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-それYUEに! 参(さん)-










 その、無駄に肝っ玉の据わった男はかく語りき。

 ――世界なんて関係ねぇ! 俺はただ、愛しの柚恵とひたすらずっこんばっこんがっつんがっつん熱く愛し合いたいだけだ!

 ……と。









 男の名は南森高善(みなみもりたかよし)といった。彼は一見すると何の変哲もないごく普通の男子高校生。が、実際の所はすさまじい切れ味を誇る秘剣の使い手であり、ただそれだけでもものすごい強そうな設定のはずなのだが、更にその上に大天使ミカエルの生まれ変わりでもあるとかいうような、ゲームで云うところのチート行為でもしているかのような厨二病設定満載な、いわゆる『ぼくがかんがえたさいきょうのきゃら』なのであった。

 そして、高善の彼女さんは名を北本柚恵(きたもとゆえ)といった。彼女は高善とは違い一見しても実際も何の変哲もないごく普通の女子高校生。が、『とっても可愛い』という注釈が付くのは間違いないだろう。大和撫子のように長く艶やかな黒髪に、目尻にさりげなく見える泣きほくろがちょっと色っぽいかもとみんなが思っている。のんびり屋さんな性格でおっとりしていて家庭的で優しくて親切。しかも結構なナイスバディとくれば、クラスの男子連中はもとより女子達にとっても人気者。そして、いつも散々高善に振り回されっぱなしだけど彼のことが大好きという、とっても一途で純情な女の子なのだった。あえて欠点を一つあげつらうとすれば『柚恵ちゃん……。彼氏はきちんと選ぼうよ』と、そういうことにでもなるだろうか。それ程までに高善は目茶苦茶な男であり、柚恵はそんなやつを彼氏に選んだのである。あるいは選んでしまった、と云うべきなのだろうか。

 彼らの過去のエピソードを振り返ってみると、いろいろあったと云うべきだろう。ひたすらドタバタした。その原因は主に……と、いうよりも全部高善の暴走により柚恵が振り回されるというお話ばかりだったけれども。とにかくも高善は事あるごとに恥ずかしがり屋な柚恵と所かまわずキスをしたり抱き着いたり胸を触ったり揉んだり、果てはえっちまでしてしまった。ある時など全校生徒の目の前で堂々と見せつけるようにしまくりやりまくった。……もっとも、致した後に天使の力を利用してその場に居合わせた者全員の記憶を消去しておいたけれど、あまりにも大胆不敵であり、かなりの変態であることは間違いない。

 さて、数々の苦難(=単なる高善の暴走による自爆)を乗り越えた二人は今、どのような生活を営んでいるのかというと――。

 南森家にて。

「高善。おは……んんんっ!」

「おはよう柚恵」

 明るい日曜日の朝のこと。おはようの挨拶が終わるよりも早く、高善は柚恵をぎゅむ〜っと抱き締めていた。まさに目にもとまらぬ早業だった。柚恵の全体的に華奢だけど部分的にとてもふくよかで、尚且つ柔らかくも暖かい体の感触を全身で感じ、とっても気持ち良さそうにうっとりとしていた。

 日曜日というよりも、休日は大体いつも柚恵の方が早く起きて朝食の支度をしたりするのだが、今日は高善に先を越されてしまったようだ。

「ん……。も、もぉ。苦しいよぉ。んんんんっ! だ、め」

 ついでに、抱き締めてキスをするだけじゃなくて胸もふにふにと揉んでいたり、更にはディープなキスもしていた。なかなか抜け目がない男だ。

「た、かよしぃぃ。もぉっ」

 必死に高善の体を引きはがす柚恵。恥ずかしさに顔が真っ赤。まだ顔も洗ってないのに〜! と、思うけれど高善は構ってなどくれなかった。デリカシーが全くないのがこの男の数多くある欠点の一つといえるだろう。

「柚恵は今日も可愛いな」

 高善は何故か照れまくっていた。そして高善のほふぅ、とかすかだけど熱い吐息を至近距離で感じてしまう柚恵だった。愛され大切にされ、嬉しいけどいきなりのことに柚恵は戸惑う。いつものことなのに、何度もされていることなのに、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいくて簡単に慣れることができるものではないようだ。柚恵の思いとは裏腹に、高善はいつも何事もなかったかのように振る舞う。一見するとクールなナイスガイなのだが、実態は無駄に熱く一途な純情日本男児なのだった。

