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理樹と小毬と紐パンツ










 ぽかぽか日和の屋上にて、理樹はとある状況に陥り思いっきり苦悩していた。

(ごめんなさい。僕、今とてもいけないことを考えてる)

 そのように誰にともなく心の中で謝ってしまうような、頭を抱えそうなくらいに激しい苦悩だった。考えちゃだめだ考えちゃだめだ考えちゃだめだ! と、必死にマインドコントロールでもするかの如く自分に言い聞かせるも、込み上げてくる好奇心と若さ故の煩悩はどうしても押さえられなかった。

 ――それもこれも全ては屋上の床に横たわってる女の子こと、小毬が原因なのだった。小毬は誰も入れないはずの屋上に今日もこっそりと忍び込んでは甘いお菓子を食べて、ほわほわ幸せ気分。そしてそのまま心地良い陽気につられてうとうとしてしまって、結局うたた寝してしまったわけだ。が、問題はその格好にあった。とても無防備な格好で、上着が少しまくれておへそが見えている。けれど今回はそれだけではないのだった。

(小毬さん、今日はアリクイさんでもしましまでも苺でもピンクでもないんだね。って、そうじゃなくって! さっきからどこ見てんだよ僕は!)

 制服の短いスカートがわずかにまくれ上がり、パンツが見えているのだった。それ故に理樹の目はその魅惑の部分に釘付けにされていたのだった。それも、白っぽい色がかすかに見えるだけで、どんな模様なのだとか材質なのだとか詳細についてはあまりよくわからない。絶妙とも言えるくらいに思わせぶりな、もったいぶっているかのような角度であり、理樹は強く思った。もう少し見たい。もう少しだけ。少しだけ。ちょっとだけ。ほんのちょっとだけなら、いい、よね? いい、じゃない? だめ? と。実は全部見てしまいたいところなのだけれど、とてつもなくいけないことなので少しだけだと何度も言い訳。理樹の心の中にそんな欲望が更にふつふつと沸いていく。

(ああもう! 何を考えてるんだ僕は!)

 頭ではそう思いながらも体が勝手に動いてしまう。そうしていつしか理樹は逡巡しまくりながらも小毬のスカートの裾を指で摘まんで、恐る恐るながらも少しずつまくり上げているのだった。

(小毬さん……ごめん! ごめんなさい本当に! で、でも、でも! でもこんな格好してる小毬さんがいけないんだからね!)

 最後の最後まで、心の中で言い訳になっていない言い訳に終始した。そんなものが免罪符等にはならないとわかっていつつ、するのだった。

 こうして理樹の行いにより、小毬がはいているチェック柄の短いスカートの丈は、完全にまくれ上がっていた。確かに辺りには少しばかり心地の良い風が吹いているわけで。風さんのいたずらにより、このような状態になってしまったと言ってみてもウソには聞こえないだろう。いざと言うときはそんな言い訳をすることにして、とか理樹は思い、背徳的な行為をしている事実と風景に興奮し、ごくりと唾を飲み込む。

(わ。わああ……。ひ、紐つきパンツなんだ……。可愛いなあ)

 とても意外だった。小毬さんって見かけによらず大胆なんだな、などと理樹は妙に冷静な気持ちで思った。外見からもわかる肉付きの良い、触れるとふにふにしていそうで柔らかそうな太ももと、薄い布地に包まれた秘所が視線の先数センチの所にある。手を伸ばせば触れられる距離に。

(って。だ、だめ。……だめ、なのに)

 そして理樹はどきどきと高まる鼓動を押さえられず早速とばかりに手を伸ばし、触れていた。熱いものにでも触れたかのように、ビクッと離してしまい、すぐに罪悪感に苛まれる。が、それも束の間。またすぐに手を伸ばして触れることになる。

(さ、触っちゃった! 触っちゃったよ! ああああっ!)

 人差し指で触れる。ふに、と指が少しめり込んだ。小毬の下腹部は予想通り柔らかくて、暖かかった。

「うぅん」

「……っ!」

 突然、小毬がくすぐったそうな声を出した。理樹はバレたのではないかと思いビクッと震える。が……。後にはまたすやすやと安らかな寝息。

(な、何だ。寝言か)

 ほっとしたのも束の間。もう少しだけ触りたい。実のところはずっと触り続けていたい。それどころか直に触りたい。それどころか中に指を突っ込んで思う存分かき混ぜてみたい……ああもう、いい加減おさまれよ僕のスケベ! 理樹は必死にセルフ突っこみを繰り返してえろい欲求を沈めようとするけれどかえって高まるばかりだった。

(いい加減にしろよな僕! だめだよ! 絶対触っちゃだめ! 絶対だめだからな!)

