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桜色のエピソード
-月嶋夕莉編-















「悠真くん、行こう」

「ああ」

 夕莉はちらりと横目で悠真を見ながらそう答えた。自分が今置かれた状況に改めて気付いて赤面し、言葉を失って押し黙り、ようやくのことで意を決して出てきた一声がそれだった。

 夕莉と悠真は今、ごみごみした裏通りにいた。そして目の前にはラブホテル。『休憩』と『宿泊』と書かれた料金案内看板が、ピンク色のきらびやかなネオンと共に見えている。夕莉と悠真は揃って伊達眼鏡をかけた上で、深々と帽子をかぶっている。それらは誰にも見つからないようにと、身を隠すための夕莉による配慮と言うべきか、要請だった。

 心なしか、組まれた手が熱いなと二人揃って思いつつ、歩みを進めていく。緊張を感じて、手の平が汗ばんでいるようだった。

「えっと」

「ん……」

「部屋は、どれがいい?」

「……部屋? ど、どれでもいいわよ?」

 僅かな音を立て自動ドアが閉じていく。人の気配はまるでなく、しんと静まり返ったエントランスの真正面には、それぞれの部屋の内装写真が大きなパネルに映し出されていた。来場した客はそれらを見てからお気に入りの部屋を選び、ボタンを押して確保するという選択形式のようだ。部屋によって値段も多少変わっており、内容も異なることがわかる。

「じゃあ、ここでもいいか?」

「う、うん。それでいい」

 とりあえずどこか選ばない事には話が進まないので、悠真は適当に無難そうな部屋を選んでからボタンを押した。205号室という部屋が確保されたのか、その枠だけパネルの明かりが消え、二人が事を終えて退室するまでは他の者が選ぶことができなくなったようだ。

 205号室とあるだけに、目的の部屋は二階に位置しているようだった。薄い灰色のカーペットが敷き詰められた階段を登り、案内表示に沿って進む。ここまできたらもう後戻りはできないし、するつもりもない。二人とも気持ちは同じで、ちょっとした冒険気分。

「着いたぞ」

「え、ええ。そうみたいね」

 あっさりと目的地は見つかった。悠真はドアを開け、夕莉に先に入るよう促す。夕莉は頷き、自動的に明かりの灯った室内へと入っていく。悠真もそれに続き、ドアが重々しく閉じられる。邪魔をするものはどこにもいない。二人だけの時間が始まった。










…………










「……。じゃあ、その。早速、するか?」

 部屋に入ってソファーに荷物を置き、しばらく続いた沈黙の後に、悠真は少し気まずそうにそう言った。すると夕莉は突然のことに慌てふためいて赤面しつつ、抗議するように言った。

「っ! し、シャワーくらい浴びさせて!」

「あ、ああ。そうだな」

 言われてから、悠真もそりゃそうだと思った。余りにも唐突過ぎるだろう。どうしてそんな当たり前すぎることも思い浮かばなかったのだろうと、悠真は自分のダメさ加減が嫌になった。

 こうして悠真は事を始めるまで十数分程度待つことになった。夕莉がバスルームから出てくるのを、ただひたすら心底悶々としたまま待ち続ける。やたら大きくて、周りにカーテンやら天蓋までついてるという、豪華なベッドの脇に腰掛けながら。

(当然のことだよな)

 不器用と言うよりもデリカシーがなさすぎる。自分はちょっとしたことでも意識しなくなるほど性欲に飢えていたのだろうか? と、悠真はそう思いつつうなだれる。そうではなくて、きっとこれはただ単にこういう状況に自分が慣れていないだけだと、無理やり思いたかった。

(初めてじゃ、ないはずなんだけどな)

 夕莉とするのは初めてではなかった。けれど、未だに初めての時か、あるいはそれ以上に恥ずかしさを感じている。どうしてなのだろうかと考えてみる。

(やっぱり、こういう場所だからかな?)