「コーヒー飲まないか?」

「あ、うん。ありがと。……でも、その前に放して欲しいなぁ」

 こうして、柚恵のささやかな望みはやっとこさ適えられる。

 ――こぼれないように注意深く、小さくも可愛らしい花柄模様の入ったカップにコーヒーを注いでいく。すぐに心地よい香ばしさが広がり、鼻孔をくすぐる。云うまでもないことだが、柚恵のカップは高善のそれとお揃いなのだった。そのカップでコーヒーや紅茶を飲む度に、あれはいつのことだろうかと二人は思い返す。高善と柚恵が付き合い始めた当初の頃のこと……。駅前の商店街に新しくできた小さな雑貨屋。たまたま二人で商店街に買い物に来ていて気晴らしに立ち寄ってみた時に見つけたのだった。可愛らしい柄に柚恵が気に入り、高善も満更ではなく双方の合意によって購入に至ったという、ちょっとした思い出のアイテム。

 高善と柚恵は幼なじみの関係。双方の両親も互いに友人関係であり、その縁で柚恵は遠方の学校に通うために高善の自宅に居候している身なのだった。……のだが、高善の両親は夜逃げでもしたかのようにある日、何の前触れもなく海外に移住という暴挙に出たのだ! しかしながら高善の両親も柚恵の両親も互いにツーカーの仲なのか似た者同士なのか天然なのかバカなのか、恐らくはそれらの予測が全部正しいのだろうが二人の(結果的に訪れた)同棲生活に大歓迎なのだった。柚恵の両親はあろうことか高善に『娘をよろしく!』とまではっきりと云い切ったくらいである。そして時を同じくして高善は柚恵に愛の告白をしたのだった。……無論それまでも一途に柚恵のことを想い続けてはいたのだけれども、案外引っ込み思案で奥手だった高善はなかなか行動には移せなかった。もっとも、状況は柚恵の方も同じようなものではあったけれども、とにかくそのように互いにつかず離れずなもどかしくも端から見てるとイライラしてきそうな甘ったるい恋愛を延々と続けてきて、二人きりになったタイミングで高善の方から全てを決し今に至るのである。

「朝ごはん、作るね」

 顔を洗い終わり、気付けのコーヒーを一口飲んでから優しくそう云う柚恵に対し、高善はにっこりと笑って言葉を返す。とっても眩しくて爽やかな笑顔で、柚恵はいつもどきっとしてしまう。無邪気な少年そのものの笑顔だった。この笑顔に柚恵はいつもやられてしまうのだ。親切で優しくてお人好しで、簡単に騙されてしまう娘なのだろう。柚恵が高善とくっついたのはある意味ではとてもよかったのかもしれない。

「必要ないない。もうできていたりするんだなこれが」

「え?」

 そうして高善はすくっと立ち上がり、てきぱきと用意を始める。クロワッサンにコーヒー、生ハムにサラダにちょっと薄い塩味の若芽スープ。全ては柚恵を思う高善渾身のモーニングメニュー。

「さあさあ、召し上がれ」

「う、うん。ありがと」

 柚恵はいつも振り回される。時にびっくりさせられたり驚かされたり。この朝食だってそうだ。呆然としている間に全てが揃っていた。まるで魔法のように。

「味はどうだい?」

「おいしい」

 柚恵はさく、とクロワッサンをかじってから素直に云った。柚恵は自他共に認める料理が好きな娘。だけど、高善の方がずっと上手だよと柚恵は思うのだった。

「よかった」

 高善はほっとしたような笑顔を見せる。

「高善、ありがと。高善の愛情……いっぱい、だよ」

 柚恵もちょっと恥ずかしそうにしながら、心の底からありがとうと云う。

「柚〜恵」

「ふふ。なぁに?」

 甘えたような声を出す高善が可愛くて、柚恵は思わず微笑んでしまう。

「今日、なにして過ごす?」

 リビングにはコーヒーの香りに加え、陽光が差し込んでいた。今日は日曜日。たっぷりと時間はあるわけで。とても幸せな一時がずっと続いていくに違いない。体の力を完全に抜いて身も心もリラックスできる一時が。

「ん……。高善と一緒に」

「柚恵〜」

 一緒に何をどうするか。その先は云う必要などないし、聞く側も答えを必要としてはいなかった。互いに微笑み合いながら見つめ合う二人。何だかんだで柚恵も高善の事が大好きなのだった。高善と同じくらいに。





