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桜色のエピソード
-浅葉葵編-















 夕食後の浅葉家。こなみの自室にて、兄妹の会話。

「別に大きな問題はないと思います」

「いいのか?」

 こなみはあっさりと頷いた。悠真の深い悩みをじっくりと聞いてきた上で。

「そもそも、わたし達と葵さんとは血縁関係がないわけで。……そうですね。例えるなら、わたしと兄さんが関係を持ってしまうようなことより、遥かに問題は少ないと思います」

「何だその変な例えは」

「例えばですよ。あくまでも」

 面白がってるのか、からかっているのか。こなみは楽しそうに笑顔を見せている。

「事実は小説よりも奇なりと言いますし。そういうシチュエーションだって、絶対に無いとは言えないですからね」

 そんなことをあっさり言い切る妹はどうかと思うと、悠真は口に出しそうになったけれどやめておいた。今の自分は人の事をどうこう言えたものでもないわけで。

「それで。兄さんはどうするのですか? 葵さんを強引に押し倒して、俺の女になれと迫るのですか?」

 またそういうからかうような一言を、と悠真はため息をつく。

「そんな事はしない」

「じゃあ、最近流行りの壁ドンでもしてみますか?」

 しないけれど。したらしたで、きっと効果はてきめんなんだろうなと悠真は思った。それ程までに葵は自分のことを溺愛しているとわかっている。

「しない」

 想いを抱いてしまった人が義理とはいえ、よりによって自分の母親だとは。もう、どうすればいいのかわからない。想いを伝えることすら良いのかどうかがわからない。誰にも伝えずに悶々とした思いをどうにかして消していくしかないのかと思っていた。それが悠真の答えだった。今の今までは。こなみはそんな兄の消極性をお見通しのようで。

「そうですか。生真面目な兄さんらしいですね」

 うんうんと頷いて、そして切り出す。

「でも兄さん。確認の為にもう一度聞きますが、葵さんのことが好きになってしまったのは、冗談では無く本当なんですよね?」

 それはLikeではなくLoveという意味でと、こなみは改めて聞いてきた。

「ああ。それは本当だ。嘘偽り無く本気だ」

 誓っていいくらいだと悠真は思った。けれど、事が事だけに誰にも相談できずに悶々としてきた。それでも募る思いはどうしようもできず、こなみに相談をしてみたのだった。悠真はいつになく真剣な眼差しで『お前に、馬鹿なことを言うんじゃないよって、思いっきり怒られるかもしれないけれど』と、前置きをしてから。その結果、こなみはあっさりと『いいんじゃないですか?』と、答えたのだった。

「それなら兄さん。ここは一つ、わたしに任せてもらえませんか?」

「いいけど。どうするつもりなんだ?」

「兄さんの代わりにわたしが葵さんに告白してきます」

「……本気か?」

「はい。それじゃ、妹はちょっくら言ってきます」

「今から!?」

「はい。善は急げと言いますし。それに、兄さんではいつまでたっても告れなさそうですし。まあ、葵さんも葵さんで告白されたところで大慌てになって、結果として収拾がつかなくなりそうですから」

 きっとそうだろう。こなみは丸く収める自身が大いにあるようだ。確かにこなみの言うとおり、自分はうじうじしてしまいそうだと悠真は思った。心の準備などいつまでたっても終わりそうもない。神経症にでもなってしまいそうなくらい、不安ばかりが押し寄せてきているのだから。

「異論、ありませんね?」

 有無を言わせぬ強引さ。こなみの目は真剣だった。

「……あ、ああ」

「では、行って参ります」

 何だか猛烈に妹が心強いと、悠真は思った。そして自分自身が不甲斐ないとも。こんな大事なことをお任せしてしまっても良いのだろうかと、そんな疑問を抱くまもなく、こなみは部屋を出ていった。










そして。










 リビングにて。夕食も終わり、くつろいでいる葵の姿。そこへこなみが一人でやってきた。

「あ、こなみちゃん。お風呂沸いたよー」

「はい。葵さん、お話があるんですが」

「なあに?」

 葵はとてもリラックスした様子。

「兄さんがですね。葵さんの事を、女として好きになってしまいました」

「……え?」

 あまりにもあっさりとした、とんでもない一言に笑顔で聞き返してしまう葵。当然のことながら、事態がまるで飲み込めていない。

「もう一度言いますね。よく聞いてください。兄さんが、葵さんの事を、一人の女性として好きになってしまい、付き合って欲しいという想いを抱いているんです」

 聞き間違えの無いように、一言一言区切りながらはっきりと言い切るこなみ。

「……そ」

「冗談ではありません。ガチです」

 葵は驚きの余り目がまん丸になるくらい見開いて、そして。

「え、え、ええええええええええええええええええええええええっ!? そ、そ、そそそっ……そんなのっ!」

「ダメだよと言う前に、とりあえずわたしのお話を聞いてもらえませんか? 一から詳しく説明しますから」

 こなみは葵の口元にぺたりと右手の手の平を当てて落ちつかせる。パニック状態になるのは最初からわかっていたから、しっかりと抑えて落ちつかせる。

「ん……う、うん。ど、どういうことか、詳しく教えて」

 心臓が思いっきりばくんばくんと音を立てて、卒倒しそうな葵はこなみのおかげでどうにか一呼吸入れる事が出来たのだった。










元よりそのつもり。こなみは淡々と語り始める。










「――可愛くて優しくて健気で、わたし達のことをとても、誰よりも大切に思ってくれていて。いつも一生懸命で。歳も、母親と言える程離れていなくて。そんなお姉さんみたいな葵さんに、兄さんはいつしか母親としてでなく一人の女性として、本気の恋をしてしまったんです」