 お互いに生徒会で風紀委員。そんなお硬い立場にいるはずなのに、明らかにいけないことをしている。その思いがかえって性欲を刺激し、悠真の体の一部分をそそり立たせていく。ふと、枕元にあるボタンに気付いて適当にいじっていると、辺りが暗くなったり照明の色が変わったりしていくのに気付く。艶めかしいピンクや紫といったものや、目が痛くなるような黄色や、赤にもできる。夕莉に似合うのは、青や緑といった爽やかな色かなと悠真は思い、良い具合のものを選んで、そのままにしてみた。

(こんなのもあるんだ)

 悠真は今、シャワールームで霰もない姿を晒しているであろう彼女の姿を思い浮かべる。リボンでまとめられた長くて艶やかな髪。可愛らしい笑顔。生真面目で真っ直ぐな眼差し。照れたり恥じらったりびっくりしたり。ころころ変わる表情が愛おしい、と思う。早く抱きしめたい。華奢な体を少し強めに包み込んで引き寄せてからキスをして、そしてベッドに押し倒して、それから色々なことをしたい……。括れた腰に手を這わせ、ぷるると揺れる豊かな胸元に顔を埋め、身動きできず恥じらいに満たされている夕莉の可愛らしい顔を見つつ……。

「出たわよ。……悠真くん?」

「あ? あ、ああ」

 気が付けばいつの間にか悠真は下着一枚という格好で大きなダブルベッドにうつ伏せに寝そべっていた。そしてベージュ色の大きな抱き枕を抱きしめるようにして、自分の下に夕莉がいる事を想像しながら体を揺さぶっていた。……ようだった。シャワーを浴び終え、バスローブ姿で出てきた夕莉が、変な恰好をしている悠真に訝しげな眼差しを向けるのは当然のこと。

「何、してるの?」

「ええと。……予行演習?」

 悠真は正直にそう答えた。全く、間抜けもいいところだと思いながら。

「なっ!?」

 途端に夕莉は慌てふためき、目を見開いて真ん丸にしたものだった。確かにこれから二人でそんな事をするわけだけども、あからさま過ぎてどん引きしてしまいそうだった。夕莉は顔を真っ赤にしながら目を閉じて、そして抗議をするのだった。

「も、もうっ! 何を言ってるのっ!?」

 馬鹿正直なのも程々に。さっさと自分もシャワーを浴びてこようと悠真は思うのだった。










…………










 夕莉は以前の出来事を思い出す。悠真は、夕莉が写っているファッション誌をまじまじと見て、そして言った。いい笑顔だ、と。

「何だかまるで、カメラマンみたいな感想ね」

 照れながら夕莉はそう思う。そして悠真は続けて言う。可愛いぞ、と。

「ありがとう。でも――」

 好きな人に可愛いと言われて素直に嬉しいと夕莉は思った。けれど、気になったのはその次の事。悠真は紙面の夕莉を見つめながら、ほんの少しの間だけど、ちょっと寂しそうな顔をした。高嶺の花とでも言うのだろうか。まるで夕莉が、決して手の届かないテレビの向こう側にいるアイドルにでもなったかのような、別世界にでもいるようだと思っているかのようだった。

「そんなこと、ない」

 実際に悠真がそんな事を思っていたかどうかはわからない。けれど、夕莉自身はそうではないかと考えたから、だから今日は、勇気を振り絞って夕莉の方から誘ってみたのだった。邪魔が入る事のない、完全に二人きりになれる場所へと。そして、見せたい。あの紙面と同じ自分を。そのためには、校則だの規則だのに構っている場合ではなかった。

「待たせた。出たぞ」

 カラスの行水、という程短くはない時間が過ぎていた。悠真がシャワー室から出てきたところ、室内は枕元の照明を除いて薄暗くなっていた。そして、ぼんやりとした中に夕莉のシルエット。

