずっと、柚恵のおっぱいに吸い付いておしゃぶりしたりしたかったんだ。こんな風に」 そして、左右の乳首を交互にしゃぶる。おっぱいに張り付いて離れない高善。 「ひゃうっ! あ、赤ちゃんみたいだよぉ! や、あああっ! あ、熱いよぉ!」 「乳首、ひょっとして弱い?」 「……」 「気持ちいいんだな? じゃ、そういうわけで」 「ひぁっ!」 乳首に限らず、柚恵の大きな胸を徹底的になめ回した。乳首を中心に、円を描くようにゆっくりと……。胸の外周部から、谷間から。 「いただきま〜す。あむっ」 「きゃっ!」 そうかと思えば、口をめいっぱい開けて、ぱくっとかぶりつくようにしゃぶった。 「だ、めぇぇ。私……おかしく……なっちゃうよぉぉ」 「じゃ、お次は……お腹」 「はひゃっ!」 高善の唾液でとろとろに濡れた胸から、次はお腹に舌を這わし……その次は……。 「おへそ〜」 「あ……はっ! はぅ、う……く、すぐったいぃぃ……」 「脇腹〜」 くびれた脇腹も容赦なく愛撫。 「はぁ……はぁ……。あぅ……。も、もぉ……だめ……」 敏感なところを何度も何度も攻められて、息も絶え絶えな柚恵。 「まだまだ。よっと」 「あぅ……」 彼は、柚恵の体をひっくり返した。 「お尻お尻お尻〜。パンの生地みたいで可愛い!」 「はぅ〜……あぅぅ……」 さわさわ、ぐにぐにと、柚恵の柔らかくて形の良いお尻を撫で回す。 「ふにふに〜」 「く、くすぐったいよぉ。お尻撫でちゃ……いや」 「じゃ、なめなめ」 「はふっ!」 柚恵のお尻に顔を埋めて、舌で愛撫。 「あぅ。お尻なんて、ダメ……」 「じゃあ、足〜。太もも〜」 「も、もぉ……」 太ももをなで回し、舌でも愛撫。 「指ー」 柚恵はもう、全身を執拗に愛撫されてしまった。 「ひあっ! た、高善ぃっ! 私……おかしくなっちゃうよぉ……! も、もうだめ! 他のこと……して」 「じゃ、そろそろ。いい?」 「う……ん!」 「じゃあ。これ、入れるよ」 「う、うん。あぅ……。お、大きい……よぅ。入る……のかなぁ」 大きくて太くて長いものが目に入って、柚恵はビクッと身をすくませてしまう。 「大丈夫だろう。で、どんな体位がいい?」 「……え?」 「いやあの。バックとか、正上位とか騎上位とか松葉崩しとか宇宙的座位とかその他諸々いろいろあるんだけどさ」 宇宙的座位とは何であろうか? 「そんなの、わかんない……」 わかるわけがなかった。 「オーケー。じゃ、そういうわけでオーソドックスな正上位でいくぞ」 「……」 もう、こくこくと頷くしかできなかった。 「ゆっくりゆっくり……」 「あ、あん……」 「柚恵。痛くない?」 「痛く、って。まだその……い、入れて……ないよぉ」 まだ、入り口に先端をつけただけ。 「ああ、そうだった。じゃあ、ゆっくりゆっくり……痛くない?」 まだ、入り口に少しだけ先端を入れただけ。 「だ、いじょうぶ……」 「そうか。じゃあ、更にゆっくりゆっくりゆっくり……痛くない?」 まだ、少しずつ埋め込まれていくだけ。 「う、ん……。きつい、けど……大丈夫」 「そうか。じゃあ、仕上げにゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり……。痛くない?」 「だ、大丈夫だからっ。……そんなに、心配しなくても……大丈夫、だから。我慢、できるから」 「じゃあ、最後にもうちょっと……奥まで。柚恵。お前の初めて……もらうからな」 「う、んっ……。きて……。あ……あ……」 ぶつっと何かを突き破るような感触の後、ぐぐっと、柚恵の奥の奥まで入れていく。 「柚恵。大丈夫か? 痛くないか?」 「え……あ。ち、ちょっと……痛い、かも……。あっ」 奥まで入ってくる圧迫感に、少し顔を歪める。 「ごめん!」 慌てて引き抜く高善。彼女のことを大切に思う故に、彼らしくもなくびくびくしている。 「だ、大丈夫だよぉ〜。ちょっとだけ、少しだけ痛かっただけだから……続き、して……」 あまりにも大事にされすぎて、心配される方が慌ててしまうのだった。 