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坂上智代編
-坂上智代編-















 夜19時頃。その時間、生徒会長こと坂上智代は不機嫌だった。
「……」
 彼女は自分と『彼』以外誰もいない生徒会室にて。明日の会議の準備をしていた……だけだったのだが、それが原因で凛々しく端正な顔が少し歪み、こめかみの辺りがヒクついてメガネの奥の瞳が吊り上がる。
「朋也」
「ん?」
 きゅきゅ、と音を立てて水性のサインペンをホワイトボードに滑らしながら、真面目な議題を書き込む。そうしてしばらくしてから、気が散るとばかりに背後にいる男に声をかける。その男とは他でもない、岡崎朋也である。
「何でおまえがここにいる」
 本日何度目かの突っ込みを入れる。
「何でって。生徒会室で頑張る智代を見たかったから、かな?」
「理由にならん!」
 一喝するように云うも、朋也は微笑を浮かべながら机にほお杖をついていた。まさに余裕しゃくしゃくといったところだが。彼としては、智代も生徒会長として任期満了が近いから、こんな貴重な時間はないとばかりに見つめ続けるのだった。
「ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
 生真面目な智代は規律にうるさい……というよりも、朋也の行動が異常なだけだった。
「まあそう云うなよ。それに俺は智代の関係者だぞ?」
 それを聞いて智代はため息をつく。確かに朋也の言葉に間違いはなかった。智代にとって朋也は彼氏なのだから。
「まったく。制服まで着てきて……」
 既に朋也は卒業している。なので、学校関係者に怪しまれないようにわざわざ制服を着て堂々と智代に会いに来たのだった。こっそり忍び込むようなことなど彼はしない。
「この間、入社初っぱなにいきなり休日出勤してだな。今日は代休をもらったんだ」
「それなら休んでいればいいのに」
「智代に会いたくてな」
 卒業後。朋也は地元の企業に就職して、日々忙しく働いている。今回はたまたま平日にお休みをもらったということで、智代と待ち合わせをしていたのだが。
「待っていられなかったというわけだ」
「仕方のない奴だな」
 形はどうあれ、わざわざ会いに来た恋人を無下にすることもできない。それに、正直なところ少し嬉しくもあったから。
「もう少しで終わるから、おとなしくしていてくれ」
「わかったわかった」
 とは云ったものの、智代のすらっとした後ろ姿をなめ回すように見ているうちに、色々と我慢ができなくなっていく。
(しかし、手を出すとサクッと……)
 このようなシチュエーションにおいて後ろから手を出すと、刺されたりされそうで、朋也は自重……しなかった。
(いや。あえて俺は挑むぞ)
 そして……。
「……。朋也」
 現在、朋也の手の平には、ふにょんとした柔らかな感触。
「何だ?」
 何だも何もない。すっとぼけるな、と云うところだろうか?
「おとなしくしていてくれと云ったのだが」
「だから。おとなしく智代に手を出すことにしたのだが」
 智代の後ろで膝を付き、スカートの中の下着に包まれたお尻を撫で回し始めたのだった。
「云った側からそれか!」
 呆れ果てるものの、朋也の性格を知っているからか止めても無駄だと思い、諦めていた。
「悪いか?」
「当たり前、だ。……あ、あ。くすぐったい……」
 悪びれる様子もなく、朋也は愛撫を続ける。左右の手の平で柔らかなお尻をまんべんなく撫でる。
「まあ、そういうわけなので。気にせず続けてくれ」
「無理を……。云うなっ。……っく、ぅ」
 朋也は更に調子に乗り、下着の中に手を這わせる。
「声出すと、誰かに気付かれるぞ?」
「……」
 返す言葉もなく、智代は荒い息を吐きながらも必死に白板に向かって書き続ける。
「う……。く、くすぐったいんだ……。やめて、くれ……。そんなとこ、恥ずかしいところ……」
「なあ智代」
「っく。う、ぅ……。な、何だ?」
「おまえ。大胆な下着だな」
 スカートの中身を覗き込みながら、朋也はしみじみと云った。智代がはいているショーツは、黒いレースのものだった。
「しかも紐パン」
「わ、るいか?」
「いや、そうは云っていないが」
 智代の生真面目で、凜としたイメージからは掛け離れていたが。そんな下着を選んだ理由はすぐ明らかになる。
「おまえと、久しぶりに会えるから……。だから、気合を入れて、驚かせてやろうと思って、こんな下着をはいてきたのに」
「……」
「おまえががっつくものだから……」
「そうだったのか」
 智代は何だかんだ云いながら、朋也と会えるのを楽しみにしていたのだ。その事実は朋也を幸せにした。……と、同時に更に悪乗りさせる要素にもなってしまった。
「あ……っ!」
 智代の下着をぐいっと足元まで一気に降ろし、お尻に顔を埋めるようにして舌で秘部をなめた。
「っく! あ……ぅ! だ、め……だ。ああっ!」
「智代は本当に……」
 朋也はちゅば、ちゅば、とわざと音を立てて舌で愛撫し、智代を羞恥の渦にたたき込む。
「本当に、何……だ? あ、あ……」
「いい形の尻だな、と」
 丸く、肉付きの良い尻を撫でまくられて、智代は押し黙った。
「……」
「AVに出られそうなくらい、えろい」
「褒めてるのか……それは?」
 流石にそれは、複雑な気持ちになってしまう。
「多分な」
 パンの生地をこねるようにお尻を揉みしだき、割れ目を開いて指でなぞる。
「くぅっ!」
「お尻の穴。丸見えだぞ」
「なっ!? 見……るな! そんなところ!」
「じゃあ触る」
 つん、と指先の爪でつつき、ぐにぐにと動かす。
「うぁあっ! ……あ、あんまり、いじめないで……くれ。頼む……。あぅっ!」
「わかった」
 と、云いつつ智代のスカートに手を伸ばし、ホックを外してするすると落とす。智代はあっと言う間に半裸にされてしまった。
「半脱ぎはえろいな。裸よりえろいかも」
「いじめないでくれ、と……そう云ったのだが……」
 抵抗はせず、あくまで懇願のような弱気の態度だった。
「智代。どうして嫌だと云わないんだ?」
 その理由は簡単。
「云え……ない」
 色々と悪戯をされても、決して嫌なわけではなかったのだから。せっかく、久しぶりに朋也と会えて嬉しくて……。
「おまえのせいだ。もう……。このままでは、恥ずかしくて……体が燃えてしまいそうなくらいだ。おかしくなってしまう……から。だから。だから……」
 だから、こんな誰がくるか分からないような場所で自分をあまり追い込まないで欲しいと云っているのだった。
「そうか」
 頷く朋也。