 漫才師の突っこみ役にでもなったかのように何度もだめだからな、と繰り返す。相手はいたいけな女の子。対して今の僕は手のつけられない野獣だ。触ったりしちゃいけない。そんな最低な行為は直ちにやめなければいけない。人として最低だ。邪念を振り払うかのように頭を振り、小毬のまくれ上がったスカートを元に戻してその場からどうにか離れようとする。だが……。

(あれ?)

 違和感に気付く。意識と行動が一致していない事が原因だった。理樹はふと、小毬のはいている下着の紐部分に手をかけていた。無意識の行為だった。

(あ……あ、あ、あ! 嘘! 何で! 何してんのさ僕は!)

 ちょっと紐を引っ張っただけで、ほどけた。ほどけちゃった。ほどけてしまった。更に無意識の行為は続き、一瞬にしてもう片方の紐もほどけてしまった。こんなに簡単にほどけるなんて、紐パンなんて危ないものはいちゃだめだよ小毬さん。そのうち人前でほどけちゃうよと、娘を心配する父親みたいな気持ちになってしまった。やってることはとんでもないことなのに。

(わ! わ! わわわわっ! ほ、ほどけちゃった! ほどけちゃった! ほどけちゃったよ〜〜〜っ!)

 大混乱に陥りながら薄い布地をぺろんと引っくり返す。あっさりと小毬の恥ずかしいところ、つまり見ては行けない場所が露になってしまった。薄い毛に覆われた割れ目は綺麗な形をしていた。艶めかしい程綺麗だなと思った。

(も、もうだめ……。これ以上何もしちゃだめだよ。小毬さんをいじめちゃだめだ。自重しろよ僕!)

 そう思い、触りたい撫で回したい指入れていじくりたい、等々の危ない気持ちをこらえながら、ほどけてしまった紐を再度結び、まくれ上がったスカートを元へと戻そうとする。例えるならそれは、契約を更新せずアパートの部屋から退去する前に掃除をしたり修繕を施したりして、現状回復するのに似ている。

「おなかいっぱい……」

「うわっ!」

 偶然という名の悲劇は突然訪れる。小毬の間の抜けた寝言に理樹は心臓が飛び出したように驚き、思わず小毬の側から跳びはねる。それも紐を掴んだまま。その拍子に下着の布地を押さえている小毬のお尻からずるりと下着が取れてしまった。

(わあああああああっ! と、と、取れちゃった! 脱がしちゃった! どどど、どうしようっ!)

「う、うぅ……ん」

「……っ!」

 その衝撃が効いたのか、単に浅い眠りだったのか。小毬は眠たそうにしながら目覚めることとなった。理樹は一瞬にして悟る。小毬の紐パンツを握りしめているというこの状態を見つかったらどうなると言うのか。あまりのリスクを想像し、飛び跳ねるようにして瞬時にその場から逃げ出し、難を逃れることになった。

「ふああぁぁ……。う、うぅぅん。ふわあ。また寝ちゃったよ……」

 あくびをかみ殺しながら目覚める小毬と、這々の体で建物の影に隠れ、見つからないように小毬の様子を伺っている理樹。

「ああ、またスカートまくれちゃってる。はぅぅ。恥ずかしいよぉ」

 まくれ上がったスカートを手で整えている小毬。しかし、すぐに更なる違和感に気づくことになる。

「あれ?」

 何かがおかしい。そう思い、もぞもぞと自分のお尻に触れる。本来あるべきものが見当たらない。あれ、あるはずなのに? そんな風に思っていることだろう。

「あれ、あれ、あれれ?」

 ない。どこにもない。普段いつも当たり前にはいているはずのものが。パンツが、ない。どこにいっちゃったの? も、もしかして自分はその……パンツはかないままスカートをはだけさせて、気持ちよさそうにお昼寝してたと言うの? それってそれってそれって、もしかして恥ずかしいこと?

「は、はわわわわわっ!」

 も、もしかしない! すごく恥ずかしい! とんでもなく恥ずかしい! もうお嫁さんにいけない! 小毬の顔は燃え上がったかのように一瞬にして真っ赤っかになってしまう。

「で、で、で、でもでもでもっ! 私脱いだ覚えなんてないよ〜〜〜? 何ではいてないの? どうしてはいてないの? ど、ど、どこいっちゃったの〜〜〜?」

 ――一方その頃。紆余曲折あれど結果的に小毬のパンツを無慈悲に脱がした上にかっぱらってしまった張本人である理樹は、小毬が狼狽しまくっているのを傍から見ていて、罪悪感に苛まれていた。

(小毬さん、ごめん……)

 それでも見つからないように小毬の紐パンを丸め、ぐいとポケットの中にしまい込む。

「うぅ。は……はいてることにしよう。そうしよう」

 小毬は必死に落ち着きを取り戻し、いつものように精神状態をポジティブモードに切り替えようと努力する。……が、風でひらひらと揺れるスカートの下が、とってもすーすーしてしまう現実に向き合い、あっさりと挫折する。