「わ、私だって高善のこと……好きなんだからね。だから、信じて……」 「うん」 「はじめて……だから。その……。優しくしてくれて……うれしいけどでも。高善も……我慢しすぎちゃだめ……だよ」 「わかった。……まあそのあれだ。がんがんのハードコアなのは今後のお楽しみということで、今日は……ゆっくり動くだけで 、な」 それだけでも十分だから。 「うん」 そして改めて行為を再開し……。 「ん……うん。ん、ん……あ、ん……」 「柚恵の身体……奇麗だ」 「あり、がと……」 「ああ。……俺は今、柚恵と繋がって一つになってるんだな。柚恵の体の中におれのおちん○んがまるまる入っているんだな」 「そう、だよ……。ん、ん。入ってる、よ……」 「この瞬間を何度夢にみたことか……」 「高善……えっち……。あ、あ……」 キスをして、手と手を結びながら……一つに繋がった時間を噛み締める。 「今度、さ。おれのおちんちんをお口でおしゃぶりとか、手でこすったりとか……。おっぱいで挟んでしごいたり、してよ」 「……。うん。いいよ」 柚恵は高善が喜んでくれるなら、どんなことでもしちゃいそうな。そんな気分になっていた。 「高善がして欲しいこと……。いろんなこといっぱい、してあげる……。がんばる……ね」 「やったぁああああああ!」 そして、互いに目と目を合わせてくすくす笑った。とても一途で純粋な二人の初体験は、気持ちいい春のような時間だった。 ゆっくりとゆっくりと
高善が軽く達して、果てるまで
行為は続いていった……。
翌朝。 「ん……」 柚恵が目覚めると、目の前には彼の顔。 「柚恵。おはよ」 「高善……。お、はよ……。ご飯、作らないと……」 「柚恵のおいしいご飯を朝から食べられるなんて、俺は幸せ者だ」 「ふふ。ありがと」 結局あのまま添い寝して、朝まで一緒だった。 「なあ柚恵。一つ、お願いしたいことがあるんだ」 「んん……。何?」 まだ朦朧とした意識で、問い返す。 「その、何だ。大したことじゃないんだが……」 「うん」 「結婚してくれ」 「ええっ!?」 とても大したことである。と、いうよりそれはプロポーズである。一瞬にして眠気が吹っ飛ぶ柚恵だった。 「高善……。あのね。嬉しいけど……でも」 「嫌なのかっ!?」 「ち、違うよ。そうじゃなくて……。は、早すぎる……って、云いたいの。ま、まだ私達……高校生だよ?」 「そうか。……そうだな。そうだよな」 納得する高善に、心なしかほっとする柚恵。 「考えてみれば俺は、告白してから柚恵の云いたいことを何も聞いてこなかった。……ごめん」 「え、あ……。いい、よ。気にしてないから」 「じゃあ、将来……。近い将来なら……いいんだな?」 「う、うん……。それなら……。いい、よ……」 さりげなくプロポーズを受け入れている柚恵だった。 「じゃ、指輪のサイズを教えて……」 「だ、だから。ま、まだそれは……は、早いって云ってるの〜〜〜!」 そして、学校。
朝一番。教室の中には既にみんないて、雑談をしたり机に突っ伏して寝たり予習をしたりしている。 「みんな聞いてくれ!」 高善は、バンッと教室のドアをかなり乱暴に開けてというか留め具もろとも吹っ飛ばしながら躍り込み、宣言するように云い放った。当然のことながら、辺りは一瞬静まりかえり、クラスメイト達の視線は彼に集中することになる。 「俺は……俺はこのたび柚恵と、結婚することにしたンだッ! ……極めて近い将来にな」 弾丸のような勢いで、云いやがった。宣言しやがった! 「た、た、高善ぃぃ〜!! ま、ま、待ってよぉぉ〜〜〜! な、な、何でそんなことみんなの前で堂々と云うの〜!?」 あまりの恥ずかしさにおろおろ慌てる柚恵。 でも。彼は、かなり凄まじい事を云っているのだけれども、肝心のクラスメイト達の反応は……。 「へーふーんそーなんだよかったねーおめでとー」 以上! 