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桜色のエピソード
-神鳳杏編-















「スクールアイドルとか、いいと思うんだ!」

 あまりにも唐突で何の前触れもない。脈絡もない。どういう意味で『いい』のか、何でアイドルなのかの説明もない。神鳳杏という、生徒会室随一の気まぐれ娘による単なる思いつきはいつもそういうもの。また会長が何だかわけのわからんことを言っていると、生徒会室にいる面々はまともに相手にするわけでもなく、心の中で思うのだった。

「この書類に印鑑をください」

 そんな中。こなみがずい、と杏の前に出てきて書類を差し出し、承認印を要求した。杏の提案に特に何か反応するわけでもなく。

「あ……うん。ほいっ。押した押した。でね、こなみん。あたし。スクールアイドルとかいいと思ったんだけどね」

「いいと思います」

 決して否定はせずに頷き、では、と一声かけてから表情一つ変える事無く業務へと戻るこなみ。とてもクール。

「でしょでしょ! というわけなので……」

「あー会長。こっちの申請書類にも目通してもらえますかねー」

 こなみとは異なり、極めて適当そうに書類を差し出す爽。

「ちょっとぉ、肥田くん。今、スクールアイドルがいいなって話をしているの。空気読んでほしいわね」

「ひでえ。何すかそれ」

 とても理不尽な理由で書類をポイッと突っ返されて涙目な爽と。

「いいから仕事をしてください。ただでさえ書類が溜まっているんですから」

 あくまで生真面目な夕莉が、杏の不真面目ぶりを注意する。と、そんな時の事だった。

「只今戻りました」

「ただいま〜」

 美桜と共に、生徒会室へと入ってくる悠真の姿。丁度二人で花壇の手入れをしていたのだった。そして、早速杏による提案が始まる。

「あ、ねえ。悠真クン。スクールアイドルプロジェクトって、いいと思わない?」

「話が見えませんが」

「スクールアイドル、ですか?」

 悠真も美桜も頭の中にはてなマークが浮かんでいる。それはそうだと皆が思う。そして、何のこと? と、悠真が爽の方をちらりと見やると。

「悪いな悠真。実は、俺達もさっきから全然話が見えていないんだ」

 こなみと夕莉も右に同じ、という感じで頷いている。その中で美桜はただ一人、楽しそうに微笑んでいる。花壇の手入れができて満足しているようだ。

「そうか。じゃあ、そういう事なのでこの話は無かったということに」

 契約交渉が破談に終わったような、悠真がそんな態度をとると杏はむくれる。

「むー。どうしてそういう意地悪な事言うのかなー。あたしはただ純粋に、スクールアイドルプロジェクトとか今流行ってるから、あたし達生徒会もその流れに乗ってみたりして、いろいろやったりとかしてもいいんじゃないかなーって思っただけなのに」

 そして杏はおもむろに、杏に書類のチェックをしてもらう為に近付いて来ていた夕莉に抱き着いたのだった。

「きゃっ! なななっ! 突然なんですかっ!」

「んー。夕莉とか、アイドルにぴったりだなーって思って! すっごく可愛いしー!」

「もう! 放してください!」

 今日も相変わらず、生徒会室は賑やかだった。










そんなことがあったのを誰もが忘れた頃のこと。










「ねえねえ悠真クン。見て見て」

 夕暮れ時。帰り際の生徒会室にて、突然杏に呼び止められる悠真。他のメンバーは皆用があるとかで不在で、今日は杏と悠真の二人きりなのだった。

「はい?」

 悠真がいきなり見せつけられたのはスマホの画面で、なにやら動画が再生されている。何の動画で、場所はどこだろうかと悠真は思ったが。

「これ、先輩ですか?」

「ご名答! 早速アイドルになってみたよ!」

 まさに有言実行だった。どこかのステージにて、短いスカートとリボンたっぷりの衣装に身を包んでノリノリでギターを弾きまくっている杏と、長くて柔らかそうな髪が特徴的な、どこか戸惑っているようなボーカルらしき少女の姿。

