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春原芽衣編
-春原芽衣編-










一年前の夏。










 夕暮れ時をとっくに過ぎ、辺りが薄暗いグレーカラーに包まれた頃。二人の男子生徒が学校内に忍び込んでいた。
「おい。本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。心配いらないって」
 二人は二年生の岡崎朋也と春原陽平。春原を先頭に、どこかへと向かっているのだった。こっそりと辺りを警戒している様は、何か悪巧みでもしているかのようだ。彼らは不良生徒と呼ばれているのだから尚更その疑いが強い。
「その鍵で本当に開くのか?」
「当たり前っしょ」
 やがてたどり着いた建物の前で、春原はポケットから鍵を取り出して鍵穴に差し込み、回した。ノブを引くとドアはあっさりと開いた。
「へへっ。ほら開いた開いた。さ、思う存分楽しもうね!」
「野郎二人で楽しいも何もないだろ」
「ノリが悪いな〜。ほらほら」
「わかったわかった」
 とにかくも、二人は建物の中へと入って行くのだった。










それから丁度一年後。










(お?)
 男子寮は春原の部屋にて。例のごとく朋也が一人ぐだぐだと寝そべって漫画雑誌を読んでいると、コタツ兼用のテーブルの上に置いてある携帯が鳴った。
(自分のながら携帯が鳴るとは珍しい。誰からだ?)
 とか何とか思いながら携帯を耳に当て、登録されておらず見覚えのないナンバーに首を傾げながら通話ボタンを押す。
「もしもし?」
 次の瞬間、どこか幼いようでいて礼儀正しく、しっかりものといった感じの少女の声がした。
「芽衣ちゃん?」
 一瞬で誰だかわかった。それはこの部屋の主であり、朋也の悪友である春原陽平の妹、春原芽衣だった。不良でありだらし無くへたれな兄と違い、真面目で兄思いで家庭的でとてもいい娘だ。朋也は以前彼女と会った時、携帯の番号を教えた事をすっかり忘れていたのだった。
「久しぶり。……え。そうなんだ」
 朋也も嬉しそうに話をする。その内容を要約すると、近いうちに兄のところ……とは、ただ今彼が居るむさ苦しいところなのだが、そこに来るということだ。
「あ。そうだ。来るならさ」
 彼女と楽しくお話をしていると、そのへたれな兄貴が風呂から戻って来た。
「戻ったよ。って、あれー。彼女と電話してるのかなー?」
「うん。……そう。いいところに連れて行ってあげるよ。だからさ」
 春原の軽口に対し適当に答える……ように見えて、実は電話の相手に返事をしているだけだった。
「……冗談で云ったんだけど。もしかして本当にいるの?」
 そうとは気づかず、笑顔が青ざめる春原。
「うん。本当だよ」
 春原の頭の中では、寂しい野郎仲間とも云える唯一の相棒に恋人ができ、自分など無視して楽しそうに会話をしている……ように見えるのだった。
「がーんがーんがーん。も、もしかしてもしかして。デートの約束!?」
「そうだよ」
 勝手にショックを受ける春原。朋也は電話の相手に答えているだけなのに、相も変わらず気づいていない。かなり間抜けな風景だった。
「ぼ、僕たちの友情は……?」
「あはは。それはないよ」
「う、う、うあーーーーーん!」
 泣きながら部屋を出て行く。
「じゃ、またね。……って、あれ? 春原のやつ。どうかしたのかな?」
 結果的に、話の流れの中であっさりと勝手に傷つく春原だった。