しかしその幸せは長くは続かない。





あまりにも唐突ではあるが、実は今この瞬間。





地球侵略を企む醜悪で凶暴なエイリアン軍団が大艦隊を率い、密かに地球へと近づきつつあったのだ。





無論、高善はそんなもん知ったこっちゃないのだった。





仮にその、圧倒的な科学力と生命力を持つエイリアン軍とかが地球を襲撃している真っ最中だとしても、柚恵といちゃいちゃらぶらぶな日常を過ごせるのなら全てどーでもいいというスタンスなのだった。





 ――ちゃぷちゃぷと水音さえ楽しげに聞こえてくる。そこはいつもきちんと整理整頓され、ぴかぴかのキッチン。真面目で家庭的な柚恵の性格が伺い知れる場所。いつだったか、キッチンは女の子の戦場だよと、笑いながら高善に云ったことがあるけれど、まさにその通り。

「柚恵〜。洗い物なら俺がやるって」

 高善はうずうずして我慢できないとばかりに柚恵の両肩に手をかける。

「だめだよ高善」

 エプロン姿の柚恵は後ろを向きながら『めっ』とばかりに高善の手を軽く叩き、たしなめる。

「せっかく高善がおいしい朝ごはんを作ってくれたんだから。私も洗い物くらいしなきゃだめだよ。家事は分担、だよ」

 誰がどう聞いても若夫婦のような会話だったが、ちょっと天然入ってる柚恵は全然意識していなかった。

「柚恵〜」

 そんな会話に感動した高善が柚恵の背中に抱き着いてきた。

「なんて可愛いんだ柚恵〜〜〜」

「わっ。ち、ちょっと。高善ぃ〜っ。もう……」

 高善は柚恵のふっくらした大きなバストを鷲掴みにして揉みまくった。慌てふためく柚恵は洗っていたお皿を危うく落としそうになってしまった。

「だ〜め。……あ、後でして……いいから。今はだめ、だよ。えっち」

 高善は聞いちゃいなかった。ひたすら胸をもみもみ揉み続けられ、くすぐったさに柚恵は恥じらう。

「うぅぅぅぅ! やだやだ今じゃなきゃやだ! エプロン姿の柚恵がいい!」

 それはまさに駄々っ子だった。小学生以下のメンタリティだった。やってることは完全にガキだった。きかん坊だった。

「も、もう。わかったから。……エプロン着たままでいいから。後で……ね?」

 ため息をつく柚恵。だけどとっても優しくて、母性的な娘。その眼差しに高善もさすがに折れざるを得ない。

「わかったよ。……でも、その前に」

「んんっ!」

 ほんの少しの時間も名残惜しいのか寂しいのか、高善は突然柚恵にキスをしていた。唇をふさぎこみ、軽く舌をからませるキス。目を閉じる暇すら与えない早業。

「も、う……。ん、ん……」

「じゃ。お布団敷いて待ってるから」

 早く来てほしそうな眼差しを向けながら、高善はキッチンを出て二階の自室へと上がって行った。

「……はふ」

 柚恵の体は既に十分なくらい火照ってしまった。高善のキスは媚薬でも飲まされたかのように熱く、刺激的だったのだ。絡み合う舌のざらついた感触が体中をかけめぐり、敏感にさせてしまう。胸を揉まれた時もそうだ。電流が流れたかのように、熱いものを感じた。高善は柚恵の性感帯を知り尽くしているかのようだ。

「あ……」

 柚恵はふと違和感に気づいた。じゅん、と何かが込み上げる感触。ああ、また……と思ってしまう。いつもペースを奪われてしまう。

「う、うぅ……。も、もう……。高善のばかぁ」

 顔を真っ赤にして恥じらい、股間を抑える。粘り気のある液体が僅かに込み上げてきてしまった。

「えっち……だよぉ」

 高善のせいか、自分のせいか。恐らくは両方。……高善が待っているから、洗い物のスピードを速めようとするけれど、無理だった。何故ならば……。

「……」

 時間がたつごとに想像してきてしまう。これから高善に抱かれ、激しく突き上げられて徹底的に愛され絶頂を迎えさせられ、普段なら絶対に口走らないような恥ずかしい言葉を無意識のうちに云わされ、大股開きをさせられながら盛大に潮を吹かされてしまうことだろう。まず間違いなくそうなのだ。死んでしまいたくなるほどの恥ずかしさなのに、何故か嫌じゃなくて求めてしまう。

「高……善。あ……やあ」

 嫌じゃない。して欲しい。望んでいるのは高善よりもむしろ自分の方。現に今もまた込み上げてきた。下着がじゅわ、と湿っていくのがわかる。そのうち溢れ出て、足元まで垂れてきてしまうことだろう。

