Back


桜色のエピソード
-エレオノーラ編-















 その日。エレオノーラは怒っていた。

「もう、エレ〜。そろそろ許してよ〜」

「ちょっとだけだからという言葉を信じていたのに」

 とても怒っていた。その怒りの矛先は、エレオノーラの向かいにいる少女、杏に対してのもの。つまり彼女は、もう一人の自分に対して怒りを抱いているのだった。

「あんなことまでして。いつ誰が来るかわからない所なのに。もしかすると、誰かに見られていたかもしれないのに」

「あーもう。だから悪かったって言ってるじゃない!」

 よほど恥ずかしかったのかエレオノーラは頬を赤らめ涙目で、かなりいじけながら、ぶつぶつと念仏のように杏の所業を責め続けている。延々と。

「すくーるあいどる衣装、とかいうやたら派手で珍妙な格好をしたいというのはまあいい。そんなものを着て普通にするだけならまだしも、浅葉悠真と散々まぐわった挙句、体中にあえて精をぶちまけさせたり、外でしたり、辺り構わずあんなに大きな喘ぎ声まで出して。破廉恥だ……。破廉恥だ破廉恥だ破廉恥だ……」

 心配性で真面目な母親が、放蕩娘の夜遊びを咎めるかのように、エレオノーラはちくちくと杏の痛い所をこれでもかと突いていく。

 ――それはつい昨日の事。杏がエレオノーラに、恋人の悠真と楽しい一時を過ごしたいと申し出た。最近ハマっているアイドルの衣装を着ながら、好きな人の温もりに包まれたいと。その気持ちはエレオノーラもよくわかるから。

『あまり無理をしないなら……』

 そういう条件で、しばらく大人しく眠りにつくと約束をした。それなのに杏は……。

「破廉恥だ。淫乱だ。恥知らずだ。裏切り者だ」

 杏も最初は普通にするつもりだった。けれど、激しく燃え上がった炎は勢いを増すばかり。どうにも止められなくて、気づいた時には後の祭り。とても普通ではない、変態じみた行為を悠真と一緒にたっぷりと楽しんでしまったのだった。それについてエレオノーラはご立腹。

「あーもうっ! じゃあ、エレもしてもらえばいいじゃない。あたしが悠真クンにしてもらったように」

「ば、バカを言うな! あんなに恥ずかしい事、できるわけがないだろう!」

「どうして?」

「どうしてって、それは……」

「本当に好きな人には、たとえ恥ずかしくても色んなことをしてもらいたくなるのって、普通じゃない? あたしはそう思うな」

「そ、そうかもしれないけど。だからってあれはやり過ぎだろう!」

「そうかな。エレは。悠真クンにああいうことされたら、どうする? 嫌?」

「そ、それは……。ええと……」

 エレオノーラは数秒間沈黙。そして顔を赤らめて涙目で悶絶。我慢ならずに怒り。その怒りは不自然で、どこか迫力に欠けている。

「あ、浅葉悠真! そこになおれ! 貴様の汚れきった煩悩、叩き直してくれる!」

 いきなり取り出された赤黒い死神の鎌がギラリと光る。

「恥ずかしいからって誤魔化さないの。エレ、確かにあたしもちょっと悪ノリしすぎちゃったけど、頭の中だけで考えて、けしからんだなんて、考え方が凝り固まった頑迷な親みたいなこと言わないで」

 そう言うと杏はすくっと立ち上がり、ベッドの上にうつ伏せに倒れ込んだ。

「お、おい、杏。怒ったのか?」

「別にー。エレにはそう見えるの?」

「だ、だって」

 杏の言うとおり、エレオノーラにはそう見える。

「エレのお小言は正しいし。だいたい、怒っているのはエレの方じゃない」

「杏……。す、すまない。私も言い過ぎたようだ。謝る。だから……拗ねないでくれ」

 途端に弱気になるエレオノーラ。それを見て杏は、しょうがないなとばかりに優しく接する。

「拗ねてなんていないって。……じゃあさ。エレもあたしが悠真クンにしてもらったようなこと、本当にしてもらいなよ。逆にあたしがエレと悠真クンを見ていて恥ずかしくなって、エレに向かって破廉恥だー! けしからんー! なんて言わせちゃうくらいなこと、悠真クンとしちゃうの。嫌じゃないでしょ?」

