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rainy










名雪は急いでいた。





そして、そんなところにたまたま祐一がいた。





ただそれだけのことだったのだが





そのシチュエーションは、新たな珍騒動を起こすきっかけとなるのだった。





 放課後のこと。運動部の練習も撤収準備を終え、今日はそろそろ切り上げようかというような夕暮れ時。空は一面グレーがかった濃い雲が覆っており、一雨降りそうな予感。

(お?)

 祐一は、段々と暗くなりつつあるグラウンドから、体育館の方へと向かう人影を見つけた。たまたま、友人と長話をしていてこの時間になってしまい、帰ろうとしていたのだったが。

(あれは名雪じゃないか)

 祐一にとって見知った人影こと陸上部の部長である名雪は、当然のことながら体操服を着ており、そして、長い髪をリボンでまとめてポニーテールにしていた。そんな名雪は、どこか落ち着かないような様子で、とてとてと小走りで駆けて行く。

(相変わらず、ぼ〜っとしているな)

 何故かよろよろしているような転びそうな、そんな危なっかしくて頼りなさげな名雪をみて、祐一はちょっとばかり刺激を与えるために脅かしてやろう、と、そんな事を考えるのだった。

(まったく、しょうがないやつだ。よ〜し)

 祐一は、そろりそろりと物音を立てないようにして名雪の背後に近づいて行き……。名雪が丁度建物の角を曲がりかけたその時。

「わっ!」

 両手で肩をぽんっと叩きつつ、耳元で少しばかり大きな声を出してやった。

「っ!?」

 名雪は心底驚いたようで、目を見開いて振り返り、ビクッと体を震わせてしまう。ずっと我慢していたかのように……。

「名雪?」

「祐……! やっ! あ……っ! 出ちゃ……」

 そして、名雪は僅かに身じろぎした後……。

「お、おい」

「やあああっ! ……あ、あ……あ」

 拒否の声もむなしく、ブルマの中からちょろちょろと滴が流れ落ちていく。それは、一度決壊したら元には戻れなくて……。

「あああ! あ、ああ……あ、あ、あ……やだ……あ、あ」

 やがて、ぷしゃああと勢いよく洪水のように溢れ出して、太ももを伝ってソックスと靴を濡らし……びしゃびしゃと流れ落ち、乾いたアスファルトを乱暴に濡らしていく。

「うぅぅ……。もう……ぅぅ」

 数秒も立たないうちに流れは止まったけれど。取り返しのつかないことをしてしまったかのように、名雪はしゃくり上げて、その場にうずくまってしまった。

「ごめん」

 呆然とした祐一は、そう云うのが精一杯だった。と、そんな時。

「……っ!」

 遠くから、部活動をしていた女生徒たち数人の声が歩みの音と共に聞こえてきた。

「やばっ!」

 このままでは、このとんでもないシチュエーションを誰かに見られてしまう。そう思った祐一は、半ば強引に名雪の手を引いて、とにかくどこかに隠れようとするのだった。





……





「ごめん」

 誰も来ないようなところ……とりあえず体育倉庫の裏に素早く隠れてから、祐一はそう云った。もはや何度目か分からないくらいに。

「……」

 名雪は視線を逸らしながら、うずくまっていた。びしょびしょになった下半身がむずむずして、とても居心地が悪い。

「本当にごめん。どうしたら、許してくれる?」

 出来心と云うべきか、ちょっとしたいたずらのつもりだった。と、今更云った所で許してくれるとも思えないので、単刀直入にそう聞いてみる。すると、祐一にとっては意外な答えが返ってきた。なにしろ、土下座でもしたところで許してくれるとは思えなかったから。

「怒ってなんて……ないけど。祐一……。わたし、気持ち……悪いよぉ」

 もじもじとするたびに、生暖かい感触が走り、名雪は泣きそうになってしまう。とりあえず、悪気はなかったということはわかってくれてるらしい。

「えっと。……えーと」

「どうにかして……。お願い」

 すがるような視線に、祐一は混乱し、悩みまくりながら……。

「と、とりあえず。……脱ごう、な?」

「……」

 そして、びしょ濡れになったブルマと下着を一緒にずず、と脱がしていく。名雪は口に手を当てて、顔を真っ赤にしながらされるがままに、恥じらいに耐えている。その上で……。

