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PureMix2nd
西園美魚編
-西園美魚編-















 美魚の短い髪が僅かに赤いヘアバンドから漏れ、さらりと揺れる。少し憂いを帯びたようにきらめく瞳に見つめられると心の中までも見透かされていくかのように理樹には感じられた。

「甘いものは別腹って、よく言いますから」

「な、何が!?」

 校舎の外はおろか室内まで夕暮れの色に染められていく時刻のこと。冷たい壁にもたれ掛かり、両足を揃えて伸ばしたまま座り込む理樹の上には美魚が乗っかっていた。そうして理樹と向かい合うようにして見つめ合いながら美魚はさらりと意味深な事を言った。彼女が言うところの『甘いもの』とは僕自身のことか……と、理樹は思ったが正確には、理樹と美魚自身がいろいろと交わる事のようだった。付き合い続けていくうちに理樹は美魚の特異な趣味を理解していったつもりだったけれど、どうやらそっちの方向に一辺倒というわけでもないようだ。だからこそ、今の状況があるんだろうと理樹は息を飲みながら思った。

「わたしもこういうことにだって興味がありますし、直枝さんとしたくもなります」

 何しろ美魚本人がそのように明言しているのだから間違いないだろう。そして美魚は更に続けて言った。

「丁度今がそういう時だと思うんです」

 理樹のズボンのチャックから飛び出ている大きなものを片手で掴み、入り口に位置を定める微調整の動きをしながら。





――それはもう、とっくのとうに閉館時間を過ぎていて、誰もいない図書館の隅っこでの出来事。





 美魚はその日、借りていた本を読破したので返却をしにたまたま学校の図書館を訪れていたところだった。手早く返却の手続きを済ませ、既に閉館前ぎりぎりの時刻だとわかっていつつ、何か面白そうな本はないかなと思って探していた。ただそれだけのはずだったけれど、アクシデントは起こった。まさに必然と言わんばかりのタイミングで。運命というものはこの様なものなのでしょうか、と美魚はしみじみと思うのだった。

『美魚?』

『あ』

 それも何故か広い図書館内の片隅という極めて限定されたシチュエーション。更に窓際近くの本棚にて、上の方に興味深い本を見つけて取ろうとして、脚立の最上段に乗っていた美魚の側に聞き慣れた声が響く。たまたま同じ時刻に図書館に来ていたのであろう理樹だった。後で判明したことだけど、理樹は課題の資料となりそうな本がないか探しに来ていたとのことだった。至極普通の理由ですね、と美魚も思うのだった。弱みでも握って不純異性交遊でも求め、迫ってくる、と言う展開もこの場合は有りかもしれません等とも思ったけれどそれはさておき。

『あ……、ご、ごめん!』

 突如、理樹が顔を背けてしまう。美魚にはその理由が一瞬分からなかったが、すぐに理解した。美魚が着ているチェック柄が入ったスカートはとても短いものだったから。もっとも冷静に考えて見れば、見られても全く問題のない関係だったわけで、それだけに二人の関係に進展がまるでなかったとも言えるのかもしれないけれど、ともかく美魚はじとーっとした目で理樹を見つめてしまったのだった。犯罪者もしくは変質者でも見るかのような目で。

『……見られて、しまいました』

『み、見てないよ! ……ほとんど』

 嘘をつけない理樹だった。ぱっと思い浮かぶのは清楚なイメージ。白い下着がとても眩しく見えただけ! それも一瞬! ……だけどはっきりと目に焼き付いて離れないような気がする。と、理樹は思っただけだった。それに対して見たか見なかったか、真実はその二つしかありえませんよと美魚は思った。見たとなるとそれはもはや完全なものであり、犯行(?)は明白。

『直枝さんはチラリズム萌え、と』

『違うって! どうしてそうなるの!』

『いえ。チラリズムどころではありませんね。完全に見られてしまいました。直枝さんの脳内に激写されてしまいました。汚されてしまいました。食い入るように、舐め回すように、視姦されてしまいました。もうお嫁にいけません』

 よよよと言わんばかりに目を伏せ、絶望したように言ってみせる。大分冗談が含まれた言い方なのだけれども、理樹はとても真面目だった。理樹は今も美魚から視線を逸らし、見えないようにしているのだから。

