二人の休日
――一ノ瀬家の居間。 よく晴れた休日の午前。暖かくも柔らかな日差しがレースのカーテン越しに差し込んでいた。 淡いピンク色のカバーをかけたソファーに深く腰掛ける朋也と、彼の両足の間に挟まれるようにして、ことみがちょこんと腰掛けていた。それはあたかも、ちゃっかりと居場所を確保している家猫のようだった。 「ことみ。あ〜ん」 「あ〜ん」 今日の朋也はお土産持参。ことみの好みはわからなかったけれど、喜んでくれたら嬉しいと思って買ってみた。ちょっと、いやいやかなり値段的には高かった。財布の中身に対しては痛かったけれど、その分幸せな気持ちにしてもらおうかと思うのだった。 朋也はテーブルの上に置いてある小箱の中身。最近ちょっと話題の小さくて細長いお菓子。生のキャラメルとかなんとか――を一つ掴み、包み紙を取ってからことみの口元に運ぶ。ことみもそれに合わせてあ〜んと云いながら口を開ける。別に言葉に出す必要なんてないのに、ことみの子供っぽさが朋也には可愛く見えた。 「ぱく……」 と、くわえて口の中が甘味で包まれる。はずだったのだけど。 「ん。甘くてうまいな」 朋也はことみが食べる寸前の所でひょいと自分の口に放り込んでいた。ことみはとっても不満そう。 「いじめる?」 と、いたいけな視線と声。朋也の狙いはまさにこれなのだった。抱きしめたくなるほど可愛くてたまらないのだから。 「ごめんごめん。ことみのいじけ顔が見たくてつい」 朋也はとっても意地悪。おかしそうににこにこしながら改めてことみの口元に運ぶ。 「ほら、あ〜ん」 「あ〜ん」 今度は大丈夫。朋也は逃げない。素直にぱくっと食いつくことみ。予想通り、とろけるように柔らかな感触と甘さが改めて口内に広がる。おいしいものをありがとうなの、と。食べ終わったら改めてお礼を云おうとことみは思った。 けれど、朋也はお菓子を掴んだ指を離さない。食べるに食べ進めず、ことみは困り顔。このままだと朋也の指ごと食べてしまうことになる。しかし、それこそが朋也の真の狙いなのだった。 「じゃ、俺も」 朋也は素早く手を離し、ことみの顔を自分の方へと向ける。そして、ことみが今くわえているお菓子に食いついた。 「う、う、ん〜〜〜」 突然の事にことみは目を大きく見開いてしまう。 それはあたかも口移しでもされているかのような感覚。視線の先数センチの所には朋也の顔。互いの吐息すら感じ、ことみは恥ずかしくて顔を真っ赤にさせていく。どうすればいいのかも、どうしなければいけないのかもわからない。結局ことみは目を閉じることすらできず、されるがまま。 やがて朋也の方から近付いて唇同士が重なり合い、可愛らしいキスになっていた。文字通り甘ったるいキスに。 「ん……ふ……。ん、ん、ん〜」 あまりの恥ずかしさにことみはしばらくもじもじし続けていた。そんな仕草が可愛く見えて、朋也はまたキスをしてしまう。 甘ったるいスパイラルは続いた。 さっきからずっと、そんなことばかりしてた。
二人だけの、とても幸せな時間。
――朋也が極めて何気なく、自然な動作でことみの長い髪を軽くかきわけるとうなじが見える。柔らかくて白い肌。それに見とれたように、首筋に触れるとことみはくすぐったくてぴくっと震えた。 「……っ」 ことみの素直な反応が可愛くて、長い髪を人差し指で弄び解かしながら耳たぶに舌を這わせた。 「ん……。くすぐったいの」 決して嫌がったり抵抗したりなどしない。ただちょっと戸惑ったように目を細め、体を抱えるような仕草。 「お前。本当に可愛いな」 朋也に云われて嬉しくて、そして恥ずかしくてことみの頬は赤らんでいく。 「朋也くん」 「ん」 ことみは朋也の左手を取って、そして。 「どきどきなの」 「やわらかいな」 ボリュームのある胸に触れさせる。恥ずかしいと云いながら、ちょっとずれているのか天然ボケなのか。恐らく両方なのだろう。どきどきしている鼓動を感じて欲しいとことみは云った。朋也が手に少しだけ力を込めると、ふに、と指がめり込んだ。吸い付くような心地よい感触だった。 「ふっくらなの」 えっへんとでも云いそうなことみ。恥ずかしいけれど、胸にはちょっと自信があるのかもしれない。 朋也はことみの首筋にキスをしてから右手の人差し指でくい、と顎を少し上げさせる。 「しゃぶって」 「あ、ん。ん、ん」 つぷ、とことみの小さな口に人差し指を挿入。ことみも云われた通りに舌でれろれろと愛撫。 「ことみはいい子だな」 「ん、ん。なんでも……するの」 「えっちなことでも?」 朋也がちょっと意地悪にそんなことを云ってみると。 「して、ほしいの」 むしろ大歓迎。望むところ? そんな様子を見て、朋也はちょっぴりフェイント。 「やっぱやめた」 「いじわる」 ことみはショックを受けたように寂しそうな表情。じわ〜っと目尻に涙をためそうな感じ。お菓子をお預けされたときと同じ。抱きしめたくなるので実際にしてみた。ことみの体はふにふにしていて柔らかかった。 「冗談だよ」 あまりにも案の定な反応。朋也はことみを抱きしめながら吹きだし、つんつんとことみの頬をつつくとやっぱり柔らかくてふにふにしていた。いつまでも触っていたくなるような瑞々しい肌だった。 「……いじめる?」 「いじめ……たくなる」 「可愛いから」 「朋也……くん」 物欲しそうな表情。朋也は決意した。 「よしよし」 「んん」 される一方じゃないのとばかり、今度はことみから朋也の体に身を任せながらキス。朋也も受け入れ体制は万全。 そして、二人は一つになって肌を重ね合わせた。
「ん、ん……」 向かい合い、抱きしめ合ったまま。一番近くで温もりを感じる体制。二人はそのまま、衣服を脱がずに一つに繋がった。 「ことみ」 「朋也くん……。お股が熱いの」 「ことみの中だって熱いぞ」 「……」 裸で繋がっているところを想像してことみは頬を赤らめる。恥ずかしい思いが溢れる。 「好き……」 無意識のうちに言葉が出た。 「俺も」 今日何度目だろう? また互いにキス。身じろぎ一つしないで温もりに身を任せる。ただそれだけで満足だった。 今日は一日ずっとそんな感じ。
二人だけの、とても幸せな時間。
----------後書き----------
定期的に訪れる甘々分補充。今回はことみで。やたら甘ったるく、最後の最後にちょっとだけえっちく。 某コンビニで問題のスイーツ(笑)が売ってたので試しに食してみました。案の定、えらい甘かったです。 最初はお菓子シーンがないはずだったのですが、冒頭に挿入してみたらいい感じになったのでそのまま追加にしてみました。 朋也だったらこんな風にするかも? ご意見ご感想シチュエーションのリクエスト、誤字脱字報告はWeb拍手にてお願い致します。 |