「隣の人は誰ですか?」

「愛理ちゃん」

「はあ」

 で。その愛理さんというのは一体どこのどなたさんだろうかと、悠真は思った。少なくとも、聞いたことのない名前だ。

「いやー、愛理ちゃん可愛かったなぁ。友達に無理やり応募させられたから仕方なく参加したとか言っていたけど、素質は充分だと思ったなぁ」

 杏の評価では、その愛理という少女はアイドルの素質があるようだ。それはさておき、どのような経緯でこうなったのか、何があったのか、全てが謎だらけ。

「それでねそれでね悠真クン。この衣装で、してみたくない?」

「何を、ですか?」

「決まってるじゃない」

 その時、杏の目が妖しく光った。

「いいこと、だよ?」

「……」

 突如襲いくる金縛り。悠真は杏に抱きかかえられるがままに、地べたへと押し倒されていた。床に後頭部を打ち付けることなく、とても優しく。

「ここで、するんですか?」

 はいはいを覚えた赤ん坊が親の体によじ登ってくるように、杏は悠真に近づく。

「ここじゃ嫌?」

「嫌じゃないけど。誰かに勘付かれたらと思うと」

「そう? ……そうだ。それならちょうどいいところがあるよ」

 杏の笑みが眩しい。また何か思いついたみたいだ。










…………










 そうして、悠真が杏に手を引かれるがままにたどり着いた所。

「やっぱりアイドルはステージ上よね」

「……」

 暗くなった体育館のステージ上。そして、杏はいつの間にかアイドル衣装に着替え済みで、つい先程と同じように押し倒されている悠真の姿という構図。

「相変わらず、全く話が見えないんですが」

「そう? わかりやすいと思うんだけどな」

「なぜいきなりアイドルなのか。愛理って誰なのか。何で体育館でこうなっているのか」

「三つの質問とはわかりやすくていいね。この前も言ったけど、一つ目は、今、何だかアイドルが流行ってるっぽいから、純粋に可愛いなーって思ってね。それで、そんな格好で悠真クンとエッチしたいなって思ったんだ」

「……」

「どうかな? うら若き乙女のアイドル姿。見とれちゃう?」

「うら若き……」

 悠真の一言に、杏はじっとり半開きの眼差しを向けて抗議。少なくとも見た目はとても若いでしょと訴えている。

「むー。そこは華麗にスルーしてよ」

 杏はその豊満な胸を悠真の顔にむぎゅ、と押しつけてくる。年齢の話はタブーなのだったと悠真は思い出していた。

「そ、そうします」

「うん。よろしい」

 あっさりと許してくれる杏。けれど、柔らかな胸が離れてちょっと残念な気がする悠真。それはそれとして、二つ目の質問をぶつけてみる。

「で、愛理というのは」

「えとね。そういうわけなので、アイドルを体験してみたいなーってことで、試しにオーディションに申し込んでみて、受けてみたんだ。で、愛理ちゃんって娘とユニットを組むことになったの。その時、即席のユニットの名前をつけたんだけどね。その名もPASTA! って言うんだ」

「はあ」

 多分、きっと。彼女はその時スパゲッティでも食べたくなっていたから、適当な感じにそんな名前にしたのだろう。違いない、と悠真は思った。そしてそれが正解だと、すぐに判明する。

「何だかおいしそうな名前ですね」

「でしょでしょ〜。あの時、お昼に食べたスパゲッティが美味しくてさ。……悠真クンもおいしそうだけどね」

 じゅるり、と下品な音を立てつつ舌なめずり。

「先輩。……発情でもしているんですか?」

「そうだね。してる、と思う。……最近悠真クンが全然相手してくれないから。だから、会長特権で体育館の鍵をこっそり借りてきちゃったりして、二人きりになってみたんだ」

「それは。……なかなかタイミングが合わなかったから」

 色々あって忙しかったり場所が限られていたり。そんな理由。決してしないようにしていたわけではなかった。

「だったら物陰で押し倒したりとか、体育倉庫に連れ込んだりとか、大胆なことしてみてよ。あたしはいつでも準備OKだよ?」

 杏はごく自然な手つきで、直立する悠真の股間を撫で回す。三つ目の質問……体育館という場所は、きっと杏の望みだったのだろう。アイドルがコンサートをするような、そんな所だから。ムードも雰囲気も最高だろう。杏の言う通り、衣装は最高に似合っていて可愛らしい。

「してくれないならこっちからしちゃうから」

 悠真は杏の手で股間をまさぐられ、ズボンを膨らませてしまう。そうして杏は小悪魔のような笑みを悠真に向けながら、その膨らみに顔を埋め、ぐりぐりと擦りつける。しばらくそんなことを繰り返してから、今度はズボンのチャックを噛み、降ろしていく。