「嫌なわけ、ない。……と、思う」

 羨ましいという気持ちもエレオノーラの心のどこかにあった。杏はそれをお見通し。

「じゃあ、そういうことで。後で成果を聞かせて。……ふあぁ。眠くなってきちゃった。……明日は休みだし、野暮なお邪魔はしないから安心して。おやすみー」

「お、おい、杏!」

「おやすみぃ。ごゆっくりぃー。ふぁぁ」

 そうして杏は、眠りについた。後は好きにしていいよと言わんばかりに。

「……本当にして、いいのか?」

 迷いつつ、エレオノーラは杏の言うとおりにすることにした。










…………










「うん?」

 夜も更ける頃。悠真は寝るために自室のドアを開けた。そうして明かりをつける前に、暗闇の中に何者かがいることに気づく。

「おい、浅葉悠真」

「って……何だ。エレか」

 悠真にとって、見知った顔。何故だかいつも杏が着ている制服姿のエレオノーラ。

「何だとは何だ。来たら悪いか」

「いや、悪くはないが。突然のことでびっくりした」

「仕方がないだろう」

 玄関から入るには、いろいろとややこしい説明が必要で、面倒な事になるだろうから、こうするしかなかった。そして、エレオノーラは単刀直入に言う。

「貴様に頼みたいことがあって来た」

「頼み? 何だ?」

「昨日、貴様は杏とその……ふ、不純異性交遊をしていただろう!」

 二重の意味で驚く悠真。目撃されていたことと、それをエレオノーラに面と向かって追及されている事実に。

「見ていたのか?」

「み、見たくて見たわけではない。ただ、少しだけ、気になってしまって……。そ、それでだ」

 実は気になって仕方がなかったのだが、エレオノーラはたたみかけるように続ける。

「貴様が杏にした事と同じか、それ以上のことを、その……。私にもして欲しい」

 悠真は凍りついたように固まった。エレオノーラはただ、恥じらいを押し殺しながらもじもじとしている。

「激しく、して欲しいんだ……」

 気高い彼女は今、涙目になりながら弱々しく望みを呟いた。悠真はその思いを拒否することができなかった。










…………










 そして。

「なぜ学校?」

 悠真の素朴な疑問に対し、エレオノーラは答える。あの後、部屋の窓から強引に担ぎ出され、辿りついた場所について。

「お、お前と杏がこの場所で破廉恥な事をしていたからだ! だから、来てみた……」

 ただそれだけの理由。暗い廊下を歩きながら、そんなやりとり。そもそも、悠真の自宅でしようものなら誰かにばれるのは必至だから、場所を変えるのは当然のことだった。

「そ、そんなことは、どうでもいい! 早く、激しくしてくれ!」

「そんな、投げやりな」

「じ、じゃあ、どうすればいいんだ!」

 段々目的を見失っていくエレオノーラ。

「普通にすればいいんじゃないか?」

「なら、そうしろ! 普通に……。激しく……!」

「……」

 そこには拘るようだった。あくまでも普通の、ソフトな行為ではだめなよう。

「わかった。じゃあ、激しくしよう。普通にじゃなく。……ということは、アブノーマルに?」

「よ、よくわからないが。そうだ……」

 恥ずかしいこと。一言にそう言ってもいろいろあるのだが。果たしてどうすればいいのだろうか? 少なくとも、エレオノーラはそれを知らないのでどうにもできないでいた。全てが悠真に委ねられる。

「じゃあ……」

 鍵は何故かエレオノーラが持っていたので、悠真はとりあえず生徒会室の中に入ってみることにした。そして……。

「ここで何をするのだ?」

「ええと」

 何も思い浮かばない。けれど、このままだと恐らく彼女は怒る。どうにかして何かしらの案を出さなければいけない。悠真は背後に突き刺さる視線に思いきりプレッシャーを感じながら、考える。頭をフル回転させた結果……。

「じゃあ……。その上に上がって」

「上がる? まあいい。よし。……上がったぞ。次にどうするのだ?」

 それは杏がいつも使っている席。上履きを脱いでその上に上がるエレオノーラ。

「そうしたら、座って」

「す、座るのか。……それで、どうするのだ?」

 ここから過激な提案が始まった。

「足を左右に開いて」

「ば、馬鹿なことを言うな! そんな恥ずかしい事、できるはずがないだろうが! ……あ」

 エレオノーラは言っておいて、ようやく矛盾に気付いた。ここで拒否をして、どうするのだろう?