だが……彼は、そこでやめてあげるような男ではなかった。







 そんなわけで朋也は更に更に悪乗りすることになった。わざわざ室内の灯りを消してまで、やりたいことをやるのだった。
「う、うぅ……。と、もや……。あぅ……あ……あ」
 生徒会室の、書類や筆記用具などで雑然としたテーブルの上には、スカートとショーツを脱がされた智代。彼女は今、お尻を高く突き上げるような、四つん這いの格好にさせられていた。卒倒しそうなくらい恥ずかしくて、かすかに震えながら唇を噛みしめる。
「智代。可愛いぞ」
「こんな格好。はず……かしい……。ああ、あぁ、あ……」
 ひたすら羞恥に耐える智代はとても魅力的で、可愛くて。普段の男勝りな姿からは想像できないくらいにか弱く見えた。
「智代のここ、濡れてるな。撫でられただけで感じちゃったのか?」
「い……わないで……く、れ。あふっ!」
 剥き出しになった秘部を指でいじくられ、僅かな湿り気に気づかれてしまう。とろりとした感触に、智代は赤面した。
「あっ!! ゆ、指を入れる……な……ひゃっ! あ!」
 朋也はいきなり、右手の人差し指と中指をずぷっと突っ込んだ。ほどよくほぐれていたそこは、根元まで受け入れた。
「もう、準備完了だな」
 そう云って朋也は指を引き抜き、智代の高さに合わせてテーブルの上に乗り、ズボンのチャックを外し限界にまでそそり立ったものを出した。
「う……。朋也……。ここで、それだけは……」
 そして、智代の秘部に先端をあてがい、腰を進めるだけで入って行くような……いつしか自然にそんな状態になっていた。
「ドアには鍵をかけたから大丈夫」
「そういう問題ではないんだ……」
 彼女としては、神聖な生徒会室でこのような行為にふけるのはどうか、ということだろう。
「仕方がないな」
 つ……と、秘部に触れていた熱いものが離れていき、智代はほっとする。だが、それも束の間。硬くて冷たい金属の感触に変わる。
「と、もや……!? あぅっ!」
 テーブルの上に置いてあったサインペンを、ぷす、とばかりに差し込まれた。
「うあっ! そ、そんなもの……入れないでくれ……!」
「奥まで入って行くな」
 かきまぜるように、ぐにぐにとうごめかせて、智代の秘部をおもちゃのように扱う。僅かな湿り気はやがてにちゃ、と音を立てるくらいはっきりと粘着性を帯びたものへと変化していく。
「あ……ぅ。あ、ん……ん、ん。も、もう……許して……くれ」
「素直に云えよ。どうして欲しいのか」
「……」
 朋也は智代の耳元でささやく。もはや拒否は許されなかった。
「私の中に……入れて、欲しい」
 絞り出すようにして出た言葉。だが、朋也は意地悪だった。
「お願いする時はもっと、こういう感じに……な」
 耳元でのささやきは、智代を更に挑発していった。
「う……」
「ほら。云ってみろ」
「私の……お、ま○この中に……。と、朋也のおち○ちん……を、入れて……欲しい」
 卑猥な語句をわざと云わされて、その言葉は途切れながら続き、最後まで聞き取れない。
「入れるだけでいいのか?」
「う。動いて……欲しい。いっぱい……」
「ふぅん。どんな風に?」
「う……」
 あくまで焦らす朋也に、智代は耐え切れなかった。
「も、もう限界なんだ……。お願いだからもう焦らさないでくれ! 朋也が欲しいんだ! 早く私の中に入れてくれ! 頼む!」
 早く、と智代は云った。そして。
「じゃ、お望みどおり。そらっ!」
 突っ込まれたままのサインペンを引き抜いて、ぐ……と一気に腰を進めた。
「あっ! ああああっ! 熱いぃぃっ!」
 そして奥まで挿入してから、すぐに引き抜いては入れてを繰り返す。一気に全開モードというくらい激しく、強く。
「あっ! あっ! あっ!」
 智代は自ら腰を前後に動かしていた。激しい行為にテーブルがきしみギシギシと音をたてていく。
「どうだ?」
「う、ん……。気持ち、いい。あっあっ!」
「どうして欲しい?」
「もっといっぱい……。突いて、欲しい」
「よし。じゃあ、激しくいくぞ」
 朋也は一旦動きを止めて息を吸い込んで、一気に再開した。
「あっあっあっあっあっ! ああぅっ!」
「智代。大きな声出すと、誰かに気付かれる」
「そ、んなこと……」
 出てしまうものはどうしようもなかった。それだけ、朋也のものが熱く、深く体に叩きつけられているのだから。智代は切なげな喘ぎ声を上げてしまうのだった。
「……?」
 何を思ったのか、朋也はふと智代の中から引き抜いた。互いの体液がこびりついたそこは、ぬぽ、と湿りを帯びた抵抗があった。突然のことに当然ながら、智代は怪訝そうな表情になる。
「智代」