「あ……。ち、ちょっ」

 ふと、悠真は気付く。誰かの存在を忘れていたことに。

「こんな事をしていると、エレオノーラに怒られますよ?」

「エレ? ああ、大丈夫。ちょっとの間寝ていてねって、お願いしておいたから」

「……最初からするつもりだったんですね」

 用意周到だった。もう一人の自分自身にも根回し済み。

「うんっ。さあ、観念してお○んちん出しなさい!」

 悠真は股間の膨らみをぎゅ、と掴まれて表に引っ張り出されてしまう。そうして杏はおもむろに口を大きく開けて、かぷりと先端にしゃぶりついた。

「いただきまーす。あむ、はむっ。ん……。相変わらず大っきくてぶっとくて、ギンギンだね。お口からはみ出しちゃう」

 ちゅぷり、ちゅぷり、口の奥まで飲み込まれる度に水音が響く。

「んんんん」

 一心不乱に顔を前後に動かす杏。湿った唇が赤みを帯びていて艶めかしい。

「先輩。もう抵抗しませんから、動けるようにしてもらえませんか?」

「んぷ。んん? ダメ。そのまま身をまかせてなさい。いっぱい、してあげるから」

 今日はどうもそんな気分のようだ。杏は口で亀頭を咥えつつ、手でギュッと握りしめ、ぐしぐしと強めにしごく。

「んんっ。悠真クン。彼女がこんな可愛らしい衣装に身を包んでいるんだよ? 触ってみたいとか入れてみたいとか、そんな気は起きない?」

「もう充分過ぎるくらい起きてます……。けど、動きを封じられてますから、何もできません。触らせてもらえませんか?」

「そっか。嬉しいな。でも」

 もっともな悠真の説明に、杏は舌を出して悪戯っ子のような表情。けれどまた、悪巧みをしているようで。

「その分あたしが気持ち良くしてあげるから、今はじっとしてて」

「何でそんなに嬉しそうなんですか?」

「嬉しいよ? 大好きな人といちゃいちゃできるんだもん。これ以上の幸せはないよ」

 そう言って、れろれろと舌先で亀頭を舐め回す。

「ん、んん、ん、ん、ん。んんぅ。気持ちいい、かな?」

 すっかり暗くなった体育館のステージ上で、二人の密かな営みが続いていく。

「本当に、おしゃぶりのしがいがあるお○んちんだなあ。んんっ。可愛いな」

 杏は力を入れる。しごく手も、舌や唇も、動きが一気に早くなっていく。悠真はとっくに快感を堪えることができなくなっていた。

「先輩……。もう……。くっ!」

「イきそうなんだね? いいよ、思いっきり出しちゃって」

 悠真はもはや言葉を返す余裕もなかった。杏は悠真が達したのを見て、唇を離す。ぶぴゅ、ぶぴゅ、と盛大に撒き散らされる精液。悠真は動きを封じられていて、矛先を逸らすことができなかった。

「すごい」

 その結果。杏が着ている衣装も、顔も、腕や指先までもが汚されていく。

「先輩……」

「んっ。もっと。もっとかけて。んんっ!」

 尚も射精の勢いはおさまらない。杏はただ、目を閉じながら嬉しそうにしていた。

「かけられて、嬉しいんですか?」

「うん。だって……。ん……。すごく熱くて、気持ちいいよ」

 それはあたかも、暖かいシャワーを浴びている時のよう。

「んん……。気持ちいい……。悠真クン、最高……」

 杏にとって、とても幸せな瞬間。ずっとこのまま続いて欲しいと思った。










…………










「先輩。……拭き取ってください」

「嫌」

 精子まみれの杏。どろりとした濃厚な液体がぽたぽたとこぼれていくけれど、気にしない。

「だって勿体ないじゃない。折角いっぱい出して貰えたんだから」

 いつの間にかステージの上にはマイクスタンドが設置されていた。杏はその前に立ち上がり、掴む。

「悠真クン。笑顔で一生懸命歌ってるアイドルさんにね。後ろから襲いかかって欲しいな」

 悠真の金縛りはとけていた。悠真は杏に言われるまでもなく本能の赴くまま、杏の背後に立った。既に杏のショーツはずらされていて、程良く湿った割れ目が見えていた。

「あん……。ピタってくっついたね。今」

「したいと思いましたから」

「素直でよろしい。んっ!」

 宛がったものを押し込んでいくと、強い抵抗を感じながらも埋まり込んでいく。そうして二人は一つに繋がった。

「んんんっ! ……入ってく瞬間って、いいなあ」

「気持ちいいんですか?」

「うんっ! ずにゅって、中から押し広げられていくような圧迫感が、いいね」

「そういうものなんですか」

「人によると思うけどね。……ねえ悠真クン。想像してみて? 実際にあたしが今、ステージ上で歌ってて。目の前には大勢のギャラリーがいたとしたらって」

「大騒ぎですね。しかも、ぶっかけられたままですし」

 多分。というよりも間違いなく、スタッフ数名に捕まえられて怒られる。……どころじゃない。つまみ出されるだけではすまないだろうなと悠真は思う。一大スキャンダルもいいところだ。