「恥ずかしい事をしろと言ったから、考えたんだが?」

「……つ、続けろ! 貴様は間違っていない」

 間違っているのは自分の方だ。エレオノーラは若干涙目になりながら、両足を左右に開いていく。当然のことながら、短いスカートの中までもが丸見えになってしまう。

「つ、次は何を?」

「触る」

 悠真はエレオノーラがはいている白いショーツを左手の人差し指でずらし、露わになった割れ目に口をつけた。

「なっ!?」

 突然、生暖かくざらついた舌が敏感な所へと入ってきた。エレオノーラは驚くのあまり目を見開いてしまう。

「なっ! なああっ! ああああああっ! や、めろ……。くぅぅっ! そんな、ところっ!」

 足を閉じようにも、悠真の頭がしっかりと入り込んでいる。邪魔する事などできはしない。

「あふうううううっ! うああっ! くぁぁぁぁっ! やめっ! やっ! あぁぁっ!」

 割れ目の中を、悠真の舌がなぞり続ける。その度にエレオノーラは首を仰け反らせながら喘ぐ。

「あ! あ! くぅぅぅぅっ!」

 悠真が舌を這わせるたびに、とろりした汁がたれていく。いつしか舌だけで無く、指も同時に秘部をいじり回し始めた。中に入れたり、クリトリスをこね回したり。

「あひっ! あっ! はひっ!」

 のたうち回るように体をひくつかせるエレオノーラ。我慢は長くは続かず、あまりにもあっさりと絶頂を迎えさせられた。エレオノーラ自身にあまり経験が無くて不慣れなことも、簡単に絶頂を迎えさせられた要因なのだろう、きっと。

「くぁっ。こんな……。こんな、ことで……こんな……あっ!」

 快感がこみ上げて、一瞬視界が真っ白になっていた。なんだかとても悔しいと、エレオノーラは思った。










…………










 いつも見馴れている姿。制服の上からもはっきりとわかる、二つの丸い膨らみ。それは杏という少女のものでもあり、エレオノーラというもう一人のものでもあった。

「くっ」

 エレオノーラは、唇を噛みしめながら恥じらいに耐えている。それもそのはず。制服の胸元を飾る赤いリボンは解かれていて、ブラウスのボタンも外されていて、ブラは外され上着はめくられ、胸元を遮る邪魔な布地は全て排除されているのだから。

「こ、これじゃ……まるで変態じゃないか」

「アブノーマルなのがいいと言っていただろう? だったら必然的に、変態のような行為になると思うぞ」

「そう、だが……。くぅぅ……」

 歩む度に、ぷるぷると揺れる胸。腕や手で隠すことは許されず、少しひんやりとした外気に全てが晒され続ける。生徒会室を出て、暗い廊下を静かに歩む。眼前には、二人だけしか存在しない空間が広がっている。

「どこに行くんだ?」

「別に、決めていない。適当に歩いているだけだ」

「いつまで……歩くんだ?」

「それも決めていない」

「うぅ……」

 この羞恥責めが、しばらく終わる見込みが無いと言っているのに等しい。エレオノーラは心細くなってしまう。

「いつもあんなに露出度の高い服を着ていて、そんなに変わりはないだろう?」

「違う……。あれは、格好いいと思っていたから……」

 あの、胸元が空いていたりへそが丸出しだったりした服に、彼女なりに結構なこだわりがあるようだった。悠真はため息をついて、言った。

「やめるか? 別に無理してすることでもないんだが」

「それは、だめだ。だめなんだ……。杏のやつに、恥ずかしいと言わせてやりたいんだ……。貴様と杏がしてきた以上の事をして……」

「先輩にぎゃふんと言わせてやりたいと?」

「そうだ」

 悠真が思うには、杏がエレオノーラに対して『ちょっとエレ! 何て事やってんのよ!』とか、涙目になって食ってかかるような、そんなシチュエーション。杏に対してエレオノーラは涼しい顔で『ふん。お前と浅葉悠真のやつがしていた事と同じ事をしたまでだ』とか、言ってのける。そんな風にしたいのだろう。