 朋也は四つん這いになっていた智代の体をひっくり返し、仰向けにさせる。そして、すらっとした長い両足を開いて机に膝がつくくらい思い切り折り曲げさせる。彼女の(主に春原に対する)ハイキックをいつも見ているからわかるが、とても柔らかくて柔軟性に優れていた……。
「な……!」
「智代のここ。綺麗だな」
 下半身むき出しの上に大股開きさせられ、智代の秘部が露わになり……朋也は二つの穴をまじまじと見つめる。
「こ、んな格好……!」
「いやなに。俺ばかり気持ちよくなっちゃ申し訳ないと思ってな」
「ひぁあっ! な、何を……する。ああっ!」
 朋也は智代の股間にかぶりつくようにして、顔を埋めた。そして……先ほどまで自分のものが入っていたところ、ではなく、その下の穴を舌で愛撫し始めた。
「うああああっ! そ、そんなところだめだ! やめ……あっ! ああああっ! は、恥ずかしいんだ!」
「智代」
 朋也は慌てる智代の手を掴んで、秘部へともっていかせて。
「自分でも、してな」
「あ……」
 智代は体を震わせながらも、朋也に云われたとおりに両手で秘部を愛撫し始めた。
「あ、う……うぅぅぅ」
 その間も、朋也の舌がお尻の中に這うように進入してくる。愛撫される度に智代はぴくぴく反応してよがる。
「あ、あ、あ、あ……。や、あ……ああ……あ」
 二つの穴を攻められ続け、べとべとになっていく……。こぼれ落ちた愛液と唾液の混ざったものが、机の上にとろりとたれていく。
「お尻の穴いじくられて感じてるんだな? ひくひくしてるぞ」
「云……うな……あぁ」
「ほら。手が止まってる」
「う……」
 小さな、淡いピンク色の秘部は薄い皮が覆っていて花びらのようだった。
「あ、あ、あ……あぁぁ……あ〜……あふ」
 その皮をかき分け、内部に指を進入させてくちゅくちゅとかき回す。
「と、朋也あぁぁ……」
 濃厚で、ねちっこい愛撫は続くが……決して絶頂までもっていってはくれない。焦らされ続けた智代は既に限界になっていた。
「何だ?」
「も、もう……。いかせてくれ。じゃないと……おかしくなってしまう」
 智代の、普段の凛々しい姿はそこにはなかった。今はただ、愛おしい人に徹底的に汚してもらいたいと思うだけだった。
「こんな……。こんな……の。恥ずかしすぎて……うぅ」
 羞恥心を堪えきれず、ぽろりと涙をこぼして絶頂を望む。朋也はそれを見て、ちょっと意地悪をしすぎたかなと思って反省した。
「そっか。じゃあ……そろそろ、な」
 朋也は智代を机から下ろして、背後から挿入した。
「うあっ! そ、そっちは……ひあああああっ! あ、あ、あ……ああーーっ!」
 散々愛撫して柔らかくほぐれたアヌスに、ずぶりと音を立てるかのように一気に奥まで突き立てた……。
「っく。きつくて、締まる」
「ひあっ! あひっ! ひぐっ! あっあふっ……! 激し……す、ぎ! ひっ!」
 朋也は智代の上着をブラジャーごとまくり上げ、現れた大きな膨らみを揉みしだく。乳首を強く折り曲げる度に、締まりが強くなっていく……。
「ああうっ! お、しりが……あ、あぁぁ……。熱いいぃぃっ!」
「俺も、だ」
 ず、ず、ずぎゅ、と突く度に智代は押されていき……窓際まで追い詰められてしまった。外の景色は既に漆黒の闇に沈んでいて、二人だけの世界がそこにはあった。今は室内も灯りを消しているから尚更……。
「も、もう……もう、だめ……ぇ……」
「智代」
 智代の両足を抱え込み、持ち上げる。そして……窓の外へと見せつけるように秘部を尽きだして。
「な、にを……?」
「ここから……してみろよ。……思いっきり、さ」
「なっ!?」
 智代が仰天するようなこと。それは、朋也が達すると共に……生徒会室の窓からおしっこしてみろと、そういうこと。羞恥の限界にまで挑ませるのだった。
「そんな、こと。……あっあっあぐっ!」
「やってみろよ。生真面目な生徒会長さん」
「う、うぅぅ……」
 深くかけたメガネがずれそうなくらい、朋也は容赦なく突き立てる。智代のお尻の中はずぐ、ずぐ、と音を立てそうなくらい強烈な締め付けだった。
「ほら。俺はもういくぞ。おまえもいけよ。出せよ」
 やがて達しそうになり、動きが小刻みなものになっていき。
「あああっ! あっあっ! あぁっ! あっん……!」
 首筋を舌で舐められて、智代の理性は完全に吹き飛んでいった。長い髪を振り乱して悶える。
「出る!」
「い………っくうぅぅ! ああっああっ! 出……ちゃうぅぅ!」
 朋也が思い切り射精し、智代がお尻の中に熱いものを感じたその瞬間。ぷしゃあああ、と勢いよく大量に放出させられていた。飛び散る飛沫は校舎の遥か下……中庭の花壇へと落ちていくのだった。
「出……て、るぅぅ……。う……あ、い……あぁぁ……」
 ずれたメガネを直す余裕すらなく、智代はがくりと脱力しながら痴態を晒し続けるのだった。







