Back


澪の一休み










 放課後のこと。今日も練習をしに部室へとやってきた澪。……だったはずなのだけど、ポツンと一人取り残されたかのように佇んでしまう。

 自分以外に誰もいない教室にて澪が呆然としている理由。それは偶然と必然の両方、複合的な要因が噛み合わさったが故の事だった。

 唯……病欠。また風邪をひいてしまったそうで、とっても姉思いな妹の憂に付き添われて帰って行った。まったく、健康管理はちゃんとしろよなと澪は思った。ムギ……用事があるとかで帰って行った。律義にかつとても申し訳無さそうに、今日は部活をお休みしますと伝言を残していった。本当にたまたま用事が入ったんだろうな、と澪は思った。だから仕方がないと思ったのだがしかし律は違った。律が不在な理由は……サボり。それ以上でも、それ以下でもない。ったくあいつは、部長の意識というものをもう少し持てと思ったけれど、そのうちまたサボるのにも飽きて練習をしにやってくるだろう。ごくたまにそういう日があり、今日がその一日だったようだ。とにかく、来た時に少し締め上げてやる、と生真面目な澪は思った。で、最後に梓……。ライブを観に行ってる。無論ずっと前からその日は部活に出られませんと宣言済み。たまたまものすごい倍率の、梓が好きなバンドのライブチケットを入手することができたそうで、趣味と実益を兼ねて楽しみながらバンドの演奏テクニックも見てきて勉強もしてしまおうという要領の良さ。梓らしいわね、と澪は思った。

 そんなわけで澪は一人。寂しい。非常に寂しい。とても寂しい。だだっ広い部屋の真ん中で椅子に座ってぼーーーーっとしてしまう。部室に来た当初、少しばかり練習をしてはみたのだったが、全然楽しくないので、途中でやめてしまった。一人心置きなく練習できるかと思ったけれど、恐らくノリと云うべきか調子の悪い日だったのだろうきっと。

(夕焼け。綺麗だな)

 窓の外から差し込む光は鮮やかな夕焼け。明日も晴れるかな、と何となく思う。

 澪はそのまままたしばらくボーッとしていた。最初は普通に座っていたのだが、そのうち無意識のままいつしか上履きを脱ぎ、あぐらをかくように股を開き、黒いソックスに覆われた両足首を交差させるという、だらしのない格好になっていた。女の子の本能なのか、下着の部分はスカートの布地と両手で覆って隠していた。良く云えばリラックスしている、悪く云えば緊張が抜けてだらけている。そんなシチュエーション。

(……)

 誰も来ない。眠たくなるほど静か。それも当然のこと。放課後の軽音部もとい音楽室など、部員か特別な用でもない限り誰も近寄ったりなどしないのだから。だから音楽室はいつも学園七不思議と云うべき心霊スポットとなりうるのかもしれない。やれ、ベートーベンの肖像画がしゃべっただの、誰もいないのにピアノが勝手に演奏を始めただの。

 とにかく寂しい。強くそう思った時だった。手がスカートの上に置かれていることに気づいた。そして……。

(あ……)

 無意識のうちに指を秘所に押し当て、動かしていた。

(だめ。ここ、学校……)

 澪は顔を真っ赤にして恥じらう。何ていやらしい娘なのだろうと思う。しかし、欲求は強まっていくだけだった。

(誰も見ていないよね?)

 だから、そういう問題じゃないだろ! 家ならまだしも、何考えているんだ! と、心の中で自分に対し突っ込みを入れるも、指先のうごめきは止まらなかった。

(スカートの上からなら、わからない……よね?)

 もし仮に誰かが入って来ても、パッと一目見ただけでは何をしているかなんてわからないだろう。そう思った。もしくはそう思って自分を納得させ、この淫行を継続する名目にしたかっただけかもしれない。何であれ、大丈夫だと云う理由を強引にでもこじつけたかった。

(ん……ん……)

 もぞもぞと指が動く度に、かすかに気持ちいい感触。けれど、スカートと下着の上からではそれ以上の刺激は感じなかった。明らかに物足りない。もっと気持ち良くなりたい。どうすればいいか? 考えるまでもない。直に触るしかない。

(一回だけ。も、もうしない。だから……)

 いいだろ? 誰に対してか自分に対してか、言い訳をしてみる。スカートの布地で隠せばどこをどんなふうにいじっているかなんてわからないだろう。そう自分を納得させ、手をスカートの中へと潜らせ、縞柄のショーツをずらして直に秘所をいじくる。最も、スカートの布地も丈と同じように短くて、そんなにカモフラージュの役には立たないのだが、それでもいいと澪は思った。