「じゃあ……」

 悠真はふと、何かを思いついたようで。

「ちょっとだけここで待っていてくれ。いいものがあったのを思い出した」

「なっ!?」

 突然、エレオノーラをその場に置き去りにして、元来た道を駆けていく悠真。

「な、なああっ! どこに行くんだ! ひ、一人にしないでくれ……! うあああああっ!」

 暗闇の中、大きな胸を丸出しにしたままのエレオノーラがぽつんと一人残されてしまう。夜中、トイレに行くのを怖がる子供のように、エレオノーラは慌てふためいてしまうのだった。

 ……それから程なくして、悠真は戻って来た。丸く茶色いものを手にしながら。

「放置した。こんな恥ずかしい格好で、一人で放置した。何て事をするんだ……。うぅぅ……」

 律儀に、胸を隠すこともせずにエレオノーラはその場に立ちすくんでいた。あくまでも悠真の言いつけを守っているところが生真面目だった。

「悪い。生徒会室にこんなものがあったと思い出してな」

「それを、どうするのだ?」

 悠真が手にしているもの。それは市販のハサミと、古本やダンボールを束ねたり園芸用にも用いる細い麻紐だった。

「お前を縛る」

 とてもシンプルな一言だった。

「なっ!?」

「そのまま動くな。人を縛るなんて、やったこと無いから加減がわからない。怪我をして欲しくないからな」

「くうっ! 何をっ! あっ!」

 悠真は手始めに、エレオノーラの大きな胸を絞り上げる。ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、と手加減することなく強く、根本から。柔肌に細い麻紐が容赦無く食い込んでいく。きっと、跡ができてしまう事だろうけれど、エレオノーラの要求を満たすためには仕方がない。悠真は完全に考えを割り切っていた。

「む、胸が! 胸がああっ! くうぅっ!」

 エレオノーラの胸は段々と絞り上げられて、ソフトクリームのように渦を巻き、ロケットのように先端が尖っていく。そして。

「な、にを……。あっ! んひっ!」

 刺激を受けて尖った乳首に悠真はしゃぶりついていた。

「あひっ! く……くぅぅっ! あぁぁっ!」

 敏感になった肌に、悠真の舌先が絡みつく。ざらついた感触とぬめりが合わさり、エレオノーラは、か細い喘ぎ声を漏らしてしまう。

「だ、め……。あっ! だ、誰かに……誰かに見られたら……。あぁぁ……」

 すっかり悠真に弄ばれ、弱気になったエレオノーラは涙目で呟く。

「エレ。……やめるか? 見ていて辛そうだ」

「いや……。違う。辛くは無いんだ。ただ……もっとして欲しくて……。その……」

 やめないでと、エレオノーラは心の底から訴える。いつしか恥じらい以外の感情が生まれていた。

「わかった。じゃあ、とりあえず行こうか」

「ああ……」










…………










 ちゅぷり、と湿った音。美桜がいつも手入れをしている花壇の側からそれは聞こえる。

「んっ! くっ!」

 胸だけでなく、すらりとした足、細い腕、お腹にむっちりとした尻……。様々なところを麻縄できつく縛り上げられてしまったエレオノーラは、花壇の脇の石畳の上に直立していた。そうして、悠真の無言の圧力によってエレオノーラの手でたくし上げられたスカートの中に見える割れ目には、悠真の指が侵入していた。