「うんうん。だけど、悠真クンが透明人間だったら、ばれないかも?」

 何だそりゃ、と悠真は思うけれど、律儀に杏の問いに答える。

「不自然な動きで、即ばれるかと思います」

「そうかなー。それならあたし、やり過ごす自信あるんだけど」

「じゃあ、試しにやってみますか?」

「うんっ。じゃあ、思いっきり、してっ」

 そんなわけで、シミュレーションしてみることにした。杏は楽しくてたまらない子供のよう。

「んぅっ! はぅ! あふっ!」

 客席側からだと、杏の股間からとろりと糸を引いて流れ落ちていく雫だけが見えているだろう。スカートのその中で、悠真の大きなものが激しく出入りを繰り返している。

「もっともっと、動きますよ」

「うん。……あくっ! くはっ!」

 膣内を縦横無尽に動き、杏の感覚を刺激する。

「くひっ! んっ! あっ! そんな、ぐりぐりってされると……。んんんっ!」

 悠真がしっかりと掴んでいるのは杏の腰。そして、突き込んでいるのは杏の大きくて丸みを帯びた尻。ひんやりと冷たくも柔らかな感覚の中に、熱くてきつい締まり。悠真は最初から飛ばすように突き込みを進めていく。

「先輩の中。相変わらず、きついくらい締め付けてきますね」

「あっ! 悠真クンのも、相変わらず……太くて長いね。もう、プレイボーイなんだから。あっ!」

 強い刺激に思わずマイクスタンドにしがみつく杏。悠真が突き上げる度にがたがたと揺れて、とても不安定。

「先輩。全然やり過ごせてないじゃないですか」

「だって。んあっ! すごいんだもん……。悠真クン、上手だから……。あっあっ! 気持ちいいよぉぉっ! おかしくなっちゃう! はふっ!」

 杏のスカートの中は今、淫らにちゅくちゅくと音を立て、細かい雫が周囲に飛び散っていた。

「これが実際にライブだったら、喘ぎ声が体育館中に響き渡ってますよ?」

「んひっ! そんな……ぁぁぁぁっ! あああっ! はぅっ! あっ! 」

 あっという間に腰砕けになっていく杏。遊真の説明通り、杏はマイクにしがみついているのだから、粗い呼吸も、小刻みに聞こえる甘ったるい声も全てが衆目に晒されているはず。マイクがオンになっていればという仮定だけど、気分の高ぶった二人には本当に大勢の前でしているように思える。