……







「おまえは本当にもう……」
 智代は深く、長いため息をついた。
 暗い廊下には二人の男女。朋也は女子トイレの外で、智代が出てくるのをまっていた。お尻とは云え中に出してしまったが故に、まぁいろいろと後始末が大変だったようで……。
「いいじゃないか」
「まったく。……んん」
 呆れ果てて、仕方のない奴だな、と云いかけて、智代は突然唇を塞がれた。
「わかっている。が……。俺はどうしても、おまえを困らせたり、恥ずかしがらせたりしたくなってしまうんだよな」
「そう、か」
 そうして、朋也はもう一度キスをした。それに対して智代はやれやれ、とばかりに仕方のない奴だな、と、もう一度云った。
「私も。そんなおまえが好きだ」
 子供のような朋也に対し、智代は笑顔で受け入れる。どちらが年上かわからないような図式がそこにはあった。
「というわけで。ほら」
「ん……?」
 何がどういうわけかはさっぱりわからないが、朋也は智代の手を取ってズボンのチャックを開けさせ、中から出てきたものを軽く握らせた。
「お……まえは。こ、んなところでまた!」
「智代にしごいて欲しくてな」
「……」
 そう云われては無下にできるわけもなく。暗い廊下にて、歩きながら智代は手で朋也のものを前後に愛撫し続ける。
「智代の手。小さくて、柔らかくて、可愛いな」
「こ、こういうことでほめられても、全然嬉しくないぞ……」
「まあまあ。帰ったらまたやろうな」
「おまえは底無しかっ!」
 漫才のようなやり取りを繰り返しながらも、朋也のものは智代の手の中でむくむくと勢いを増し、熱く高鳴って行く。
「何で、こんなところでこんなことを……」
 しゅ、しゅ、と手でしごく度に濃い目の陰毛が絡み付く。
「智代は上手だな」
 朋也はとぼけたことを云いながら、一気に絶頂を迎えさせられる。
「お……。出るぞ」
「な!? ……ああっ! あ、あ……。び、びくびくしてきた」
 そして。
「あっ! あっ!」
 びゅ、びゅ、と立て続けに智代の手のひらに射精していった。
「お、おまえは……もう!」
「お前が驚いた時の声、すげぇ可愛いぞ」
「う、るさい」
「ぐお!」
 智代は照れ隠しに手刀で朋也を突くのだった。







……







 桜並木を過ぎる頃。辺りの暗さは更に深みを増していた。
「まったくおまえは底無しだな」
「ほめるな。照れるぞ」
 そんな朋也に対し智代は誰もほめとりゃせんわい、とでも云うかと思いきや。
「はぁ」
 目を伏せてため息をつくのだった。朋也は智代のことを常々『おまえは話をしているだけでどこかえろい』とか云っていて、それを思い出したのかもしれない。
「そういう風に好かれるのもまあ、嬉しくないわけではないんだが……」
 独り言のようにつぶやいたが、朋也も彼女が云わんとしていることを先読みしていた。
「普通の女の子として、ちゃんと見ているぞ。大丈夫だ。確かに俺はおまえとやることばかり考えているが、それだけでは決してない」
「本当か?」
 じっとりとした細い目は、信じられないぞ、と疑いを込めていた。
「本当だ。例えばな。……ほら」
「ん?」
 朋也はいきなり、手にもっていた紙袋を智代に渡した。
「これは何だ?」
「空けてみな。プレゼントだ」
 軽く、手の平サイズの紙袋をがさがさと空けてみる。すると……。
「朋也。これは」
 智代は困惑したような、恥ずかしさに照れてるような、そんな表情になった。
「驚いたか?」
「ああ。とても」
「まあ、給料出るまえだけど。……俺も見えっ張りだから」
 ちょっとだけ、智代に対して格好を付けて見たかったようだ。
「……」
 智代の手には、愛らしい熊のぬいぐるみ。
「この間、じ〜〜〜っと眺めてただろ? 商店街でさ」
「見てたのか?」
 うなずきながら、朋也は続ける。恐らく、商店街のファンシーショップにて、ショーウィンドに見取れるようにしていたのだろう。学生故に自由になるお金などあまりないし、生徒会やら何やらで忙しく、それに加えて彼女は生真面目で、校則にも厳格なのでバイトもできるわけがない。ただ、欲しそうに見つめるしかないのだった。
「偶然な。もっとも、前から噂は聞いていたんだけどな」
 偶然とは云え、そんなところを目撃してしまっては、放っておけるわけがなかった。どうにかしてあげたいな、と朋也は優しい気持ちになっていたのだった。
「誰から?」
「あ、いや。噂って程じゃないか。……春原の奴がな」
「見……られていたのか!」
 つまりは過去にそのようなシーンを目撃されていたらしい。それも、よりによって一番見られたくない奴に。
「春原……ッ!」
「うおっ!?」
 そんなわけで、智代が放った殺気は遥か数百キロを越えて……。



『ぐおっ!』
 ちょうどその瞬間。実家近くの地元企業に就職した春原陽平は仕事中だったのだが、足をつるっと滑らせて後頭部を強打していた。それはあたかも、誰かの呪いがクリーンヒットしたかのように。
『いてて、なんなんですかねぇ今の殺気……。んがっ!?』
 更に追い打ちをかけるかのように、金タライが上から降ってきて、すかーーんと勢いよく脳天に直撃していたのだった。無様に横たわり、目を回し、頭の上をお星様がくるくると回っているようだった。