「そう、なんだ……」

 テーブルの上には湯気を立てているティーカップが二つ。こなみの落ち着き具合に飲み込まれるように、葵はパニックに陥らずに済んでいた。

「葵さん。嫌ですか?」

 葵はこなみの質問に否と答える。それだけは断言する。

「い、嫌じゃないよ!? 悠真くんがわたしの事をそんな風に思ってくれていたなんて、ものすごく嬉しいよ!? で、でも……。でもね……。でも……」

「父さんに申し訳ないと、そう思っているんですね?」

「……。うん。だ、だって、わたしは二人のお母さんとしてしっかりしなきゃいけないのに。あの時。数人さんが亡くなったあの時にそう誓ったのに、それなのに……」

 この様な状況になってしまって良いのだろうかと葵は思っているのだった。

「葵さん。兄さんは、葵さんのそういうまっすぐで真面目なところにも惹かれたんです。それに、父さんは……」

 こなみは軽く目を閉じて一呼吸おきながら、答える。

「この状況を見たら、こう答えると思うんです。葵さんと、わたし達が幸せになるのなら、迷わないでいいんだよと」

「……そう、かな」

「はい。断言します。きっと、葵さんのことを頼むよと、そう言うと思います」

「……こなみちゃんは、どう思っているの? 反対じゃないの?」

「反対なんてしません。兄さんと葵さんは、とてもお似合いだと思います。それに」

 場の緊張を解くかのように、こなみは笑顔を見せる。

「わたしにとっては、お母さんに加えてお姉さんができるみたいで、二度お得じゃないですか」

 一挙両得とばかりに言い切った。

「そっか」

 やがて葵も硬い表情を崩して微笑んだ。

「と、いうわけですので。後は若いお二人にお任せする次第ということで――」

「え?」

 一連の説明を終えたこなみは、お見合いの席で立ち会いでもしているかのようなことを言ってからすっくと立ち上がる。

「兄さん、出番です。もう出てきてもいいですよ」

『あ、ああ』

 ドアの向こうにいる兄に一声かける。かけられた方は驚いてビクッとしてしまった。

「悠真くん……」

「葵さん。……その。困らせてごめんなさい」

 何ともばつが悪そうな悠真と葵。そこに、こほんとこなみの咳払いが響く。

「兄さん。葵さん。突然ですが、わたしは一晩、美桜さんの所にお泊まりしてこようかと思います」

「え?」

「こなみちゃん?」

「大丈夫です。既に美桜さんの了解は頂いていますから。ということですので、お二人でじっくりと話し合ってください。どんな結果になってもわたしは受け入れますから。じゃ」

 ドアが閉じられる音だけが響く。

「あ……」

「行っちゃった……ね」

 こなみは二人に言いたい事を言ってから、さっさと出て行った。あまりにも一方的で手際が良くて、悠真も葵も何も言えなかった。










そして、こなみが言うところの『若い二人にお任せ』タイムが始まった。










 テーブルを隔てて向かい合う二人。しばしの間、沈黙が続く。時計の針がゆっくりと回っているように思える。

「悠真くん……」

「葵さん。こなみから聞いた通りです」

 ジョークでもドッキリでもないと悠真は言い切る。そして、迷ってはいけないとも思った。

「好きです。付き合ってくれませんか」

 悠真のストレートな告白に、葵はちょっと困ったように笑う。その一言は、決して軽いものではないとわかるから。

「……いっぱい、迷ったんだね?」

「はい」

「こなみちゃんは、迷いが無くてすごいよね」

「そうですね」

 完全に場をコントロールされてしまったと、二人共思う。そして、悠真にとって全く予想外の展開が待ち受けていた。

「いいよ、悠真くん。……お付き合い、しよ?」

「……はい」

 悠真は心の中でこなみに礼を言った。互いに色んな事を覚悟の上で、このような事になった。

「でもね。……このことは、わたし達以外の人にはしばらく秘密にしとこ? 悠真くんとこなみちゃんが学校を卒業してそれから何年かして……それまで、ね」

 その方が余計な波風を立てなくていいだろうと悠真も思った。無難な落としどころというものだろう。

「そうですね。それがいいと思います。後でこなみにも言っておきます」

「うんっ」

 そして二人は改めてあることに気付く。

「そういえば。それ、何だろうね?」

「何でしょう?」

 テーブルの脇に置いてある紙袋。それはこなみが慌ただしく出かける間際に『これ、よかったら使ってください』と、置いていったもの。中身の説明は特に無かった。

「こなみのやつ……」

「あ……」

 ごそごそと中身を取り出して広げてみると、葵は頬を赤らめ、呆れてものも言えない悠真。

「体操着……スパッツ……制服……」

 それらは皆、こなみが普段着用しているもののようだ。そうして、急いで用意したのだろうか、走り書きのメモ書きがあった。『兄さんへ。夜のお供に是非使ってください。直接かけられてしまうのはちょっと困りますが、なるべく防ぐ努力はしてみてください。by.こなみ』とか何とか。