『ご、ごめんなさい! 本当に!』

 美魚も、理樹に悪気など全くないのは分かっている。けれど、下着を見られてしまって冷静なようでいて結構動揺しまくっている美魚はしかし、更なるアクシデントを呼び覚ましてしまった。

『あ……』

 丁度美魚が取ろうとしていた本は辞典クラスの分厚くも重いものだった。当然のごとく美魚のか細い腕では片手持ちはきつい。動転していたのか、そんなことにちっとも気が付かないまま片手で強引に取ろうとしてしまって……。

『美魚……。わっ!』

『きゃっ!』

 案の定体勢が崩れて脚立の上で足を滑らせてしまう。理樹はそれを見てとっさに危ないと思い、助けに入る。落ちてくる美魚を両腕で抱きとめるようにして……。

『あうっ!』

 ごん、と窓際の壁と理樹の頭が軽くぶつかる音がした。結果的に理樹は床に倒れ込み、その上に美魚が覆いかぶさり、抱きしめ合うような形になっていた。その上、更に……。

『んんっ!?』

(……キス、しちゃいました)

 たまたま偶然に、二人の唇同士が重なり合っていて、キスをしてしまった。……それにしても、キスなどしたのはいつ以来の事だろうか。

(……古典的すぎです。使い古された少女漫画のようなシチュエーションです。……ですが、だがそれがいいと人は言うのでしょう。つまりはマンネリズム万歳、ということですね)

 頬が熱くなっていくのがはっきりと感じられる。

『いたた。み、美魚。ケガはない?』

 頭に加えて少し腰を打ったのか、さすっている理樹。どうやら美魚とキスをしてしまったことについては気付いていない模様。

 美魚は思う。よく考えてみれば、理樹は何も悪いことなどしていない。下着を見られたのだって、悪気など全くない偶然の事故。それどころか、ドジをして転んでしまった自分を助けてくれた。それなのにあんまりからかったりするのは失礼に当たるのではないか。茶化すのはもうやめておこう。……これまでも決して茶化そうとしていたわけではないのだが、どうにもこれが理樹と美魚にとっての自然と言うべきか、普通なのだろう。

『大丈夫です』

 体をはった理樹のおかげで全く何ともなかった。逆に、理樹は他にもどこかを打ってしまった模様で痛そうにしている。

『ごめんなさい。本当に……』

 それなのに申し訳無さそうに言う理樹を見て、美魚は逆に罪悪感が込み上げてきた。

『いいえ。直枝さんは何も悪いことなどしていません』

 それどころかむしろ惚れ直したと言うべきか、あるいは更に好きになったと言うべきか、わたしの心というとんでもない物を盗んでいきましたと言うべきか。美魚はじっと理樹の目を見つめてしまう。――ふと、美魚は自分が今何気なく触れているものについて気付く。右手のあたりにふにゃりと柔らかい感触。今の格好……理樹の上にまたがる形。触っているのは理樹の股間……。女性の体には存在しない、男性特有の急所……。

『……っ!』

『え……。わ、わっ!』

 美魚が急に手を放したことにより、一瞬遅れて理樹も事態を把握し、顔中真っ赤になってしまう。

(とても大きかった、です。まだ、硬くもそれほど大きくもなっていないはずなのに形がくっきりとわかるくらいに)

 美魚の鼓動が速くなり、そして想像する。その想像が更に鼓動を速く高まらせていく。

(直枝さんのはとても大きいのですね)

 大事なことなので二度心の中で確認。

(抜群に大きいのですね)

 ついでにもう一回確認。

(とても大きくて、これではどちらが攻めなのか受けなのかわからなくなりそうです。いいえ……。とても大きいのでしたらこの場合、直枝さんが攻めになったとしても一向に構わないと思うのです。そうして、とても大きいものなのでお相手は……やはり恭介お兄さん……ではなくて、棗恭介さんとなるのでしょうか? けれど、恭介さんもわたしの想像ではやはりとても大きいのではないかと思うのですが、直枝さんのが特大であることが判明した以上、その考えを少し改めなければいけないかもしれません。とにかくも、どちらの方が攻めであれ受けであれ、とても熱い展開になることは間違いないですね)

