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【MSS 中編】










香里の閉ざされた心を開いたのは、栞の真剣な眼差しだった。










 リビングには、裸で交わり合う祐一と栞。そして、北川と香里。たまたま今日は姉妹の両親が旅行中で不在ということで、北川のお悩みを解決しようとしていたところだった。

 事の顛末は、北川が彼女……香里とえっちしたいとかいうので、きっかけを与えるために目の前で祐一と栞がしてみせて、刺激というべきか、とにかく強烈な行為を見せつけてショックを与えてみようとしていたわけだが。香里が北川と何もしないでいたのにはちゃんとした理由があった。

「あたしは……。ほんの少し前まで栞に、あんなひどいことをしていたのに。今じゃ平然と彼氏ができて。……自分でも『何それ』って思った。だから、幸せになんてなれない。なっちゃいけない……のよ。北川君には悪いって、わかっているけど」

 弱々しく視線を逸らしながら、香里の独白は続く。

「香里。お前」

「お姉ちゃん……」

 栞はもう、姉にそんなことを気にしてほしくなかった。それは祐一も同じ気持ち。

 姉妹が祐一と出会ったあの頃。香里は栞を拒絶していた。ただひたすらに、自分が傷つくのが怖かったから。……それはもう、過去のこととなっていたはずだった。

「もう、いいから。もし私があのまま……いなくなってしまったとしても、私はお姉ちゃんを恨んだりなんてしなかったから。だから……」

 栞は祐一から離れ、裸のまま香里の背中に抱き着いた。

「だから……」

 もう心を閉じないで、と消えそうな声で云った。そして香里は栞の手に自分の手を重ねて、穏やかに目を閉じた。

「ありがと。あたし……甘えてばかりよね」

 香里は少し自嘲気味に笑い、一粒の涙が頬を伝って流れ落ちていった。妹の優しさに助けられてばかりで、これではどっちが姉かわからないわね、と内心思いながら。

「あのぉ。全然お話が見えないんですが〜」

 ぽりぽりと揉み上げの辺りを人差し指でかきながら、完全に取り残された北川は苦笑いしていた。

「うるさいよお前」

 このかなりシリアスなシーンに、えらく場違いなギャグキャラはすっこんでろ、とばかりに祐一はじとーっとした目で睨む。

「がーーーん」

 でも逆に、そんなコミカルな北川を見ていて緊張がほぐれたのか、姉妹は互いにくすっと笑い合えた。そして改めて、北川にこれまでの経緯を話すのだった。










かくかくしかじか










姉妹の色々と立ち入った事情を知ることになった北川だったが。










「そっか。そんなことがあったんだね。色々あったんだね」

 感動のあまり、うるうると涙を流す北川。今まで何にも知らされていなかったのがとても不憫だ。

「そんな深い事情も知らず、馬鹿みたいにえっちしたいだなんていってごめん」

「じゃ、しなくてもいいのね?」

 一見殊勝になった北川に対し、香里はあっさりと云う。彼女にとってするかしないかなんて、大して重要な事ではないらしい。

「いや、したいのは本当だ」

 それはそれ、これはこれと、北川は力説する。この彼女にして彼氏あり、といったところだろうか?

「正直でよろしい」

 香里はくすっと笑う。この瞬間。栞発案の作戦が完全成功したのだった。










そうして、行為は全面再スタートとなった。










今度は香里と北川の二人も加わって。










 祐一と栞は先程と同じようにバックで再開。達したくてもできなかったので、消化不良みたいになっていて、鬱憤晴らしとばかりに更に激しく交わる。

「おっ……お、お、おああ……。栞! もう出る……!」

「あっあっあっあっあっ! あああああっ! 熱い……ですっ! ああっ!」

 ぱんぱん、ぱちゅぱちゅと水気のある音をたてながら、祐一は凄まじい勢いで栞を突く。栞の華奢な体が折れそうなくらい揺さぶり、攻めまくる。程よい締め付けと共に心地よい温もりが包み込み、やがて祐一の背筋を震わせていき……。

「……くっ!」

「あぐっ!」

 ずぐっ! と、えぐるように深く突いてから、一気に引き抜き……。栞の小さなお尻にぴゅぴゅっと数度、ぶちまけた。

「はあぁぁ……」

「ふう。……気持ち良かった」

「私も、です」

 大量の精液が、お尻の割れ目へとたれていく。栞は脱力し、テーブルの上に突っ伏した。

「み、美坂。俺達もあんなふうに……したいな〜、なんて」

 そんな二人を横目に、北川は羨ましそうに云った。今はもう、北川も香里も全裸になっているがその過程はというと?