「やれやれ」

「こなみちゃんったら」

「すみません。ちょっと、悪のりが過ぎますよね」

 こなみなりの気の回し方のようだった。悠真はため息をつき、葵はくすくす笑っている。

「ううん、そんな事ないよ。何だかおかしいな。……ねえ、悠真くん」

 葵もこなみの悪のりに影響されたのだろうか。とんでもない事を言い始める。

「それ、使ってみない?」

 つまりはそう、こなみの好意に甘えてみない? との葵からの提案。悠真が断る理由など、どこにもなかった。むしろ、見てみたいと思ったけれど、そんな事は口には出せなかった。










…………










 いつものように葵の方から悠真を包み込むという、スキンシップ。そしていつもよりも長目のハグから迷ったように、悠真の頬にキス。けれど、今日はこれで終わりではない。もはや、親子のコミュニケーションだけでは済まされない。

「えっと」

 この後も、更に続きをするんだよね? と、上目遣いの葵が問いかけているかのように悠真には見えた。その先に踏み込んでしまっても本当にいいのかな、と迷いを帯びた眼差し。

「やっぱり、やめますか?」

「や、やめない。やめないよ? もっとしちゃう……よ。けど」

 身長差の分、背伸びして悠真に少しでも近づきながら葵は問いかける。

「悠真くんは、その。本当に……わたしなんかでいいの?」

「葵さんがいいです」

 その先を言わせないように、悠真は葵を強めに抱きしめる。彼女が不安など感じている暇がないようにするために。寸前で千載一遇の大チャンスを逃すような事をしたくないから。

「あぁ……。悠真くん……。暖かいよ」

「続き、しましょう」

「ん……。うん。……んん」

 やがて始まる唇同士のキス。しばらくくっついたまま止まって、動かない。そうして二人は遂に、最後の一線を越えた。

「ん……。キス、しちゃった……。ほっぺじゃないところにキス……。悠真くんと、本当のキス……。しちゃった。ちゅーって、しちゃった」

「そうですね」

 胸の高まりが止まらない。ほんのりと酔ったように体に火照りを感じる葵。悠真もそれは同じようだった。

「ねえ悠真くん。後ろ、向いてて」

「え?」

「ほら。こなみちゃんが用意してくれたの、折角だから、早速着てみようかなって。だめ?」

「本気で着るんですね?」

「うん。ダメ?」

 自分たちを受け入れてくれたこなみ。極めて異常な関係だからと、自分達が罪悪感や後悔を抱かないように、緊張を解くような配慮をしてくれたのだと葵は思った。だから、こなみの優しさを、ありがたく受け入れようとした。

「ダメではないです。……じゃあ、後ろ向きますね」

 悠真の一言に、葵は笑顔で頷いた。

「少しだけ、待ってて」

 しゅるり、ふさ、ぱさ……。そんな布地が擦れる音が聞こえる。薄い緑色の室内着を脱いでいる葵。悠真はただ、葵に背を向けて直立している。とても背徳感溢れる状況だと悠真は思う。