「で、できないよ〜〜〜! 恥ずかしいいぃぃぃぃ〜〜〜! もうお嫁さんにいけない〜〜〜!」

(うぅ。こ、こんな時僕は一体どうすりゃいいんだ)

 可哀想な小毬を救うため、現状の打開へと向けた抜本的な対策が必要だ。理樹は必死に考えた。

 選択肢その一……ごめんなさい僕が小毬さんの紐パンツほどいて脱がして取っちゃいました、と正直に名乗り出て頭をぺこりと礼儀正しく下げて小毬さんのパンツをハイっとさわやかにお返しする。

 選択肢その二……とてもわかりやすく親切に、かつ誰が発見したかわからないようにこっそりと『神北小毬さんへ。パンツ、落としましたよ?』とメッセージを添えて学校の落とし物のコーナーに紐パンを張り出しておく。ああ、勿論クラスもちゃんと書いておかないとわからないよね。顔写真も一緒に載せておけばわかりやすくて親切かな?

 選択肢その三……。『神北小毬。お前のえっちな紐パンツは預かった。返して欲しくば今着ているブラを脱いでこれから言う場所に持ってこい。誰かに言ったら人質(=紐パン)の命はないものと思え』と、声色を変え公衆電話辺りから携帯に向けて親切に教えてあげる。

(何だよその選択肢は! ふざけてんの!?)

 一番目は形はともかくできるわけがないが、二番目と三番目はそれ以上の完全に嫌がらせか脅迫じゃないかと理樹は自分の想像に対し激しく突っ込んだ! どうしたらそうなるんだ、と! そういうことをしてはだめだ、と! 僕の馬鹿野郎と理樹は思った。

 しかし、現実的に小毬は動揺し、狼狽し、慌てふためいている。あるいは酷い事ではあるけれどこのまま何事もなかったかのように立ち去るのがもしかするとベストなのかもしれないけれど、余りにも気の毒で仕方がない。そもそも自分のせいなのだから見過ごしたり見捨てたりなんてできない。じゃあどうすればいいか? どうすればだれも傷つかずハッピーな収束を向かえることができるのか? こういうとき、恭介や来ヶ谷さんに助力を請いたいところだが、事が事だけにできないのはわかっているし時間もない。自分で考えるしかないんだと、そう思い理樹は必死に考えた。

(よし)

 理樹は決心し、大きく息を吸い込んだ。

 『嘘』とは本来ついてはいけないことだ。ついたら閻魔大王に舌を引っこ抜かれたり、針千本を飲まされたりしてしまうような、いけない行為。しかし、大人は時としてあえて嘘をつかねばならない時があるのだ。あるものなのだ。そうだよね? と、理樹は不安に駆られ心の中で叫んだ。そうだよ、誰も皆、悪いだなんて言ったりはしないよ。わかってくれるはずだよ。そうじゃなきゃ、この状況を打開するためにどうしろと言うんだ! 理樹はもはや開き直っていた。

(いくぞ)

 ――僕はたまたま何気なくお気に入りの場所に足を踏み入れただけなんだ。と、理樹は脳内シミュレーションを開始する。そうしたら先客がいるみたいだったので近くに行く事にした。誰だろう、多分あの人だよね? やっぱり小毬さんじゃないかな? でも違う人だったら恥ずかしいのでこっそり見に行こう。僕はそう思って足を踏み入れたんだけど、屋上の床に何かが落ちてることに気がついたんだ。何だろうと思い拾ってみたんだけども布のようなそれは……僕は一瞬ぽかーんとしてしまった。紐が四本ついてるそれは紛れもなくパンツだった。『ぱ、パンツ?』思わず声に出してしまう位の衝撃だったのさ。それは若い女の子がはいているようなパンツ。それも、いわゆる紐パンと呼ばれるようなやつが落ちていた。一体誰の? ……ああ、そうか、なるほどね。小毬さんがはいていてほどけちゃったりしたんだよねきっと! そうなんだよね? そうに決まってる! っていうか、絶対そう! それじゃ、きちんと持ち主に返さなくっちゃね。『小毬さ〜ん。何かよくわかんないけど、これ落ちてたよ〜』ってね。

 よ、よし、いいぞ。完璧な作戦だ。それでいこう。それしかない!