それから数日後のこと。










 数カ月ぶりに、芽衣はやってきたのだった。
「おにいちゃん。元気?」
 とても、心底心配そうに聞く。兄思いの妹だったが、兄はそっけない。
「元気だよ」
「よかった」
 ほっとしたように笑顔。リボンで二房に分けられたお下げもあいまって、とても無邪気に見える。
「あのな。僕はお前に心配されるほど荒んだ生活なんてしてないぞ」
 と、啖呵を切るが、直後に鋭い突っ込みが入るぞ。
「その割には人妻に手を出したりしてたよな」
「あのね。あれは……」
 あれには深い事情があったわけで。……と、云いたいところだけど、ただ単に、芽衣に対して見栄を張りたいが為に、旦那と娘のいる人妻に偽装彼女役を依頼したことがあるのだった。
「後は、男に手を出そうとしてたり」
 朋也の口から衝撃的な事実が明らかになる。
「あんた! それシナリオ違うっしょ!」
「お、おにいちゃん……。そんな」
 それを聞いて芽衣は心底心配そうな表情に逆戻り。思い詰めて泣きそうになってしまう。
「僕、男でもいいかも……。とか何とか、真顔で云ってたよな。この部屋で一晩一緒に過ごして」
 次々に暴露されていく赤裸々な事実。
「だから! それは別シナリオっしょ!」
 言い訳としてはかなり苦しい。
「芽衣ちゃん。世の中にはね、いろんな考えの人達がいるんだよ。だから……ね」
 あまりにも救いようのない超絶大馬鹿野郎な兄貴であっても、どうか見捨てずに受け入れてあげて欲しい、と朋也は優しく諭すように望むのだった。
「……。はい」
 驚きと戸惑いと動揺と心配といった負の要素がブレンドされ、全然納得できてないような返事だったが、彼女は無理やり納得しようとしていた。そうでもしないと泣き出してしまいそうだったから。
「はい、じゃない! ……あのね岡崎。僕のシナリオのあの感動的なエンディングを向かえておいて、そんな野暮なことばかり云わないで欲しいんだけど」
「いや、全然感動してないから。俺が一方的にお前をボコっただけだし」
「ぼ、僕も少しは反撃したんですが……」
 身も蓋も無い云われように段々情けなくなり、涙を流す春原。
「そうだ。あのとき俺達はお互い笑い合ったんだよな。俺は爽やかにハハハハと笑って、お前はイっちゃった目でうひゃひゃひゃひゃ! と、嬉しそうに一方的に殴られながら」
「そんな笑い方してません! どこの変態ですか僕は!」
「まあそれはともかくとしてだ。早苗さんの件についても勝平の件についても、俺は野暮なことじゃ無くて事実をありのままに云ってるだけなんだが、何か問題でもあるのか?」
 まさに一刀両断。
「う、う、うああああん!」
 春原は号泣するのだった。










まあ、それはさておき。










「じゃ。早速行こうか」
「はいっ」
 芽衣はどこに連れて行ってもらえるのかな、と興味津々。事前に約束していたようだが、詳しいことは本日のお楽しみ、ということらしい。遠足を前日に控えた子供のように、うきうきしている。
「でも、あの。もう、こんな時間なんですが」
 今はもう午後七時にもなろうかという時間。
「むしろこんな時間じゃないと開いてないの」
「そうなんですか」
 そんなやり取りを見ていて、春原も口を出してくる。
「何だよ。どこか行くのか?」
「うん。ちょっと、芽衣ちゃんとデートしてくる。……お前は連れて行かないぞ?」
「意地でもいきませんから! う、うらやましくなんてないですからねっ!」
 なけなしのプライドというものも残っているようだ。それに対し朋也はフッと余裕の笑みを見せて、芽衣と共に部屋を出て行くのだった。
「それじゃあな」
 寮の外は既に薄暗くなりかけていた。
 そしてそのまま朋也を先頭に歩み出す。目的地は、何故か学校の方だった。当然、数分もしないうちに着くのだが。
「あ、あの。岡崎さん」
「大丈夫大丈夫」
 夜の学校に堂々と入って行くのを見て、とても心配そうな芽衣。朋也や春原のような不良生徒と違って、悪いことなどできない性格なので、戸惑っている。やがて、大きな建物の前にたどり着く。
「でも……。ここって……」
「誰も来ないよ」
 そう云って朋也は、持っていた合い鍵でドアを開ける。
「大丈夫だって。ほら」
「は、はい」
 朋也に促されて、芽衣は建物の中へと入る。暗く、暑い室内には誰もいるわけがないけれど……とても後ろめたく感じてしまう。