「……。胸のところがゆるゆる。こなみちゃん……。いいなあ」

 心底羨ましそうな葵の声。それから程なくして、悠真に声がかけられる。

「悠真くん。いいよ。こっち向いて」

「はい。じゃあ、振り返りますよ」

 つい先程までとはまるで雰囲気が違っていた。白い体操着に紺色のスパッツという姿。

「……。体育の先生が、生徒の体操着を着てるって、すごくいけないことだよね」

 恥じらいと背徳感に、葵はもじもじと身を縮こませている。白くスラッとした素足が眩しく見える。

「それも、こなみちゃんの……自分の娘の、なんて」

「こなみがいいって言ったんですから。いけないことじゃないです」

 確かにそうだ。でも……。真面目な葵はいけない事だと考えてしまうに違いない。悠真はすぐに、手を伸ばす。葵に無駄なことを考えさせない為に。

「葵さん。体、触ります。いいですよね」

「え……。ひゃっ!」

 悠真は葵の胸の膨らみにぺたりと触れる。ぴっちりとした紺色のスパッツにも同時に。葵はショックを受けたのか驚いたのか目を見開いている。

「嫌ですか?」

「う、ううん。嫌じゃないよ。そのまま続けて」

 体育教師らしく、引き締まった体。白くてしなやかな足。戸惑いながらも優しく微笑んでいる眼差し。悠真には、彼女の全てが魅力的に見えた。

「葵さん……」

 決して小さくなんて無いと悠真は思う。むしろ、程よい大きさの胸を何度も弄る。掴んで揉み回したり、手の平でこね回す。柔らかいな、と思う。

「んっ。あっ」

「あ……。痛かったですか?」

「ううん。大丈夫だよ。平気。慣れてない、から」

 それはそうだろう。彼女が置かれた境遇を考える余裕が無かったとわかり、悠真は自分が情けなくなる。

「ねえ、悠真くん。想像してみて。わたしは悠真くんのお母さんで……担任の先生なんだよね」

「ええ。でも、お母さんというか……ずっと、可愛いお姉さんのように思っていました」

「ありがと。……あ、じゃあ。こなみちゃんの制服を着させてもらったら、悠真くんの上級生というか、先輩みたいにもなれるかな。なんて……。無理があるよね。あはは」

 悠真は素直な思いをそのまま口にする。

「なれます。葵さんは現役みたいです。まるで違和感なんてないですよ」

「もう、悠真くんはお世辞が上手だよ。そんなこと言われたら、女の子は誰だって嬉しくなっちゃうよ。わたしみたいなおばさんでも」

「葵さんはおばさんじゃないです。……。可愛くてたまらない、お姉さんです」

 自分を卑下しないで欲しいと悠真は訴える。

「……。嬉しいよ」

 悠真は提案する。

「例えば……。想像してみてください。俺がとても悪いやつで、担任の先生の弱みを握って、わざと生徒と同じ体操着を着せて恥ずかしがらせて、誰もない倉庫に呼び出したりとかして……。とか、そういう感じがいいです」

「うん……。わかったよ。お芝居、してみせるね」

 イメクラとで言うのだろうか? 少しかび臭い倉庫で。積み重ねられた跳び箱やらバスケやバレー用のボールがかごに入っていたり、体操用のマットやらが積み重ねられている。そんな想像。

「ゆ、悠真くん。約束通り、来たよ? えと……。し、写真を返して……。とか?」

「だめです。……。後ろ向いて」

 ああ、なんて大根役者なんだと悠真は自分を評してそう思う。脅迫しているのに、なんで敬語なんだろう。それでも、葵は文句一つ言わず、悠真の言う通りにしてくれた。

「壁に手をついて」

「な、何するの?」

 不安げな葵に悠真は無言。

「ええと……」

 どうすればいいんだろう? 何も考えてはいなかった。葵がはいているスパッツが、ぴっちりと肌に密着している。悠真は迷いながらお尻の膨らみに、おずおずと手を添える。ふと、葵の顔を見上げてみると。

「悠真くん……」

 とても不安そうな表情。そして同時に、お尻に触れられてくすぐったそう。自分が迷いが好きな人にも伝わってしまっている。悠真は情けなくなってしまう。そして、このままではダメだとも思う。思い切ってやってみなければいけない。

「葵さん。スパッツ、脱がします」

「え? ……あっ!」

 ずるり、と一気に葵の足元にまでずり降ろされてしまうスパッツとショーツ。葵の露わになった丸い尻の割れ目に、悠真は間髪入れずに顔を埋め、舌を這わせた。

「あああああああっ!? ゆ、ゆ、ゆゆゆ、悠真くんっ! いきなりそんなとこっ! だめえええええっ!」

 目を大きく見開いて驚き、絶叫を上げる葵。突然起こった出来事に、心の準備などまるでできていなかった。

「だめっ! だめだよ悠真くんっ! そこだめえっ! きたな……ああああああっ!」

 開き直ることに決めた悠真は、葵の制止など聞きはしなかった。じゅる、じゅぷ、と唾液を滴らせながら、熟れた果実をむさぼり食うかのようにしゃぶり尽くす。どこをどんな風に何回したかも覚えていないくらい、無我夢中だった。そんなやりとりが続いた。

「あ、あぁぁ……ぁ……。ゆ、悠真くんが、わたしの……お尻……舐めてる……。お尻……恥ずかしいとこ……。舌でぺろぺろって……してる。はぅぅ……」

「葵さん! ごめんなさい……。俺、初めてで……。どうすればいいか、わからなくて」

 しゃくり上げるように小刻みにひくついている葵を見て、我に返って自らの行いを後悔する悠真。葵は茫然自失だったけれど悠真の声を聞いて同じように意識を取り戻した。

「あ、う、ううん。大きな声出してごめんね。恥ずかしくて、つい。……そうだよね。悠真くん、初めてだもんね。……いいよ。何しても」

 葵は悠真を励ますように笑顔を見せて、再度壁に手を付いて、尻を悠真の方に向けて高く突きだした。

「ほ、ほら。お母さん、もう大丈夫だから。……お尻、触って。舐め舐めして。ね?」

 葵は片手で自ら尻の割れ目をぐい、と開いて悠真に見せつける。元気で明るくて優しくて、いつも自分を助けてくれる葵。今だって、ものすごく恥ずかしいだろうに、思う存分甘えさせてくれる。悠真は申し訳なく思いつつ、自らの欲望に素直になることにした。そうしないと、収まりがつきそうにないから。