「小毬さ〜ん……」

 こうして理樹は極めてさりげなく何事もなかったように、小毬へと声をかけた。しかし、今の小毬にとっては余りにも恐ろしい存在のように見えてしまったのだった。

「ほわあああああああああああっ! だだだだだ誰っ?」

「こ、小毬さん?」

 小毬の動揺は理樹が思っているより遙かに激しかった模様。理樹の脳内でじっくりと練られたはずの作戦も、全てはタイミングが悪かったと言うべきか決行の時が早すぎたのかもしれない。理樹は完全に時期を見誤ったのだ。これを戦術的敗北と言わずして何と形容すべきか。

「り、理樹君っ! わっわっわっ! わ〜〜〜〜〜!」

 小毬は理樹の想像以上にうろたえていた。思いっきりよろめき、足がもつれ、ふらつくくらい。そしてそのままの格好で転んでしまい、尻餅をついてしまった。残念ながら短いスカートはこういうとき何の機能も果たしはしなかった。だから校則の厳しい学校ではスカート丈まで計ったり、スカート丈の長さを膝下までとかいうよくわからない規制を実施したりするのだろう。その理由が何となくわかったような、そんな気がしたよと思い、何でもかんでも声高に自由を叫び管理教育というものを批判すればいいというものでもないんだな、ということに気付くのだった。きっとそれはこういう事例に対応するための極めて合理的なリスクマネジメントというやつなわけで……って、ああもう、そんなどうでもいいことを今は考えている場合じゃないだろうと理樹は思うのだけど、考えてしまったのだからどうしようも無かった。それだけ理樹自身も動転していたようで、自分自身の精神状況を見誤ったのも作戦失敗の要素に挙げられるのだろう。

 さて、理樹の予想を完全に裏切り、想定外もいいところな展開が待っていた。

 尻餅をついたことにより痛めたお尻を手でさすりながら自らの格好に気づく小毬。それはアダルトビデオなどではごく当たり前だが、通常はあまりにもはしたなくて人前では絶対にできないような格好。いわゆるM字開脚と呼ばれるように大きく股を開いていて恥部を見せつけている格好。短いスカートは思いっきりまくれ上がっている。普段恥ずかしいところを覆い、隠してくれている下着……パンツは今、何故かない。

「り、き、く、ん……。ふえ……?」

 見られた。恥ずかしいところ、全部見られた。もう手遅れ。体が動かない。思わずじわぁっと涙が込み上げてくる。

「み……見なかったことにしよう。なんて、できない……」

 小毬の頬をぽろりと大粒の涙が一粒流れ落ちる。まずい。これはまずい。非常にまずい。理樹はとっさに先手を打った。

「わ、わ、わああああああっ! こ、小毬さん待って落ち着いて泣かないで! だ、誰にも言わないからっ! 見なかったことにしよう! ね? ね? それでいいでしょ? そいれでいいじゃない! ね?」

「うぅ……。む、り……。私、今、ぱんつ、はいてない……変態な娘って、思われちゃう……」

「思ってない! 思ってないから! じ、事情はよくわかんないけど人生っていろいろあるし女も男もいろいろだしハプニングもあるものだからだから僕は気にしないから! だから泣かないで! 泣いちゃだめだよ小毬さん!」

「う……。ぐす。ひっく……」

 今にも子供のように泣きじゃくりそうな小毬をなだめ、落ち着かせる理樹。とにかく一生懸命だったのは確か。しかしこれではどうにもなだめられそうにない。目には目を。ショックにはショックをと言う発想に至ったのか、理樹はとっさに奥の手を閃き、小毬の傷ついた心を癒そうとする。……あるいは犯そうとする?

「じ、じゃあこうするっ! ぼっ……僕のも見てよ! これで、おあいこっ!」

「!」

 ジッ、と勢いよく降ろされるはズボンのチャック。そこから銃口のように重厚なぶっといものがジャキンと構えられるかのように出てきた。まさに理樹のビッグマグナムもしくはビッグキャノンとでも言うべき自慢の巨大砲台だった。

「あ、あ、あ……」

 しかもそれはぺたりと座り込んでいる小毬の目前数センチの所に突然にょきっと出されたわけで、小毬は脅えるように大きな目をいっぱいに見開いて超凝視状態。血管が浮き出てぴくぴくとかすかに震えているそれは、小毬の視線が集中したことによりビクッッッッと大きく揺れた。その瞬間小毬は我にかえる。

「ほわああああああっ! りりり理樹君何やってんのおおおっ!?」

「わあああああああっ! こここ小毬さんだって何やってんのさあああ!」





…………





 かくして、お互いに恥ずかしいところを見せ合ったのだからこれはつまりはおあいこであり、もう恥ずかしくないでしょ。赤信号、みんなで渡れば恐くないというような、そういう理屈で無理やり丸め込むようにして小毬を慰めた後のこと。