「好き……」

 我慢できない。けれど……洗い物をしなければ。股間を押さえる手で秘所を直に触り、いじくり回して快感をむさぼりたい。

「だめ……」

 つくづくえっちな娘だ、と思う。高善に嫌われちゃう、と思い必死に煩悩を押さえ込む。はぁはぁと粗い息をつきながら残り少なくなった洗い物を必死に洗う。力が入らず食器を軽く落としてしまう。お湯が飛び散り、柚恵の胸元と顔を軽く濡らす。きっと……十数分後には剥き出しにされた胸に熱いものがぶちまけられる。胸の谷間も、乳首も乳輪も高善の色に染められてしまう。

「た、かよしぃ……」

 思わず胸に手を当てる。そのまま揉み続けたい……そう思い、こらえる。そんなことが何度となく続いた。





…………





「高善。おまたせ」

 ベッドの上にはあぐらをかいて座る高善の姿。

「柚恵。早速しようか」

 はふはふと荒い息を吐く犬のようにわくわくして待ちきれなかったと云う感じの高善。柚恵が部屋に入って来た途端、勇ましくズボンのチャックをジャッと降ろし、途中で引っ掛かって上手く降ろせず何度か焦りまくるのだった。とてもドジで、扱いの難しい秘剣を使いこなす男とは思えない。

 柚恵はくす、と微笑む。それ程までに求めてくれることに対して。今日も高善は底無しで、五回でも十回でもびくともしない絶倫ぶりを発揮することだろう。そして柚恵は思う。今日もきっと徹底的に揺さぶられ、気を失う程いかされてしまうのだろうと。足腰立たなくなるほどに。それがちょっとだけ怖くもあり、楽しくもあった。

「……どうすればいいの?」

「じゃあ、まずはお口で」

 柚恵が洗い物をしている間のこと。高善がベッドの上でポツンと一人待っているとき、どうしてもらおうかと散々考え悩んだが答えは出なかった。ただ、まず最初は焦るな落ち着けと自分に云い聞かせ、結局は口でしてもらうことにしたのだった。

「うん。わかった」

 柚恵は小さく頷き、高善の股間に顔を近づける。大きい……というよりも巨大と云った方が適切かもしれない高善のものを手で軽く握る。そうして怖々としながらも柚恵は目を閉じ、小さな口を目一杯あけてくわえ込んだ。ベッドの上に四つん這いになりながら。

「ん……」

「フェラってさ。えろいよな」

 高善は柚恵の艶やかな黒髪を撫でながら云った。このきれいな髪に触れることができるのは自分だけの特権だと心の底から思う。

「大好きな人の口の中にさ。自分のえろいとこっつーか、ちん○突っ込んでるんだよな。……汚してるって感じがする。すっげぇいけないことをしているんだよなぁ」

 今更だけど、高善はとっても純情な野郎なのだ。

「何というかこう、征服しちゃってるような、そんな気がするんだ」

「私は」

 高善の言葉を聞いてから数秒後。柚恵は高善のものから口を離し、代わりに手でしごきながら云う。

「高善に征服されちゃいたいよ?」

 柚恵はくす、と笑う。

「全然悪いことじゃないと思う。私は高善にならどんなことされてもいいし、して欲しいよ。いっぱい、ね。おしゃぶりも、えっちも……」

 高善にとって柚恵の笑顔は天使のように見えたのだった。あんまりにも可愛くて健気で萌えまくりでずっきゅんと心臓が高鳴った。

「柚恵えぇぇ〜〜〜っ! なんて可愛いんだ〜〜〜〜〜!」

「ち、ちょっと高善ぃ。まだ途中だよぉ」

 嬉しさと感激のあまり泣きながら柚恵を抱き締める高善だった。





二人がそんなことをしている時。





遂に非常に野暮で凶悪なエイリアン軍の地球侵攻が始まったのだ。





エイリアン軍は地球侵攻直前にあることをした。





そしてそれは、高善と柚恵にとって大いに災難となり得るものだった。





「柚恵、行くぞ」

「う、うん」

 お口でたっぷりちゃぷちゃぷとしゃぶってもらってとろけそうになり昇天しそうになり、思いっきり口内射精しちゃった後のこと。高善はベッドの上に柚恵を優しく横たえさせて、ぐいと両足を開かせる。淡い毛に覆われてはいるものの、恥ずかしい部分が一気に全て見えてしまい、恥じらいに頬を赤らめる柚恵。同時に、高善の股間にそそり立つ巨大なものをもろに見てしまい、少しの脅えを感じて目を見開きシーツをぎゅっと握る。

「大丈夫だ柚恵。優しくするから」

「う、ん」

 高善の云うことは本当。いつも柚恵の不安を和らげてくれる。

「入れるぞ」

 高善が先端を入り口にあてがい、腰を進め……ようとした。その直前で異変が起こった。とてつもなく巨大な異変が!