そして。










「更衣室はそっちだから」
「あ……。服の下に着て来たから、大丈夫です」
「あらま。用意のいいこと」
 そして、朋也の前で突然制服を脱ぎ始める。スカートのホックを外して下ろし、上着、ブラウスという順にボタンをほどいて脱いでいく。突然のことだった。
「んしょ……。お待たせ、しました」
 もじもじと、視線を気にしながら芽衣は朋也の前でほほ笑んだ。
「可愛いよ」
「嬉しい……です。けど、ちょっと……恥ずかしいです」
 芽衣は今、全裸……ではなく、学校指定の水着を着ているのだった。そして、彼らがいる場所は学校の室内プール。
「でも……。あの……。やっぱりその、勝手に入っちゃっていいのかなぁ」
「大丈夫だって。外からは見えないし、物音も響かないし、誰もいないし。静かにしていれば絶対大丈夫」
 以前。今からほぼ一年前の夏の頃のこと。いつものように朋也が春原の部屋でぐだぐだしていると、部屋が余りにも暑いものだから、突然どうしてもプールに入りたくなって、こっそり職員室から鍵を借りて(許可など得ているわけがないので、持ち出したという表現の方が妥当)合鍵を作ってしまったのだった。悪い奴らである。
 そんなわけで、芽衣と電話をしている時に『いいところ=貸し切りのプール=学校の屋内プール』に連れて行ってあげる、という約束をしたのだった。
「ほら。気持ちいいよ」
 ちゃぷ、と水音をたてて浸かる。
「そうですか」
 悪いことをしてると知りつつ、朋也に釣られて芽衣も水の中に浸かっていく。
「本当に、気持ちいいですね」
「でしょ」
「浮輪、もってくればよかったかなぁ」
「すごく似合いそう」
「あは。でも、やっぱり子供っぽいですよね」
 そんなところが可愛い、と朋也はしみじみ思った。
「岡崎さん」
「うん?」
「えいっ!」
 云うや否や、ぴちゃっと水をかけて不意打ち。
「わっ!」
「あは。油断しちゃだめですよ」
 そして素早く逃げ出す。
「やったな。待て〜!」
 水の中で、楽しい追いかけっこが始まった。










そして。偶然という名の運命の悪戯は起こる。










「捕まえた」
「わっ。岡崎……さん」
 水の中でじゃれあいながら結果的に、朋也が芽衣を抱きしめるような格好になってしまった。
「芽衣ちゃん?」
 視線が合わさる中、芽衣は少しだけ何かに迷い、覚悟を決めたかのようにすぐに目を閉じて顔を上げた。
「……」
 そしてそのまま硬直する。
(芽衣ちゃん、いきなりどうし……。って。これって)
 鈍感な朋也にも、今がどのようなシチュエーションであるか理解できた。それと同時に迷いが生まれる。
(キス、だよな)
 俺でいいのか、と。そういった類いの迷いだったけれど、恥ずかしそうに目を閉じている彼女を見て、迷いも消えた。
「……」
「……」
 互いの鼓動を感じながら、親友の妹とキスをした。わずか数秒のことなのに、二人にはとても長く感じられた。唇の温もりは柔らかで暖かくて、包まれるように優しかった。
「えへ」
「芽衣ちゃん」
 彼女の望みに答えて、朋也もどこかどきどきしてきた。
「キス、しちゃいました」
 ちゃっかり者のようにほほ笑み、そして……。
「岡崎さん」
 芽衣は朋也にしがみつくように抱き着いて、云った。










