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静けさの中で










 時計の針が夜十一時を指す頃。男子寮の寮母、相楽美佐枝はやっとこさ一日の仕事を全て終えて、自室でくつろいでいた。

「あら」

 そんなわけでそろそろお風呂に入ろうか、と、思って来たのだが。湯船の蓋を開けてみて初めて異変に気付いた。

「故障、みたいねぇ」

 湯船の中は本来暖まっているはずなのに、冷たい水で満たされていた。ボイラーか何かが壊れたのだろうか。

「弱ったわ」

 仕事で汗をかいて彼女の中での不快指数はかなり高まっている。そのままでいいわけがない。できればお湯に浸かりたい。たっぷりとしたお湯に浸かって心身共にリラックスしたい、と強く思った。

「仕方ないわねぇ」

 なので彼女は、やむなく一つの手を考えることにする。時間も時間で消灯時間も過ぎているし、まあ大丈夫だろうと思ったが故に。





一方その頃。





「岡崎。岡崎」

「……」

「起きろよ岡崎! ったく、誰の部屋だと思ってんだか」

 彼を揺さぶりながら、呆れたようにつぶやくのは春原陽平。コタツにだらし無く横になって寝ているのは岡崎朋也。今日も朋也は春原の部屋に入り浸っているのだった。

「あ? あぁ……やべぇ。寝過ごしちまった」

「やっと起きたか。もう十一時だよ?」

「もうそんな時間かよ。うあっ!」

「どうしたの?」

 朋也は体を起こしてみて初めて気づく。体中汗だくなことに。

「暑い訳でもないのに、なんだこの汗は……。気持ち悪い」

「なになに? 楽しい夢でも見てたんじゃないの?」

 春原はにや〜っと嫌らしい笑みを見せる。

「ああ、まあ。ちょっとばかり激しい夢をな」

 そこで朋也はさりげなくボソッと爆弾発言。

「芽衣ちゃんと朝までする夢をな」

「……はい?」

 突然妹の名が出て、春原の笑顔が凍りついたのは云うまでもない。まさに青天の霹靂。

「ああ、気にするな」

 と、あっさり云うけれど。

「気にするわぁーーーー!」

 そんなこんなで朋也は部屋を出て、既に電気が消されて真っ暗な廊下を歩いていく。春原に『風呂でも入ってきたら?』と云われて、そうすることにしたわけなのだが。

「やれやれ」

 そして共同浴場のドアを開ける。と……。

「うん? 誰か入ってるのか?」

 ふと、脱衣所の向こう。ガラス戸を隔てた浴室の中に明かりが付いているのに気づいた。恐らく自分と同じように、こんな時間に風呂に入らなければならなくなった間抜けでもいるのだろう、とか思いながら構わず服を全て脱いでかごに放り込み、タオル片手に入る。そこには……。

「ふぅ。気持ちいい」

 たっぷりなお湯に浸かり、体の真から暖まっていく。少し身じろぎするだけで、ちゃぷ、と水が戯れる。そんな静かでゆったりとした時間が流れる空間に突然、がら、と引き戸が開かれる音がした。

「み……!?」

「え!?」

 未知との遭遇、とでも云うような硬直。朋也の中で、誰か運動部のむさ苦しい男でもいるものだろうと思っていたらとんでもない。細くて、白くて、スタイルが良くて、綺麗な肌の美人が湯船に浸かっていたのだから。男子寮において、それらの要素に該当する人物は一人しかいない。

「お、岡崎?」

「わあっ! な、何で美佐枝さんが入ってるんだよっ!」

 朋也は慌てて視線を逸らすが、美佐枝の方も動揺しきっていて、体を縮こまらせてしまう。

「え、だ……だって。その……部屋のお風呂が、故障しちゃったから」

 とても困ったように、言い訳をしてしまう。

「だ、だからって美佐枝さん! 普通、男子寮の共同浴場に入るか!? そのうち、野郎連中に集団で犯されるぞ? 男はこええんだからな!」

 至極まっとうな意見、だったのだが。少しばかり口調がムキになってしまった。

「あ……あたしみたいなの、誰も襲わないでしょ?」

 自己評価低すぎだ、と朋也は心の中で突っ込みをいれる。どうしてこの人はわかってくれないんだ! と、そんな風に。

「そんなことねぇって。っとに。危ういなぁ」

 朋也が美佐枝の火照った体をちらちらと見続けていくと、段々と下半身の方がそそり立っていく。悟られないようにタオルで隠しながらごまかす

「も、もし仮にさ。今の俺がその……狼のよーに、突然襲いかかってきたとしたら、どうするんだ? あくまで仮に、だけど。……こんなところで大きな声出したら、誰かに見つかってそれこそやばいし」