「ぐお! 何だっ!」

「わっ! な、何!?」

 ごごごごと轟音が鳴り響き、辺り一面がまばゆいばかりの光りに包まれていく。その光は数分間消える事がなく、やっとおさまったと思って辺りを見回した時、風景が一変していた。

「ど、どこ? ここ」

 外の風が吹いていた。柚恵は呆然としてしまった。家のベッドの上にいたはずなのに、何故か屋外に出ていたのだから。辺りには何もなく、恐竜が我が物顔で闊歩しているような時代の風景。荒涼とした原野の上に不釣り合いすぎるベッドが一つ、ぽつんと取り残されていた。

「ちっ。どうやら数千万年前にタイムスリップさせられちまったみてぇだな。誰が何を考えてこんななめくさったことをしやがったかはわからねぇがよ!」

 挿入を邪魔されブスッとした表情の高善が不機嫌さを隠す気もなくつぶやく。

「え……。た、タイムスリップ? 数千万年前って……」

 普通の人であればここで、元の世界に戻れるのか? と、心配に思うことだろう。しかし高善は違っていた。

「まあ、そんなことはどうでもいい。柚恵、続きをやるぞ!」

「え……。あ、はうっ!」

 当然のごとくまだ動揺しまくってる柚恵が振り返る間もなく挿入を実行した。ズンッと奥まで貫くような強さで。そんなことをやっている場合ではない、と誰もが云いたくなるようなことをやってのける高善と、やはり振り回される運命の柚恵。

「あ、あ、はうっ! た、高善ぃ!」

 猛烈な強さの突き上げだった。高善の巨大なものが柚恵の中を引き裂きそうなくらいに侵攻してくる。けれど不思議と痛くはなく、優しく包み込んでくれる。

「あ、あ、あっ!」

「やっぱ柚恵の中は最高に気持ちいいな。締まりも最高だし」

 ベッドの上だけじゃ勿体ないとばかりに、高善は立ち上がり柚恵の体を持ち上げ、いわゆる駅弁状態になり突如走り始めた。何もない原野を全力で! 獣にでもなったかのように颯爽と!

「おおおおおおおっ! 柚恵ええええええっ! 最ッ高に気持ちいいぞおおおおおおっ!」

「あ、あああああっ! はうううううっ! たたた、高善激しすぎいいいいいっ! あああああんっ!」

 柚恵はたまったものではなかった。ズンズンズンズンと凄まじい揺さぶりに既に軽く三回は絶頂を迎えさせられてしまっている。高善との結合部からはポタポタと愛液がしたたりおち、堪えきれない快感にぽろぽろと涙をこぼしている。

 二人とも夢中で全く気付いていなかったが、行為が激しくなればなるほど辺りの風景が一変していった。近くの火山が噴火し、どどどんと轟音を鳴り響かせながら深紅のマグマを吹きまくれば、今度は巨大な大地震が幾度も起こり地割れを発生させ、津波を巻き起こして辺りを飲み込み竜巻を発生させ何もかも吹き飛ばし、天変地異を引き起こしていた。

「へっ。俺には全てがわかってきたぜ。そういうことかい! 上等だぜやろぉっ!」

 高善はその強大な能力により時の流れの異変を探り、全てを悟っていた。この異変は何なのか。柚恵と激しく愛し合えば愛し合うほど世界が壊れ、異変が激しさを増していくのはどうしてなのかを。超巨大高速コンピュータの能力をもはるかに凌駕する演算を脳内で一瞬の内に行っていたのである。

「エイリアンのタコやろうめ! 俺と柚恵を過去に追いやって引きはがそうだなんて甘ぇ! 身の程を知りやがれ! 数百億年早ぇってんだぜ! 今から時の流れを加速させてやっからなぁ! 首洗って見てやがれよぉっ!」

