いい加減にはして欲しくない事
訳あって薄暗い寝室にはあたしと旦那。二人共裸。しているわけだから、当然のこと。 「あっあっあっ!」 あたしは今、こいつの指による愛撫で無様にもよがりまくっているところ。 「ビクビクッ。くやしい……! でも……感じちゃう?」 そんなあたしにいつものようにおちゃらけている旦那。 「やかましい。……あっ」 まったくムードもへったくれもない。あたしとこいつとの、まぁその。まぐわりというものはいつもこんな感じ。けれど、こいつは一見おちゃらけているようでいて――。 「あ、あっ。も、もう……」 「いきそう?」 「うん。でも、あんたはいいの?」 「この後にしてもらうから大丈夫だお」 それでいて実に丁寧で力強い指使いで膣内を縦横無尽に愛撫し、常に自分よりもあたしのことを優先している。あたしに気付かれないようにやっているのかもしれないが、何度もしていればわかる。好きな人に気持ち良くなってほしいと、そういう思いが根底にあるのだろう。最初の頃はやたらと『痛くない?』だの『辛くない?』だの気遣いされたものだ。そんなに大切にされると気恥ずかしい。 「じゃあ」 「遠慮無くいかせてもらうよ」 まあ確かに、あたしは完全に主導権を握られている。それはあたかも手の平の上で転がされているようで、少しばかり面白くないが、快楽には勝てないので先にいかせてもらうことにした。指の動きは決して早いわけでも激しいわけでもないのに、的確で、その……あたしが高まるポイントを把握している。そしてアクセントとかなんとかで、時折空いた方の手でクリトリスをふにふにと撫で回す。その度に言い様の知れぬ快感が増していく。 「あっ! そこ……」 「ここがいいんだよね? カオルたんがこの辺りがいいのは研究済みだよ」 「あっふっ! だめ……!」 余裕だ。……あたしじゃなくてこいつのこと。ものすごく気持ちいいけど、やっぱりなんか悔しい。……って。 「びくびくしてきたよ?」 「う、るさい。あっ! あっ!」 これじゃまるで、さっきこいつが言っていた『悔しい、でも感じちゃう』とかいうセリフがそのまま正しいじゃないか。確かに、いかせてもらうよとか自分で言ったけれど、前言を撤回する。思いっきり抵抗してやる。絶対にいったりするもんか。……あたしは無意識のうちに両手でシーツを引っ張り、握りしめていた。――それが意味の無い事だとわかっていて、何故だか意地を張ってしまった。 「カオルたん、もういくでしょ? 我慢しないでいいお」 「あっあっ……!」 反論できない。もうだめだ。上手すぎるんだよ、こいつは。あたしの中で高まりが更に込み上げて来て、そして……。 「あ……! あっ! ……あっ!」 文字通り、陸に打ち上げられた魚みたいだ。あたしの体からはシーツを掴んでいた力など完全に抜けてしまい、びくんびくんと本能の赴くままに痙攣し、飛びはね、軽く白目を剥いてわなわなと口を開き、淫らに喘いだ。大きく開いた股間から糸を引いて雫が落ちていき、シーツを濡らすけれど構う余裕などなかった。 「あっあっあっ! あっあはああああああああぁぁぁっ!」 あんまり大きな声を出しちゃいけないと思っているのに、止められなかった。――いつだったか、同じようなシチュエーションで、こいつとし終えたあとに自己嫌悪しながらあたしがそう呟いたら、こいつは言った。 『こんなこともあろうかと、壁の厚い部屋を選んでおいたよ』 とかなんとか。真偽の程は定かではない。けれど多分、本当なのだろう。隣の部屋がうるさいと思った事もなかったし。助かったよ。色んな意味で。 さて、今度はお返ししてやる番だ。
「カオルたんマジ天使」 「や、あっ! やめっ! はぅっ!」 むしゃぶりつくという表現がぴったりだ。こいつは今、仰向けに寝そべるあたしの体の上に覆い被さって、胸をいじくり回している。あたしのおっぱいを思いっきりおもちゃにしている。私物化している。 「あっあっあっ! そん、な。また……」 さっきの愛撫に対してお返しをしてやるはずだった。手か口、あるいは両方を駆使してしこしことしごいて出させてやるはずだった。けれどこいつは唐突にかつ、大仰に言った。 『まだだ。まだ終わらんよ』 はぁ? と、思った。終わりも何も、まだこれからでしょ? そう言ったらこいつはやらしい笑みを見せながら。 『まだカオルたんのおっぱいを味わってないお』 とか言いやがった。そしてあたしは改めて押し倒された。抵抗する間などありゃしなかった。本当にもう、どうして男という生き物は女のおっぱいという部位が好きなのだろうか? 「ふひひ。ここがええのんか! ここがええのんか!」 「ひぅっ! な、何その言い方!」 