「葵さん。……俺、もう……葵さんの中に入れたいです。その……まだ何も、できてなくて。気持ち良くさせてあげられてないけど……」

「あは。そんなの、気にしなくていいんだよ? 悠真くんがしたいこと、すればいいんだから。……えっと、ほら。ここ、見える? 女の人の……恥ずかしいとこ」

「はい。見えてます」

「よかった。ここにね。その。……悠真くんの先っちょ、当てて?」

 いつの間にか取り出された悠真のものは、既に太く長くなっていた。葵は壁から手を離し、いつも家族で食事をしているテーブルに上半身を乗せて、悠真が自分の中へと入れやすいようにと再び腰を突き出した。

「どう? 高さ大丈夫? 入れられそう?」

 葵自身の両手で、ぐい、と左右に開かれた割れ目。綺麗なサーモンピンクの花びらのよう。僅かに湿りを帯びてはいるけれど、準備が万端かどうかはわからなかった。

「大丈夫です。できそうです。えっと……こ、これで、いいのかな」

 つぷ、と粘膜が擦れる感触。進入する位置が概ね正しいと、何となくだけどわかった。

「んっ! も、もうちょっとだけ、上かな? あ……そ、そう。そこ。今ので丁度いい感じ。そしたら、そのままゆっくり押し込んでみて? 入る? ……んっ! ぁっ! んぅっ!」

 ずにゅ、ときつめの抵抗をかき分けながら、やがてずぶずぶと沈み込むように埋没していく。

「入っていってるみたいです。葵さん、痛くないですか?」

「んんっ! 平気。大丈夫、だよ。あは……。悠真くんと、エッチしちゃった」

「そう、ですね。入っていってるみたいです」

 ゆっくりと、ミリ単位での挿入が続いていく。やがて先端が奥まで辿りついたのか埋没は終わる。こうして紆余曲折ありながらも、二人は一つに繋がった。

「んっ! わたし達今すっごく悪い事、してるよね。悠真くんはお母さんと、担任の先生と……しちゃったんだよね?」

 葵は何故かとても楽しそうに笑っている。

「そうですね。しかも、何故か体育の先生に体操着なんて着せて」

「あ、そうだった。そんなイメージだったよね。……えっと、うん。恥ずかしい写真を返してって言ったのに、悠真くんが無理やりわたしを押し倒して……お尻を舐め舐めしてから、中に入れちゃった。とか? ええと、どうすればいいのかな?」

「どうすればも……。普通に、恥ずかしいだけだと思います。そうじゃないですか?」

「そう、だね。ものすごく恥ずかしいよ。あっ! う、動かさ……ないで。んっ!」

 少し体をよじらせただけでくすぐったい。結局、演技などはどこかにいってしまったようだ。二人共揃って慣れていないわけで、無理も無いこと。

「無理、です。だって、動かすと気持ち良くて……。葵さんの中、暖かくてぬめぬめして、それなのにきゅって締め付けてきて……。これが、女の人の中……なんですね」

「そ、そう、だよ。これが、女の人……。もう、女の子だなんて、言える歳じゃないけど。あっあっあっ! はぁんっ! あぁっ! いきなり動かしちゃ、ダメ……。はぅっ!」

「女の子ですよ。葵さんは」

「で、でもでも。お母さんで、担任の先生なんだよ?」

「ええ。すっごく可愛くて、お姉さんみたいな、ですね」

 ぎしぎしと、テーブルの脚が床と擦れてきしむ。ゆっくりとながら、交わりは速度を増していく。中で擦れ合うたびに、葵はか細く甘ったるい声を上げてしまう。悠真はそれをもっと聴き続けたいと思い、新たな動きを始める。

「ゆ、悠真くん、上手。あっあっ! き、気持ちいいよ! はふっ! あっ! んぁっ! 擦れて。あっ! やっ! はひっ!」

「葵さんのお尻、すべすべしててふにふにで。丸くて可愛い」

 ぎゅう、と爪がめり込むくらいに強く、掴んでこね回す。パンの生地をこねるように形を変える尻。その割れ目の中に、きゅ、とすぼんだ所が見える。悠真はちょっとした悪戯心で、その部分をいじり始めた。

「はひゅっ! お、お尻の穴なんて、触っちゃだめえっ! ゆ、指も入れちゃだめえええっ! あああっ! そんなにぐりぐりしないでええええっ! あああっ! ゆ、悠真くんの意地悪ぅっ! ああんっ!」

 その悪戯は、思わぬしっぺ返しを産むことになった。まるでコントロール出来ない強い締め付けが、悠真を襲う。

「葵さん。お尻の穴、いじったら突然締め付けが強く……。くっ! も、もうだめだ。出そうです。あああっ!」

「あ……。な、中に、出てる。いっぱい、出てる。……悠真くんの、が……出てる。お母さんの……中に……」

 どぷり、どぷり、ずぴゅ、ずぴゅと音を立て、子宮の方に熱いものが込み上げて来るのが葵にはわかった。ほんの少しの痛みと堪らなく気持ちいい感覚が混在している。体の内側から染みるような快感に、葵は脱力してしまった。