「はうっ! はふっ! ああんっ! た、かよしぃぃ。も、もぉ……ら、めぇぇ! あ、あ、あーーーーっ!」

 高善は更に速く、強く、激しく突き上げる。高善が悟っていた事。それはとてもシンプルではあるが事実だった。地球侵攻を狙うエイリアン軍団。彼らは地球侵攻に先立ってあることを行っていた。……原因は不明であるが、戦略偵察の結果により地上のある地点に猛烈な強さのエネルギー体を確認したのだ。それはエイリアン軍団全軍をも凌駕する程の驚異的な力であり、彼らの予想を遥かに越えたもの故に脅威に思い、そのエネルギー体を数千万年前の遙かな過去の世界にタイムスリップさせて完全に封印し、危険分子を排除したのだった。

 しかし誤算が生じた。巨大なエネルギー体……つまりは南森高善自身のことだが、彼に時の流れを加速させる術を偶然に発見されてしまったのだ。それはまさしく愛の力。大好きな人との熱き営みそのもの。

「へっ一万回でも百万回でも突きまくってやる。そして、時の流れを加速させまくってやるぜ! 愛の力は原子力より強力なエネルギーだっつーことを教えてやる!」

「も、もぉら、めぇぇ……」

 高善が息も絶え絶えな柚恵とセックスをするたび、時が……一年がカウントされていくのだった! 地球の公転速度を加速させていくかのように、朝が来て昼になり夜になり、春が来て夏が来て秋となり冬となり、季節を何千回、何万回と繰り返す。ハンマー投げをするかのように太陽に無理をさせ、地球をブンブン振り回させるのだ!

「一突き一年? 足りねぇ足りねぇ! そらそらそらぁっ! 俺の突き上げは一回数万年だぜ! 突き過ぎて未来に行かねぇように注意だぜ! 柚恵、しっかり着いて来てくれよな!」

「あ、あふっ。あふぅっ。あっあっあっあっあっ! い、っちゃうううう……ああんっ! ま、またいっちゃうよおおおおっ! たかよしぃぃぃっ! も、もぉゆるしてぇぇぇっ!」

「ダメ。許さない。俺たちのえっちはまだまだこれからだよ!」

 柚恵が気を失いそうになるたび、高善の熱いキスが気付け薬のように柚恵の意識を呼び覚ます。ひたすら揺さぶられて全く気付かないけれど、高善はジェットエンジンでも装備したかのような速さで走り回っていた。既に世界を何周したことだろう?

「あ、あ、あ……」

「柚恵。気持ちいいかい?」

「う、ん……。きもち……いぃ……」

「どこがどんなふーに気持ちいいんだい? 我慢せずに云っちゃいな」

「あ……ふっ。お、ま○こが……たか……よしの、お、ち○ちん……はいって、あつく……て。ああああっ!」

 高善は意地悪をし、わざと柚恵にいやらしい台詞を言わせてますます嬉しくなってきた。そして宣言する。

「ああもう、なんて可愛いんだ柚恵! 嬉しいから大量ぶっかけいくぜ! 中には何十回も出したから、今度は外でたっぷりしっぽりいくぜ!」

「わ、あっぁ! ……んんんんんっ! んぶううううっ!」

 ぬぽ、と引き抜く。その先からは鉄砲水のような、消防用ホースで強烈な水圧のような射精。どばっと柚恵の全身にぶちまけた。柚恵はそれだけで感じて達してしまうのだった。

「でもまだまだ終わりじゃないんだぜ! 今度はバックだぜ! 野生に戻ってがっつんがっつんいくぜ! 柚恵ももっともっと腰振って! そらそらそらっそらっそらっ!」

「あ、あ、あ、あ、あ、あ! も、もぉ……だ、めぇぇぇ〜。はううぅぅ……! はずかしいいいいいっ!」

 ぱんぱんと激しい音が世界中に轟いていく。力が完全に抜けてしまった柚恵は背後から大きな胸をむんずと鷲掴みされ、乳首を捻られた瞬間派手に失禁してしまい、しゃあああとこぼれていく。高善はそれを見て嬉しそうな笑顔で柚恵を突きまくる。世界が更に壊れていく。あるいは再構築されていくのだろうか。ものすごい勢いで雲が流れ、嵐が吹き荒れ稲光が辺りを照らしたと思ったら灼熱の太陽が辺りを干上がらせる。今まさに二人は世界の中心に位置していた。





――現代。





 衛星軌道上に展開するエイリアン軍。攻撃準備は全て整い、全艦の巨大な砲塔が地球上のあらゆる主要都市に向けられ、後は司令官からの攻撃開始の号令を待つばかりとなっていた。これから地球上で行われる惨劇は既に不可避となってしまった頃のこと。