 理屈は分かっていてもやっぱり恥ずかしい事に変わりはないわけで、怯えたように縮こまっている小毬を見て、理樹はさらに過激な提案をしたのだった。『じゃあ、一緒にもっと恥ずかしい事をすれば……そうすれば大丈夫なんだね?』と。小毬は戸惑いながら『もっと恥ずかしいことって?』と、問い返す。それに対して『えっち、しよ』と答える理樹。そんな答えに一瞬きょとんとして何だか分かっていない小毬に対し『せっくす、だよ!』とはっきり答える。今度は絶句し、顔を真っ赤にしてしまう小毬に、まだわからないのとばかりに『僕のこれを小毬さんの恥ずかしい所に入れちゃってずこずこ突きまくるの!』と、具体的に説明し、有無を言わせない状態に追い込むのだった。

 体の中に異物を侵入され、突き上げられる圧迫感に小毬の吐息は粗くなっていた。

「あっ。あっ。はぅ……っ! こ、こんな……。学校で……。お外で」

「服着たままだから大丈夫だよ」

「でも、でも……やっぱり恥ずかしいよぉ。それに、いけないよぉ」

「じゃ、小毬さんは僕に恥ずかしいところを見られっぱなしでもいいの? 僕は見られても平気だけどさ」

「うぅ。それもよくない〜! 見られなかったことになんてできない〜!」

 そうした経緯もあり、今まさに理樹は小毬に屋上のフェンスを掴ませ、立ちバックで交わり中。

「あ、あ、あ……っ。り、理樹君のが……私の中に、あ、あ、あぁ……。いっぱい入ってきてるよぉ……。あっあっあっ!」


「小毬さんの中、すっごく締め付けてくるよ」

 理樹に突き上げるたびに小毬は体をのけぞらせ、ガシャガシャと掴んだフェンスを揺さぶる。小毬がふと、グラウンドの方に目をやると。
 
「ほわあっ! だだだ、誰かいるよぉ!」

「ああ。体育の授業をしているんだね。きっと。授業、始まっちゃったんだね〜」

「理樹君どうしてそんなに落ち着いてんの〜!」

 顔を真っ赤にして慌てふためく小毬に対し、理樹はとっても落ち着いた風に見える。

「だって、小毬さんの中がとっても気持ちいいから」

 どうしてそうなるの? 全然説明になっていない〜! と、小毬は思った。

「あ! あぁ! ああんっ! 理樹君激しすぎ〜〜〜! そんなに強く突かないで〜〜〜!」

「あははは。小毬さん感じてるんだね。女の子って可愛いなあ。突けば突くほど感じてえっちな声出してくれるんだね」

 違う、と言いたいけれど違わないので否定できない。ただ、理樹の突き上げに身を任せ、華奢な体を震わせるだけ。

「小毬さんって結構胸あるんだね」

「あ……ぅ。そこはあぁ! さ、触っていいなんて言ってないいぃ! も、揉んじゃだめ〜〜〜! 恥ずかしいいぃぃ〜〜〜!」

 また新たな違和感に小毬は背筋を震わせる。理樹が背後から手を回し、小毬の胸を服の上からむんずと掴んで揉み回しはじめたのだった。

「だって、小毬さんが可愛いから」

「説明になってない〜〜〜!」

「でも、おっぱい揉むと、締め付けが強くなるんだけどどうして?」

「そんなの知らない〜! 理樹君の意地悪〜!」

 もはや当初の目的などさっぱり忘れている理樹。とは言え、小毬も小毬で反論できない状況に戸惑いつつ、このまま続けて欲しいと思っている自分を知ってしまう。

「気持ちいい? 正直に言ったら、もっと気持ちいいことしてあげるよ」

 それはとても意地悪な誘惑だった。小毬は恥じらいに目を細め、散々迷いながらも小さな声で言った。

「き……もちいい、よ」

 だから、もっと気持ち良くしてと小毬は思い、言葉にして伝えた。その瞬間。

「はう!」

 ぐいと上着がたくしあげられ、ブラも一気にずらされ、直に胸を揉まれる。

「あああぁあぁぁぁあ! りりりり、理樹君んんんんっ! みみみみ、見られちゃううううううっ! だめええええぇっ!」

 遥か階下のグラウンドではただ今体育の授業中。今のところ誰も視線を向ける者はいないし距離的にも遠すぎるから大丈夫なのだろうけれども、それでも痴態を表に晒すことになってしまった。

「やっぱり。見られると思うと感じてるんでしょ? 今、ものすごく締まりが良くなったんだから」

 反論できない説明に、小毬はただ身を震わせるだけ。

「うぅ……。もう許して。もう、いかせてよぉ」

「意地悪してごめんね。じゃあ、小毬さんも腰を振ってよ。いやらしく、ね」

「う、ん……。あ、ん。うう、ん……。はふ、あふ……。あ、あ、あ」

 小毬とは対症的に、理樹は突き上げるのをやめて動きを止めた。

「理樹君?」

「僕をいかせて。いかせるまで抜いてあげないから」

「はふ……。う、うん! がんばる……。あ、あ、あ〜〜〜! でもでも、やっぱり恥ずかしいいぃ〜〜〜!」

 消え入りそうな声を出しながら、小毬は淫らに腰を動かし続けた。それは理樹が小毬の丸いお尻いっぱいに射精しまくるまで続くのだった。





…………





 あの日より二人の関係は定まった。発端も経緯も結果も、いろいろと何かが誤っているかもしれないけれど、そんなことはもはやどうでも良かった。そうなった理由は二人にとってもまったくの予想外だったが、とにかく確かな事は一つであり、理樹の行為は今日もエスカレートしていく。例えば……。