「思い出を……ください」










と。










その瞬間。










淡かった恋心は、確信へと変わった。










 芽衣の小さな体は小刻みに震え、緊張していた。
「芽衣ちゃん。力、抜いて。楽にして」
「は……い」
 そんな芽衣を見て朋也は気休めの言葉をかける。簡単にできるわけがないとわかっているけれど、それでも云わずにいられなかった。
「あ……」
 ふ……と、朋也の指が芽衣の肌に軽く触れる。それだけで芽衣はくすぐったくて反応してしまう。
「肌。綺麗だね」
 芽衣の瑞々しくてふにふにした肌は柔らかくて、触っているだけで気持ちがいい。柔らかな産毛が手の平を撫で、優しく包み込む。
「あふ……。あ……は、ぁ」
 そうしているうちに今度は、ほんの僅かに膨らんだ胸の部分に触れる。スクール水着の少しザラッとした布地が手に吸い付く。
「小さい、ですよね。わたしの……胸」
 あまりに恥ずかしくて、頬を赤らめて目を細める。
「可愛いよ」
「おにいちゃんの寮の……管理人さんみたいに、なりたいな」
「美佐枝さんか。あの人は別格だからなぁ」
 男子寮の管理人、相楽美佐枝のふっくらしたバストを思い浮かべる。どどーんとそびえ立つ山のようにど迫力なそれを。
 でも、大きさなど関係なかった。好きな人の恥ずかしい部分に触れている。その事実だけで、朋也は満足だった。
「あぁ……あっ」
 小さな膨らみ全体を人差し指でふるふると震わせて弄ぶ。優しく、撫でるように。その度に、小ぶりな乳首が折れ曲がって、芽衣は切なげな声を上げる。
「あ、あ」
 小刻みに呼吸を繰り返す芽衣は恥ずかしさを堪えながら、必死の決意を伝える。
「岡崎さん……。くすぐったいです。あ……」
「じゃあ、やめる? 怖い?」
 芽衣はうつむいて、消え入りそうな声で云った。
「やめないで……ください。怖く……ないから。大丈夫、ですから。最後まで……」
「うん。……じゃあ、今度は直に。ね」
「あ」
 水着の肩紐をずらして胸が露になるまで降ろす……。芽衣の胸は小さくて、桜色の乳首が僅かに起っていた。
「ん……ん」
 芽衣は恥ずかしさに目を閉じて必死に耐える。朋也はその間も、乳首を転がして僅かな膨らみを弄ぶ。
「あ、あ、あぅ」
 朋也の指先が肌に触れる度に、芽衣はぴくんと震える。余りにも敏感で、だからこそ朋也は更に触れてみたくなる。触れるたびに芽衣は反応してしまうから。子猫の鳴き声のような、か細い声をもっと聞きたいから。
「芽衣ちゃん」
「あ、はい。……あ」
 朋也の手が胸から離れる。そして、二人はプールから上がって……。
「あ、あああ。こ、んな……」
 プールサイドに仰向けに寝かされて、両足を掴まれて左右に開かれていた。
「そんなとこ、見ないでください」
「……」
 朋也は以前、芽衣のことを色気とは無縁などと云ってしまったけれど、今は前言を完全に撤回していた。両股が開かれたそこはとても淫靡で、今すぐにでも貫きたくなるほど色めき立っていた。
「触るよ」
「え。あ……っ!」
 股間の部分の布地をずらして露になった秘部はなまめかしかった。
「ひ……はぅっ! あ……」
 僅かな茂みを手の平で撫でてから、人差し指と中指の指先でほじるようにして秘部をいじくる。
「あっあっ……ああ……ああああっ!」
 そこは、兄弟にも両親にも誰にも触られた事の無いところ。芽衣は顔を手で覆って、込み上げてくる恥ずかしさを必死にこらえる。が、朋也はおかまいなしだった。
「や、あ……。お、岡崎さ……んっ! そ、そんなとこなめちゃ……あ、ああっあっ!」
 朋也は芽衣の秘部に顔を埋め、ぺろぺろと舌でなめ回す。ぬめぬめしていて尚且つざらっとした感触が、芽衣の秘部を唾液でとろとろに濡らしていく。
「あひっ! あっあっ……あぅっ! も、もうだめ……です。もう……そんなの、許して……」
 あまりにも強烈な刺激に耐えられるわけもなく、芽衣ははあはあと荒い息を付いて朋也を見上げた。
「じゃあ、そろそろ。ね」
「は、い」
 秘部が柔らかくほぐれてきたのを見て、朋也は意を決して……。










朋也は芽衣の体を抱き起こし










抱きしめ合いながら、キスをした。










「いくよ」
「はい。あ……あ」
 そしてそのまま小さな体を持ち上げて、朋也の限界にまでそそり立ったものの上に腰を落とさせる。
「うぐっ! あっ! あ、あ、あ……ああ。あっ……うくぅっ! は……いっちゃ……う……」
「痛いの? 大丈夫?」
「い、たくはないけど。お股が裂け……ちゃいそうで。あっ……うぅぅ」
 芽衣は突如訪れた強烈な圧迫感に、目尻に涙をためる。
「ゆっくり、いくよ」
「はいぃ……あ」
 少し強引に押し込むように、ずるっとした感触が強まる。
(わたし……。今、ものすごく恥ずかしいこと……しているんだ)
 ゆっくりと、ミリ単位くらいで挿入されていく中、芽衣は羞恥に耐えていた。異性と交わるという、とてもいけないことをしてるという背徳感に苛まれながら。きつく目を閉じ、歯を食いしばって……。
(男の人と……。朋也さんと……セックス、しているんだ)
 朋也のものはやがて、半分くらい埋没していき……。
「う、ああああ。あ、あ、あ……。ひ、一つに……なって、いきます」
 突如、何かを押し破るような感覚が走り、きつかった抵抗が少し緩み一気に奥まで入り込む。
「はうぅっ! あ……っぐ! あっ……ああああっ!」
 奥まで突かれて、芽衣は更に強く朋也にしがみつく。やがて……。
「全部、入ったよ」
「は……ああああ。は、い……」
 結合部を見ると、芽衣の秘部は痛々しいまでに押し広げられていた。
「ロストバージン……です」
「うん」
 どちらからともなくキスをする。
「岡崎……さん」
「動くよ」
「……」
 芽衣が頷くと、朋也は少しずつ突き上げ始める。
「あっあっ……あうっ」
 今はただ、ひたすら朋也にしがみついて行為が終わるのを待つ。今はまだ温もりを感じるだけでいっぱい……。そんな芽衣だった。
「う……。あ、ああっ。あっ……ぅっ!」
「痛い? 大丈夫?」
 大丈夫なわけがない。けれど、今は彼を受け入れるだけでいい。芽衣はそう思って必死に耐え、揺さぶられ続けていた。
「だい……じょうぶ。だから……だから。最後まで、お願い……します。……んっ! んんっ!」
「うん」
 少しでも芽衣の苦痛を和らげるため、朋也は下からゆっくりと突き上げながら、何度も何度もキスをした。
「あ、あぅ……。あふ……んぷ、ん……んん〜」
 朋也は強引に舌を口内に進入させて絡ませる。その度に、ぷちゅ、くちゅ、と淫靡な音が響く。
「えっちなキス……です……ぅ。あっ。あっあっあっ」
 翻弄される芽衣の小さな胸も、お下げも、朋也の上で小刻みに震える。