 それはさておき。
「大丈夫だ。あの時はあいつに、誰にも云うんじゃないと釘差しておいたから」
「別に……。たとえ誰かに知られたりしても……平気、なはずなんだけどな」
 年頃の女の子が可愛らしいぬいぐるみに見とれる。ごく普通の風景なのだが。
「と、俺も思うんだけどな。ただ、悲しいかな。イメージだけで見る奴が多いからな」
「まったくその通りだ」
 彼女を詳しく知らない人にとっては高貴なくらい凛々しくて、格好よくて。でも実は、可愛いものが大好きという。
「そんなギャップがあるから、尚更……その、な。可愛いんだよ。おまえは」
「私は女の子してる、か?」
「じゅーぶん過ぎだ」
「そうか」
 智代はくすっとほほ笑み、朋也の背中に抱き着いた。そして、顔を埋めるようにしてぎゅ、と力を込める。
「おい」
「ん」
「胸が当たってるぞ」
「嫌か?」
「嫌なわきゃない」
 柔らかで、大きな膨らみの感触を制服の布地ごしに感じる。とても優しくて、包み込むように可愛らしい温もりで、朋也はずっとそのままでいたいと思った。
「ならいいだろう?」
「うん。いい……。が、智代はいいのか?」
「たまには、甘えてもいいだろう? 好きな人に」
 同じことを智代も思っていたようだ。
「……」
「私は女の子、だからな」
「ああ。まったく女の子だ。それも、最高に可愛い……な」
「朋也」
 智代は照れ、恥ずかしそうに笑って云った。プレゼントありがとう、と。そして。
「どういたしまして」
 と、返事のキス……。





朋也は今、一人暮らしをしていた。





郊外にある、小さなアパートにて。





 食事をして、風呂に入って、さてとばかりに布団をしく。そして……。
「朝まで、するんだろう?」
「……。流石に俺の体がもたないと思うぞ」
「さっきまで、あれだけやっていたのにか? 説得力がないな」
 狭い部屋にて、二人は裸で体を重ね合わせていた。ただ、先程とは完全に異なっていたシチュエーションがそこにはあった。それは……。
「朋也。今日の私は何でも云うこと聞くぞ?」
 今は朋也よりも、智代の方がノリノリで積極的なのだった。
「何でも、と云われると……」
「じゃあ、こんなのはどうだ?」
 智代は突然、仰向けに寝そべる朋也の上に跪き、股間に顔を埋めた。
「おわ!」
 そしてそのまま豊かな胸で朋也のものを挟み込み、前後にしごきはじめた。
「どうだ?」
「智代……えろ過ぎだ」
「そうか」
 朋也の反応を見て嬉しそうに微笑みながら、今度は舌で先端をなめ始めた。高く突き出されたお尻は丸くて、とてもセクシーだった。
「く……」
「ん……。よく見ると、男のここは……んん。可愛いんだな」
 れろん、と湿り気を帯びながらアイスクリームをなめるようにしゃぶる。
「な、何か。おまえに弄ばれているみたいだな」
「何を云っているんだ。おまえはさっきまでやりたい放題だったじゃないか」
「まあ、そうだけどな」
 二人とも、生徒会室での淫行を思い出しているのだった。
「でも、私は……。ああいう風にされるのは、本当のところあんまり嫌いじゃない」
「そっか」
「ああ。だから……また、さっきみたいにしてくれ。激しく」