 夕日が差し込む室内にて、スカートで隠しながらこっそり自慰にふけ続けるという背徳感が更なる行為の継続を促していく。いけないことをしていると思う度に『誰も見てないよね』と云う免罪符のような台詞を常に自分に言い聞かせる。悪夢のような悪循環だった。

(ああ、ああ。私……学校でオナニーしてる。で、でも……気持ちいいんだ。止まらない)

 右手をスカートの中にもぐりこませ、ずれたショーツの中の淡い毛に覆われた割れ目に触れる。指先でなぞるように、薄い皮を剥くようにつつく。それと同時に左手で胸を揉みしだいていた。

「ん。ん」

 声がかすかに漏れてしまう。学校で……部室で……誰もいないことをいいことにオナニーにふける。いくら気持ちいいからって、自分は何をしているのだろう。唯が見たら何と云うだろう。『うわぁ。みおちゃん大胆〜』とでも目を丸くして云うことだろう。ムギは多分微笑したまま、うっとりしながら黙って見ていて『いいものを見させていただきました』とか云いだしそうだ。律は? 『澪は昔から真面目そうな顔してスケベだからな』とか、ありもしないことを大得意で皆に云いふらしていそうだ。梓は……恐らく一番常識的で、澪が恐れる反応を示すことだろう。『見損ないました! 学校で、しかも部室でお、オナニーするなんて! 澪先輩の変態!』とか顔を真っ赤にして怒り、怒鳴りつけてきて抗議することだろう。その反応が一番堪える。絶対に嫌われてしまうことだろう。

(ごめん梓。でも……でも、気持ちいいんだ。指が止まらないんだ)

 指の動きが速くなっていく。割れ目に指先が侵入する度に電流のようにびりびりと痺れる刺激が背筋を震わせる。

(あ……。濡れちゃう)

 いつしかじわ、といやらしい液体が分泌されてきて、指先を濡らす。

(そろそろ、いく)

 あぐらをかき大股開きの状態になっている両膝が、上下に微かに揺れる。椅子の足が床とこすれ、かすかにぎしぎしと音をたてる。澪はもう絶頂を迎えつつあった。秘所からとろりと垂れた湿りは拡大していき、ショーツとスカートが濡れてしまうけれど構うことなどできはしなかった。

(い、く……。あ、あ……あ。もう、だめ)

 そのまま静かに、遂に絶頂を迎える。

「いっちゃう……。い……く……うっ」

 絶頂を迎える瞬間、澪はきつく目を閉じていた。同時に小さいけれど、気持ちのいい思いを声に出してしまっていた。消え入りそうな微かな声だった。

 突然心霊現象のようにパシャと機械音。気のせいかと一瞬思ったが、すぐに我にかえる。まさか……と思い澪が目をゆっくりと開け、横を見る。『フフフ』ととっても邪悪な笑みを浮かべる軽音部顧問、山中さわ子先生がいた。そしてその手には何故か携帯のカメラが握られている。一瞬にして澪は全てを理解した。最も恥ずかしい瞬間を撮影された。決定的瞬間を見られたばかりか、写真まで撮られた。もしくは一部始終すら見られたかもしれない。ドアを開け、入ってきたことにすら気づかなかったなんて、どれ程強烈な快感を貪り続けていたのだろう。

「あ……。だめ……。やめて……。ご、めんなさい」

 とっさに股間に手を当て隠すも、全ては遅すぎた。澪は脅え、しゃくり上げる。

「あら。どうして謝るのかしら?」

 さわちゃん先生はくすっと笑う。

「出来心……なんです。誰にも云わないで……」

 澪は既に涙目になっていた。するつもりなんてなかった。してしまった後も、最初で最後にしようと思っていた。なのに、見られてしまった。もう抵抗などできはしなかった。もはや絶対服従するしかないだろうと、本能でわかってしまう。

「云わないわよ。それにしても、よく撮れてるわねぇ」

 澪の心配とは裏腹に、さわちゃんはあっさりと『写真をネタにして脅迫』という定番のような行為を否定した。そうして携帯をデータ閲覧モードにして写真を澪にも見せてみる。口を半開きにして絶頂を向かえる瞬間を捕らえていた。無駄に画素数が多い高性能カメラを搭載している携帯だった。そういえば、この前みんなに自慢していたような、と澪は思い出す。