「二本も簡単に入るな」

「くぁっ! あっ!」

 右手の人差し指と中指をフックのように折り曲げ、エレオノーラの中へ、下から上へとねじ込む悠真。湿りは更に増していき、糸を引いて垂れていく。

「あ、あ……。くひっ!」

 ゆっくりと引き抜いてから、強めに押し込む。くちゅっと泡立つような感じの音がして、雫が飛び散る。

「すごいな。指が完全に入ってる」

「はぁぁ、はぁ、はぁ……。そ、そうだな……。指が入ってる、な。くふっ!」

 ちゅぷんちゅぷんちゅぷんと、いきなり手加減抜きの三連続挿入。エレオノーラは堪えきれずよろめく。

「そ、そんなに、激しく! あ、あ、あぁぁぁぁぁ……っ! だめ、だっ! あぁぁぁぁっ! そこはっ! くあああっ!」

 びちゃびちゃとおびただしい量の雫が飛び散っていき、石畳を濡らす。

「だ、めだ。ああ、ああああああっ! またっ! くあぁぁぁぁぁぁっ!」

 やがて雫は滝のようになっていき、ぷしゃあああ、と音を立て流れ落ちていった。エレオノーラは、慣れない感覚に脱力して、ぺたりと座り込んでしまった。

「あ、あ……。この。貴様は上手すぎるぞ……。どれだけ女の体を知り尽くしているんだ……」

「人聞きが悪い。女の体でよく知っているのは、先輩とお前の体だけだ」

「貴様……」

 口調とは裏腹に、エレオノーラの表情は弱々しい。悠真はただエレオノーラの元に近づいて、キスをした。激しい行為の合間に優しいキス。

「んっ!」

 不意打ちのようだけれど、嬉しい触れ合い。そういえばと、悠真は思い出したように言った。

「なあ。できれば、俺のことを名前で呼んで欲しいんだが。ダメか?」

「……。そうだな。今更貴様呼ばわりもないか。……それならば、悠真。これからはそう呼ぼう。いいだろう?」

 うん。悪くない響きだ。愛を込めてそう呼ぼう。エレオノーラはそう思った。

「ああ、わかったよ。エレ」

 杏にもそう呼ばれている。悠真の一言に、エレオノーラは満足そうに頷くと同時に照れくささを感じてしまう。

「悠真。今度は私にもやらせろ。激しくするのはいいが、されてばかりでは我慢できん」

 やられてばかりではいさせない。悠真は拒否することなく、自由にさせてくれた。










…………









 昨日。杏は屋上をステージに見立てて悠真と交わった。そうしてエレオノーラも同じような舞台を望んだ。その結果。

「星空が綺麗だな」

 悠真はそう言った。

「ん……。んぁ?」

 以前、悠真が杏に告白をした場所。街を一望できる高台の上に二人はいた。暗闇に包まれた芝生の上に腰掛ける悠真と、その下半身に顔をうずめているエレオノーラ。悠真が言うとおり、満天の星空が見えるけれど、エレオノーラは今それどころではない。

「ん、ぐ。……ほぅなのは?」

 エレオノーラは悠真の剥き出しになったものを口で咥えている真っ最中だった。

「ん……。悠真。立ってくれ。口だけじゃなくて、胸でもその……。したいんだ。こんな、恥ずかしい格好の胸だが」

「ああ」

「ん、ん」

 じゅぽじゅぽと音を立て、口内で絞るように舌を使う。それと同時につい先程まで麻縄で縛りあげられていた跡がついたままの豊満な胸で根本を埋め、悠真の陰毛もろともしごき続ける。白く柔らかい胸はエレオノーラの手によってぐにゃりと形を変えている。

「んぷ……。んく、ん」

 少し苦しそうにしながらも、一生懸命に愛撫を続けるエレオノーラ。頬はほんのりと赤く、涙目になっている。

「気持ちいいぞ。口の中、熱くて柔らかくて」

「んぅ。ほうか……。んぐ」

 それは何よりだと、エレオノーラは思った。

「ん、んっ。感じてくれると、私も嬉しい。んぐ、んん」

 ちろちろと舌先で亀頭をなめ回され、こそばゆさを感じる悠真。それに加えて、固くなった突起……乳首をぐりぐりと押し当てられ、悶絶する。

「うぁっ」

「ん……。い、痛かったのか?」

 心配そうなエレオノーラが口を離すと、淫靡な汁が糸を引いて垂れていく。

「違う。痛くない。気持ちいいから続けて欲しい」

「そ、そうか。それは良かった」

 安堵の表情を見せるエレオノーラ。

「ならば、続きをするぞ」

「ああ。……っく。あっ」

 立場がいきなり逆転した。悠真の耐えるような声を聞く度に、エレオノーラは面白くなってしまう。

「思う存分出してもらおう」

 じゅる、ずるり。舌先と口内の湿った感触。そして唾液にまみれた胸が悠真ものをねっとりと包み込む。膣内と同じような感触に、悠真は耐えられなくなっていく。

「ふふ。いい感じっぷりじゃないか」

「嬉しそうだな」

「当然だろう。……す、好きな人が気持ち良くなってくれて、嬉しくない女はいないだろう?」

「そうだな」

 大きな胸が潰れそうなくらい強く握りつぶされ、悠真のものをしごき上げる。それはエレオノーラの照れ隠し。早く絶頂を迎えてしまえとのメッセージ。その望みに、悠真は答えるのだった。