 ――授業中の廊下。何だかんだと適当に口実をつけて出てきた二人。

「何か私、理樹君のせいでどんどん変態さんになっていくよぅ」

「違うよ。小毬さんはもともと変態だったんだよ」

 廊下に誰もいないことを確認した上で、ショーツを脱ぐことを要求され、大人しくそれに従う小毬。片足を上げ、ゆっくりと脱ぎ去る。授業中の廊下で私は一体何をやっているのとか、呆れ果てた良心が溜息をついている気がした。そしてあろうことか今度はその下着をくわえこまされたまま歩かされることになった。市中引き回しか見せしめでもされているかのような感じだった。

「うぅぅ〜」

 羞恥攻めにされて小毬は涙目になってしまう。

「小毬さんのパンツ、今日は可愛い縞模様なんだね。似合ってるよ」

「嬉しくない〜!」

「今ここでさ。僕が大声で、みんな聞いてください。神北小毬さんはノーパン趣味なんです、とか叫んだらどうなるかな?」

 一瞬にして変態扱いされ、学校内にいられなくなってしまうことだろう。

「そそそそ、そんなことしないでえええええ!」

「それとかさ。今小毬さんがくわえてるパンツを、どこでもいいから教室のドアを開けて、中にぽいっと投げ入れてみたりさ。授業中の教室内に」

「だだだだ、だめええええええ!」

 言葉責めを続けられ、嫌がるたびに理樹を興奮せていることも知らない小毬だった。新しい日常への皮切りはそんな感じだけど、更に更に行為はエスカレートしていく。

 ――その日の夜。グラウンドの外れにある森の中。

「おまたせ」

「……あ、う」

 暗い闇の中で、二人は待ち合わせ。

「早かったね。それじゃ早速、見せてよ」

「う、ん」

 理樹が言うと、小毬はもじもじしながらスカートをたくしあげ、その下にはいていたスパッツを足元までずり降ろす。

「へえ」

「……」

 小毬の遮るものひとつない秘所が露になり、理樹は感心したように言う。

「ぐしょぐしょだね〜」

「り、理樹君のせいだよ? 私がこんなえっちな娘になっちゃったの」

「あれ、そうなの? 僕はただ、スパッツ脱いでみせてよってお願いしただけなんだけど?」

 恥じらう小毬に対して理樹は余裕の笑み。

「僕はこんなぐしょぐしょにしてきてだなんて一言も言ってないよ?」

「う……」

 確かに理樹の言う通りだった。小毬は思い出す。今日の野球の練習開始前のことを。

『んしょ……』

 言い付けはきちんと守る。そうしていつものようにスカートの下にスパッツを履き、グラウンドへと出て行く。けれどその下には何もない。勿論ブラもつけていない。そうしてと言われたから。守る義務はないのだけど、何故か理樹の言う通りにしてしまうのは自分がそう望んでいるからなのかもしれない。

『理樹君の意地悪。ノーパンが癖になっちゃったなんて……』

 違和感を感じつつ、外野の守備につく。が……。

『小毬ちゃんそっちいったぞ!』

 投手の鈴が叫んでいる。

『ほわぁっ!』

 そういう時に限って、小毬がいる方へと打球は飛んでくる。それも鋭く早く、飛び込んでどうにか取れるかというような絶妙な打球が。

『神北! 取れるか!?』

 鈴と同じように今度は恭介が叫んでいる。

『ほわああああっ!』

 打者は言うまでもなく理樹その人。三割打者の如く今日はとっても当たっていたみたいで、やる気満々。勿論狙うは外野の小毬。慌てふためく小毬を見て内心にやにやと笑っているのだろう。とても邪悪だった。

『あああああ。スパッツがこ、こすれるよぉ! それにそれにそれに、むむむ、胸がブラウスと揺れるうううう! お、お、お股が食い込んじゃうよおおおお!』

 ブラをつけていないから、胸の膨らみと乳首がブラウスに当たり、こすれて痛い。そしてスパッツの硬い布地が股間にねじ込まれるように締め付ける。

『はう!』

 右、左と何度もダッシュを要求される。散々動いて動きまくって、小毬はある瞬間、秘所にじゅく、と込み上げてくるものを感じる。染みになってしまっているんじゃないだろうかと思うくらいにはっきりと。