 可能な限り視線を逸らし、苦し紛れの一言で変なことを云ってしまう。

「……え?」

「ああ、いや。仮の話だよ」

「岡崎なら、いいわよ。……なんてね」

 くすっと笑みがこぼれる。自分を悪者に例えてでも身を案じてくれる朋也に対し、美佐枝は気を許していた。けれどその一言は、朋也を大いに魅了した。

「その言葉。本気にするぞ?」

 どくん、と鼓動が高鳴ったのが分かる。以前、彼女に云い寄ったのは本気なのだったから。誘われたからには冗談では通じない。

「好きだったんだからな。本気で」

「岡崎。あ……っ」

 朋也は美佐枝に抵抗する暇も反論の余地も与えず素早く湯船に入り、体を引き寄せた。

「んっ!」

 初めてのキスは突然に。

「ん、ん、んんんぅっ!」

 奪い、貪るかのように深く、長いキス。突然のことに、美佐枝は戸惑った。朋也にとってその反応は、彼女が年上であることを全く感じさせないくらいにウブで、女生徒のようにあどけなく見えた。

「ほら、立って」

「あ……んっ!」

 そしてそのまま、抱きしめ合い……朋也は湯船の縁に腰掛けて、その上に座らせるようにして、腰を落とさせた。愛撫する間も惜しいくらいに、美佐枝が欲しかったから。

「そ、んな。いきなり……。あ、あ……ああああ! はぅぅっ!」

 太く、長いものが一気に入っていく。美佐枝は朋也にしがみついた。

「う、動か……ないで。あぅっ!」

 そうして僅かな間に、全てが埋没してしまう。

「無理。気持ち良すぎて。体が勝手に動いちまう」

「あ……。だ、め……よぉ」

 朋也が小刻みに動く度に、美佐枝の体はガクガクと揺さぶられる。

「あっあっ! ああああっ!」

 きつく眼を閉じて堪える美佐枝を見て、朋也は華奢な体を強く抱きしめてキスをする。柔らかくて豊満な胸が当たり、ゴムボールのように形を変える。

(美佐枝さん。スタイル良すぎ)

「んんっ! んん〜〜っ! お、かざき。……だめ。もう」

 美佐枝の体はのぼせ上がりそうなくらいに火照っていく。





そして……。





「こ、んな格好……。あっ!」

「いくよ」

 いつしか朋也は美佐枝を四つん這いにさせて、後ろから激しく突いていた。

「ひっ。……あっあっあっ! あぁっ!」

 と、同時にゆさゆさ揺れる胸を両手で強く揉み回す。そうしたくなったから、あえてバックという羞恥を煽る体位に変更したのだった。

「やっ! ああっ! だ、めだって。そこは……あっ!」

 乳首を摘んでこね回すと、美佐枝は顔をのけぞらせて喘ぐ。

(ああ。こんな所誰かに見つかったら、ぶち殺されるな。きっと)

 つくづくそう思う。朋也は今、男子寮の皆が憧れている人の豊満なバストを好き放題揉み回しているのだから。

(やべぇ。そう思うと……ますます燃えてきた)

 朋也はひたすら手加減せず、ぱん、ぱん、と激しく音を立てながら交わり続ける。そうだ。後で胸で挟んでもらったり口でしてもらったりしよう、とか更に不埒な事を考えてしまう。

「あああああっ! あああっ! ああああっ! も、う……も……う……んああああっ!」

「美佐枝さん。……声、大きすぎるよ」

「だ、って」

 朋也は慌ててタオルを口にくわえさせた。

「んぐっ!」

「一気にいくよ」

 引き寄せる力を更に強く、早めて……。





やがて二人は達した。





「岡崎ぃ」

「うん?」

 美佐枝の部屋で。こたつに寝転がりながら、縞柄の猫を撫でてあやす。

「今度は、さ」

 髪を乾かしながら、照れくさそうに鏡をのぞき込み。

「こっちのお風呂で、ね」

 くす、と笑いながら呟くように云った。自室の風呂は、既に修理の手配を済ませてあるので。そんなに時間はかからないはずだから。

「ああ」

 朋也に寄り添うかのように猫が丸まり、暖かくて心地よい眠気がこみ上げてきた。





きっとまた





熱い一時が来るだろう。

























----------後書き----------

 久々に寮母さんなお話でした。

 ハードなものが続いていたので、ちょっぴりソフト……でもないかw



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