「夕莉? それは」

「一度、見てもらいたいなって思っていたの」

 いつか何処かで見たような、そんなおぼろげなイメージははっきりとしたものに変わっていく。

「この服。前に見たことがあるでしょう?」

「ああ」

 恐らくは多くの人に見られたであろう姿。けれど今は一人の人だけに見せている。黒い布地に白い水玉模様のリボンが巻かれたハットに、華やかな花の髪飾り。ネイルアートされた指先を見せつけるようにして手を開いて、そして微笑んで見せる。ポーズも表情も雰囲気も全て同じ。

「どう、かな?」

「めちゃモテコーデ、だったっけ。可愛いぞ」

「ありがとう」

 夕莉は改めて嬉しいと思う。そして素直に思いを告白してみる。

「今ここにいるわたしは別人じゃない。悠真くんには、そう思って欲しいから」

「うん」

 だから、わざわざ用意して、着てみせたのだった。そしてそのまま好きなように触れてもらいたい。

「悠真くんの彼女、だから」

「手の届くところにいる、か」

「そう」

 大切な人。そして、触れられるアイドルというだけでもないとわかる。このままして、と夕莉が言うまでもなく悠真は近付いて、抱きしめ合いながらキス。夕莉はただ目を閉じて、されるがまま。

「ん……」

「可愛い」

「ありがとう」

「本当に、よく似合ってる」

「嬉し……。あ……」

 夕莉は優しくベッドに押し倒されて、そして服の布地がない両脇から手を入れられる。たわわに実った果実のようだと悠真は思う。ふっくらとしたボリュームの胸にもっと触れようと、もぞもぞと手が潜り込んでいく。少々難儀したものの、その目的は達成される。
 
「あ、んっ!」

「可愛い。……可愛いけど、でも。あんまり際どいのは、俺以外の奴には見せないで欲しい。その……。この服も脇とか、開いてるから」

「う、ん。そうね。気をつける。……あっ! んっ!」

 悠真は夕莉のマシュマロのように柔らかな胸の膨らみを手の平で覆いながら、すぐに乳首と乳輪の場所を探し当てる。

「んっ! だ、め。あっ」

 左右の乳首を同時に摘ままれると、夕莉はぴくんと体を震わせる。

「おっぱいにしゃぶりつきたいんだけど、服の上からじゃ、だめだよな?」

「い、いい……わよ」

「いいのか?」

「う、ん。悠真くんが、そうしたいのなら……。あっ!」

 悠真はすぐに夕莉の乳首に吸い付いた。その部分だけ既に、服の上からもわかるくらいぽっかりと膨らんでいる。シャワーを浴びているときからずっとそうだった。夕莉は、悠真にしてもらえると思っただけで、体が自然とこうなってしまったのだった。

「夕莉は本当に、エッチな体つきをしているよ」

「や、あっ!」

「こんなに細い体なのに、胸はとても大きくて。乳首、綺麗で」

「んひっ! あっ! そんなっ!」

「生真面目な、お堅い風紀委員なのに、体は感じやすくて。敏感で」

「あっあっ! んんぅっ!」

 膨らんだ服の中で悠真の手がもぞもぞとうごめき、夕莉の胸をふにふにと揉んでいる。同時に淡いピンク色の布地が悠真の唾液で濡らされていく。白い水玉模様の入ったインナーがなければ、透けていたに違いない。夕莉はただ増幅していく快感を堪えようと、両手でシーツを掴んでいる。

「ん……。わたしは風紀委員だけど、女の子だもの。好きな人に優しくしてもらったら、感じちゃうわ……」

 当然の事だと、悠真も思う。

「そうだな」

 悠真は相づちをうちながらくにくにと、少し硬くなった乳首をこね回しつつ、更に追い込みをかけるかのように舌でなめ回す。と、夕莉は何の前触れもなく大きく痙攣し、そして……。

「ひんっ! あっ! だめっ! ふぁっ! う、くううううううううっ! やああぁぁんっ!っ!」

 夕莉はあまりにもあっさりと絶頂を迎えさせられてしまった。まだ肌を重ね合わせて間もないというのに。その事実が恥ずかしくてたまらない。

「はぁ、はぁ。あぁ……」

「夕莉はイき顔も可愛いな」

「も、もうっ! そんなところ、見ないで!」

 粗い息を落ちつかせる暇もない。悠真のさりげない一言に、顔を真っ赤にして恥じらう夕莉。その様がとても可愛くて、悠真は夕莉の体に覆い被さって、そして唇を重ね合わせた。