 そんな拷問のような時間が続いて、夜を迎える。

 理樹は仲間達と共に飯を食い、風呂に入る。ルームメイトの真人は何故だかわからないけれどさっさと寝ていた。好都合だと理樹は思い部屋を抜け出した。

 こうして、待ち合わせ時間通りに森の中。もじもじし続けている小毬に対し、理樹はおもむろにあるものを見せつける。小毬とこの様な不埒な行為にふける発端となった、あの日のことを思い出しながら。

「り、理樹君! それ、どこにあったの!?」

「うん。屋上の片隅。フェンスに引っかかってた」

 嘘だった。わかっていて理樹はあえて嘘をついた。邪念があるからか、今回の作戦は信じられなくくらいにうまくいった。交渉事はやはり主導権を握った上でが一番だなと理樹は実感していた。

「えええええ?」

「小毬さんさ。よく屋上でお昼寝してるでしょ。これはきっとお昼寝しながら無意識のうちにパンツ脱いじゃってたんだよ。それが風でふわふわ飛んで、転がっていっちゃったんだ。みっともないよね〜。学校でパンツ脱いで、誰かに見られちゃったらどうするんだろうね。あ、それって僕のことか」 

「ほわぁっ!? 私そそそそ、そんなことを!?」

 ありえない。けれど現実は理樹の手の中。反論したくても、できなかった。きっと理樹が言っているのが正しく、真実と言うものなのだろう。完全に信じ込んでしまった。

「小毬さん」

「……?」

 戸惑い続ける小毬に対し、理樹はとっても嬉しそうににっこりと満面の笑みで言い放つ。はっきりと、聞き逃すことの無い一言を。

「ど変態」

「はわあっ!」

 こうして、理樹による小毬の調教(?)が始まった。

「はう! あうっ! はふうっ!」

 衝撃に耐えるために木にしがみつく。小毬は背後から激しく突き上げられていた。

「あー気持ちいい。ぬれぬれのぐしょぐしょですんなり入ったし、締め付けも最高。小毬さんのおま○こって、名器だよね」

「は、ずかしいよぉ理樹君! そんな言葉言わないで! あ、あふっ! は、激しすぎ……るよっ。あっ!」

 理樹は容赦なく小毬を辱めていた。

「ほらほら小毬さんももっといやらしく腰振って。小毬さんはノーパン大好きなど変態さんなんだから簡単にできるでしょ?」

「う〜。私、変態じゃない〜」

「変態だよ。それもどが付くくらいの。今日だって、乳首がブラウスと擦れて嬉しそうだったしさ。走り回っておっきなおっぱいをぷるぷる揺らしてた癖に。それに、練習中ずっとぐしょぐしょにしてたんでしょ? 誰がどう見ても立派など変態じゃん。それとも、淫乱って言えばいいのかな?」

「あ、あ、あ! り、理樹君んんんっ! 言わないで……」

「っていうか紐パンなんかはいてること自体が変態だよね。脱げたらどうするの? あ、そっか。授業中にこっそり紐とかほどいて脱いだりしてスリル味わってたりしてるんでしょ? その度ぐしょぐしょに濡れちゃうんだよね?」

「してないしてない! そんなことしてないい〜〜〜!」

 必死に否定するけれど、小毬は気づいていた。理樹に突き上げられる度にぐちゅぐちゅと湿りが増していく事を。そしてそれをさらに望んで、小刻みに腰を振ってしまっている事を。

「小毬さんのお尻の形、可愛いよね。丸くて、ふにふにしていて柔らかいし。パンの生地こねてるみたい」

「はふぅ! くすぐったいいぃぃ〜〜〜! あんまりお尻触らないで〜〜〜!」

 理樹は小毬のお尻を揉み回した。柔らかく形を変え、指に吸い付く感触も最高だった。

「お尻の穴もきれいだし。後でこっちにもずこずこ突っ込んであげるからね」

「はうっ! そんなとこ見ちゃだめ!」

 お尻の穴に……小毬はゾクッとする。考えるだけでも体が火照り、興奮していくのがわかる。

「り、理樹君! 私もうだめ! もう、だめえぇ!」

「だめならどうなのさ。どうすればいいかわかんないよ?」

「い、いかせて! もっといっぱい強く突きまくって、私をいかせて!」

「それじゃあさ。気持ち良かったら言うんだよ? いくいくいっちゃう、って」

 もう、恥じらいなどどこへやら。小毬は痴態を思い切り晒す決心をして、はっきりと頷いた。

「うん! あ、あ、ああーーっ! いっちゃううう! いっちゃうよぉっ! いくっ! いっちゃう……!」

 こうして小毬は半狂乱になりながら、絶頂を迎えさせられるのだった。





…………





「はふ……」

 真夜中。人に気付かれないように洗濯をしている小毬。明日の体育に使用するスパッツがなくなってしまったため、急遽洗濯をしているのだった。とても虚しくも、自ら望んだ結果だからどうしようもなかった。

