風音
まだかすかに寒さを感じる春の風に吹かれ、桜の花びらが僅かに舞う。その中に佇み『朋也くんのせいですよ』と、椋は今にも泣きそうな表情を見せながら言った。切なさに両手で体を抱くような仕草をとりながら、ひたすら込み上げてくる恥じらいに身を震わせる。 辺りには誰もいない。朋也と椋、二人だけの空間がそこにはあった。息を飲み、しゃくりあげそうになりながら『私が……こんな娘になっちゃったのは』と、消え入りそうな声で椋が呟いた。短く切り揃えられた髪と白いリボンが風に煽られて揺れる。同時に紺色の短いスカートもふわりと浮かび上がる。後悔と諦めと欲望が同程度の比率で混ざり合ったような気持ちに椋は戸惑う。 風が強くなり、椋はとてつもないくらいの恥じらいに震える。それでも、押さえることもできない気持ちになっていた。それはスカートの布地。――何秒間か、遮るもの一つ無い秘所が露わになる。薄い僅かな毛に覆われた秘所は既に洪水を起こしたかのように濡れていた。 止めどなく溢れてくる涙のように、椋の足を幾筋もの滴が伝い、ソックスを濡らしていった。困り果て、どうすればいいんですか、と。すがりつくような目で『朋也くん……』と名を呟いた。 始まりはいつのことだったか。おとなしくてなんでも言うことを聞く椋をからかっているのか、あるいは意地悪をしているのか、恐らくは両方なのだろうが、朋也の命令で下着を穿かずに学校内を連れ回された日のこと――。短いスカートの下には見られてはいけない場所。心臓が高鳴るのを自覚しながら、朋也は遠慮無く歩みを続け、椋もただ従うだけだった。なにも無かったけれど、それが何故かほっとしつつも残念に思う感情を知り、椋は戸惑った。その日から椋の中で何かが変わってしまったのだった。 ――例えば夕暮れ時の事。その日は久しぶりに一人で下校中。誰もいないのを見計らって、椋は物陰へと身を潜めた。そして僅かな逡巡の後に意を決していた。 (ん……) 着ていた白い下着を両手で掴んで降ろし、腰を屈め込みながら片足ずつ上げて脱ぎ去った。そしてきょろきょろと周りを見渡しながら、一歩を踏み出した。 (あ、あ……!) 辺りに人影は少ない。けれど、誰もいないわけではない。誰か見知った姿はいないだろうか? 誰かに見られてはいないだろうか? スカートの裾が気になり、不自然に押さえ込んでしまう。脱いだまま丸め、無意識のうちに握っていた下着に気付き、慌ててポケットの中へと突っ込む。 (あ、あ……。私……今、何をしているの?) もし。もしもだ。こんな行為を誰かに見られたり知られたりしたらどうしよう。――もしかして、既に誰かが見ているかもしれない。もし見られてしまったとしたら、私はどうなってしまうのだろう? 考えれば考えるほど椋の鼓動は高まり、吐息が熱くなっていく。と、同時に何かが込み上げてきた。 (あ……。私……。濡れてる) じゅく、と何かが分泌された感覚に全身を震わせる。無意識のうちに押さえようとして、思わず手を引っ込める。こんな 所で、という理性による行為。 (あ、あ、あ、あ。は、ずかしい……です……) 既に何人かの人とすれ違った。その度に、プリーツスカートの柔らかな布地がむき出しのお尻を軽く撫で、椋の研ぎ澄まされた感覚をこれでもかと刺激する。やがて溢れ出た一筋の滴が足を伝わり、落ちていく。椋は恥じらいに耐えきれず物陰へと逃げ込み、脱力し、しゃがみ込んでしまった。 (わ、私……。どうしちゃったんだろう。こんな、恥ずかしい事……。学校なのに。し、下着脱いで……歩いて、濡れてた……。恥ずかしいはずなのに。どうして……嫌じゃ、ないの?) 誰かに見られるのが恐いと思いながら、もっと濡らしたくなっていた。足下まで伝う滴に更に興奮していく。背徳感に苛まれながらもやめられない……。 「朋也くん……」 短い回想から現実へと戻り、椋は呟くように言った。 「私の中に入れてください……」 椋はゆっくりとスカートの丈を持ち、たくし上げる。 「早く……。じゃないと、私……」 おかしくなってしまいますと言おうとして、既になっているかもしれないとも思う。このまま。スカートをたくし上げ、恥ずかしいところを晒したままたまま歩み始めてしまうかもしれない。それくらいのことを本当にしてしまいそうな気持ちになっていた。 「朋也くん……。お願い、です」 椋は遂にぽろぽろと涙をこぼしながら、淫靡なお願いをする。今日はブラもしておらず、起ってしまった乳首が直接制服に擦れ、折れ曲がる。もしかすると上着に乳首のラインが出ているかもしれない。気になるけれども今は隠す気にはなれなかった。 「え……?」 朋也に耳打ちされ、椋は耳まで真っ赤に染めながら、こくんと頷いた。 「い……」 吐息が熱い。どんな嫌らしい言葉でも口に出せてしまいそうだ。もしもこんな姿を姉の杏が目撃したら、なんと言うだろう? 驚くだろうか。軽蔑するだろうか。あるいは感心するだろうか。……大切な妹を淫乱に仕立てた朋也を憎むだろうか。見てみたい……そう思ってから、椋は心の中で『お姉ちゃん……。ごめんなさい』と、謝っていた。もはや後戻りなどはできないと知っていながら、もうどうしようもなかった。 「いやらしい私の……おま○この中に。と、朋也くんの……おちん○んを入れて。ずこずこ、突きまくってください……。は、早く……早く、入れてくださいぃ」 こうして二人の熱く、ハードな時間が幕を開ける。 「は、や、く……。いれて、ください……」 桜の木にもたれ掛かり、両足を開いていきながらねだる。 またぽた、ぽた、と滴がこぼれて落ちた。さあああ、と静かな音をたてて風が吹き、桜の花びらが散っていく。痴態を晒す椋の煩悩を更に更に煽り立てるかのように――。 ----------後書き----------
一枚絵を見てキャラの表情とか仕草とか風景とかからシチュエーションを想像するということはよくあるもので。 今回はそんな感じに浮かんだお話。……その絵を見たらこのお話のような状態になっていると思う事になってしまいました。 ご意見ご感想、誤字脱字報告はWeb拍手のコメント欄にて宜しくお願い致します。 |