「そんなにがくがくして、甘ったるい声出して、バレないとでも思ったんですか?」

「あっ! はぅっ! だって、悠真クンがうますぎるから……! 手のひらで転がされちゃう……! だめっ! あっ! 声が、出ちゃう!」

 立ったまま交わり続ける二人はやがて、揃って絶頂を迎える。まるで高ぶる気分を共有しているかのよう。

「ああああっ! だめっ! いっちゃううう! んあああああっ!」

「俺も。……出ます」

 どぷり、どぷり、と杏の中にたっぷりと精液がそそぎこまれていく。さわやかなライブに不釣合いな、淫靡な行為だった。










…………










「で」

「んんぅん」

 脱力し、座り込む悠真。悠真より更に脱力し、悠真の足を枕代わりにして眠る杏。人に慣れた猫のよう。

「色々聞きたいんですが」

「何かな? ふぁぁ。いい汗かいたら眠たくなってきちゃった」

「何でアイドルにはまったんですか?」

 あくび混じりの杏の一言を無視して、悠真は問う。

「いやー。この前たまたま深夜のアイドルの番組見ちゃってさ。ジュニアアイドルってやつ? これがまたすっごく可愛くてさー」

「それで、自分もアイドルになってみたくなったと?」

「ちょっと真似したくなっただけ。いいじゃない、それくらい」

「悪いとは言っていませんけど」

「あたしだって女の子だから。そういうのに憧れる事くらいあるよ」

「そうですね」

「それにしても、舞菜ちゃんも紗由ちゃんも瑞葉ちゃんもみんな可愛いなぁ。でへへ」

 じゅるりと舌なめずりする杏。美人がとても残念なことになっていた。

「……」

 杏の口から出てきたアイドルらしき名前は誰だろうと悠真は思ったけれど、あえて指摘しないでおいた。

「何でそんなに発情してるんですか?」

「悠真クンが最近相手してくれないからだって。それに」

 急に杏は、拗ねたような表情になった。杏が妙に積極的なのは、悠真とのエッチがご無沙汰だっただけじゃないようだ。

「悠真クンの周り、可愛い子がいっぱいだから。夕莉とか美桜ちゃんとか。お家にもこなたんと浅葉先生がいるし。目移りしちゃったらやだよって思って」

 思いっきり妬いているのだった。

「先輩……。こなみは妹ですし、葵さんは母親ですよ?」

「そんなの関係無いよ。だって、可愛いんだもん。こなたんも、浅葉先生も」

 とても、ぶーたれた表情。彼女にとって可愛いということはすなわち正義であり、倫理観などはどうでもいいのだった。

「いやだから……」

「じゃあ聞くけど。お姉さんみたいな浅葉先生にいーこいーこってハグされたり、こなたんがスカート姿で座ってる時に片足あげて、おぱんつちらちらとか、誘惑されたりしてない?」

 ああそれは、まさにそんな事をしょっちゅうされてます。と悠真は思ったけれどあえて言わないでおいた。きっと、我が家での常識は、外では非常識なのに違いないから。口は災のもとだと悠真は実感した。

「先輩。俺は先輩以外の人には興味がないですよ」

「本当に?」

「信じてくださいよ」

「疑ってるわけじゃないけどさー」

「不安ですか」

「……。うん」

 素直に頷く杏。

「そんな思いをさせてすみません」

「お詫びに、もっとエッチなことしてくれる?」

「ええ。いいですよ。何をしますか?」

 杏の表情は一瞬にして、ぱあっと明るくなった。お菓子を買ってもらえるときの子供のように。










…………










「ん。はむ……。あむ」

 月明かりの無い暗い空。見上げてみると、星々だけが輝いて見えている。

「んん。んぐ……。ね。結構いい所でしょ?」

「そう、ですね」

 体育館のステージ上で思う存分交わった後。穴場があるからと、杏に誘われるがままに悠真がついていった先は、校舎脇の非常階段。そしてその一番上の踊り場。そんなところで二人はこれまでの続きをしていた。杏は今も尚、アイドルの衣装に見を包んでいて、彼女曰く『ライブの後に、アイドルを連れ去って独り占めしているような感じ?』とのことだった。今は言うなれば、その後のお楽しみタイムといったところ。杏の衣装ははだけていて、白く瑞々しい肌が剥き出しになっていた。

「それにしても、こういうのが好きなんだ。悠真クンは」

 足を投げ出し、階段の上に腰掛けている悠真と、その下腹部にのしかかっている杏。

「好きというか、こういう事もして欲しいなって思ったから、お願いしたんです」

「そっか。嬉しいな。おっぱいの谷間で挟んでぐしぐしするなんて、変な感じだけど」

「見てるだけでそそられます」

「ロマンチックだよね。こんな星空の下で二人きりなんて」

「していることはセックスですけど」

 ロマンチックとは違うかもしれないと、悠真は思った。

「お月様みたいなまんまるおっぱいでパイズリ。ロマンチックというより、エロティック?」

「エロそのものかと」

 ぐちゅ、ぬちゅ、ぐしゅ、ぷちゅ、と粘り気を帯びつつも泡立つような音が聞こえる。杏のボリュームたっぷりの胸は今、杏自身の手によってしっかりと掴まれて、ぐにゅりと千切れそうなくらい強く延ばされては悠真のものを挟み込んでいる。悠真の先走り液とローションと、そして杏の汗と涎。それらがそれぞれ混じり合って卑猥な音を奏でている。

「ん、ん。あたしもだけど、悠真クンもなかなかエッチだなぁ。お○んぽの先っちょ、ぬるぬるになってるよ。こんな、乳首ビンビンになっちゃったおっぱいにずりずりされちゃって、ね」