 美魚は怒濤のように生み出される思考と脳内情報に一息つき、現実でもほぅ、と溜息をつく。美魚の頭の中では恭介以外にももう二人ばかり見知った男性の顔が思い浮かんだが、すぐに×印を付けていた。その理由は定かではなかったが、理樹と恭介がこの場合ベストカップリングであると判断したのだった。残念ですが、今の貴方達ではミスキャストです。この場合は美しくないと思うのです。と、美魚は自分が無意識のうちにそのような判断を下したのだった。

(真剣な恭介さんが言います。理樹。いいか? と。それに対して直枝さんもまた真剣な表情で、恭介……。うん、いいよ。きて……。と。……それはもう、美しすぎます。その後はきっと。……理樹、体から力を抜くんだ。すぐ全部入るからな。と、恭介さんは優しく気遣いを忘れないでしょう。そして直枝さんは、う、うん。わかった。僕は大丈夫だから……心配しないで、と。ああ、何だか鼻血が出てきてしまいそうです)

 とても大きい、という言葉が心の中でひたすらリフレイン。その影響を強く受け、美魚は色々と想像してしまった。恭介と理樹によるとっても耽美な展開を。一瞬クラッとしてしまうほどに熱い展開だった。

『美魚?』

 理樹がものすごく恥ずかしそうに両手で股間を押さえながら問う。もじもじした様はまるで女の子のようでとても愛らしい。美魚は一瞬、どきんと心が高鳴るのを自覚していた。それと共に、今は妄想を膨らませるだけではなく、この人を好きにしたいという欲望がどこからともなく込み上げてくる。しかしながらそれはとてもいけないことだと、美魚のなけなしの良心が訴えかけてくるが、弄んでやりたいという欲求が猛烈な勢いで増幅されていく。と言うよりもそもそも、わたしと直枝さんは恋人同士なんですよねそういえばと、今更ながら思い出していた。どんな大胆なことだって、限度はあるかもしれませんけれど求めてもいいですよね、と思う。だとするのならば自分が攻めになるのか、あるいは逆かとも思ったけれど、今の理樹はとてもじゃないけれど積極的に攻めてくる感じではない。ならば今、自分は自分の欲求を満たすために悪女と化してもいいのではなかろうかと美魚は思い、悩む間もなくそれでいいのですと判断したのだった。

『直枝さん』

『う、うん?』

 美魚の中で自重精神と暴走精神が交差し合い、とても混乱していた。そうして混乱しまくった挙げ句、とんでもないことを口走ってしまう。

『……直枝さんのは、とても大きいのですね』

『……え?』

 突然そんなことを言われ、理樹は一瞬キョトンとしてしまい、細かい瞬きを繰り返した。

『とても、大きいの、ですね……』

『え? え?』

 自分が口走った言葉を再度確認するかのように区切りながら呟く。潤んだ瞳でじーっと理樹の股間を見つめ、はぁはぁと小刻みに息が粗く鼓動も早い。そうして美魚は女豹の如く四つん這いのままゆっくりと両手を這わすようにして理樹へと近付いて来た。少し脅えながら何をするのかと思う理樹と、自分が今何をしようとしているのかよくわかっていない美魚。短かった距離はやがて縮まっていく。





そしてそんな状態が今尚も継続中。





「とても……」

「み……お?」

「とてつもなく、大きいのですね……」

 そして右手を伸ばし、理樹の股間を再度掴んでしまうのだった。

「あ、あ、あの……何のこと……」

「……」

 股間を掴まれたまま硬直してしまい理樹は困惑。美魚は美魚で目を見開き、瞬きすらできずにはぁはぁと粗い呼吸。

「おおきいいい……のですね」

 酔っぱらったようにろれつがまわらない。そしていつしかがっしりと掴み、むにむにむにむにと理樹の柔らかな膨らみを揉んでいた。

「あ、あ……。な、何してんのさ!」

「直枝さんの大きいのの根本を揉んでいます」

 美魚はきっぱりと答える。このまま力を込めればつぶれてしまう。それがたとえ非力なわたしの手であったとしても。ああ何と脆く、儚いのでしょう。そう思うと急に愛しさが込み上げてくる。

「ち、ちょっと。離してよ。こんなところでこんなこと、人に見つかったら……」

 とか言っていると、ばたんと音をたてドアが締め切られ、続いてがちゃがちゃと鍵を閉じる音。閉館時間を過ぎていたのだから何も不思議ではなかった。どうやら二人が居残っていたのに気付かず、閉められてしまった模様。施錠前の点検くらいちゃんとしてよと理樹は思ったけれど後の祭り。