 智代は朋也の股間から離れ、そそり立ったものの上に跨がった。
「わかった。じゃあ、一気にいくぞ」
「うん」
 そして、朋也の上に腰を落としていく。
「っく! あ……!」
 ぬぷっという感触の後、強烈な締め付け。朋也は片目を閉じてこらえる。
「あふっ。あ、あ……んっ」
 ゆっくりと動き始める智代の胸は、ふるふると揺れている。
「なあ、智代」
「何だ?」
「胸、揉んで悶えてみせろよ」
「……」
 智代は云われるがままに、自身の大きな胸を掴んで揉みしだいた。
「乳首吸ってさ。……腰を動かしながら、感じてみせろよ」
「ん……。わかった。私のやらしいところ、見ていてくれ……」
 そしてわざと、腰をくねらすような動きに変えていく。痴態を見せつけるかのように……。
「はぁ、ん。あ、あ、ん。あ……」
「智代は、一人えっちとかすることあんのか?」
「……。たまに」
 体の弄り方を見て、何となく朋也はそんな風に思った。どことなく手慣れているような、戸惑いといった違和感がないような、そんな感じがしたから。
「そうなのか。意外だな」
「いつも……おまえの事を考えて、してる」
「そっか。何か、照れるな」
「なかなか会えないとき……。本当に、寂しいんだ……。私は、人が云うほど強くはないし……強くもなれないから」
 智代は決して我が侭を云えるような性格ではないから。時折、寂しさに押しつぶされてしまいそうだから、そんな時は控えめに淫行にふけるのだった。
「でも。しょっちゅう電話してるだろう?」
 女心も知らず、野暮な返答をしてしまう。
「そうだけど。でも、やっぱり……直に……会いたいんだ」
「そっか」
「そうだ」
「智代」
「ん……」
 朋也は智代の顔を引き寄せて、キスをした。
「好きだぞ」
「私も、だ」
 二人はそのまままたゆっくりと動き始める。
「俺は智代とするのも大好きだ」
「ん……。まったく。おまえは……スケベな奴だな」
 あまりにも堂々と云うので苦笑してしまう。
「私は。おまえの側にいるだけで、いいんだけどな」
「や。それだけでは物足りないとは思わないか?」
 真顔で云う朋也が可笑しくて、苦笑から満面の笑みに変わっていく。
「そうかも、しれないな。んんっ」
「絶対そうだ。……そういうわけで、一気にいくぞ」
「あっ! あぅっ! はぅっ! ああっ! 大きいのが……突き上げて……く、ぅっ!」
 いつしか二人は手を繋ぎながら交わっていた。
「智代だって、スケベじゃないか」
 その証拠に、智代の秘部は朋也のものをきつく締め付け、ねっとりと包み込んで離さないのだから。
「おまえだから、そうなれるんだ」
「本当に、おまえ……可愛いよ」
 そしてまたキスをする。
「あ……。もっと……もっと激しく、してくれ……」
「ああ!」
 ゆったりとした動きが一変して、突き上げるかのように強烈なものになっていく。そんな動きをしばらく続けて、程なくして二人は達し……。
「出る、ぞ」
「あ! は、ぁ……っ」
 大量の精液が、智代のお腹から胸にかけてぶちまけられる。二人は一つになったまま、互いの熱い吐息を感じながら抱きしめ合うのだった。