…………










 自分のためにここまでしてくれた栞に感謝とばかり、香里は制服をあっさりと脱ぎ捨てた。栞と祐一の労力に報いるために、二人の前でしなければならない、と、そんな覚悟を決めたようだった。

『み、美坂』

 白いブラも清楚なショーツも、てきぱきと脱いではぽいっと放り投げていく。そして、あっという間に身にまとう物が何一つ無くなる。

『何よ』

『い、いや。あの……肌、綺麗だな』

 全裸を晒し、恥じらう様子もなく平然としている香里を見て、北川は逆にどぎまぎしてしまう。香里が身じろぎするたびに豊かな乳房がふるると震え、目のやり場に困ってしまい、お世辞のような本音を云ってしまう。

『そう、ありがと。……北川君も脱ぎなさいよ』

 香里はそんな言葉には取り合わずにあっさりと軽く受け流し、突っ込みを入れる。北川と視線を合わせようとしないのは、もしかすると本当は恥ずかしいのだけれども虚勢を張っているのかもしれない。

『え、あ……』

 乳房の上の淡い桜色をした乳首にどーしても視点が行ってしまいながらも無理矢理煩悩を振り払って逸らし、北川は頭を抱えて硬直してしまった。

『彼女に先に脱がせて自分は脱がないの?』

 普通逆でしょ? とか云いたげな表情のまま最後にソックスを脱ぎながら、香里はじとーっとした目で北川を睨む。情けないわねぇ、とでも云いそうなそんな表情で。

『そ、そんなことは』

『じゃあ、あたしが脱がせてあげようか?』

『じ、自分で脱ぐわい!』

 戸惑う北川を見てくすくす笑う香里だった。










…………










 と、こんな感じだったわけだが。

「嫌」

 悲しいかな。北川の提案はあっさりと拒否される。

「がーーーん!」

「下になるのは北川君。あなたよ」

 香里は自分が守勢に回るのをよしとするわけがないのだった。

「え……。き、騎上位……ですか!?」

「そうよ。早く横になって」

「は、はい!」

 こいつは絶対尻に敷かれている、と祐一と栞はしみじみと思うのだった。云われるがままに、カーペットの上に仰向けに寝そべる。

「はは。香里らしいな」

「そうですね」

 北川に対し、絶対にペースを譲らないところが『らしい』のだった。

「ほら。動かないの。いくわよ。……んっ!」

「んほぉっ!!!」

 香里は北川の上に馬乗りになり、先端を入り口にあてがって、ずぼっと一気に腰を落とした。

「み、美坂ぁっ!? そそそ、そんないきなりぃっ!?」

 展開の早さに、北川は慌てまくる。心の準備やら相手への気遣いでかけてあげるつもりだった優しい言葉やら、前もって色々考えていただけに、性急すぎて混乱する。

「何よ」

「い、痛くないのか?」

「別に」

「え……。でも、初めては痛いってハウツー本に」

 見た感じ、香里は全く痛がっていない。無論、男性経験はこれが初めてなのだが、そうとはまるで思えない。

「人によるでしょ」

「ち、血も出るって聞いていたから」

 血など一滴も出ていない。香里は平然としていた。

「それも人によるでしょ」

「う、動いても大丈夫なので……って、うおおお! し、閉まああああああるううううううっ!」

 突っ込まれたものがねじり上げられて行くような感覚に、北川は大粒の汗をかいて絶叫する。

「人の……んっ。心配より、自分の心配を……あっ。しなさい……よっ。……一気に、いくから」

 小刻みに、何度も何度も腰を上下する。その度に、香里の大きめのバストがふるふると揺れる。北川としては触ってみたいけれどそんなこと許可無くしたらどつかれそうだし、そもそも今はそれどころじゃないのでできなかった。