「二人きり。に、なってしまったようですね」

 けれど理樹はすぐに思い直す。もしも誰かが見回りに来ていたら、まず間違いなく見られていたことだろうから。理樹はそう思うと安堵のため息がこぼれてしまう。仮に問い詰められたとしても、美魚は何とも思わなかったばかりか、開き直ってこれから直枝さんを犯そうとしています、とかとんでもないことを答えようとしたかもしれない。

「ようですね、って」

「このまま続きをするつもり? と、思っていますね」

 理樹が考えていそうなことを先回りして言ってしまう。

「当たり前だよ! ちょっと!」

「それは好都合。では、じっくりと、続きをするとしましょう」

「な、何が好都合なのさ!?」

 美魚は右手で理樹の股間をむにむにと揉みながら、左手でチャックをじ、と手早く降ろす。

「学校内で背徳の情事にふけるのに好都合です。ありがちなアダルトビデオのタイトルみたいですね、まるで」

「ち、ちょっと! ああっ!」

 ほとんどしたことがないのにかかわらず、妙に手慣れているなと美魚は自分の行為を極めて客観的に分析していた。理樹のズボンの中。開かれたチャックの中に手を突っ込み、トランクスのホックを外し、極めて太くてたくましいものを掴んで引っこ抜くようにして表に出した。それは一瞬ぶるんと震えて美魚の頬へぺちんと音を立ててと当たった。釣ったばかりの活きのいい魚のようにエネルギッシュで、力強さに溢れていますと美魚は思った。

「ほぅ」

 美魚は惚れ惚れしながらそれを一瞬凝視した後。

「いただきます」

 と、食事でもするかのように言い、ぱくっとくわえ込んだ。

「な、な、何すんの! ちょっと! こんなとこで……あっ!!」

 驚愕の余り理樹が叫んだ時には既に本気モードでフェラ開始。

「ん、ん、ん」

 美魚は頬を赤らめながら愛撫を続ける。深くくわえ込み、濡れた唇で包み込んでは上下に口を動かし続ける。舌先で撫で回すとひくひくするのがわかり、美魚は上目使いで理樹の様子を見上げてみた。きつく目を閉じて耐えている理樹が可愛らしくて、つい調子に乗って舌先の動きを速める。美魚は自分はとても耳年増だと思っていたけれど、もしかすると悪女なのかもしれませんねと思った。

「くう……っ。あ、あ!」

(直枝さん。感じています)

 例えばじゃあ、こういうのはどうだろう? 美魚は右手を理樹のトランクスの中へと忍ばせ、陰毛の茂みをかき分けて、柔らかな二つの膨らみの下部を指先で転がせた。

「あっ! な、にを……! み、美魚! だめ、だよ……!こんなところでこんなこと、もうやめようよ! 誰かに見られちゃうよっ!」

(誰もいないから大丈夫です。本当に直枝さんは心配性ですね)

 理樹の言葉を無視して愛撫を続行する。空いた左手で理樹のお尻をなで回しながら、顔を前後に激しく動かす。

「なっ! あっ!」

(直枝さんはお尻もいい形です。本当に、どこまでもわたしの想像通りですね)

 妄想と全く同じ。本当に理想的だと美魚は思った。その間も舌の動きがますます早まっていく。湿りを帯びた舌が左右に激しく動き、理樹のものを刺激する。それと同時に理樹のものを包んだ柔らかな唇が上下に動いている。

「んぅ、んぅ、んぐぅ」

 そんなことが何度も何分も続いていく。理樹の細い喘ぎと、美魚のくぐもった声と呼吸。そして、ずりゅ、ずりゅ、とこすれ合う水音。愛撫が激しくなればなるほど、美魚はうっとりとした表情になっていく。

(女の口というものは……武器なんですね。直枝さんをもっと手玉にとって、弄びたいです)

 舌一つ動きに緩急を付けると理樹は仰け反ってしまう。その様子を見てとても面白いです、と美魚は思っていた。

「あ、あぁっ! も、もうだめ……! もう……あ、あああっ! うああっ! で、出る! 出ちゃうよ美魚っ! 離し……ああっ!」

 理樹はあっという間に絶頂を迎えさせられていた。どぷ、と溢れんばかりの強烈な射精に美魚は一瞬むせ返りそうになりながらも堪え、全てを飲み干す。ちゅう、ちゅう、ちゅる、ちゅると吸い込んでいく音が聞こえる。そんな音を聞き理樹は両手で耳を閉じてしまう。