 悠真の吐息が少し粗くなっていく。

「ん……。それは、気持ちいいから」

「さっきあれだけあたしにザーメンぶっかけておいて、まだ出し足りないの? この絶倫クン」

 舌を思い切り出しながら、ちゅるちゅると亀頭の割れ目を舐め続ける杏。上目遣いの眼差しは、普段のおちゃらけぶりとは異なり、とても妖艶な雰囲気を漂わせている。

「どうなのよ? 答えなさい」

 きつい女のように命令口調。と、同時に悠真の亀頭を、自動車のシフトレバーを握るかのように手の平で包み込んだ。少し強めに。

「ぐっ。……出し足りない、です」

「そぉ」

 杏は素っ気なく頷き、胸によるしごきを続ける。興味無さ気な態度は年上の余裕。

「悠真クンの特濃ミルク、いっぱい吸い取ってあげる。あたしのおっぱいで絞りとられたミルクをね」

 杏は本気。ものすごく強い力で胸を掴み、しごきあげる。杏の胸と自分のものが一体化してしまいそうに悠真は錯覚してしまった。

「くぅぅっ! うぁぁぁっ!」

 あっという間に射精感が増幅していく。

「出しちゃおうよ。オナニー中毒のお猿さんみたいに」

 促されるまでもない。堪える事などまるでできず、悠真は射精した。杏の胸に挟まれたままのものから、精液が噴射されていく。

「あ……。あぁぁ……あぁ……」

 女の子みたいに可愛いなと、悠真のうめき声を杏は評した。

「ん。んん。すごい。あたしの顔、べとべと。目、開けてられないよ……。すごい。熱い。ステキ」

 ぶちゃ、ぶちゃ、と杏の顔を叩く精液。溢れ出たそれらは杏の胸の谷間に溜まり、それでも尚噴射は続き……。

「んぐ。悠真クン……。みるく、頂戴……んぐ」

 やがて杏は悠真のものを咥え込む。杏の口内は一気に悠真の精液で満たされていく。ごく、ごく、と一口二口飲み、尚も続けて飲もうとするもとても間に合わない。

(あ……。あたし、溺れ……そう)

 ごぽりと、杏の喉が鳴った。好きな人の精液に包まれて快感を覚える。まるで淫魔のようだと杏は思った。両胸に加えて両手でもダムを造って溢れるのを避ける。もしこのまま溺れてしまい、窒息死したとしても悔いは残らないかもしれない。そんな、天にも昇るような気分。死神が聞いて飽きるわと、杏は思った。

「ん……ぐ……」

「先輩……」

 やっとの事で悠真の射精が止まる。杏は立ち上がり、手すりの方へと向かい……。

「んふ……!」

 暗く、底が見えない奈落に向かい、口や胸いっぱいに溜め込んだ精液を吐き出した。ぶちゃ、ぴちゃ、と音を立てそれらは落ちていく。

「んんんぅ。も、もう飲めないよぉ……。けふっ。お腹いっぱい……。うぅ……」

 長く糸を引き、粘りけのある白濁液が落ちていく。丸い缶にたっぷりと詰まっていた白ペンキをこぼしてしまったような、そんな光景。

「けふっ。えふっ。ん。もう、悠真クン絶倫すぎ……。何この量……。信じられない」

「人に無理やり出させておいて何を言っているんですか」

「だって、おいしかったんだもん」

 小悪魔めいた妖しさを見せたかと思えば、子供のような杏。コロコロ変わる表情が見ていて飽きないなと悠真は思った。










…………










「あっあっ。んっ。お空に、吸い込まれそう」

 今の気分をそのように説明する杏。あれからすぐに杏は悠真に『もう一回しよっ』とねだった。パイズリをされているときに絶倫とか言われたけれど、その言葉、そっくりそのまま返しますと悠真は言いながらも、杏は拒否はしなかった。事実なのだから

「先輩のお尻。柔らかいですね」

「あ、お尻が大きいって思ったでしょ? 嬉しくない……」

「そうですか? すべすべしてて、ひんやりしてて、触ってて気持ちいいですよ」

「んぁっ! あーもう、くすぐったいよ! 痴漢みたいだよ!」

 仰向けに寝そべる悠真。見上げてみると、すぐ側に杏の顔。杏は悠真の体に跨がり、挿入しながら上下に揺れていた。悠真は言葉の通り、杏の尻をむんずと掴んでいた。

「先輩。やらしいですね。胸をぷるんぷるん揺らして、お尻もたゆんたゆんしています」

「むー。何だか脂肪の塊みたいに思われてる」

「思ってませんよ。先輩は、出るところは出てるけど、腰はくびれてるし腕は細いし。モデルみたいにスタイル抜群だと思います」

 杏はきゅん、と胸の鼓動が高まったような気がした。そういう事を真顔でしれっと言うから、だから賞金首になるのよと杏は思ったけれど、見事のその術中にはまってしまったのか、嬉しくてたまらない。

「あ……ありがと。何だか、照れるな。んんっ!」

 そうこう言っている間にも、杏は背筋にしびれが走り、快感が増してきていることに気付いた。褒められて嬉しくて、無意識のうちに悠真のものを締め付けてしまっていたようだ。

