月下の一時
ただ一人、彼女は残っていた。
そして。誰もいない教室の自分の席にて。彼女……藤林杏はうずくまるようにして、もぞもぞと手をスカートの中に這わせていた。その目的は云うまでもない。 「あっ……はぁっ! んっ!」 既にもう、達しかけていて甘い声を出してしまう。右手の人差し指と中指を自分の中に入れる。と……ぐにゅ、とした感触と共に埋没していく。入ってくる感触……少しきついくらいの挿入感が気持ちよくて癖になってしまい、何度も繰り返す。 「ん、ふ……ぅ」 その度に指に、ぬめりを帯びた湿りを感じる。次第にそれは増えていき、こぼれ落ちていく。その度に自分はいけないことをしているのだとわかってしまうが、もはやどうしようもなかった。 (でも。指が、止まらない……のよ) 朋也のことを思う度に、こうなってしまう。全て彼がいけないのだ、などと理不尽なことを思う。 「くっ。……うっ」 自分はいつも、彼に対してぶっきらぼうで、生意気で、馬鹿にしたりからかったりしている。けれど……。 (とも、やぁ……) そんな自分を怒鳴りつけるように一喝して、圧倒的な力で押し倒して動きを封じて、強引に唇を塞いで欲しい、などと思ってしまう。彼はそんなことをする人間ではないとわかっているから、尚更。 「だ、め……。あっ。そんな……の」 ……杏の想像の中で朋也は、まるで犯してくるかのように強引だった。一気に杏の下着を降ろし、愛撫すらせずにのしかかって挿入するような。たとえ杏が痛みに絶叫しても、止めてはくれなかった。今は逆に、そんなものを求めてしまう。 「ひあっ! あっ!」 声が出ないように必死に堪えながら、指の動きを速める。くちゅくちゅと音を立てて指を受け入れ、柔らかな秘部からとろとろとした愛液がとめどなくたれてきて、椅子を濡らす。 「い……く。あっ……んんんんっ!」 一際強く指を動かして、杏は絶頂に達した……。 また、やってしまった。
そうは思うけれど、時は既に遅し。
「ふぅ……」 無意識のうちにまたも下着を濡らしてしまって、ポケットに入れる。 (誰にも見つかったりはしないだろうけど……。あたしは……) それでも、教室でそんなことをしてしまったことに、深くため息をつく。どうしようもない諦めと、背徳感の混ざったような……。 (帰ろう) そして、重苦しい気分のまま、帰ることにした。そうしないと、何度でもしてしまいそうだから。 (スースーするなぁ……) 自業自得とわかってはいるが、下着をつけないのは違和感に満ちていた。 そして、階段を降りようとしたところで。
「とも、や……?」 「お。杏じゃないか。まだいたのか?」 階下から声がして、立ち止まる。そこでたまたま出会ったのは、さっきまで頭の中で想像していた人物だった。岡崎朋也……彼と杏は、紆余曲折ありながら、今は恋仲になっていた。 「そ、そっちこそ。どうせ、寝過ごしたりでもしたんでしょ?」 とてもそんなことを云えるような立場ではないとわかっているから、どもってしまう。自分が先ほどまでしていた行為が行為なだけに尚更。 「図星だ。そう云うお前は……」 そこまで云ったところだった。階段を降りかけた杏をみて、朋也は何かに気付く。 「お、お前」 「な、によ? あ……っ!」 杏の制服は短いプリーツスカートが特徴。なので、朋也が下から見上げた拍子に、杏が下着をはいていないのが丸分かりになってしまったのだった。 「……」 「……」 当然のことながら、二人とも硬直してしまうわけだけれど。それを解いたのは杏からだった。 「朋也。聞いて」 「……」 「あたし……」 言い訳などしても無駄だとなぜだか思えた。そして、杏はスカートの裾を両手でたくしあげた。薄い陰毛に覆われた秘部が露になり……。 「あんたのことを考えて……。教室で……オナニーしちゃった変態……なの」 見られた反動で分泌されたのだろう。新しい、一筋の滴が秘部から太ももを伝って流れ落ちた。 「嫌いに、なった……?」 「いや……」 突然のことに、朋也は凍りついたように唖然としてしまった。そして、夕暮れの光りに照らされた杏が物凄く魅力的に、やらしく感じてしまい、ごくっと唾を飲み込んでしまう。 「でも、もう……」 堪え切れない感情に、涙をぽろぽろとこぼす。 「だめ……。押さえ切れない」 はぁはぁと熱い息を吐きながら、込み上げてくる何かを堪える。けれど、媚薬でも飲まされたかのように体は火照ってしまい、太股を流れ落ちる滴の数が増えていく。体を静めてほしい、と求める。 「朋也。して……。お願い……。あたしの中に入れて!」 「杏……」 云ってしまった後で杏は羞恥心に耐え切れず、へなへなと座り込んでしまう。 そして……