「んんぅっ。んっふっ。……も、もぅ。見ないでって、言ってるのに……。はふっ」

 恥ずかしくて見て欲しくはないけれど、キスは堪らなく気持ちいい。どうすればいいのだろうと、夕莉は思いながら、ただ悠真にされるがまま。










それから。










「あ、ぅ……」

 広いベッドに仰向けのまま寝かされている夕莉。衣装はハットも含めてそのままだけど、邪魔になるショーツだけはしっかりと脱がされていて、ベッドの片隅に丸まっている。

「夕莉の中、暖かい」

 ちゅぷちゅぷと、泡立つような音が夕莉の股間の方から断続的に聞こえてくる。

「恥ずかしい……っ!」

 夕莉はスカートを捲り上げられて大きく股を開かされ、しっとりと湿った割れ目に人差し指を突っ込まれていた。

「どんどん溢れてくる」

「いやっ! そんな事、言わないで……。あっ! 中、あんまりかきまぜないで……!」

「太股も、すべすべのむちむちだな」

「あっ!」

 言葉のままに太ももに触れられる。けれど突然、悠真が夕莉の股間に顔を埋め、割れ目に舌を這わせた。

「そ、んなっ! んあっ! あひっ! だ、めっ! あっ! んっ! やっ! はふっ! あっ!」

 じゅるじゅるとすするような、とても下品な音。悠真は夕莉の割れ目を指で押し広げ、クリトリスやその周りの柔らかなひらひらを満遍なく円を描くように舐め続けている。その度に夕莉はびくんびくんと小刻みに体を震わせ、喘いでいる。

「あひっ! あっ! んぁぁっ! あっ! こんなのだめぇぇっ! ああんっ!」

 夕莉がどんなに切なげな眼差しを向けようと、か細くも愛らしい声をあげようと、悠真の愛撫は止まらない。聞こえてくる声の一つ一つが可愛くて、愛しくて堪らないのだから。

「はぅっ! だ、めっ! だめえっ! また! また、いっちゃううぅっ! そんなに舐めちゃだめえぇぇっ! ぺろぺろされて、いっちゃう……なんて」

 胸を愛撫されてあっさりと絶頂を迎えさせられて、あれだけ恥ずかしい思いをしたのに、更に上回る快感が夕莉の前身を襲う。悠真の愛撫をどうにかして止めようと両手で頭を掴もうとするけれど、引き剥がす力など、もはやありはしなかった。

「ひぅっ! あ、あっあっあっあっあぁっ! ふぁぁっ! も、もうだめ! もう、ゆるしてぇ……っ! あああああああっ! あっあっあっあっあっ!」

 夕莉の華奢な体がびくびくと震え、弓のようにしなる。好きな人が、自分の恥ずかしい所に顔を埋め、熟れた果実にむしゃぶりつくようにしている。時折指が入ってきて、お尻の穴まで撫で撫でされている。