「ごめんなさい! 中に、出して。……お、俺。気が動転していて」

 取り返しのつかないことをしてしまった。悠真は粗い息を吐きながら焦る。未だに葵の中から抜き出すこともできないまま。

「ううん。悠真くんは、何も悪い事なんてしてないよ? ね。……お願いだから、もう少しこのままでいてくれないかな? もう少しだけ……繋がったままでいて欲しいな。あ……。はふ……。暖かいよ……。気持ちいい、よ」

「は、はい」

 結合部から溢れ出た精液と愛液が糸を引いて落ちていく。葵の足元。ずり降ろされ、生地が裏返しになったショーツとスパッツにも、それらはかかっていった。こなみに謝らなければいけないと、二人は揃って思うのだった。










…………










『悠真くん。次は何をする?』

 可愛らしい笑顔で葵はそう言った。一回や二回で満足できるはずもない。折角用意された場なのだから、やめる必要もない。

『えっと』

『何でもしていいよ? お母さん、頑張っちゃうから』

 気持ち良さに加えて、好きな人と一つになれる充足感。楽しいと、葵は素直にそう思った。そして愛おしくも可愛くて堪らない人、悠真に対してとことん尽くそうとも。

『じ、じゃあ』

 きらきらした眼差しを向けられて、悠真は恐る恐る望みを口にする。こんなこと、頼んでしまっていいのかなと思いながら。

『口で、してもらっても……いいですか?』

 答えは勿論決まっている。葵はうん、と頷いた。そんな事があって、今。ソファーに深く腰掛けている悠真と、その股間に顔を埋めている葵の姿。

「じゃ。始めるね」

「はい」

 葵は体操着から制服へと着替えていた。話の流れでそんな事になっていた。体操着とはまた違った雰囲気で、若々しさが溢れる姿だった。

『制服。すごく似合ってます。お世辞なんかじゃないです』

 先程と同じように背を向けて、着替え終わった葵に悠真はそう言った。

『あ、ありがと。恥ずかしいなぁ』

 小柄で可愛らしくて。歳の差なんてまるで感じない。素直にそう思った。葵がくるりと一回転してみせると、ひらひらしたスカートに加えて胸元を飾る緑色のリボンがふんわりと揺れた。可憐だと、悠真は思った。

「楽にしていてね」

 葵は垂れてくる黒髪を片手で押さえながら、悠真のものを咥えこみはじめた。小さな口を目一杯開けて、歯を当てないように細心の注意を払いながら。

「んっ」

 かぷり、と甘噛みでもされるかのような感触。口内の暖かさと、唇の柔らかさが包み込み、こそばゆさを感じる。

「葵さん……」

「んぅ? どうしたの?」

「さっきもですけど。今も、その。……ものすごく悪い事しているような、そんな気がしています」

「悠真くんも? わたしもそうだよ。んんぅ」

 けれど、やめられない。やめたくない。

「お母さんが、悠真くんの……。お口でぺろぺろおしゃぶりしてるなんて、とんでもなく悪い事だよね。お母さん、不良だよね」

「ええ。それに、担任の先生でもあるんですから。尚更」

「あは。その上、こなみちゃんの制服まで着ちゃってるし。もう何だか、すごいよね」

 やりたい放題していると、二人揃って思っている。

「でもね。悠真くん。わたしのお口で気持ち良くなって欲しいな。一生懸命頑張るから、少しでも楽しんでね?」

 葵は改めて根本に手を添えて押さえてからぺちゃぺちゃと音を立て、舌を満遍なく使って亀頭をなめ回す。

「ん。ん」

 葵は一心不乱に顔を前後させていく。頬や唇に陰毛が絡みつくのも、喉の方に先端が当たってむせ返りそうになるのも我慢して。

「んぷ、んんぅ。ん、ん、んく、んん、ん、うん、ん、んんん」

 葵は軽く目を閉じて、優しく包み込むような愛撫を続ける。今、とても悪い事をしているのだと、悠真は思う。大切な人を汚している。そんな背徳感。けれど、もっとしたいという欲求は抑えられない。

「ん、ん、ん、ん、ん……。んん……んく、んぅん。んん……」

 この、お姉さんのような可愛らしい人と、もっとしたい。持ち上げたまま、してみたり。自分の上に馬乗りになってもらったり。キッチンにて料理中、裸にエプロンだけの格好で、後ろからいきなり……。