「う、うぁぁ……ぁ!」

「ん……んぐ、んん、う……ん」

 射精が終わった後も、美魚はしばらく理樹のものをくわえ込んだままだった。そうしてようやく口から離すと、ふるんと音を立て、理樹のものが大きいまま震え、糸を引いた。美魚はポケットからティッシュを取り出し、口を拭った。

「やはりとても濃厚で、大量でした。おしゃぶりのしがいがありますね」

 唇をティッシュで拭きつつ淡々と報告するように美魚は言った。

「あ、ああ……。も、もう……。どうしてこんな……」

 学校内で、しかも図書館という誰が来るかわからないような所でこんなことをしてしまった。背徳感に理樹は頭を抱える。

「したいと思ったからです。それはもう、動物のように衝動的に。だけど、そうですね。おしゃぶりだけで満足されては困ります。それでは彼女がすたるというものです」

 美魚はおもむろにすくっと立ち上がり、スカートの中へと手をかける。そうして自らショーツを足元まで降ろし、遮るもの一つない股間を見せつけるかのようにしてスカートの布地をたくしあげる。恥ずかしい事をしているはずなのに、何故だかもっともっとしたくなってしまう。それはきっと、好きな人ともっと肌を重ね合わせたいと強く思っているからなのだろう。

「わたしの恥ずかしいところを見てください。食い入るように、なめ回すように、夢にでも出てきそうなくらいに」

「な、何を」

「今からここに、直枝さんの、大きなものを入れさせてもらいます」

 淡い陰毛をかき分け、右手の人差し指と中指で薄い皮を開いて見せつける。艶めかしいピンク色の秘所を。そこはフェラチオをしている間に興奮したのかしっとりと濡れていて、柔らかくほぐれて準備は万全だった。

「本当はわたしのここに直枝さんの顔を埋めて、舌でなめ回してもらいたいところなんですけど。もう、我慢できません。だから、すぐにでも入れさせてもらいます」

「な……」

 そうして美魚は壁にもたれかかったままの理樹に跨がり、大きなものを掴んで入り口にあてがってから腰を降ろして行く。途中から、理樹が抵抗しないようにと両手で腕をしっかりと押さえる周到さ。

「まだ入り口ですよ」

「み、美魚。だめだよこんなの。こんなところで」

 理樹は更に背徳感に背筋を震わせる。何度同じことを言ったことだろうか。

「では。どこでなら良いのですか? わたしの部屋か、あるいは直枝さんの部屋……には井ノ原さんがいるので、減点ですね。むしろ直枝さんが井ノ原さんに……は、ありえませんねそれは。美しくないですし、そもそもわたしが許しません。それならばいっそ、ラブホテルに行きますか? 一度や二度ならともかく問題になりますね、間違いなく。それに、お金もかかりますし」

 美魚は決して真人の事を嫌っているわけではない。が、いざ行為に及ぶ際は隣にいられるのはご遠慮願いたいと強く思うのだった。勿論理樹と彼とのコンビがとても合う場合もあるけれど、今回の場合はちょっと対象外だったから。ギャラリーはいらないし、いたとしてもそのようなでかくて暑苦しくてやかましくて騒がしそうな人物は論外とされた。

「そういう訳なので、こういうところかもしくは屋外という、マニアックなシチュエーションで望むしかないのです。現実的ではなく、小説として読んでみたら興ざめというものです。ですが、まあ……」

「あ……」

 美魚は理樹の上に跨がってしゃがみ、淫らなM字開脚の状態になる。短いスカートの中が露になり、薄い茂みの中に秘所の割れ目が見える。

「甘いものは別腹って、よく言いますから」

「な、何が!?」

 フェラチオは前菜かあるいはメインだったか。今はその後のデザートとでも言うべきお楽しみの時間だけど、もしかするとこれが正真正銘の本番かもしれない。

「わたしもこういうことにだって興味がありますし、直枝さんとしたくなります。そして丁度今がそういう時だと思うんです」

 美魚にとって理樹の存在は別腹にしたくなる程甘くて魅力的なものなのだった。入れようとしていた理樹のものがややずれてしまったので再度右手で掴み直し、先端をしっかりと入り口にあてがう。そして先端が埋まったと分かるや否や、腰を降ろして行く。