「朝までに乾くかなぁ」

 小毬は目を伏せ、ため息をつく。今日もまた、理樹と頑張ってしまったが故に、どろどろのべとべとに汚されてしまったのだった。それも一日二回もしたため、スペアのスパッツまでやられてしまった。

「理樹君ひどいよ〜」

 実際のところは小毬の方が積極的に求めていたのだけれども。

「あんなに激しくするなんて。……そりゃ、気持ち、良かった、けど」

 思い出せば出すほど恥ずかしさが蘇ってくる。外見に寄らず、でっかくもぶっといたくましすぎるものが私の中に入ってきて、ずんずんがんがん突き上げまくる。ぱんぱん音をならすくらい激しく突かれて同時に乱暴なくらい強く胸を揉まれ、熱さと心地よさが込み上げて気がつくとえっちな声をいっぱい漏らしていた……。

「ほわあっ!?」

 条件反射の如く、じゅわっとした湿りを帯びた感触が発生。小毬はしまったあと思う。

「あ、あ、あ、ま、またやっちゃった! またパンツ濡らしちゃったぁ……」

 少し考えただけで興奮してしまう状態になってしまった。

「私、理樹君の言う通りものすごくえっちな変態さんなのかも……」

 またまたため息をついてから、小毬は今はいているパンツを脱ぐことにして、動いている洗濯機の中へと突っ込んだ。ごく自然な行為に小毬は愕然としてしまう。こんな所でパンツを脱ぐことも、ノーパンでいる事も全く抵抗を感じない。慣れてしまったのだろうと。

「私、理樹君に調教されちゃったよぉ……」

 きっとそういうことなのだろう。

 ――翌日。体育の授業が始まる前のこと。

「あ、あ、あ、あ! りりり、理樹君んんんっ!」

 わずかな時間を利用して、小毬とがんがんはじけまくる理樹がいた。

 そうして二人揃って絶頂を向かえ、理樹は小毬の中へと射精してからすぐさまスパッツを下着ごとずりあげた。

「ほわああああっ!? りりり、理樹君なにすんのぉっ!? あ、あぅぅ! き、気持ち悪いよぉぉ!」

「小毬さん。授業に遅れちゃうよ?」

 笑顔で鬼畜な事実をあっさりと教えて暮れる理樹。このまま体育の授業をうけるんだよと暗に言っている。

「遅れちゃうよ、じゃな〜い〜。理樹君の意地悪〜! 折角このスパッツ昨日の夜洗ったのに〜〜〜!」

「今日は学校外周をマラソンだってさ。大丈夫。何かあったら汗かいちゃいましたっていえばいいだけだから」

「全然大丈夫じゃない〜!」

 とかいいつつ、ばれないかなばれないかなとスリル満点な時間が始まることを想像して、小毬の秘所はまた濡れてしまうのだった。

(ううぅ。き、今日こそ逆襲してやるんだから……)

 その決意を胸に、羞恥極まる体育の授業へと繰り出して行くのだった。

(う、う、う〜〜〜。あ、あ、あ〜〜〜ん。スパッツの中ぐちょぐちょ〜〜〜! 気持ち悪い〜〜〜! 恥ずかしい〜〜〜! ばれちゃう見られちゃう恥ずかしいだ〜〜め〜〜!)

 内股でもじもじと恥じらう小毬。だけど、羞恥心が込み上げてくる度にスパッツを覆う染みが拡大していく。出されたものも交わり、スパッツの中でぐじゅぐじゅと淫靡な音を立てている。

 体の火照りをおさめるには、理樹にしてもらわなければいけないと思う。だから、今日も激しくしてもらうんだから。と、小毬は誓った。ずんずんといっぱい突いてもらって。ううん、今日は理樹君を寝かせてその上で私が腰をいっぱい上下に動かしたりしてもいいかもしれない。そうしているうちに気持ちよくなっちゃって、気がつくと自分で自分のおっぱいを思い切り揉み回していたりするんだよね、と小毬は思った。起ってしまった乳首を強めにつまむとびりびりと電流が走るかのように気持ちよくて、えっちな声が出てしまうと。

(はふ……。その前に、授業終わったらまたスパッツとパンツ脱がないと……)

 はいてなければ洗濯する必要もないよね、と小毬は思うのだった。










おしまい










----------後書き----------

 リトバスのえっちなアンソロジー本みていて、やっぱり小毬と言えばパンツですなと思いこの様なお話になりました。

 今回試験的にPDF形式の縦書き版を作ったりしたので、そのうちまた別の形で公開するかもです。どういった形式が一番見やすいのでしょうか?



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