あ、だめ。ち、乳首が……熱い。左右同時に摘ままれて、くにくにとこね回されて、ぺろぺろ舐められてる。ただそれだけなのに、くすぐったくて……また、込み上げて来る。悔しいけれど、気持ちいい……のが。ああ、またこのパターンか。 「カオルたんのおっぱいおいしいお! 結構大っきいお! ぷにぷにしててマシュマロみたいだお!」 っせーなぁ。何をそんなに興奮しているんだ。こっちはまたもいかされそうで大変だっていうのにこいつは。 「ひんっ!」 ああだめだ。また、感じすぎてしまう。あたしは必死にこいつの顔を胸から引き剥がそうとした。けれど、それはかなわなかった。 「お、お前は赤ん坊かぁっ!」 「授乳の練習だお! おっぱいおっぱい!」 一体どれだけおっぱいが好きなんだ。それくらいこいつはしつこくて、放さなかった。ぐにゅぐにゅと胸を大きくこね回して乳首に吸い付いて、舌先で転がして指でこねくり回して……。 「あ、ああっ! む、胸で……い、く。あ、あ、んああああああああっ!」 気が付いたらあたしはまた、意識を吹っ飛ばされていた。イく瞬間、エロゲーみたいに辺りが真っ白になったりするの? フラッシュたかれたみたいになるの? とかしつこく聞かれたが、そんなんわかるか! と答えた。 ぐぬぬ、って感じ? 気を取り直したあたしの顔を一目見て、こいつはそう評した。ああそうだ。そうとも。
「一度ならず二度までも」 おのれ……。余波は未だおさまらず、あたしははぁはぁと粗い息をついていた。そして今更ながらよーくわかった事がある。こいつはあたしに気を使っているんじゃない。……いや、こいつが自分勝手なやつだと否定をするわけではなくて。こいつはあたしに気を使うのと同時に、自分の欲求をも思う存分晴らしているのだ。あたしをよがりイかせまくり、はしたない姿にさせて悦んでいるという。一石二鳥というところだ。そんなこいつにあたしは言い放つ。言わずにいられるか。 「ドSかあんたは」 「そんなつもりはないのだが」 そうだろうさ。こいつは無意識だ。本能の赴くままに欲求を晴らしているのだ。あたしを調教して悦んでいるのだ。そして本当に悔しいのだが、その調教が凄まじく気持ちがいいのだ。ああ、こん畜生め。 「やられてばかりじゃ悔しいから、やられたらやりかえす。倍返しよ」 ふふふふ、とあたしはクールにそう言った。これまでの経緯を思いだし、何だかおかしくなってきた。 「……そのネタ、もう旬をとっくに過ぎてるよね」 「あんたは言ったじゃない。ブームを過ぎてからも作品やキャラクターを愛するのが本当のファンだとかなんとか」 「結婚ってアニメの最終回みたいなもの?」 「アニメと一緒にすんな」 ――めでたしめでたしで終わる創作物と違って、生きている限り現実はいつまでも続く。言わば、アフターエピソードを延々繰り返しているようなものだ。……とかこいつはいつだったか、言った。きっと、至極当たり前の事なのにあたかも良い事……つまるところは名言でも言ったつもりなのだろう。 「よっと」 今までと逆に今度はこいつの無駄にムキムキな体の上にあたしが跨がった。これから目にもの見せてやる。 「んっ」 こいつのものをあたしの股間の入り口に宛がい、少しずつ体重をかける。ずにゅ、と吸い込まれていくように抵抗が失せていく。圧迫感と共にあたしの中にこいつのが入っていくのがわかる。よーし。やってやるぞ。 「たーっぷりとイかせてあげるからね」 「期待してるよ」 ドヤ顔で余裕たっぷりのあたしがそう言っても、こいつは涼しい顔をしている。まあいい。すぐに気持ちよくさせてやる。 「んっ」 弾むように、最初はゆっくりと体を持ち上げる。ずぞぞぞ、と抵抗を受けながら引き抜かれていって、再びゆっくりと腰を落としていく。呼吸を乱さないように気をつけながら。 「ふっ」 それを何度も繰り返す。足の支えだけではしんどいのでこいつの固い下腹部に手をついて、上半身を持ち上げて、再び落とす。もぞもぞとしながらも、確実にその動作は続く。 「はっふっ」 少しずつすべりが良くなってきて、スムーズに出し入れをできている。馴染んできた、というのだろうか。いいぞ。このままいけるところまでいってみよう。 「ふっ。くふっ。んっ」 時折呼吸が乱れるけれど、ペースを掴んだかもしれない。入り込み、抜け出て、ピストン運動のようになっている。当のこいつは気持ちよくなってくれているのだろうか? 「ちょっと」 「うん?」 「気持ちよくないの?」 不安になる、わけではないはずなのだけど。何も感じていなかったらどうしようと、あたしは疑問に思った。って、それが不安になるってことか。……こういうのはギブアンドテイク。