「あ……んっ。入っていきますね。今度はちゃんと」

「あ、あああぁ!」

 あくまで淡々としている美魚と、慌てたように悲鳴を上げる理樹。マウントポジションでがっちりと固定されているのでもはや逃れようがないのだけれども。

「直枝さん」

 美魚はふと、理樹の手を掴む。そうして自分のいつの間にかはだけていた黒い制服の中へと入れさせ、胸に触れさせる。無論、美魚が自らボタンを外していたのだが。

「こんな貧しい乳なんかに用はないぜ、と思っていらっしゃる?」

「思ってないよ!」

「そうですか。それにしても、直枝さんはどうしてわたしを選んでくれたのでしょう。来ヶ谷さんや神北さんといった、大きな胸の方もいらっしゃるのに? あと、鈴さんと、三枝さんもなかなかとお見受けしましたが」

 どうしてそういう、自分よりも明らかに魅力的な人を選ばなかったのかと美魚は思う。

「でも、こんなわたしも能美さんよりは大きい自信はありますが」

 断言。ばっさりと一刀両断だった。哀れクドリャフカ。

「……ということは、直枝さんは女性の胸の大きさはそれほどこだわってはいないということでよろしいのですね」

「あっあっあっ! ち、ちょっと待……あああっ!」

 美魚はそんなことを言いながら、ず、ず、と小刻みに腰を上下させていた。

「ん……。それでも、こういう時にブラウスはおろか上着の前も開けてくれないのはちょっと悲しいです。ショックです。確かに小さいですけど」

「そ、そんなこと言われても。あ、ああぁ……」

 理樹は困惑し、ぎこちなく美魚の露になったブラの中へと手を潜らせる。すぐにわかる僅かな膨らみと小ぶりな乳首。撫でるように優しく触れると、美魚はほんのりと顔を赤らめて、吐息も含めて火照らせていく。

「あ……。んっんっんっ」

 美魚の攻めは小刻みに続いていく。制服を着たまま交わり合うのはとても背徳感に満ちて興奮すると二人とも思った。

「もっと早く、動きます」

 小刻みだった動きが少しずつ大きなものへと変化していく。

「ん……ん……ん……っ」

 美魚は吐息を繋ぐかのような声を小刻みに繰り返した。その声に合わせて美魚の小柄な体が上下に動いていく。

「直枝さんは……動いては、だめですよ。んっ」

 言われるまでもなく、理樹は微動だにしない。込み上げてくる射精感を必死に堪えているのだから。下腹部に力を込めて、小柄な美魚に絞り取られそうな状況に負けないようにしている。そんな姿を見て、美魚はますます熱くなる。表情や声には全く表れないホットな思い。