「んっんっんっ! あっあっあっ! んんっ! あっ! う、ん……っ!」

 限界にまでそそり立ったものをきつく締め付けられ、絞るように上下にうごめかれ、北川は悶絶する。

「あ゛ーーーーーーーっ!」

 こうして北川・香里のカップルは、記念すべき初体験をあっさりと迎えた。










で。その後。










 ひとしきり行為を終えて、裸の男女が四人。ソファーやらカーペットの上やらでぼけーっとくつろいでいた。そして、香里の云った一言が更なる争乱を巻き起こす。

「北川君。あたしの方が、栞とエッチするより気持ちよさそうでしょ?」

「……え? そ、それは。何と云うか」

 そんなこと何とも云いようがない。つまるところ、返答に困り果てる質問だった。

「そんなことないです! お姉ちゃんより私の体の方が気持ちいいに決まってます! そうですよね祐一さん!」

「いや、俺も何とも云えないんだが……」

 としか、云いようがない。

「んもう! 優柔不断なんだから! 北川君、はっきりしなさいよ!」

「そうです! 祐一さん、はっきりしてください」

「はっきりしろと云われても」

「そ、そんなこと云われてもなぁ。大体、香里以外の女の子としたことなんてないし」

 してたら張り倒されそうだし、とも思いながら自然にのろける。だが、北川と祐一の気持ちなんて無視して、栞と香里の意地の張り合いは続いていく。

「……。いいわよ。じゃ、はっきりさせようじゃない。いいわね栞」

「望むところです。白黒付けましょう!」

 栞と香里は何やら囁くように話し合って。

「……?」

(何をやろうとしているんだ?)

「北川君!」

「祐一さん!」

 睨みつけるような凄みが、姉妹にはあった。

「もう一回して!」

「もう一回してください!」

 そして、二人の意地の張り合いがかなり本格的にはじまった。

「し、しかしだな」

「あ、ああ」

「何をごちゃごちゃ云ってるのよ!」

「そうです!」

「したばかりなので。少し、休ませて……」

「あれだけやった後だから。ほら」

 北川のものも祐一のものも、へにゃーっとなっていた。とても情けない格好を晒している。

「……。わかった。じゃあ、見ていなさい」

「見てください」

 栞と香里は互いに頬を赤らめながらもいきなり腰を浮かし、股を開き……。

「おわ!」

「ぬはっ!」

 自分の股間に手を伸ばし、弄ぶ。祐一と北川を奮い立たせる為に、痴態を晒す。

 ごくっと唾を飲み込むような、そんなエロティックさが二人にはあった。そして、祐一と北川のものが再び勢いを増してきたところで。

「祐一さん。一気に、ですよ!」

「わ、わかった」

 栞の目は真剣そのもの。

「北川君。負けたりしたら別れるわよっ!」

「ひいいっ! そ、そんなぁ」

 対する香里も同じ。ギロッと鋭い瞳で北川を睨め付け、脅しをかける。

「じ、じゃあ……いくぞ」

「お、俺も」

 香里と栞は共に、ソファーの背もたれにしがみつき、お尻を突き出していた。

 そして祐一と北川は、太さと堅さを取り戻したそれを二人の腰をがっしりつかんでから秘部にあてがい、一気に入れた。

「あ……あああっ……んっ!」

「んああっ!」

 そしてそのまま、ものすごい勢いで突いていく。










思いっきり手加減なしに一気に突きまくって










先に達し、相手に精液をぶちまけた方が勝ち。










そんな、どっちの体が気持ちいいか……なんと馬鹿げた無制限一本勝負。










「くうっ! 栞の中……し、締ま……るっ!」

「はぅっ! はぅんっ! はぅっ! はぅぅぅっ! も、もっと強く……ぅ。……あ、あんっ! ああんっ!」

 祐一がぱぱぱぱん、ぱぱぱぱん、と細かく音を立てながら小刻みなストロークを繰り返すと、栞は小さな乳房をプルプル揺らしながらあえぐ。

「あうっ! あふぅっ! んんっ! んんっ! んひぃっ! 北川君の……す、すご……い」

 それに対して、ずん、ずん、ずん、と深く大きく出し入れする北川。香里も必死に堪える。

 栞と香里。二人の甘ったるい喘ぎ声と、体同士がぶつかり合う肉感的な音がリビングに充満していた。

「あ、ああもう。何が何だかっ!」

 どうしてこのような異常事態に陥ったのか。などと考える間もなく祐一も北川も一心不乱に突きまくる。

「くうっ! 美坂の中……気持ちいい! 最高!」

 次第に動きは更に早く、激しくなっていく。

「祐一さん! もっと! もっと強く……です! あ、ああ……んっ!」

 そう云いながら、栞も祐一に合わせて腰を動かす。

「北川君! んんっ! ま、けるんじゃないわよ! ああっ! はや、く……ぅっ!」

 香里も対抗して腰を動かす。双方一歩も引かない全力での勝負。

「う、うあ……! も……もう……だめだ!」

「お、俺も……。で、出るっ!」










そして……。










「もう! どうして同時なのよ!」

 お尻に思いっきり射精されても全然嬉しくなかった。

「そ、そんなこと云われても」

 香里に怒鳴られて、しょぼーんとなる北川。

「そうです! どうしてですか!」

 栞に睨まれて、困り果てる祐一。

「ど、どうしてなんだろうな」

 決着は付かなかった。何しろ祐一も北川も、全く同時に達して射精したのだから。










勝負はまだ、終わらない!




















----------後書き----------

 こうしてこのお話は後編に続くのでありました。



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