 下手な小惑星くらいのサイズはあろう、超巨大なエイリアン艦隊総旗艦のオペレータが一人、些細な異変に気付く。何かはわからない、正体不明の小さな物体が本艦に近づきつつあり、と。しかし彼がその情報を艦長及び司令に報告する以前に異変は起こった。時は既に遅すぎたのである。

 エイリアン艦隊総旗艦のブリッジが何物かによりズバッと一刀両断され、巨大な赤色の火玉と化したのである。現実には、何かものすごく高速で動くものによりエンジンから船体から全てを貫かれ、ど派手にぶった切られたのであった。こうして、エイリアン軍の中核はいともあっさりと簡単に排除されてしまったのだった。

 突然のことに大混乱に陥るエイリアン艦隊。その副旗艦とも云うべき巨艦のブリッジに、突如二名の人物が現れる。異変は最高潮に達しようとしていた。

「おらおらおらおらおら! 柚恵ええええっ! 気持ちいいか!? いっちゃうか!?」

「あうううううっ! き、きもちいぃぃぃぃっ! いっちゃうううううっ! もうらめえええええっ!」

「いくって云うんだぜいくって!」

「う、うんんんっ! いっいくううううっ! いっくううううっ! ああああっ! い、いっちゃった、あ、あぁぁぁぁっ! ま、また……はううううっ!」

 それは飽きもせず今も全裸で交じり合う高善と柚恵だった。エイリアン達の策略により遙かな過去に監禁されてしまったが、悠久の時を越えて見事現代へと舞い戻って来たのだ。そうして激しいえっちにより発生した強大な余剰エネルギーにより衛星軌道上へと時空転送され、今に至ったのである。

「出すぜぇ! おらぁっ!」

「あ、あ、はあああああああっ! あ、あ、あ……あふ、あぅ……もう、だ……めぇぇ」

 どぷどぷと柚恵の中に射精した。溢れ出た精液がどばどばとこぼれ、艦隊副旗艦の床に洪水を巻き起こした。大混乱に陥る艦内だったが高善にとってはそんなこと知ったことではなかった。

「よぉし。柚恵! 今度はお尻のほーに入れっぞおおおおおおっ!」

「あ、あ、あ……だ、だ、だめぇぇぇっ! そこはだめぇ! そこおしりいいいっ! あ、ああついいいいいっ! おしりがあぁぁぁぁ! あひいいいいっ!」

 今度は立ちバックで始める。発狂したように白目を剥き、唾液をこぼしながら舌を出し、大粒の涙をふりまく柚恵。直後にずぶっと入っていく感触。そして同時に高善は柚恵の胸をむにゅううううと激しく揉みまくる。触れられるところ全てが熱く、刺激的に感じられた。

「あううううううっ! おしりで、おしりでいっちゃううううううっ!」

「おし! いっちゃえ! お尻でいっちゃえ柚恵!」

 高善が入れてからものの数秒とたたないうちに、柚恵は絶頂を迎えさせられていた。柚恵は高善と繋がったまま自分の胸を揉みしだき、快感を貪り続けた。

「ふぅ。……おいおまえ!」

 高善は今も柚恵を突き上げながら、呆然としてしまい立ち尽くしている司令官らしきエイリアンに近づき、そのエクレアのような細長くも黒くグロテスクな頭を思い切りぶん殴った。その拳の勢いはとんでもなく強く速く鋭く波動を放ち、司令官共々艦内の計器をどかどかと吹き飛ばし、シートを砕いてふっとばし、壁にも穴をあけていた。

「邪魔だどけ失せろ絶滅させっぞてめぇら! 窓の外を見てやがれおんどりゃあ! くらいやがれ必ッ殺! 拡散精液ぶっぱなしビッグキャノン!」

 柚恵とのあまあまな一時を邪魔され怒りに燃えまくる高善がエイリアン達を一喝し、お尻を突かれまくって気を失ってふにゃふにゃ状態になってしまった柚恵の中からぬぽっと勢いよく引き抜いて、そしてブリッジの窓から見えるエイリアン艦隊目がけて思いっきり射精した。すると、どばああああ、と勢いよく出たものが超高濃度高出力エネルギーと化し、そのまま窓を突き破り拡散し拡大し付近のあらゆるもの、艦隊はおろか辺りの岩だのスペースデブリだの人工衛星だの宇宙ステーションだのを全て破壊し尽くしていった。突如発生した巨大エネルギー体をもろに受けて爆発し一瞬にして巨大な火玉と化した艦隊に、エイリアン達はただただ呆然とするだけだった。人類の中にこれ程までの戦闘能力を持つものがいたとは……。