何事もなかったかのように、中断した雑談を再開したり寝直したり予習を再開するのだった。 「あぅ〜。み、みんな何でそんなに冷静なの〜!?」 ただ一人困惑しまくりの柚恵に対し、クラスメイト達は……。 女子生徒達曰く。 「そりゃー、何を今更って感じだしー」 「っていうか、二人のことだから。しなきゃおかしいでしょ?」 「ま。高善君と柚恵ちゃんだからー。そーならない方がおかしいわね」 ということであったとさ。 で、男子生徒達曰く。 「まあ、あまりにも自然過ぎて、だーれも驚く気にもなれないからだよ」 「そうそう。王道パターンってやつだよね」 「ま。高善と柚恵ちゃんの関係だから。そうならない方がおかしいよね」 ということであったとさ。ただ、中には例外もあって。 「ううう! な、納得いかーーーーーーんッ! 今まで南森の馬鹿野郎と愛しの柚恵ちゃんがくっついていそうでいていなかったから、もしかしたら俺にも万が一、いやいや億が一でもチャンスっていうか付け入る隙があるのかなーなんて思ってじっくりと告白の機会を伺っていたのに……くそぉーーー! 南森の野郎なんかのどこがいいんだーーーー!」 と、密かに柚恵を狙っていた男子生徒が絶叫した。が、当の高善は口を大きくつり上げて、フッと笑い、どうだ羨ましいだろうこの不幸で惨めで哀れな身の程知らずの失恋野郎、とでも云わんばかりに、余裕の笑みを見せつけるのだった。敗者を徹底的に見下すタイプの、あまりにも挑発的なにやけ顔だ。 「な、何だその顔は! 何なんだその顔はッ! 何が云いたいんだ何がっ!? 何とか云えよ何とか云ってくれよおおっ!」 フッと笑った高善は何も云わない。あくまでも余裕の笑みを見せつけて優越感に浸りまくるのだった。 「う……あ……うああああああーーーーーーーーん! ちくしょおおおおおおおーーーー! くやしいよおおおおおお〜〜〜〜〜!」 敗北感と屈辱感に号泣する哀れな男子生徒だったが。 「あーよしよし。うるさいからとにかくあたしに慰められた気になって黙りなさいな。このお馬鹿さん」 「おーーーんおーーーんおーーーん!」 優しく親切なようでいて結構残酷な事を云う女子生徒に、頭をなでなでされて慰められるのだったとさ。 「まーそういうわけでだ。みんな」 高善は教卓の上に立ち、またも吼えた。 「式にはぜってーーーー来てくれよなあああああああああッ!」 恥ずかしがるそぶりなど微塵もない。ありはしない! あるワケがない! 「はぅぅぅぅぅっ! たたた、高善ぃぃぃ〜〜〜! 恥ずかしいよぉぉ〜〜〜〜〜!」 羞恥心120%臨界な柚恵。 「あーはいはいわかりましたわかりました」 冷静に尽きるクラスメイト達の反応は、以上! 「っつーわけでだっ!」 そして、今日も彼は最高にハイテンション! 「柚恵! ぜってぇ幸せにしてやるぜえええええええええええええええええっ!」
熱血暴走純愛馬鹿野郎と
「はうぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
ウブなおっとり少女の叫びは、学校中にこだますのだった!
「柚恵ええええええええええええええええっ!!!!」
「はうううううっ! うみゅっ!」
クラスメイト達の前で、思いっきり抱きしめられて濃厚なキスをさせられて。
「はぅ……はふ……はふぅん……」
「なっ!? ゆ、柚恵ええええっ! 保健室に連れて行かなければ! くそぉっ! 誰が俺の柚恵をこんな目にッ!」
お前だお前ッ!
あまりの恥ずかしさに柚恵は崩れ落ちるように失神……。
そして、保健室に連れて行こうとした高善に、みんなの突っ込みが入る!
「保健室ではえっち禁止だからねっ!!」
それに対して、高善は……。
「んなこたわぁってらぁ! ちゃんと家ですらぁっ!」
そして、柚恵をお姫様抱っこしたまま
ブースター全開状態な、猛ダッシュをしていくのだった!
-完ッ!-
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