「ふ……あ、あ、あ」 階段の踊り場で、仰向けに寝かされて足を広げさせられて……。 「あ、あ、あふ……あっあっ! は、入ってくるよぉ……」 杏の上から覆いかぶさるようにして、朋也のものが何度も出入りしていた。 「あ、ああっ……あーっ! もっと、もっと」 こんなところで。いつ誰にみつかるかわからないような状況で肌を重ね、好きな人をひたすら求めてしまう。人から云われるイメージ……真面目なクラス委員の一面も、妹想いな姉という一面も、全てじゃなかった。 (そっか) これが、本当の自分なんだ、と杏は理解していた。ならばとばかりに開き直り、素の自分をさらけ出すことに決めた。 「あっあっ! 熱……いっ! はぅっ! はぅっ!」 深く、激しく突かれる度に、快楽と共に喜びを感じてしまう。それは朋也も同じようだった。もはや逃れられない運命なのかもしれない。 「あっあっあっあっあっ! いっちゃうぅ……っ!」 好きな人にめちゃくちゃにされて。ずっと、このままでいられるのなら、奴隷にされたって構わない、と杏は思った。 それから数時間後。
わずかな月明かりだけが差し込む廊下。二人は今も交わっていた。わずかに身じろぎする度に、ふるると胸が震える。そして、思い出したかのように朋也は背後から揉みしだく。杏の乳首は完全に勃起していて、いいように摘まれてしまう。その度に、こそばゆくて背筋にぴりぴりとしたしびれを感じる。 「あっあっ! ああんっ! あふっ! はふっ! あっ……い、いい……あっ!」 杏は朋也と違い、上着も、スカートも、インナーも……制服はおろか、下着も長いニーソックスも上履きも、何一つ身にまとっていなかった。全て、教室の机の上に置いてきたのだった。今の杏には、そんなものは不要なのだから。 「んっんっんっ! んひぃっ!」 「声、出すなよ」 「だ……ってぇ」 どだい無理な相談だった。何しろ二人は立ったまま、一つになっていたのだから。そして、そのままゆっくりと歩みを続けて行く。行く先など決まっていない、真夜中の淫靡な校内散歩。少し歩むだけで内部でこすれて、その度に杏は甘ったるい声を上げてしまう。 「案外。杏は、首輪とか似合いそうだな」 「んっ。そう、かも……ね」 想像するだけでゾクゾクしてしまう。自分が犬のように扱われることを思うと……。 「今度、付けて……よ。鎖も……一緒、に」 「じゃあ、尻尾も付けないとな。ここに」 朋也はそう云って、杏のお尻の穴をつつく。 「んっ! そう、ね。お散歩……させて、よ」 「ああ」 階段を降りると月明かりも見えず、真っ暗闇だった。ただ一つの例外を除いて。『非常口』を表示する誘導灯の光だけが、二人をかすかに照らしていた。 「裸で、しかもやりながら校内散歩って、どんな気分だ?」 「ん。……すごい、ぞくぞくする。感じて、濡れちゃう……」 「俺もだ」 絶対に、誰かに見つかったりしてはいけないというスリル。二人はそんな背徳感に酔いしれていた。 「杏」 「なに?」 「風邪ひくなよ」 「……馬鹿」 漫才のようなやりとりだった。けれど、今の二人は熱いくらいに火照っているから大丈夫。 「あ、そうだ」 「ん?」 「お前。さっきオナニー、してたんだろ? だったらさ……」 「あ……! ち、ちょっと。いきなり動か……ないで。んああっ!」 朋也は何かを耳打ちし、移動する。その先は……。 朋也の教室だった。