それは、朋也が達するまで続いた。










「……えへ」
「何だよ」
「おにーちゃんっ。……好き」
「ぐはっ! お、おにーちゃん禁止!」
 裸のまま水に浸かり、もたれかかるように甘え、朋也と肌を重ねる。
「岡崎さん」
「ん」
 芽衣は人の名を呼んでおいてちゃぷんと音を立てて水の中に潜り込み、浮き上がる。
「わたしも、進んだ娘になっちゃいました」
「うん」
 恥じらいで火照った体を冷ますかのように、何度も潜る。そうしないと、目も合わせられないくらい恥ずかしいのだから。
「ふー」
「はは」
 それでも。見つめ合っていれば笑顔になれる。とても幸せな時間……。そんなとき。
「っ!」
(見つかった?)
 がちゃんと音がしてプールへと続くドアが開き、誰かが入って来た。
(わっわっ! ど、どうしよ! わー!)
 当然のことながら焦りまくる芽衣。だが。
「っとに。岡崎の奴。僕を仲間外れにして……」
 朋也は冷静だった。ぶつくさぬかしている侵入者の正体をいち早く見抜き。そして。
「いいさいいさ。僕は一人寂しく夜のプールを楽しむから」
(春原か?)
 いじけて自棄になり、ストレス解消ということで思い切り飛び込もうとプールの縁に立ったそいつの両足を、朋也はぐいっ思いっきりと掴んで……。
「おりゃ!」
「どわっ!」
 強烈に引っ張る。直後にざっぱーーーーんという水音がしぶきとともに盛大に響くのだった。
「ぶふぉっ! な、何だ何だ何だっ!? って。え……? お、岡崎に……芽衣!?」
「お、おにいちゃん? わわっ!」
 驚愕の事実。……でもない。鍵を違法に複製して持っている人物は、朋也以外には春原しかいないのだから。冷静に考えて、そんな時間に入って来る非常識な輩は徹底的に限られる。
「ど、どびっくりしたぞ! いきなり夜のプールに入ろうとして足引っ張られるなんて!」
 どこぞの怪談にでも出て来そうなシチュエーションだ。
「夜のプールに入ろうとするのもどうかと思うぞ」
「入ってるお前に云われたくない! 人のことが云えるか……って。芽衣!」
 芽衣の状態……素っ裸なのを見て、春原は引きつった笑顔でつっこむ。
「……。も、もしかして二人とも。そういう関係に?」
「あ……。え……。う……」
 慌てふためく芽衣に対し、朋也は冷静だった。
「そういうことだ。お義兄さん」
「……」
 云ってしまってから気付いた朋也と、聞いてしまってから気付いた春原。
「ケェーーーッ!」
「ケェーーーッ!」
 あまりの違和感と気持ち悪さに、二人揃って人外のような声を出してしまうのだった。
「だあっ! 気持ち悪ぃーーー!」
「それはこっちの台詞ですっ!」
 水の中でばしゃばしゃどつきあう二人だった。
「くそう。何だ、ここに来るなら最初からそう云ってくれれば僕は来たりしなかったのに。……それにしても、芽衣に先を越されるとは。ううう」
 先を越されるというのは妹に彼氏ができたことか、あるいは二人の初体験のことか、はたまたその両方か。
 ぶつくさ云いながらも空気を読んだのか、自分がお邪魔虫だと気づく。そして春原は惨めにダラダラ涙を流しながら、裸なので体を抱え込むようにしている芽衣に声をかける。
「芽衣。……まあその、なんだ。……彼氏できて、よかったね」
 あまりの恥ずかしさに水中でも顔を赤らめながら、芽衣はその一言を聞いて彼氏ができた、という実感がようやく沸いて来たのだった。
「あ……。うん。ありがとう」
 春原も、芽衣にとって自分がとてつもなく頼りない馬鹿兄貴だと自覚しているけれど、こういう事は素直に喜んであげられる。結構妹思いなのだった。
 そして、去り際に朋也にも声をかける。
「岡崎。芽衣を頼むよ」
 真面目な目で偽りようのない本音を漏らす。そして、それに対し朋也は……。
「ああ。任せておけ。お義兄さん」
「……」
「……」
 空気をまるで読めていないのは他でもない朋也だった。その結果。
「ケェーーーッ!」
「ケェーーーッ!」
 やはり二人揃って獣のような雄叫びを上げつつ、互いの頬にばきっと仲良く(?)カウンタークロスのパンチが入るのだった。