……







「おはよう」
「……」
 朋也は微動だにしない。
「朝だぞ朋也。いい天気だ」
「……」
 しゃ、と音をたててカーテンが開かれる。が、朋也は相変わらず我関せずだ。
「朝ごはん、できてるぞ」
 彼女が云う通り、布団から数メートル先にはみそ汁のいい香り。
「……」
 それでも朋也は起きるそぶりすらみせない。
「仕方のない奴だな」
 智代はすくっと立ち上がり、そして。
「ほら。起きる時間だぞ」
 目覚まし時計のアラームが鳴る時間を早め、朋也の耳にぴったりとくっつける。
「……う」
 じりりりりりり、と耳をつんざく電子音が響き渡り、流石に朋也もこたえたようだ。
「起きたか?」
「あ……と五分だ……け」
 と、云い残して朋也はまた夢の中へと旅立って行った。ぐ〜、といびきが聞こえてくる。
「まったく。……どうすれば、起きてくれるんだ?」
 呆れた智代がアラームを止め、何気なくそんなことを呟いたが。
「……。せ……」
「せ?」
「いふ、くえぷろ……ん、に」
「は? 制服の上にエプロン、か? 今、着ているが?」
 恐らくそれは、寝ぼけた揚げ句の寝言なのだろう。
「す」
「す?」
「かーと、を……て……でたくしあげ、て」
「はぁ」
 どんな夢を見ているんだこいつは、と智代は思ったが、起きないから仕方がない。とは云え、正気であっても『裸エプロンより制服エプロンの方がえろくてそそるよな』とか何とか妄想を語っていたのだけども。
「そうすれば、起きるのか?」
「ぱ」
「ぱ?」
「んつ……を、ひざまでおろ……して……」
「……」
 もう何も反論する気にはなれなかった。
「……で。そうすれば起きるのか?」
「は、じらいな……がら」
 時折いびきがもれるのだから、意識はないのだろう。
「わた……しの、なか……に。ぐご……」
 途中で途切れかかる。ここまできたらどんなことでも最後まで聞いてやることにした。
「最後まで云え。気になるだろう」
「い、れて……くだ、さ……い。と、いって……くれ、たら」
 それでようやく起きる、らしい。
「……。わかった」
 智代は再度、大きなため息をついてから、ショーツを膝辺りまで降ろして、スカートの裾を持ち上げて。ちょっと目を閉じてから思い切ったように、云った。
「わ、たしの中に……。入れて、くれ……。ほら。これでいいだろう?」
 恥じらいに目を伏せ、朋也の前で秘部を剥き出しにする。
「朋也」
「……」
 朋也は好き放題云っておきながら、再び完全に寝入ってしまったようだ。
「朋也っ!」
 段々と理不尽さに呆れてきて、朋也を睨みつける。
「起きろっ!」
「うおっ!」
 仕舞いには、足が出た。それでやっと朋也は目を覚まし……。
「智代……。おまえ……」
「お、おまえが変なこと云うから……こんな格好しているんだ」
 目の前には痴態を晒す智代。手は震え、恥じらいに頬を赤らめて視線を逸らす。そんな智代を見て、朋也は……。
「頼むから。早く、起きて……」
「……」
 流石の智代も反応できないくらい、目にも止まらぬ早さで起き上がり……そして、そのまま。
「く、れ……。なっ!?」
 智代を押し倒し、布団の中に引きずり込んで……股間に顔を埋めた。
「あ、あああっ! あっ! と、もや……っ!?」
「智代! おまえはなんて……可愛いんだ!」
「や、め……! こら! ああああっ! あっあっあっ! あーーーっ!」
 薄い陰毛がこすれるくらい激しく、舌と指でむしゃぶりつくかのように存分に、智代の恥ずかしいところを愛撫しまくるのだった。
「ひあっ! だ、だめだ! ああっ! ああっ! やっ! あああっ!」