「あふっ。ゆ、悠真クン。あのねっ。あたしまた……いっちゃっても、いいかな?」

「何を遠慮する必要があるんですか? 思う存分感じてくださいよ」

 もう、余裕は無かった。杏は素直に悠真の言葉に従う。

「うんっ。ありがと。遠慮なく、そうさせてもらうね。んっ! はふっ! あっ! おなか、いっぱいに……悠真クンのが。あひっ!」

 ずちゅ、ずちゅ、と交わりながら杏は絶頂を迎えていく。腰をくねらせ、尻の肉をたゆませながら子宮をこつこつと突かれて……。

「あっ! あっ! あぁぁっ! はぁぁぁっ! 感じすぎちゃう! あああっ! い、いっ……ちゃうぅぅぅっ!」

 びくんびくんと震え、はじかれたように体を仰け反らせる杏。星々がよりいっそう輝いて見えた。その輝きに吸い込まれてしまいそう。

「あ、あん……。悠真クン。気持ちいい……。最高。一瞬意識、飛んじゃったかも……」

「それは良かった」

「うん。……でも、悠真クンにもまたイって欲しいな」

「え」

「遠慮はノーサンキューだからね」

 そう言いながら杏は立ち上がる。途中、杏の奥深くまでねじ込まれていたものが、にゅるりと抜ける。

「ん」

「先輩?」

 悠真が見上げると、そこにはアイドルの衣装を全て脱ぎ捨てた杏の姿。

「ありのままの姿で、悠真クンとしたいなって思ったから」

 そして、手にした衣装を手すりの外に放り投げてしまった。リボンやスカート、ソックスからアクセサリまでも全て。

「イっちゃったばっかりだけど、おかわりが欲しいな。もう一回、エッチしよっ」

 文字通り生まれたままの姿で、悠真との交わりを求めるのだった。










…………










 暗闇に包まれた所。誰もいない屋上。普段は入れないけれど、杏は鍵を持っていた。いくら生徒会長だからってそんな特権を振りかざしちゃいけないでしょうと悠真に言われて、今回だけだもんと苦しい言い訳をした杏。

「あ、あふっ! ふぁっ!」

 だだっ広い屋上の真ん中で立ったまま交わる二人。冷たい床をものともせず、靴もソックスも履かずに裸足で。悠真は杏の後ろに立って、両腕を掴んで引き寄せながら膣内へと突き込んでいる。

「あっ! あっ! 悠真クン、すごい! 奥まで入ってるよぉ!」

 杏が望んだのは、相変わらずアイドルにとってはスキャンダラスなシチュエーション。

「すごい。もっともっと。はぅっ!」

 大勢の前で思いっきり歌って、万雷の拍手に包まれ、手を振りながらながらステージ裏へと姿を消したアイドル。そんな憧れの存在をとっ捕まえて連れ去って独り占め。無理やり手を伸ばし衣装をちょっと乱暴な手付きで全て脱がせて、好き放題に欲望をぶちまける。恋愛禁止だなんて関係ない。

「ああっあっあっあっ! すごい……。すごいよ悠真クン……。好き……。あっ!」

 星空の元。輝く光に照らされて、杏のゆっさゆっさと揺れる胸も、ぷにゅぷにゅと弛む尻も、白い肌が透き通るように見えた。

「あっあっ! 激しいよぉっ! だめぇぇぇっ! あつくて、じんじんしちゃう!」

 杏の中。きゅうきゅうと締め付けてくる感覚が堪らない。悠真はいつまでも動き続け、杏を弄びたいと思った。杏の方も、子宮の方まで突き込まれて、そのまま続けて欲しいと思っている。

「先輩。俺、また出そうです」

「うんっ! 出して! 中にいっぱい出してぇぇ!」

 悠真も込み上げて来るものを放出しようと勢いをつけて打ち込む。杏は少しよろめき、前のめりになっていき、転落防止のフェンスへとぶつかるように押しつけられてしまった。

「あっあっあっあっ! はうっ! あぅっ! あああああああああっ!」

 ぎゅうぎゅうと、杏の大きな胸は悠真の手で絞るように揉まれるのと同時に、フェンスの跡がつくくらい強く押しつけられてしまう。そしてそのままがしゃがしゃとフェンスを揺らし、やかましく音を響かせながら悠真は達した。杏の子宮の方にまでたっぷりと精液を満たしていく。