「えーと。……ハンカチで……ハンカチで……。ない! ああ、なんでこんなときに!」

 恐らく、ハンカチで名雪を拭いてあげようとしたのだけど。ポケットには何も入っていなかったのだった。

「う……あ、じゃあ、そうだ……。こっち」

「っ!」

 祐一は、下半身むき出し状態の名雪の手を取って、どこかに行こうとした。が、当然のことながら名雪は嫌がって。

「や、やだよぉ! 祐一ぃ! やめて!」

「えっとだな。あの……あそこに水道があるから、そこで洗おうかと……」

「そんなとこ、誰かに見られちゃうよぉっ! それに……洗っても、はく物がないよ……」

「う……」

 まさに八方塞がり。今更、びしょびしょに濡れまくったブルマを無理矢理はかせるわけにはいかないし、とは云え誰かに見られたりしたら一目でばれてしまうし……。

「名雪。……制服、部室か?」

「……うん」

 屋外の体育倉庫から陸上部の部室までは、ちょっとばかり距離があるけれど。

「じゃあ。その……。俺が取ってくるから……。ここで待ってて……」

「やだっ! やだやだやだっ! 一人にしちゃ嫌っ!」

 半裸の状態で一人にされる程心細い事はなかった。それに、部室に忍び込んで女の子の制服を持ってくるというのも、なかなかにリスクの高すぎる行動なわけで、祐一もそれに気付いて困っていた。