「――いーか! これに懲りたら二度と俺と柚恵のらぶらぶあまあまセックスを邪魔するんじゃねぇ! わかったか! わかったらとっとと失せやがれこの腐れファッキンエイリアン野郎共! 失せなきゃ全員ぶっ殺す! 今すぐ全員ぶっつぶす! 俺の精液が白いうちにとっとと失せろやこるあ!」

 ……本来強大な生命力を持つはずのエイリアン軍の生き残り達及び、副統領閣下は恐怖のあまり泣きじゃくりちびりまくりながらこくこくと頷き、そおくさと撤退を開始するのだった。どうやらあまりにも相手が悪かったようだ。





こうして、一人の男の(無意識による)大活躍により





地球は救われたのであった……。





「……あ」

 夕暮れ時が近い頃。柚恵は目覚めた。気が付くと全裸のままベッドに横になっていた。もしかして今までの事は全て夢だったのかなと思うけれども、現実を証明する男が側にいた。

「おはよう柚恵。よく眠っていたね」

 それは暖かいコーヒーを飲んでいる高善だった。柚恵の目覚めに気づき、一杯いれてくれる。

「高善。あの……」

「大丈夫だ。あの腐れエイリアン連中はみんな俺が懲らしめておいたから。もう誰も邪魔したりなんてしないよ」

 やっぱり全部現実だったんだ、と柚恵は溜息をつく。どうしてこの人と一緒にいると、とんでもない事態にばかり遭遇するのだろう、と。

「それにしても、ちょっと変わった日曜日だったね」

「ちょっとじゃない。全然ちょっとじゃないよぉ」

 ふるふると長い髪を揺らしながらかぶりを振る。しかし常識的な柚恵の突っこみはいつものように、高善には届かない。

「え? えっちが全然物足りなかったって? そっか。ショックだなぁ。今度はもっと頑張るよ。精進するから」

「物足りなくなんてないないない! も、もう充分すぎるよぉっ! あ、あいたたた……。うぅ。た、立てないよぉ」

 立ち上がろうとしてよろめいてしまう柚恵。一生涯分を遥かに越える回数のえっちをしまくったのだから無理もない。困惑しまくり溜息を連続してつく柚恵に対し、高善は体をぐぐっと伸ばし、呟くように云った。

「大丈夫だよ。さてさて晩飯は何を作ろうかな〜。やっぱ精のつくもんがいいよね〜」

「高善」

 どんなに凄まじい状況にされても徹底的に振り回されても、何故かまあいいかと思わせる何かが高善にはあるのだった。柚恵は改めて足に力を入れてベッドを降り、高善の腕を取る。そして云う。

「晩ご飯は一緒に作ろ」

「オッケー! そうこなくちゃ!」

 高善は満面の笑顔。柚恵は思う。何もかも許せちゃうのは、この笑顔が眩しすぎるからかな。と。そして無邪気な子供のようにキスをしてきた。油断も隙もない。

「んんんんっ! ん……も、もう。もう、だめだからね。あれだけいっぱいしたんだから、今日はもうだめ。私、死んじゃうよぉ」

「えー。いくいく云って喜んでいたじゃないか」

 かーっと顔が熱くなっていく。散々いかされ、よがらされ、いやらしい言葉を云わされ続けたことを。

「た、高善のせいだよぉっ! 私……私絶対あんなこと云う娘じゃないもん! そりゃ、ちょっと……えっちにされちゃったかもしれないけど。でも、違うったら違うもん!」

 ムキになって反論。

「本当に?」

「本当だもん……。多分」

 記憶は嘘をつかない。柚恵はちょっぴり自信喪失。

「じゃ、確かめるために夜また激しくやろうぜ!」

「どうしてそうなるの〜〜〜!?」

「嫌なのか? 俺はこんなに柚恵のことが好きなのに」

 突然涙目になってえぐえぐとしゃくりあげはじめる高善。そのメンタリティはまさにお子様で、いつも柚恵を困らせる。

「い、嫌じゃないよぉ。私だって高善の事大好きだもん。……だけど、だけど……お願いだから普通にしてよぉ〜〜〜〜〜!」

 柚恵の叫びが夕暮れ時の空に響いていく。ひたすらいちゃいちゃあまあまな関係を続ける二人。果てしなく広がる空のずっと向こうの銀河では、哀れなエイリアン達が極度のトラウマになってしまいがくがくぶるぶると脅えて震え上がっていることなど知るよしもなかったとさ。










おしまい













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