「うぁっ!」

 びしゃっとエレオノーラの胸や顔に精液がぶちまけられていく。エレオノーラは実感する。ああ。杏もこの感じを求めていたのだな、と。堪らなく気持ちいい。生命の温もりに包まれていくのがわかる。

(死神の私がそんな風に思うなんて、おかしいな)

 数秒間にわたる射精はやがて終わる。ずっと続いて欲しいとエレオノーラは思った。

「まだ、続きをしてくれるのだろう?」

 手でぶちまけられたものを拭い採りながら、エレオノーラは更なる行為を求めた。それにしても自分は今、なんというはしたないことをしているのだろう。猛烈な恥ずかしさがこみ上げてくる。

(破廉恥にも程がある、な)

 エレオノーラは以前、杏と悠真にそんなことを行ったのを思い出した。まったく、おかしいものだ。真夜中とはいえ、こんな誰が来るかわからない外で、胸をはだけさせながら交わっている。この様な関係になるなんて、出会った当初は想像もしなかったけれど、もっと続けて欲しい。そう思った。










…………









 いつしかエレオノーラは自ら制服を脱ぎ捨てて、全裸になっていた。

「はうっ! あ、あぁぁっ!」

 柔らかな尻の割れ目を左右にこじ開け、悠真のものが押しこまれていく。ずぶ、と埋め込まれていく感覚に、エレオーラは首を仰け反らせながら喘ぐ。

「あっ。……。空に、吸い込まれそう……。んっ」

 二人は立ちバックというスタイルで繋がっていた。悠真はエレオノーラの腕を掴んで引き寄せ、密着していく。

「んぁっ! 奥まで、入ってく……。あっ!」

 少しずつ前後に繰り返される動きが始まる。エレオーラの豊かな胸がぷるぷると揺れていく。

「ああぁぁっ! き、気持ち……いい」

 数々の淫行によってしっとりと湿りを帯びた秘所は、悠真のものを過不足無く包み込んでいる。時々泡立ち、ちゅくちゅくと音を立てているくらいに。

「はぅっ! あっぁっ!」

 こんな格好を望んだのは他でもない。エレオノーラ自身。

『いいのか?』

『いい』

 迷いは無かった。

『恥ずかしすぎて……逆に何故か、気持ち良くなってきてしまった。もう、我慢ができない。もっとして欲しい』

 ぎちゅ、と柔らかくもきつく締め付けるエレオノーラの膣内。強い抵抗に負けずに悠真は下半身を懸命に動かす。

「あっ。んっ! はぁっ!」

「気持ちいいか?」

「あ、ああ。最高に……。くふっ! あっ! ぐりぐりされるのが……。あっ! あっ! ああぁっ!」

 悠真のものに、強烈な生の気配を感じているエレオノーラ。

(き、気持ちいい。気持ちいいんだ……。もっとしてくれ……もっと……。いっぱい突いて……)

 普段の凜とした表情もどこへやら。だらしなく口を大きく開け、涎と涙をダラダラとこぼしている。

「あ……。ダメだ。もう、いく。また……。あ、あ、あっ!」

「え。もう?」

 静かに、けれど確実に快感がエレオノーラの全身を覆いつつあった。

「い、く……。抜かないで……。このままで……。あ……。あっ……」

 数秒か、あるいは数分か。エレオノーラは意識を失ってしまった。そうして気が付くと、どぷり、どぷり、と悠真の熱いものがたっぷりと入ってくるのがわかった。

「はぁぁ……」

 心地の良い脱力。安心しきったエレオノーラは芝生の上へと崩れ落ちていく。悠真のものが抜けた割れ目から、ぶぴゅ、と音を立てて精液が飛び出していった。










…………









「そ、そんな事があるのか?」

「ああ。あるんだが……」

 悠真に。まだ、杏にもしていない事があると言われ、エレオノーラは驚いた。そうして杏に言われたことを思い出す。

『……エレもあたしが悠真クンにしてもらったようなこと、本当にしてもらいなよ。逆にあたしがエレと悠真クンを見ていて恥ずかしくなって、エレに向かって破廉恥だー! けしからんー! なんて言わせちゃうくらいなこと、悠真クンとしちゃうの。嫌じゃないでしょ?』