そして







時は過ぎ去る。







ある日のこと。朋也の携帯に久々に着信があった。







それは、芽衣から。







彼女曰く、携帯を買ってもらったとかで。







話は弾む。







「あの時の岡崎さん。ものすごく、えっち……でした。……今もだけど」
「そうだった?」
「そうですよ! は、初めての娘に……何回もい、色んなことをしたじゃないですか」
「そうだっけ?」
 すっとぼける朋也。
「もう」







春原がプールから出て行ったあの後……。







「びっくりしたね」
「はい。本当に」
 シャワールームには二人。思わぬ闖入者のことを云っている。
「はい。バスタオル」
「あ。ありがとう」
 芽衣にバスタオルを渡しかけて、朋也はふと何かを思いついた。
「岡崎さん?」
「俺が、拭いてあげるよ」
「え。自分で拭けますよ〜」
 朋也の意図はそういうことではなかった。笑顔が硬直する。
「俺が、拭きたいの」
「あぅ……」
 まさに問答無用。そうして朋也は芽衣の柔らかでみずみずしい体をなでるように、バスタオルで拭いていく。
「くすぐったいです。あ……」
 乳輪をなぞるようにふるふると震わせる。
「くぁ……っ。あ。はずか……し。あ、あ。あぁぁ」
 おへそをバスタオルごしにつつき、脇腹をなで回す。
「ひはっ……あ。ひゃっ!」
「ここも拭かなくちゃね。触られて、感じちゃった?」
「そんな、こと。あ……。や」
 芽衣の股間を拭う。柔らかなデルタはほんの僅かな毛に覆われていた。
「芽衣ちゃんのお尻。柔らかいね」
 いつしか直に触っていた。
「そんなとこ、あんまり触っちゃだめ、です」
 そんな言葉には耳を傾けず、ふにふにともみ回す。
「芽衣ちゃん。俺、またこんなになっちゃったよ」
「え? ……はうっ!」
朋也の股間は再び臨戦状態。
「今度はさ。口で……して欲しいな」
「口……ですか?」
「そ。俺のこれを、芽衣ちゃんのお口でくわえて。しゃぶって」
「え、え……。そ、それって。気持ちいいんですか?」
 芽衣にとってそれは、信じられないような行為だった。
「してもらったことないからわからない」
「……」
 もちろん、芽衣もしたことなどない。それどころか想像したことすらない。
「わかり、ました。やってみます」
 そして覚悟を決め、思いきり口を開ける。
「歯を当てないでね」
「んぐ……。ん」
 仁王立ちの朋也に跪き、ゆっくりとくわえこんでいく。
(あ、ああ……。わたし。男の人の……。口で……)
 そんなことを考える間もなく、朋也のものは勢いを増していく。
「あぐ……。うぐ……。んぐ……」
 芽衣はそのまま無我夢中で口を前後に動かす。ぐちゅ、くちゅと唾液をからませ舌を上下左右に這わせる。
(これで……。こんなので気持ちいいのかな。岡崎さん)
 一心不乱な芽衣の行為はやがて……。
「っく。芽衣ちゃん。すごく気持ちいいよ」
(そ、そうなんだ)
 根元までくわえこまされて、勢いよく引き抜かれたと思った瞬間。
「んぷっ。……あ。あっ」
 朋也は芽衣の顔に大量に射精していた。