「あぁぁっ。あ、熱いのがいっぱいお○んこに入ってくる……。はぁぁぁ……。あたしもまたいっちゃう! あああああああっ! あ、あ、あ……。あぁぁ……。あ、あれ?」

 二人揃っての絶頂。しかし、夢見心地から一転。重大な事に気付く杏。

「何ですか?」

「あ、あ……。む、胸が……。抜けなくなっちゃった」

 脱力してへたり込もうとして、何かが引っかかった。杏は驚きの余り目をまん丸にしている。

「は?」

 何を言っているのかわからないと悠真は思ったが、実際に見てみると納得。

「……あ、あ〜」

 なるほど、そういうことかと思った。

「そんな狭い隙間に、よく入りましたね」

「嬉しくない〜! あ〜〜〜っ! あいたたたた! 動けない〜! 抜けない〜!」

 悠真がとても強く押し付けるものだから、杏の豊かな胸は青緑色のフェンスの間へと押しこまれてしまい、すっぽりと入り込んでしまったのだった。どこにでもあるような菱形状に編まれたフェンスの隙間に。

「先輩の胸。大きくてとろけそうなくらい柔らかいですからね。ぎゅうぎゅう押し込んだから、網の間に入り込んじゃったみたいですね」

 その感触は例えるならばプリンとかマシュマロとかゼリーとか、そんなぷるぷるしそうな柔らかさ。悠真はそう思った。交わりながら、杏の背後から胸をクリーム絞り袋を絞るかのように強く揉んだものだから、たまたま先端がすっぽりとフェンスの隙間に入ったのだろう。そして根本まで一気に、ぽんっとねじり込んでしまった。しかも左右同時に。

「何だか手品みたいです。こんなことってあり得るんですね」

「冷静な分析ありがとう。……うう。それにしても、人の胸をスライムとか軟体動物みたいに言わないでくれないかな。っていうか、悠真クン見てないで助けてよ。早くあたしのおっぱいをここから引っ張り出して」

 絶頂の興奮冷めやらぬ間に、とても情けなくも間抜けな光景。外側から見れば、謎の丸い物体が二つ、フェンスにくっついているであろう。

「そうですね」

「ああもう、何でこんな目に。悠真クンが手加減抜きでがんがん押し付けてくるから……」

「でも、気持ち良かったでしょ?」

「それは……うん。気持ち良かった。夢中で感じちゃった。最高だった」

 素直な杏に、悠真は少し意地悪をしてみたくなってしまった。何しろまだ、悠真は杏の中から抜いてすらいないのだから。

「じゃあ、抜きます」

「あ、ありがと。……。って。悠真クン!?」

 ばちゅんばちゅんと、かき混ぜられるような音。悠真は自ら射精を終えたばかりの杏の膣内に、新たな刺激を与えていく。杏は驚愕の余り目を見開いていた。

「あっ! な、何してんの!?」

「また抜こうかと」

「ちょっ! そんなっ!」

 抜く、の意味が根本的に違った。ぱちゅぱちゅと音を立て、杏の中から精液や愛液やらが溢れていく。まるで水風船みたいだと悠真は思った。

「先輩が悪いんです。そんな風にお尻を突きだして誘われたら、我慢できません」

「さ、誘ってなんか……。ああっ! は、激しい! 悠真クンの絶倫! ああああああああああんっ! ま、またいっちゃうぅぅぅっ! んああああああああっ!」

 立ったまま身動きができない杏。それを良いことに、悠真は背後から容赦なく突き立てる。こんな状況なのに、杏は気持ちよくてたまらない。ぱちんぱちん、ぱんぱん、という汗ばんだ肉体同士がぶつかり合う音と共に、がしゃがしゃとフェンスが激しく揺れる。杏の華奢な体が壊れてしまいそうなくらいの激しい交わり。

「くあぁっ! だめえええっ! もう許してえええっ! そんなに強く! だめええええっ! あひいっ! あっあっあっあっああああああっ!」

 ビクビク震え、否応なしに絶頂を迎えさせられる杏。何の脈絡も無く杏がアイドルになるところから始まって、思ってもいなかったクライマックスを二人は迎えるのだった。





















----------後書き----------


 シリーズ第四作は杏編であります。

 毎度の事ですが、またまたえらく時間がかかってしまいました。ちまちまと書き進めてようやくの事で公開に至りました。

 彼女は尽くしてくれて更に行動的なので、こんな感じのお話になりました。PASTA! の絵なども見たりしたので、そんな影響も受けています。余談ですが、きっと愛理はさなきちによってオーディションに応募させられたのでしょう。

 いかがでしたでしょうか?


ご感想を頂けると嬉しいです。





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