「私は教師だもの。教え子を脅迫したりなんてしないわよ。ただちょっとだけ、家宝にするだけよ」

 誰がどう見ても信用なんかできない。ちょっとどころじゃないと澪は思った。家宝ってなんだ家宝って。余計悪いじゃないか、と思った。

「でも」

 さわちゃん先生がかけている眼鏡に反射した光がきらりと輝く。悪気はそんなにないのだろうけれど、今の澪には絶対的な存在に見えてしまう。

「気持ちよさそうだから、私も混ぜてもらおうかしら。そうすれば私も同罪でしょ?」

「ひっ!」

 澪の顔が恐怖に震えるのだった。混ぜて、という事は……一緒に、ということ。





 こうして、顧問の権限(というよりも職権乱用)により、部屋のドアには鍵がかけられた。





 明かりもつけない薄暗い室内にて、こっそり行われている情事。

「あ、あぁぁ、あ、ぁ……。こんな……こんな、の。せんせ……ぃ。だ、め……」

 椅子に腰掛ける澪はショーツを脱がされた上に大きく股を開かされていた。同時にスカートの中にさわちゃん先生が顔を埋め、澪の最も恥ずかしい箇所に舌を這わせていた。

「ほら澪ちゃん。胸を揉み続けなさい。両手がお留守よ」

「は、いぃ……。あ、あ、あぁーーー!」

 云われるがままに両手で胸を揉みしだく。ブラウスの中に手を這わし、ブラをたくし上げて直に。気持ち良さに乳首が起っていくのがわかり、とても恥ずかしい。けれど気持ちがいい。止められない。大きめの胸を強めに握りつぶす。少し痛いくらいが逆に気持ちが良かった。

「ひ、あぁぁ……あ、あ、あ」

 ぴちゃ、ぴちゃ、とさわちゃんが舐める音が大きくなり、同時に湿りも増していく。と、同時に比例して気持ち良さもこみ上げていく。一人でしていた時とは比較にならない程の刺激。

「指、入れるわよ」

「……っ! あ……」

 ずにゅ、と挿入されてくる感触。小さな割れ目をこじ開けられる。同時にきゅ、とクリトリスを摘ままれる。

「ひゃうっ! だ、だ、め……。出ちゃ……う」

 既に椅子の板はぐしょぐしょに濡れて、溢れて床へと落ちていく。

「いいわよ。我慢しないで思い切り出しちゃいなさい」

「ひ……あ、あ、あ……あひっ! ああああっ!」

 堪えることも抵抗することもできなかった。ぴゅ、ぴゅ、と勢いよく飛び出してくる潮が床に散った。また、いかされてしまった。一瞬意識が飛びそうになり、澪は背中を仰け反らせて喘いだ。

「可愛いわよ澪ちゃん」

「あ、あ、あ……はぁ、はぁ」

 さわちゃんがまた写真を撮っている。恥ずかしい姿を何度も撮りまくっているけれど、澪は脱力して止める事すらできず惚けたような表情のままずるりと崩れ落ちた。





 その後。





「ふ、う、うぅぅぅっ」

 澪は制服を全て脱がされ、体中を愛撫され、散々よがらされ何度も絶頂を迎えさせられた。声をもろに出さないように、脱がされたショーツを口内へと押し込まれながら。

「澪ちゃん気持ちいい?」

「ふ、う」

 はっきりと頷く。さわちゃん先生のはぁはぁと興奮した笑みがますます勢いを増していく。指で、舌で、あらゆるところに触れられた。

「素直でいいわね。ほら、またいっちゃいなさい」

「う、うぅぅぅぅっ!」

 さわちゃんによる指の侵入がますます速く、激しくなっていく。ぽたぽたと嫌らしい液体が落ちて行く。きっとまたあっと言う間に絶頂を迎えさせられてしまう。澪は観念し、がくがくと体中を震わせるだけだった。

 室内には微かな吐息と喘ぎ声。後は、月明かりが辺りを照らすだけ。

 軽音部の一休みに密かに行われている行為は、とっても大胆で恥ずかしいものだった。










----------後書き----------

 突発的にけいおん! 話。澪が椅子に腰掛けてる扉絵を見ていて色々とむらむら込み上げてきたのでその熱くたぎる思いを文章にぶちまけてみたらこのようなりました。

 えろいぜえろいぜえろくてしぬぜと思ったのでありました。



Web拍手



Back