「絶対に、直枝さんを……ん、ふ。いかせて、みせます」

「か、勘弁してくれないかなぁ。あ、あ、くううっ!」

 端から見れば、制服を着たままの男女がくっつきながらもぞもぞとうごめいているだけだった。だが、その中と言うべきか、結合部はぐちょぐちょに濡れているのが実態だった。

「ん、んんぅ。ん、ん、んんん……あ、ん……」

 美魚の動きはますます速くなっていく。理樹を射精させるどころか、逆に絶頂を迎えさせられそうになっていく。

「ん……っ。直枝さん。わたしの体は、気持ち良くないですか」

「そんなことない。そうじゃなくて……。なんか、こう。先に出しちゃったら悪いことみたいで……。本当は気持ちよくて、出しちゃいそうなんだけど、我慢してる」

「そんな我慢は不要です。……早くいってください。じゃないと……わたしが、先にいっちゃいます」

「い、いいよ。先にいっちゃってよ」

「だめです。……それとも直枝さんは、わたしの体ではいけないって言うんですか?」

「そんな、俺の酒が飲めねえのか、とか言う酔っ払ったおじさんじゃあるまいに」

 いつしか互いに意地を張り合っていた。

「……んっんっんっ」

「くうぅっ」

 理樹の体にまたがって、弾むように上下に動く様は暴れ馬でも乗りこなしているみたいだった。

「負けたく、ありません」

「勝ち負けじゃ、ないと思うんだけどな」

 互いの吐息が聞こえる。はあはあと粗く、熱い。いつの間にか美魚の頬を伝った汗が一粒、ぽたりと理樹の胸に落ちる。むせ返りそうなくらいの熱気が二人の周りを覆っていた。

「う、う……。ん……。わたし、いやらしいですよね。わたしから入れて、こんな風に腰を振って」

「あ、あ……。も、もう……だめ。出る……」

 美魚のまくれ上がったスカートに、剥き出しのお尻がとてもいやらしく見える。小さくて白くて、けれど丸いお尻はくねらせるように揺れる。

「出して、ください。あ、あ、あ……。早く……早……くぅ!」

「だ、め……。あ……くううぅぅっ! ああああっ! もうっ……もうっ! あ、あ、あ……うああああっ!!」

「あ……あっ」

 間一髪の差だった。理樹は美魚の中に射精して、その直後に美魚も絶頂を向かえていた。体をビクッと二度、三度静かに震わせただけの、静かな絶頂だった。けれど実際にはものすごい量の精液がぶちまけられていた。

「あ、あ……熱いのが、いっぱい……込み上げて来ます……」

 美魚の中からあふれ出したものが理樹のものを伝って流れ落ちていく。美魚は脱力し、理樹の体に抱き着くようにして倒れ込んだ。心地の良い火照りは、真夏に全力で泳いだ後のような睡魔を招いていった。

(熱い……です……)

 夕暮れ時は既に過ぎ、図書館の中は闇に包まれていた。交わるのに夢中になっていて、全く気付かなかったことに恥じらう理樹。

「美魚。そろそろ抜いて……。美魚?」

「……」

 返事はなかった。美魚は失心したかのように、いつの間にか眠りについていた。とても幸せそうな、安らかな寝顔にくわえてくぅくぅと可愛らしい寝息。起こしては可哀想……。そう思った理樹はどくわけにもいかず、ただ途方にくれるだけだった。段々と闇は深まっていくけれど、逆に今度は月明かりが照らし始めた。これはもう、甘いものは別腹……どころじゃないんじゃない? と、理樹は思った。

「一つに……つ、繋がりながらこのままだなんて。本当にいけない事だよ。とほほ」

 ふと、美魚のお尻を撫でてみると丸くて柔らかくてはりがあってすべすべで気持ちよかった。何度も撫で回していると、理樹はあることに気付く。

「う、う……。ま、また、大きくなってきちゃった」

「んん……」

 夢見心地の美魚が少し身じろぎする。理樹はたまらずに、少しずつ射精しない程度かつ美魚を起こさない程度にうごめくことにした。そうしなければおさまらないから。いきたくてもいけないという、まさに蛇の生殺し状態。





…………





 それから数十分後のこと、美魚はようやくのことで目覚めた。今もまだ理樹と一つになったままで、まくれあがったスカートも射精された跡もそのままで、白くて丸いお尻が剥き出し状態。

「……」

 状況を今一つ飲み込めていないのか、寝ぼけ眼。はだけた胸元をごそごそといじり、何かを取り出す。それは小さな眼鏡だった。理樹も後で知ることだけど、美魚は普段眼鏡をかけていないらしく、人知れず眼鏡娘へと変身しているのだとか。

「眼鏡、かけていたっけ?」

「いえ。……既視感がありますか?」

「うん。どこかで」

「デジャヴ、ですか」

「そうかも」

「それはきっと、平行世界のどこかでの公式設定なのでしょう」

「平行世界って」

「あるいは何らかの大人の事情によって、没にでもされた設定かもしれません」

「何でそうなるのさ」

 美魚はとぼけたような事を言い続けながら、少しずつ腰を上下させ始める。

「み、美魚……」

「はい」

「何、してんの?」

「セックスの続き、ですが」

 しれっと言いつつ、ず、ず、ずぷ、ずぷ、と上下にゆっくりと動く。美魚の目は半開きで、表情は夢見心地。今もまだ夢の中にでもいるかのように、理樹の上で揺れている。

「わたしのような娘が、セックスに積極的になるのは、おかしいですか?」

「そ、そんな事は……ないけど」

 クラスでも目立たないような、おとなしい娘がこういうことをするのは変ですか、と暗に言っているのだった。

「では、何も問題はありませんね。……きっと直枝さん、わたしの汁で大洪水ですよ」

 悪戯っぽい目を向ける。

「な、何が!? あ、あ、あ……ち、ちょっとおっ!」

 美魚の瞳が妖しく輝き、ふふふ、とでも言いそうな不適な笑みを見せる。理樹はそんな別人のような美魚をどこかで見たような気がした。それはあたかも、性格が全く異なる双子の姉妹でもいて、すり替わったかのように感じるのだった。もしかするとあの娘……以前出会った美魚とそっくりな娘が今、美魚の意識に憑依でもしているんじゃなかろうかと理樹は思った。それならば説明がつくが、もしかすると二人で束になって理樹を攻めているのかもしれない。