強烈な記憶となって残っているのだった。







更にそれだけではなくて。







「そういえば、そうだったね」
「そうだったね、じゃないです」
 思い出しながら、恥じらいで顔が真っ赤になっていく。
「それに、その後も……」
「そだっけ?」







朋也がとぼけても、芽衣の独白は続く。







「はぁ、はぁ」
「芽衣ちゃん」
 むせ返るほど大量に射精されて、芽衣は荒い息を付く。
「え。あ……」
 そんな芽衣の体を起こし、狭いシャワールームの壁に手を付かせ。
「また、したくなってきちゃった」
「え。ええ……っ」
 朋也は芽衣のお尻をなで回し、割れ目を開き……。
「芽衣ちゃんの恥ずかしいところ、丸見え」
「やっ。そんなとこばかり、見ないでください」
 云ってる側から無視して、芽衣のお尻の穴をつんとつつく。
「さ、触るのもだめ……。あっ」
 芽衣の秘部に朋也のものがあてがわれて。
「入れるよっ」
「あ、ああ。あ、あ、あ……ああ〜っ!」
 太く、大きく、長いものが奥までねじ込まれていく。
「芽衣ちゃん。痛い?」
「だ、いじょうぶ。だけど……。変……な感じ」
 朋也はゆっくりと動かし始める。
「ああっ! う、動かないでくださ……」
 コルクの栓を抜くように強い抵抗に阻まれながら。
「芽衣ちゃん……」
「あ、あ、あ……っ! そ、そんなに激しく……」
 だんだんと動きを早めていく。芽衣の小さなお尻に叩きつけるようにして、ぱんぱんと音が響く。
「そんなこと云われても。止まれないよ」
 暖かくて柔らかくて、強い締め付けは心地よかった。
「あっ! あっ! はっ……あっ! だ、め……。立ってられな……あっ!」
 小さな乳房がふるふると揺れるほど激しくなっていき……。やがて朋也は達しようとしていた。
「そろそろ出るよ」
「ひぁっ! あっ……ああっ! はぅっ!」
 一際強く、奥まで挿入され……一気に引き抜いて射精……。芽衣のお尻の割れ目にぶちまけた。
「はぁ、はぁぁ……。あ、あ……」
 芽衣は脱力し、床にぺたんと座り込んでしまう。
「芽衣ちゃん」
「……」
 朋也は暖かなお湯の出るシャワーを芽衣のお尻に当て、射精したものを洗い流しはじめた。
「あぁぁ。は、ずかしぃ……です。も、もぉ……許してくださいよぉ」
 芽衣はあまりの恥ずかしさに目を閉じて耐える。







独白は更に続く。







「うわっ。なんてマニアックな!」
「お、岡崎さんがしたんですよ〜!」
 芽衣の声は、どこか溜息混じりのものに変わっていた。







更にあの後……。







 散々いろいろやりまくって外に出て、既に誰もおらず閉まっている校門まで来た。
「……」
 夏にしては涼しい風が吹いていた。爽やかな風が。ところが芽衣は浮かない表情。
「芽衣ちゃん。スカート……」
「云わないでください」
 ヒラヒラと揺れる白いスカートを気にしているのか、手で抑える。それもそのはず。
「ひゃあっ! だ、だめです! こんなとこで触っちゃ!」
「いや、だってさ。生のお尻なんてなかなか触れないから」
「だ、だからって。……ああっ!」
 朋也がスカートの中に手を入れると、下着も何も付けていないお尻に直に触れた。
「……。ノーパンノーブラで外歩くって、どんな気分?」
「ど、どんなって。……恥ずかしい、です」
 そうとしか云いようが無い。朋也もわかっていて聞いているのだろう。
「う、うぅ。……下着の替え、忘れちゃうなんて。わたし……ドジ……」
 そうなのだった。下にあらかじめ水着を着てきたせいか、下着の替えを持ってくるのを完全に失念していたのだった。それ故に、今の芽衣はノーパンノーブラ状態。また、朋也とのデートということで浮かれていたということも一因かもしれない。
「乳首がブラウスとこすれて痛いでしょ」
「……」
 これもまた聞くまでもないこと。芽衣が恥ずかしがるのを承知の上でワザと、意地悪で聞いているのだった。
「岡崎さん。あの。……手、離してください」
「……」
 朋也は黙って手を離す……どころか更に悪のりしはじめて。
「ひぁっ! ゆ、指……中に入れちゃだめ……です」
 芽衣の秘部に指を入れ、かき混ぜる。
「あっ! あーーーっ! だ、め……あっあっあっ!」
 愛撫は段々激しくなっていく。そして……。
「芽衣ちゃん」
「あ……」
 朋也は小柄な芽衣を持ち上げるようにして茂みに連れ込み……。
「もう一回。いくよ?」
「で、も。……あぅっ!」
 そのままスカートをまくり上げて、挿入した。
「だ、誰かに見られ……ちゃう……」
「誰もいないし、来ないよ」
「あっあっあっあっ!」