「あっあっあっ! いくっ! ああんっ!」 机の上に腰掛けて、大股開きをして、指で何度も自慰を繰り返す。その様子を朋也は椅子に腰掛けながら見ていた。にやにやと見下すように笑いながら。 「杏。お前、ひどいお姉ちゃんだよなぁ。妹の机の上でオナニーしてるなんてよ」 「あ、あんたがしろって云ったんじゃないの! 馬鹿ぁ」 落ちた愛液でぬるぬるになっている机……それは、誰のでもない。杏の双子の妹……藤林椋がいつも使っているものだった。 「説得力ないな。こんだけ感じていて」 「うぅ……。な、何て事させんのよ」 反抗的になるけれど、弱々しい。更に、決定的な問題があった。……今、彼女は裸ではなくて。 「いや、杏が喜ぶかな〜って思って」 どこか馬鹿にしたように、朋也は云う。 「喜ぶわけないでしょ!」 嘘だ。と、杏は内心思った。自分はこの状況に喜びを感じていると。何しろ……。 「説得力ないってんだよ。そんなもん着てさ」 「き、着させたのはあんた……でしょ。何、考えてんのよ。……変……態」 「でも、濡れているのはどうしてだ?」 「っ!」 杏が今着ているもの……。それは、椋の体操着だった。朋也がたまたま興味本位で椋のロッカーを見てみたところ、カギがかけられていなかったので、中に入っていた体操着を杏に着せてみたのだった。そして、その上でオナニーして見せろと云われて、断れるはずもなく……既に椋のブルマはじっとりと濡れてしまっていたのだった。 「胸がゆるゆるか」 結構気にしていることを云われて、カーッと顔が熱くなる。実は、椋の方が胸が大きいのだった。改めて実証されるとなぜか悔しくなる。 「う、るさい!」 力の入らない手でぽかっと朋也を叩く。けれど、体をひっくりかえされてしまう。 「ま、いい。入れるぞ」 「あ! ちょっと……!」 朋也は杏の赤いブルマをずらし、露わになった秘部に挿入した。そして、動き始める。 「あっあっあっ!」 朋也が小刻みな動きを繰り返すたびに、杏は机にしがみついて堪える。ぎしぎしと、机の脚が床と擦れて静寂の中に響く。 (あ……あたし。妹の……椋の体操服着て……朋也と……) かつて椋から朋也を取り上げて、尚かつこんなことをして……感じてしまっている。あまりの背徳感と罪悪感に、杏は目を閉じて堪える。 (あたし……変態、だ) もはやされるがまま。好き放題突かれて、無意識のうちに甘ったるい喘ぎ声を出してしまう。 「絞まる、な」 「あひっ! あっ! あひぃっ! ひぁああっ! あっあっあっ!」 朋也の動きは段々と早まっていき、杏も何かが高まるのを感じていく。もう止められはしなかった。 「ああああっ!」 一瞬、強く突かれたと同時に引き抜かれて……思い切り射精されていた。それも、椋のブルマに。 「あ、あ……」 脱力感によって、机の上に倒れ込む。 (椋。……ごめん。ごめんね。……ごめん) いけないことをして、感じてしまい、更に求めてしまう自分が許せなかった。 そしてまた、杏は全裸にさせられて
廊下、教室、昇降口、中庭、体育館と背徳の散歩は続き……。
「あっあっ! あひいいいいっ!」 杏は今はもう、立って歩くこともできない。何しろ、後ろの方……お尻の穴に深く突き立てられているのだから。そんな状態でずっと歩かされてきた。 「そんなにでかい声出すなよ」 「だ、ってぇぇ! ひぐっ! あぐっ! あぅっ!」 ずん、と突き上げられる度に杏は喘いだ。あまりの快感にもはや脱力してしまい、涙をぽろぽろとこぼし、だらし無く開いた口からは涎が流れ落ちる。 「そろそろ、お開きだな」 「あっあっあっあっあっあっあっ! も、お……ああああっ! あひいいいっ! お尻っ……き、気持ち……いいよぉっ! ……あうっ!」 とんでもないところ……。グラウンドのど真ん中で堂々と散々交わって、互いに絶頂を迎えようとしていた。しかも、攻められているところも普通ではなかった。 「お尻の穴で感じてるなんて、変態だな」 「んっ……うっ! もっと! もっとしてぇっ! もっといっぱい……」 ずぎゅ、ずぎゅ、と避けそうなくらいきつい感触を感じながら、行為は繰り返される。やがて二人とも達して……。 「中に……中にぃ……あ、ぅ……出てる……」 凄まじい満足感と共に朋也のものが引き抜かれた。