 と、そんな一言。

「そ、それは、破廉恥なことなのか?」

「ものすごく」

「杏に知られたら、けしからんとか言われることなのか?」

「多分、言われると思う。まだ杏ともしたことが無いし」

 その瞬間、エレオノーラの決心は固まった。初めての体験を杏から奪ってしまうことになるけれども、してみたい。好奇心が溢れ出す。

「……してくれ。どんな事でも構わない」

「いいけど。聞いても怒らないか?」

「だ、大丈夫。……だと思う」

 あんまり自信がないけれど、聞くだけ聞いてみることにする。

「じゃあ、簡単に説明するけど。……その、な。俺のこれを……お前の尻の穴の中に入れる」

 エレオノーラはそれを聞いて一瞬、頭がくらりとした。そうして真面目な彼女は憤慨し、すぐに矛盾に気付く。

「はぁっ!? き、貴様、ふざけているのか!? そんな信じられない変態行為、できるわけが……あ。いやその。これは、言葉のあやというやつで……。違うんだ……」

 エレオノーラは条件反射のように反抗してしまった。

「無理をしなくていいぞ? 怒られても仕方がないくらい、とんでもない変態行為なのだから」

「いい。してくれ!」

「本当にいいのか?」

「いいんだ」

 エレオノーラの意志は強かった。そして……。

「こ、ここに……。入れてくれ」

 エレオノーラは立ったまま悠真に背を向け、尻の割れ目を両手で開いた。そして、悠真のものを心待ちにしてひくつく穴を見せつける。丸くて柔らかくてむっちりとした尻の中心に、艶めかしく見える穴。白濁した液体が未だに漏れている割れ目の隣に、ぽつんと空いた小さな穴。

「早く……!」

 エレオノーラのねだるような眼差し。悠真は無言のまま、近付いていった。

「う……」

 程なくしてぴたりと先端が当たる。そしてゆっくりと押し込まれてくるのがわかる。

「うぁ……。くぁ……。くはっ!」

 ずぶり、と沈み込むような感覚。まだ僅かに入り込んだだけなのに、ものすごい圧迫感を覚える。

「くひっ! くぅぅっ!」

「エレ。痛くないか?」

「だい、じょうぶ……だ。続けて……くれ。う、ぁぁぁ」

 必死に歯を食いしばり、目を見開いているエレオノーラ。とても大丈夫そうには見えないけれど、悠真はこのまま侵入を進めることにする。

「あぁぁ、あぁ……ぁぁ……あ……」

 ぽろぽろと涙をこぼすエレオノーラ。見ていていたたまれなくなり、悠真はエレオノーラを強く引き寄せる。早く全て入れてやりたいと思ったから。

「はぐっ!? あぐ、あぁっ!?」

 柔らかな感覚がたっぷりと締め付けてくる。ずぶりと根本まで入り込んだのがわかる。

「す、すごい。くあぁぁぁぁっ! ああああっ!」

 抜けなさそうなのを強引に引き抜き、押し込む。ばつん、ばつん、と尻の肉をたゆませながら体同士が音を立てる。

「ぐああっ! ああああああっ! だめ、だ。そんなっ! あがっ! はぐうううっ!」

 背後から悠真が手を回し、大きな胸を揉みしだいている。堅くなった乳首がぐりぐりと握りつぶされる度に、尻穴がキュッとすぼみ、新たな締め付けを悠真に与えている。自分の体が悠真を悦ばせている。エレオノーラはそれが嬉しくて堪らなかった。

「だ、めだ。もう……あ、あ、あ、あ、あ! こんなっ! こんな、ところで……あああああああっ!」

 ずぎゅ、ずぎゅ、と連続して出し入れを繰り返すと、段々すべりが良くなっていく。そして出し入れのテンポも上がっていく。僅かな時間のはずなのに、とても長く感じる。汗ばんだ体が更に火照っていく。