「んぁっ。悠真くん……。何だかむくむくしてきたよ。お口の中に、入りきらないよ」

 ちょっと弱気になりながらも、愛撫を再び続ける葵。その甲斐あって、悠真は段々と絶頂を迎えていく。

「あ、葵さん。気持ちいい。出そう、です。ぐ……っ!」

「んぅ。いいょ。ん、ん、ん、ん、ん。んんんっ! あ、ああっ! あああああっ!」

 我慢する間もなかった。悠真は突然葵の口内から引き抜いて、射精。葵の顔中に精液がぶちまけられていく。

「す、すごい……よ。ん……」

「葵さん、ごめんなさい。俺……我慢できなくて」

 ティッシュを用意する暇もなく、ぶちまけてしまった。葵は怒ったりなどせず、射精を顔で受け止めていった。

「お口、気持ち良かったんだね。嬉しいな」

 葵は片目を閉じ、精液まみれの笑顔を見せる。照明の光に照らされて、キラキラと輝いていた。










…………










「悠真くん」

 一つのベッドで添い寝。語尾にハートマークでもついていそうな甘ったるい声で悠真の名を呼びかける葵。

「えっち、しちゃったね」

「はい」

 汗を流すため、風呂に入ってからも火照りが残っている。二人共同じ。

「すっごく気持ちよかったよ」

「俺も、気持ちよかったです」

 悠真の腕にピッタリと密着している葵はふと、あることに気づく。

「そういえばね、悠真くん」

「何ですか?」

「悠真くん、ほとんどおっぱいに触ったりしなかったよね。……もしかして、おっぱいに興味ないの?」

「いや、そんなことは……」

「も、もしかして、私のおっぱいが小さくてつまらないから!?」

 深く考えすぎて、とても悲観的になっている葵。取り乱した葵をすぐに落ちつかせる悠真。

「違います。たまたまです。初めてだったので、無我夢中で、そこまで考える余裕がなかっただけです。残念なことに、触りそびれてしまいました」

「そう……。よかった……」

 そして、葵は……。

「じゃあ、悠真くん。これから触ってみる?」

「触ってみたいです」

「うんっ。触って触って」

 葵は嬉しそうに笑顔。パジャマのボタンをぽつぽつと外していくと、ブラに覆われていない胸が悠真に晒される。

「じゃ、触ります」

「はい。どーぞ」

 もにゅもにゅと、柔らかな感触が悠真の指に伝わる。寄せ上げ、こね回し、少し堅い乳首を摘まむ。

「あん。ちょっと、くすぐったいな。ふふ」

「痛くはないですか?」

「うん。大丈夫。……もっと強くしてもいいよ? あ……」

 ぱくり、と悠真は食いつくように、乳首にしゃぶりついていた。

「わぁ。悠真くん、おっぱいにしゃぶりついちゃうなんて、赤ちゃんみたい。ん……。いいよ。もっと吸って。ぺろぺろして。ちゅーちゅー吸って。……ミルクは出ないけど。わたしはお母さんだもの。いっぱいしていいよ」

 右の方をしばらくしゃぶっていたと思ったら、今度は左。葵の尖った乳首が、悠真の舌で転がされる。

「あ……。悠真くん。気持ちいいよ。おっぱい、熱くて。……んっ!」

 悠真は葵の胸をぎゅうう、と強めに絞り上げ、片手で乳首をこね回しては、口ではもう片方の乳首をしゃぶり回す。その繰り返し。

「んんっ! んっ! あひっ! あ……だ、め。おっぱいで……いっちゃう……。あっあっあっ! だめ……だめ……あっ!」

 そうして葵はあまりにもあっさりと、絶頂を迎えさせられてしまった。全身を震わせ、大きく息をつく。

「葵さん……。俺。また……」

 快感に耐え、解放されて穏やかな表情の葵を見て、悠真はまた込み上げてくるものを感じた。

「え……」

「したくなってきちゃいました。……感じている葵さんが、すごく可愛くて」

 葵の目の前に差し出されたのは、つい先程と同じように大きくそそり立っているもの。

「ごめんなさい……。風呂に入ったばかりなのに」

「ううん。謝る事なんてないよ。……ねえ悠真くん。見て?」

 葵はするするとパジャマを脱ぎ捨てて、しなやかな両足を高く上げながら、左右に大きく広げてみせた。

「わたしも、こんなになっちゃったんだ。……悠真くんにおっぱいいじられて」

 割れ目の辺りはとろとろになっていた。ちょっとの愛撫で簡単に濡れてしまったと、葵は正直に告白した。

「だから、悠真くん。しよ?」

 可愛らしい笑顔が堪らなく魅力的に見えた。

「葵さんっ!」

「悠真くん、来て……。んっ!」

 悠真は葵と同じようにパジャマを脱ぎ捨て全裸になってから、覆い被さっていった。そうして上から下へ、ずぶりとねじ込まれていく感触を二人は共有していった。

「あぅっ! はぅっ! はぅっ! は、入ってくる! 悠真くんの……大っきいのが……! ずんずんって、わたしの奥まで! ああああああああっ! はっぁっあっあっはっはっあっ!」

 豆電球だけが辺りを照らす薄暗い室内で、ベッドがギシギシと揺れる。二人ははあはあと荒い吐息を漏らしながら交わり続け、貪るようなキスを繰り返す。葵は衝撃で離れないように悠真の背中にしがみつきながら。