「しかし……。そんなこと云われても、どうすれば……」

「一人にしちゃ嫌っ!」





というわけで





人の気配が消えるまで





祐一は名雪をぎゅむ〜〜〜っと抱きしめながら





潜むようにして、とにかくじーっとしているのだった。





だが……。





「何だか段々……」

「……」

「雲行きが怪しくなってきたな」

 案の定と云わんばかりに、空は真っ黒な雲が更に更に覆い尽くしていき、ごろごろと雷が鳴り始め……そして。

「どうしてこういう時に……」

 一雨来そうなんだろう。と、思っていると、祐一の頬にぽつりと雨の雫。それは僅かな時間で数十倍から数百倍の量に増えていき……。

「うぅ……。俺は、天に見放されたか?」

 どばばばば、と怒濤の如く一気に叩き付けて来たのだった。云うまでもなく、二人ともずぶ濡れになるわけだが。色々と状態が深刻なのは名雪の方だった。

「祐一……。寒いよ……」

 名雪は体操着の上着も完全に濡らしてしまい、下着も透けて、二つの小さな乳輪が露わになってしまった。今はもう、裸のような状態にさせられていたのだから。

「祐一ぃ」

 心細そうに震えている名雪を見て、祐一はいたたまれなくなり……。そして……。

「名雪」

「ん……!」

 名雪を引き寄せて、キスをして……。

「じゃあ、熱く……させてやるよ」




と云った





「あっあっあっあっあっ!」

 祐一は、名雪を倉庫の壁に手を付かせて、背後から思いっきり突き上げていた。

「祐一ぃっ! ゆ、う……いち……ぃっ! あうっ! はうっ! あふっ! あっ! ふっ!」

 雨風は更に強くなって嵐のようになり、辺りが暗闇に包まれる。そんな中……二人はもう雨など全く関係ないとばかりに、ずぶ濡れになりながら交わっていた。

「名雪。もっと腰振って」

「う……んっ!」

 祐一は名雪の背中から手を回し、透けて、服としての機能を全く果たしていない体操着をまくり上げて、露わになった膨らみを揉みしだいた。

「名雪。足、上げて……」

「うぅ……。恥ずかしいよぉ。こんな格好……」

 祐一は、名雪の片足を思い切り上げさせて、壁に付かせた。

「柔らかいな。名雪の体は」

 すらっとした足はとても柔軟性に富んでいて、白くて綺麗で……。祐一は突き上げながら、名雪の太ももを撫で回して感触を楽しんだ。

「そろそろ出すぞ……」

「んんっ!」

 名雪の中で何度もうごめいたものを引き抜いて、一気に奥まで挿入。祐一は、高まっていく射精感を限界にまで堪えながら続け……やがて。

「あっ! ……んぅっ!」

 祐一は中から一気に引き抜いて、名雪の体を素早くひっくり返して、口の中に突っ込んだ。そして、射精した……。

「んんんぅっ! ん、ぐ……ん」

 名雪は少しむせ返りながらも、全てを飲み干した……。

「んぶ……。ゆう、いち……ぃ」

 引き抜かれた口元は、湯気が上がりそうな位火照っていた。





…………





「小さな頃のことを、思い出した」

「え?」

 更に時間はたち、今はもう誰もいない陸上部の部室にて。名雪は濡れた体をタオルで拭いて、ようやく制服を着ることができた。方や祐一は、ずぶ濡れになった制服やシャツを脱いで乾かし中。

「昔、さ。俺とお前が丘の方まで遊びに行ったときのこと」

「どんなこと?」





それは、過去の記憶。





 あれは、何歳の時のことだろうか。小さな二人は野原を駆け回り、じゃれ合うように遊んでいた。そして……遊び疲れて木陰で寝そべって休んでいると。

「ゆ〜いち」

 髪を二房の三つ編みにした名雪は、突然もじもじしはじめた。

「何だ?」

「おしっこ」

 どうにも我慢できないようだった。

「見ちゃ、いやだよ?」

 そして名雪は祐一に背を向けて、恥ずかしそうにしゃがみ込んで、キュロットパンツを下着と一緒に降ろして……。

「みせろよ」

「あぅぅ……」

 祐一は名雪のお願いも聞かず、しゃああ、とこぼれ落ちる雫を興味深げに眺めていた。名雪は恥ずかしそうにしながらも、隠そうとはしなかった。

「名雪はついていないんだな。僕と同じもの」

 毛も何も付いていないそこは、一筋の割れ目があるだけだった。

「当たり前だよ」

 持っていたティッシュで股間を吹きながら、名雪は云った。

「わたし。女の子だもん」





……





「ということがだな」

「な、何てこと覚えてるの〜!」

「いや。今も全然変わっていないなーって思って」

 胸が大きくなったり、あそこに毛が生えていたりはするけどな、とか祐一は思ってうんうんと頷いた。それに対し、名雪も溜息をついて反論する。

「もぉ。祐一も全然変わってないよ。……意地悪だもん。さっきみたいにわたしを驚かせたり、恥ずかしいことさせたり」

 今も、小さい頃も何も変わってはいなかった。それが嬉しかったから……だから、名雪は今回のことを怒ったりはしていないのだった。

「ま、それはお互い様ってことで」

「うんっ」

「そろそろ帰るか?」

「でも。服、まだ乾いてないでしょ?」

「大丈夫だ。のーぱんのーぶらな誰かさんよりはいいから」

「云わないで〜! 祐一のばか……!」

 祐一は笑いながら、抗議する名雪の口をあっという間に塞いでいた。

「んっ……ん」

 名雪はまたまたびっくりさせられながらも、やがて落ち着いて目を閉じて、受け入れる。

「ほんとに。祐一は何も変わってないよ」

「そうか?」

「そうだよ。……意地悪で、えっちで……わたしにいたずらばかりするけど。すごく……優しい、もん」

「え? 何だって?」

 最後は小声で聞こえなかったけれど、名雪は云い返そうとはしなかった。

「秘密」

 べ〜っと舌を出して、名雪はとぼけてみるのだった。

「そっか。……じゃあ、こうだ」

「わあっ!」

 いきなりスカートめくり。……遮るものの何もないそこが露わになって、名雪は慌てて押さえる。

「う〜! やっぱり祐一はえっちで変態で意地悪だよ〜!」

 とか云いながら、名雪は祐一の背中に飛びついた。





じゃれ合うような二人には





暗く、寒い雨も楽しいイベントなのだった。















----------後書き----------

 ひっそり一人なゆSS祭り第三弾。これにて打ち止め……段々無茶なシチュエーションになっていきますw

 いかがでしたでしょうか?



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