だと思ったから。そうしたらこいつは首を振り、言った。 「ぎゅうぎゅうと吸い付くように柔らかいゴムで、適度に締め付けられたまま上下に動かれて、搾り取られるみたいになってる。このままだとすぐにでも出してしまいそうで、何だか申し訳ないからポーカーフェースを装おうと思った」 「状況報告ありがとう」 本当にもう、こいつは……。 「すぐに出しちゃっていいよ。あたしもそのつもりでしているんだし」 なあんだ、しっかり感じてくれてるじゃないか。不安に思ったあたしが馬鹿みたいでおかしくなってくる。 「ほらほらさっさといきなさい。いきなさいよ」 挑発するように言ってやる。こいつの切羽詰まった反応から、あたしは自分が小悪魔のような雰囲気を出せていると思う。 「い、意地でもいかないお!」 強情なやつだ。表情はそのままだけど、顔が強ばっている。こいつはもういきそうでたまらないんだ。気持ちよくて仕方がないんだ。いいよ、無駄な悪あがきをしていれば。今、その悪あがきを台無しにしてあげるから。 「はっ! ぁっはっぁっふっふっふっ! んっんっ!」 あたしはきっと、ものすごく卑猥な恰好をしているに違いない。最後の仕上げ。ラストスパートとばかりに無我夢中で腰を上下に動かしているのだから。もっとも、こいつだけじゃなくあたし自身快感が込み上げて来ているけれど、絶頂を迎えるにはまだ遠い。一緒にいけなくてもいい。さっき気持ちよくさせてもらったのだから、今度はあたしの番だ。 「ああ……。カオルたんの結構おっきなおっぱいが目の前でゆさゆさぷるぷる揺れてるお……。そして腰のくねらせかたがえっちだお……。安産型のお尻がたゆんたゆんしてるお……」 色っぽいでしょう? 例えるなら雌豹? なんてね。 「んっ! あんたの、今あたしの中でびくっとしたよ?」 「えっちなカオルたんの姿を見て更に感じちゃったんだお!」 そうかそうか。それはまた嬉しい事を言ってくれるじゃない。それじゃそろそろ、仕上げにしてやろう。心して感じなさい。ずちゅずちゅと、湿った音が断続的に響いていく。 「んっ。はっぁっふっぁっはっんっ! 出しなさい。あたしの中に。熱いの……。あ、ああっぁっ!」 こいつは息を止め、声を出さないまま達した。自分の中にじんわりと熱いものが込み上げて来るのがわかる。やった。やっとこいつをいかせたぞ。あたしはそのまま動きを止め、こいつの頬に自分の頬を触れさせながら言ってやる。こいつのものは未だにあたしの中に埋没しているけれど、抜いてはやらない。 「気持ちよかった?」 「……すごく」 「よかった」 最高に嬉しくてたまらない。そうしてどちらからともなくキス。煙草の匂いはしっかりとケアしたから大丈夫。きっとこのキスは、おつかれ、というような感じの挨拶みたいなもの。 「ん」 「ねえ。まだ出せる?」 「いける。けど?」 「そしたら今度は、そうだなぁ。……野生っぽくバックとかでして欲しいな」 「カオルたん……。大胆だお」 貪るように、あたしのお尻を掴んでもらってガツガツ打ち付けて欲しい。そう思ったから素直に望んだ。 「ワイルドだろぉ〜」 「……そのネタも、もう古いよね」 ああ、そのセリフにはそう反応すると思っていたよ。 「あんたに思いっきり突いて欲しいなって、そう思ったのよ」 ああ、やっぱりあたしはこいつの事が大好きなんだな。もうしばらく抱いて欲しいと思う。 「把握」 こうしてあたし達は、この後も引き続き無茶苦茶セックスすることになるのだった。あたしが四つん這いになって、こいつが背後に回ってしてもらって。その後で今度はあたしがこいつに口と手でしてあげて。その次は、駅弁するおとか言ってあたしがよくわからずにいいよとか言ったら、思いきり体を持ち上げられながら揺さぶられた。 ……それが終わった後は、流石に疲れ果てたので、体を濡れタオルで軽く拭いてから裸のまま布団に入って寝た。……何故だかあたしはこいつを抱き枕代わりにしてしまったようで、互いにぎゅーっと抱きしめ合いながら、以下朝チュン。もとい、朝になって部屋にも日が差し込んで、鳥がチュンチュンと鳴いてた。 ----------後書き----------
さて、現在アニメが放映されている旦那が何を言っているかわからない件の初SSであります。ご存じ無い方は作者様のサイト及びPixivの原作をご参照願います。 カオルたんマジ天使! 本当に良い嫁さんと思うのでした。 で、そんな夫婦の秘め事はこんな感じなのではないかなと想像した次第であります。末永く爆発して欲しいものですね。まったく。
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