……さすがにここら辺で、独白も終わりのようだ。







「は、初めての娘に……三回も」
「我ながら絶倫だな」
「感心しないでください〜!」
 話は更に更に弾んでいく。いつしか長電話になっていき、そろそろ切らないといけなくなってきた。
「岡崎さん」
「うん」
「わたし……。卒業したら、岡崎さんの学校に入りたいです」
「でも。その頃俺は……」
 順当に行けば卒業しているはずだ。と云いかけた。
「はい。それでも……。岡崎さんと一緒に、いたいです」
「そっか」
「はい」
 寂しそうな、少し辛そうな声だった。
「俺はさ。待っているから。この街で」
「……はい」
「だからさ。芽衣ちゃんは、今を大切にしてよ」
 その言葉、自分にそのまま返してやりてぇ、とか思いながら朋也は偉そうなことを云った。
「でさ。今度会えるとき……。いつでも一緒に会えるようになったら。聞かせてよ。芽衣ちゃんの思い出話」
「はいっ。岡崎さんも、聞かせてくださいね」
「もちろん。と云っても、俺の場合どうしても春原と馬鹿やってることばかり話題になりそうだがね」
「ええ。とっても、楽しみです。おにいちゃんのことも、いっぱい聞きたいです」
 寂しがっていても、悲しがっていても、何もはじまりはしないから。二人とも、次に会える日を楽しみに明るくバイバイとお別れをしようということになった。










季節は巡る……。










それでも、片時も互いの存在を忘れた事などなかった。










そして……。










「よぉ。久しぶりだな」
 駅前にて。朋也は久しぶりに旧友と再会した。
「全くもって」
「元気にしていたか?」
「毎日へとへとだよ」
 卒業後、春原はすぐに地元に帰り就職して……世の中の厳しさというものをこれでもかといわんばかりに味わっているのだった。それは朋也も同じことで、やはり地元の中小零細企業に就職して、日々必死に戦っている。
「学生時代に戻りたい、か?」
「いーや。一回で充分だね」
 馬鹿をやりまくってきたけれど、悔いはないようだ。
「そっか」
「そうだよ」
 そんな彼の後ろから、真新しい制服に身を包んだ芽衣が現れる。朋也達が通っていた学校の制服だった。
「岡崎さん」
「や。久しぶり」
「今日から寮暮らしです」
「制服、似合ってるよ。お世辞抜きで」
 えへへと照れながら微笑む芽衣は、少し髪が伸びていた。それでも髪形はそのままで、何も変わってはいなかった。
「岡崎。芽衣を頼むよ。何かと心配だけど、岡崎と一緒なら……」
 真面目な表情で頭を下げる春原。
「ああ。任せておけ、お義兄さん」
 いつぞやと全く同じ台詞を吐く。空気を読めていないというよりも照れ隠しをする朋也だった。
「ケェーーーッ!」
「ケェーーーッ!」
 やっぱり二人とも叫びつつ、気持ちの悪さに互いにどつき合うのも相変わらずのことで。それを見て芽衣は、笑顔で云うのだった。
「岡崎さんっ。やっと一緒になれましたっ!」
「うん。やっと……。これで、これからもいっぱいえっちなことをできるね」
「あ、あんたって人は! この感動的な再会シチュエーションでそーいう身も蓋も恥も外聞もないよーなこと云いますかっ!」
 何故か、結構まともな人になっている春原。やはり世間という荒波で揉まれた影響だろうか?
「そうだな。感動的なシチュエーションなんだから……」
 朋也は小柄な芽衣の体を抱きしめ、持ち上げるかのように抱きかかえ。
「わっ! んん〜!」
 思いっきりかぶりつくかのように豪快なキスをした。
「んーーーんーーーんーーー!」
 嬉し恥ずかしな芽衣は、顔を真っ赤にしながらも笑顔で受け入れる。
「あんたら! 公衆の面前! ああもうっ! いい加減にしなさいったらしなさいよっ!」
 付き添いで来ただけの春原は、羨ましさと恥ずかしさで絶叫しつつ天を仰いだ。










空には雲一つ無く。










一点の迷いもないような、快晴だった。










朋也と芽衣。二人の新しい時は










これから始まる……!




















-おしまい-




















----------後書き----------

 PureMixシリーズは、えろと、ほのらぶな純愛と、それと春原の絶叫やら受難やらでできています。
 一話に一度は春原が酷い目に遭わされているような気がしますが、それはもはや恒例行事というやつで。
 いかがでしたでしょか?


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