「あああああっ! ゆ、悠真くんっ! 悠真くんっ! すごい……。もっと、もっとしてぇぇっ! もっと突いて! 中に、中に出してっ! ああぁんっ!」

「葵さんっ! くううっ!」

「あああああああっ! ま、またいっちゃう! お母さん、またいっちゃうよ! あああっ! いいぃっ! 気持ちいいよおぉぉっ! はぁぁんっ!」

 葵がびくんびくんと震えている。悠真もまた、絶頂が近くて背筋が震えるのを感じていた。……夜は更けていくけれど、交わりはまだまだ続いていった。










…………










「ゆうべはお楽しみでしたね」

 穏やかな表情で軽く目を伏せて、どこぞの宿屋の店主よろしくこなみは唐突にそう言った。悠真と葵の目の前で。

「はぅっ! そ、それは……」

「えっと……。こなみ。あのな」

「悪いことをしているわけでもないのですから、隠すことも、言い訳することもないですよ。そもそも、とてもおめでたいことですので、お赤飯を用意しなくてはいけません」

 いつもの朝。テーブルを囲っているのは家族三人。こなみは優雅に紅茶のカップを片手に、楽しげに微笑んでいる。吹き出し、むせ返る二人とは対照的に。

「兄さん。葵さん。おめでとうございます」

 二人の関係を、心の底からこなみは祝福している。

「……。こなみちゃん、ありがとう」

「ありがとうな」

「いいえ、どういたしまして。……そこで唐突なんですが、兄さんと葵さんがお付き合いを始めるにあたって、お願いしたいことがあります」

 何だろうと、悠真と葵が疑問に思う間もなく、こなみは言った。

「毎回とは言いません。たまにでいいので、兄さんと葵さんがしている楽しいにゃんにゃんに、わたしも混ぜてくれませんか?」

「は?」

「え?」

 何を言っているんだお前は、と悠真。というか、にゃんにゃんって何だ。と心の中で突っこみを入れている。落ちついている悠真とは対照的に、顔を真っ赤にして目をまん丸にして大きく見開いている葵。

「わたしもにゃんにゃん、してみたいです。……ああ、もしダメと言われてしまいましたら、本意ではありませんが最終手段をとらざるを得ませんね」

 いきなり最終手段。そしてこなみはおもむろに、ポケットからスマホを取り出して見せつける。ほら、と笑顔で。

「なっ!?」

「こ、こ、こここ、こなみちゃん!?」

 液晶画面に映っているのは、昨日の晩、悠真と葵が散々楽しんだ光景。……こなみはいつの間にか、部屋の各所に隠しカメラを設置していたようだ。全く抜け目がない。

「静止画がいいですか? それとも動画がいいですか? ああ、違うんです。勘違いしないでください。悪気とか、脅すつもりなんてまるで無いんです。……ただ純粋にいいなあって思いまして。気持ち良さそうですし。楽しそうですし。……それにですね」

 完全に、こなみの手の平で弄ばれている。悠真も葵もそんな気がしてきた。

「わたしも混ぜてくれれば、わたし自身も同罪になりますよ? 写真撮影も動画撮影もご自由にどうぞということで、裸のお付き合いをしたいです。親子兄妹のコミュニケーションというやつですよ」

「お前な……」

「お風呂じゃないんだから……」

 つまりは、このお願いという名の実質脅迫行為も無効になるわけで。開き直っているのか、そうでないのか。

「罪か。罪なのか」

 まあ確かに、義理とはいえ母親と関係を結んだり色々したりするのは道義的にはやっぱりいかがなものかと悠真もつくづく思う。

「こなみちゃん……。本気、なんだね?」

「はい。本気です」

 相変わらず、こなみは笑顔が可愛いなと葵は思う。そうして、仕方がないなとも。悠真は大きくため息をつきながらも、こなみの言う通りにするしかないと観念する。この兄にしてこの妹あり。そういう事ならば……。

「わかった。……じゃあ、こなみ。本気でいくからな。後悔するなよ? やめるのなら今の内だ」

「やめる気など毛頭ありません。元より、覚悟はできています。……決戦は、今夜ですね?」

「お前がいいと言うのならな」

 いいに決まっている。応、と頷くこなみ。

「こ、こなみちゃん。……その。お、お手柔らかにね?」

「任せてください。優しくしますよ、葵さん」

 にこりと目を細め、可愛らしい笑顔のこなみ。嘘だ。絶対嘘だ。きっと、葵を手玉に取って散々よがらせて絶頂を迎えさせる魂胆だ。この小悪魔めいたどSな妹はと、悠真は思った。

 こうしてまた、賑やかな夜が始まる。どんな展開が待ち受けているかは、始まってみなければわからなかった。





















----------後書き----------

 さて、メインキャラクターのティナを差し置いて、いきなり葵お母さん編の公開となりました。

 未亡人で義理のお母さんで女教師で体育教師で担任の先生で。よく考えてみると彼女もなかなかにすごい立場ですね。色々と辛そうな事もあったであろう彼女が、これまた複雑な関係ではあるとしても、幸せになって欲しいものです。

 そんなこんなで、ゲーム本編では決して訪れないIFのストーリーを体感してもらえたら嬉しく思います。

 次回作をお楽しみに。


ご感想を頂けると嬉しいです。





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