それは智代が絶頂を迎えさせられるまで続いた。







 部屋の戸締まりを終え、玄関に立つ。
「だりぃ」
「そう云うな。頑張れ」
「今日もこれからまた、華やかさの欠けらもない地味で冴えない肉体労働が始まる……。給料も安いし」
 ついつい愚痴っぽくなってしまうのは、智代の笑顔が眩しすぎるからかもしれなかった。
「そんな仕事しているようじゃ、理想の彼氏にはほど遠いよな。これじゃ」
 雲一つない空が、何故か憂鬱に感じられてしまう。けれど。
「そんなことはない。真面目に一生懸命働いている朋也は格好いいぞ」
「そうか?」
「そうだ。男は言葉ではなく労働で語るものだぞ」
 自分の言葉にうんうんと頷く智代。どうにも、朋也は……尻に敷かれそうなタイプのようだった。
「まぁ。智代がそう云うなら、尚更頑張らなきゃいけないな」
 作業着の入ったバッグを担ぎ上げながら、朋也は片手で髪をかき上げた。そして、首をこきと鳴らしながら回し……大きく深呼吸をした。
「ふふ」
 そんな朋也を見て、智代はおかしそうに笑った。
「うん? 俺って単純か?」
「ああ。だけど、私は朋也のそんなところが好きなんだ」
「そうか」
「そうだとも」
 自信を持って断言した。







二人はまた、数日したら会えるから。







 歩みは進み、T字路に差し掛かって束の間の別が訪れる。
「それじゃ。またな」
「ああ。……朋也」
 朋也が踵を返そうとしたその時。
「ん……」
 智代は背後から抱きついて、朋也の頬にキスをした。
「結構、甘えん坊だな。智代は」
「そうだとも。寂しくさせたら泣いてしまうぞ?」
 智代にとって朋也はただ一人、甘えられる人。







それは、いつかの寂しい別れとは違う。







「じゃ、またな」
 適当に手を振る朋也に。
「仕事。頑張ってな」
 智代は眩しすぎるくらいの笑顔を見せる。
「はいよ」







二人は笑顔で軽く手を振り、背を向ける。







吸い込まれそうなくらい透き通った青空の元。







二人にとっての一ページは







今日も明日もまた、続いていくのだった。




















-おしまい-




















----------後書き----------

 今回は智代編でした。クラナドにはれっきとした『続編』である智代アフターという作品があるわけで、でもあえてその存在を無視して書いてみました。となるとこれは、ある意味純粋な『クラナドの二次創作』と云うのかな?

 なので、アフターと比べて設定などが異なる……というのはご容赦を。

 いかがでしたでしょうか?



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