「うああああああああああっ! 破廉恥なのは、私の方だ……。こんなこと、して。あっあっあっあっあっ!」

 それでも、やめる気は起きなかった。ばちゅばちゅと激しく繋がっている音が聞こえる。

「うあっ! はぐっ! あっ! こんなっ! お尻なんかで……私は……。あ、あ、あ……だめ、だ……。う、うああああああああああああっ!」

「出すぞ」

 前の穴と同じように尻穴を責められ、エレオノーラはあまりにもあっさりと達していた。と、同時に悠真も射精した。エレオノーラの尻の中にたっぷりと。

「く、ぁ……。出てる……。出てる……。奥まで、いっぱい……。お尻の……中に。うぁぁ……熱いぃぃ……」

 激しい行為の余韻にたっぷりと浸りながら、エレオノーラはうわごとのように呟いていた。びくびくと背筋をふるわせながら。

「ひぐっ!」

 びゅるん、と押し出されるように、エレオノーラの尻穴から悠真のものが引き抜かれた。体液同士の混じり合った液体が一瞬大きな泡を作り、すぐに破裂した。そうしてその穴からどくどくと精液が逆流していくのだった。










…………









 その日。諸事情によって杏は学校を休んだ。

「エ〜レ〜!」

「な、何を怒っているんだ?」

 鏡に写るもう一人の自分に対し、猛烈に抗議をしている杏と、白々しくすっとぼけているエレオノーラ。

「何じゃないわよ。悠真クンと何てことやってんのよ!」

「何って。それはその……。悠真にその、ソフトに、優しくしてもらった……だけなんだが?」

 思い出すだけで恥ずかしくなるエレオノーラ。そんな訳あるわけないだろう。ということで、杏はおもむろに上着を脱いで見せつける。

「こういうことまでしといて、どこがソフトよ!」

 杏の細い腕も、胸やお腹、果ては太ももに至るまで縄できつく縛られた赤い跡がびっしり。

「す、すごいのだな。改めて見ると」

 自らが招いた状況ながら、ゴクリと唾を飲み込むエレオノーラ。

「いきなりの緊縛プレイのおかげでしばらくまともに外を歩けないじゃない! 体育の授業なんてもっての外だわ!」

「それは……そう、だな。そうか。大変だな……」

 けれど、それだけではない。

「それにエレ。もっと言う事があるでしょ?」

「な、なんのことだ?」

 とぼけるエレオノーラに、杏はにっこりと笑って追求。

「楽しかった? 悠真クンとの変態アナルセックスは」

 幸い痛みはないけれど、ムズムズするような違和感に、杏は苛まれていた。あれだけ大量に精子を流しこまれては無理もない。

「それは……その……。だ、大体だな!」

 追求されるがままだったエレオノーラは、開き直った。

「杏。貴様が、自分が驚くようなことをしてみろと言ったから、その通りにしてみたまでだ! 非難される言われは無い!」

「う……。確かに、そんなことは言ったけどさ」

 確かにその通り。反論の余地はない。けれど、ここまで激しくするとは思わなかったというのが正直な気持ち。

「ならば、話は簡単だ。お前も悠真に掘られてこい。私がしてもらったようにな」

「い、いいわよ。やってやろうじゃないの。望む所よ」

 威勢よく言い切る杏。しかし、怖いのか震えている。余裕の笑みもこころなしか引きつっている。

「杏。……無理にする事もないのだぞ? その。私も勢いであんなことまでしてしまったが……。流石にやりすぎたかもしれないと思っている。怒られても仕方がないことだとも、わかっている」

 けしかけるようだったのに、杏の様子を見ていてすぐに心配になるエレオノーラ。性格は違えど、似たもの同士なのかもしれないとエレオノーラは思った。

「大丈夫よ。ちょっと怖いけど、エレと悠真くんがしてたようなこと、やっぱりあたしもしてみたいかも。……最初はびっくりしちゃったけど、ね」

「そうか」

「ごめんね。怒ったりして」

 そうして二人は仲直り。

「まあ……。初めては、あたしの方から悠真クンにあげちゃったし。後ろはエレでよかったかな」

「そう言ってくれると、気が楽になる」

 それにしても。

「エレのお尻の初めてを頂いちゃうなんて。悠真クンも、なかなかやるなあ」

「まったく、あなどれんな」

 二人はうんうんと頷いたのだった。二人が共有にしている彼氏の絶倫っぷりに。




















----------後書き----------


 随分と時間が空いてしまいましたが、またもメインキャラクターのティナを差し置いて、エレオノーラ編となりました。

 このお話、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、杏編の続編となっています。杏編であれだけやってりゃ当然もう一人の存在に色々言われるでしょうから。その、色々あった結果が今回の顛末ということでした。



ご感想を頂けると嬉しいです。





Back