かれこれ数十分は杏の中にあったものが。そして、それと共に緊張の糸が切れたのだろう。 「はぁぁ……あ、ああ……」 杏はじょぼじょぼと勢いよく放尿……というよりも、失禁してしまう。我慢も限界だったから。 「あ、あ、あは……。朋也……もぉ」 「おいおい」 その時は既に朋也のものを握り締めていた。激しすぎる攻めに、壊れてしまったかのような上目使いで見つめる。 「朋也のおち○ちんからも、出し……てぇ」 「仕方がないな」 そして、無理に出し始める。と、同時に杏は……。 「お……おい」 「はむ……ん、んん、んぐんんぐ、ん……んく、んぐ」 朋也のものをくわえ込んで、思いきり飲み始めた。呼吸も止まるかのような時間、むせ返りもせずに……。 「ん、ぷは……。朋也のおしっこ……おいし、ぃぃ」 杏は、こんな所を妹の椋に見られたらどう思われるかな。などと考えてしまいながら、全て飲み干した。そしてまた……。 「ん、ん……んんぅ、ん、ん……む……」 「何だか俺。吸い尽くされそうだな」 くいつくかのように、朋也のものにしゃぶりつき、愛撫を始めた。 月明かりが人を狂わせたかのように
二人の交わりは続いた……
それから数ヶ月後。……時折二人は夜の校舎に忍び込んで、密かに事を進める。 「あ、あぁぁぁ……あ、あぁぁ」 「ほら。ちゃんと歩けよ」 朋也は云うが、今の杏にはそれすらも無理な注文だ。杏はあの時と同じく、月明かりだけが照らす廊下を全裸で歩かされていた。秘部とお尻には、極太のバイブレーターが奥まで突っ込まれて、振動はMAXにセットされている。そして更に、左右の乳首にはテープでローターがしっかりとくくりつけられていて、鈍く震える音が響き渡る。全身の敏感な所を攻められてしまっては、為す術がない。 「あ、あふ……あ、あ、あ……も、もぉ……だ、めぇぇぇ」 快感のあまり崩れ落ちそうになるけれど、首には輪を付けられて鎖で繋がれていて、時折それをぐい、と引っ張られてしまう。 「ほら」 「あふぅっ! ああああ〜っ!」 今では、それだけでも快感になってしまっていた。杏は淫らに喘ぎ、ぽたぽたと雫をこぼしながら歩かされる。ひく、ひくと震え……ビクッと一際強く体を反った瞬間また、絶頂を迎えていた。ぴしゃっと強く潮を吹き出してしまった。 「あ、あぁ……」 「お仕置きが必要、だな」 これからまた、好き放題めちゃくちゃに犯されるのだと思うと、杏は何故だか嬉しくなってしまった。 もう、戻れない。
そうわかっていつつ、これでいいんだと二人とも思う。
ここは、朋也と杏
二人以外、誰も入れない……幻想の世界なのだから。
----------後書き----------
Web拍手にて、杏のひとりえっちな話を読みたいというご意見があったのでおーし、じゃー一丁やってみっかーと思って試してみた。……のはいいのだけれども、書き進めていくウチに単なる短編のつもりがボリュームも増して何故だか超アブノーマル路線に走っていき、気がついたら杏が猛烈にMっ気に満ちあふれた娘になっちまいました。 普段杏は辞書をぶん投げたり原チャリで体当たりかましたりと、なかなかにサディスティックなところがあるけれど、本質はこうなのではないかというのが個人的な解釈なわけでありました。好き嫌いは別れそうだとわかっていつつもこのよーに。表は強く見えるけれど、実は……というよーな。シナリオを見る限りそんな風に感じたりしてしまうのです。 ……SSは営利を求めず趣味で書いているわけで、ただそれでもどこかしらエンターテイメントなもんでありたいなーと思いつつ、作者の個人的な憂さ晴らしの対象でもあるわけで。良い悪いはさておいて、つまるところ、私生活で鬱積したストレス・怒り・鬱屈したものなんぞを見境なくええいこんちくしょうとキャンバス……は、絵の場合か。この場合はテキストにぶちまけるというか、叩き付ける事もあるわけです。それが今回の作品ってなわけでありました。 とりあえず、魂込めました。煩悩とゆー名の。 ご意見ご感想シチュエーションのリクエスト、誤字脱字報告はWeb拍手にてお願い致します。 |