「ん、ん、ん。図書館内で、んっ。眼鏡をかけた読書好きな大人しい娘と、んんっ。こういうことをしまくるのは、どんな気分ですか? んっんっんっ」

 自分で自分の事をそんな風に言ってみる。傍から見れば理樹が美魚を弄んでいるようにしか見えないが、事実は全くの逆なのだった。

「ど、どんなって。あ、だ、だめ! また出ちゃうよ!」

(いい声です。それはあたかも、まるで直枝さんを犯しているかのようです)

 ずりゅ、ずりゅ、と互いの陰毛を絡ませ合い、湿りを帯びた水音が響く。月明かりが何かを狂わせたかのように、二人の密かな交わりは続いていった。

(きっと……。わたしの顔を、眼鏡ごとべとべとに汚してくれるのでしょう)

 大量の精液が噴水のように噴射されることだろう。射精する寸前に引き抜いて顔を近づけ、精液まみれにされた顔で理樹を見つめ、いやらしいセリフの一つでも言ってみようかと思うのだった。

(量も、すごいのでしょうね。二回目……いえ、三回目以降も)

 その後はもちろん、喉を鳴らせてごくんと飲み干すだけだ、と思った。そんな風に思うとますます体が火照っていき、鼓動も高まっていく。が、しかし。中に出してもらうのもいいかもしれない。そうだ、今日はそっちの方がいいでしょうと美魚は思った。

「直枝さん。想像してみてください。……そう。わたしは今、直枝さんに弱みを握られて犯されている不幸な文学少女なのです」

「ど、どこが!」

「直枝さんが何と言おうと、今わたしがそう言えば、周りはそう思ってくれるでしょうね」

 確かにそうかもしれないけれど、とても卑怯だ。ああ、悪女のセリフだと美魚は思った。そうして、妄想のようなストーリーを理樹の耳元で呟いてみせる。

「ん……。クラスでも目立たない眼鏡娘の弱みを握ってですね。閉館して誰もいない図書館に連れ込んで。そして、はち切れんばかりに大きなものに跨らせて……無理やり腰を上下にくねらせるように強要しているんですよ。わたしが泣こうがしゃくりあげようが許さない鬼畜行為好きなんです」

「してないから……っ!」

「命令して、いいんですよ。腰の動きが全然足りないぞ、とか。もっと激しく動け、とか。そんな動きじゃいつまでたってもいけねぇぞ、とか言ってわたしのお尻を平手打ちするとか」

「しないってば! さっきから何言ってんの!」

 ムキになっていう理樹がたまらなく愛おしい。美魚はくす、と微笑み、あえて意地悪に言う。

「意気地無しですね。……でも、直枝さんはそんなこと、しませんよね。いいんです。……それでは、代わりにわたしがいっぱい動くとしますね。直枝さんを犯すために」

 そして美魚は理樹の首元にしがみついたまま、ず、ず、ず、ず……と一気に腰を上下に動かし始めるのだった。また、理樹が絶頂を迎えて中に射精してどんなにこぼれ出そうとも、そのまま腰の動きを続けましょう。美魚はぺろりと舌で唇を舐め、そう思うのだった。もっといっぱい感じてください。吸い尽くすくらいのつもりで淫らに腰を振りますから、と美魚は熱い吐息にそんな思いを込めた。

 暗く、誰一人いない図書館の中にて、二人の密かな情事は今も尚続いていくのだった。















----------後書き----------



 毎度更新がお久しぶりなPureMix2ndシリーズ、今回は美魚。

 たまには理樹君が攻められるのも悪くないかもと書いてて少し思ったけれど、いかがな物でしょう。

 また、美魚を書くとなると美鳥も一つあった方がいいかな等とも思ったり。

 次回をお楽しみに。


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