「あ、あ、あ、あ、あ! お、お股が……あそこが熱いぃぃぃっ! 悠真くんだめえええええええええっ!」

 触れあいが続く度に高揚感が満ちていき、自分が自分ではなくなりそう。夕莉はいつしかとてつもなく恥ずかしい事を口走っていた。

「あ、あ! あ、お、お○んこが熱いいぃぃぃっ! き、気持ちいいのおおおっ! んああああああああっ! あーーーーっ! ああああああっ! ああぁぁぁーっ!」

 一瞬、意識がはじけるように飛んだ。視界が真っ白になり、空中に投げ出されるような感覚。夕莉は二度目の絶頂を迎え、そして……。

「うわっ」

 ぴしゃ、ぴちゃ、ぷちゃ、と夕莉の股間から断続的に飛び散る雫。その勢いは強く、悠真の顔にぶちまけながら天井に届きそうなまでに高く舞い散っていく。

「あ、あっ! きゃっ! な、なに、これ!? そんなっ!」

 体の異変に気付き、一瞬にして我に返る夕莉。自分の痴態はかなりのショックだったようで、恥じらいの余り両手で顔を覆ってしまう。

「夕莉……?」

 持ち手を放してしまい、制御を失ったホースのように、潮吹きは数秒間にわたって続いた。夕莉は目を見開き、泣き出しそうな表情。

「嘘!? な、なん、でっ!? どうして止まらないのっ!?」

 このままだと部屋中をびしょびしょにしてしまいそう。自分の体だというのに制御ができず、困惑する夕莉に対して悠真がとったのは信じられない行動。それは、夕莉の混乱を押さえて落ちつかせようとした、悠真の不器用な優しさ。

「ゆ、悠真くんっ!? な、何してるのっ!?」

 悠真は再び夕莉の秘部に顔を埋め、大きく口を開けて、吹き出され続ける潮を飲み始めた。ごく、ごく、と喉を鳴らしながら。

「そ、そんなの飲んじゃだめええええええええっ! いやああああああああああああああっ!」

 羞恥と混乱と快楽が交じり合い、夕莉は絶叫をあげるのだった。










…………










「ん、ん」

 ベッドに腰掛ける悠真。夕莉はかがみ込んで悠真のものを咥えていた。

「なあ、悪かったよ」

 流石にやりすぎたと思い、謝る悠真。

「ん……。怒ってなんて、いません」

「そうは見えないんだが」

 夕莉はちょっとムキになったように言った。

「悠真くんが飲んだ分、わたしも飲ませてもらいますから」

「何を?」

「それは……。えっと。ざ……。も、もう! そんなこと言わせないでっ!」

 一瞬言いかけてあまりの恥ずかしさに赤面する夕莉。もはや理屈ではなく、意地だった。つい数分前。思いっきり絶頂を迎えさせられて潮を吹かされ、あまつさえそれらをたっぷりと、ごくごくと音を立てて飲まれた。悠真の喉仏のうごめきが、それはもう良くわかるくらいにたっぷりと。

「ん、んん、ん」

 夕莉はやめてと叫んだ。けれどそれは本心ではなかった。

(いっぱい気持ちよくさせてくれて、意識が飛びそうになるくらい幸せにさせてくれて、その上……飲んでくれた。わたしの恥ずかしいお汁を……)

 嬉しかった。ありがとうと言いたかったけれど、素直になれなかった。あまりにも恥ずかしいことだから仕方がないと思う。だから、これはそのお礼。ちょっとした仕返しのつもりもほんの少しだけあるけれど。

「ん、ん、ん、んん、ん、ん」

 生真面目に、丁寧に。傷をつけることの無いように細心の注意を払って柔らかい唇で包み込みながら咥え込んで、舌先で舐め回す。じゅぷじゅぷと音を立てながら唾液を絡め、柔らかくて毛がちりちりしている玉から、線のように盛り上がった裏スジを刺激する。悠真は無言だけど、確実に呼吸が早まっていくのがわかる。このままでいい。続けることは間違ってはいないと夕莉は思う。

「んん、んん、うん、んぅ……ん、んっ」

 夕莉は軽く目を閉じながら、ひたすら頭を前後に動かしていく。時折亀頭の膨らんだ部分をアイスキャンディだと思いながら、かぷかぷとあまがみするように濡れた唇で包み込む。それから舌を可能な限り出して、舌先でペロペロとなめまわしたりして緩急をつける。

「……く。うぁ」

 声が聞こえる。それは悠真が快感か何かを堪えている証拠。女の子のようにか細く、可愛らしい声だと思った。きっと、射精感が高まってきたのだろう。もう、すぐそこまで来ていると夕莉は悟った。口元からダラダラとヨダレのように互いの混じり合った体液をこぼしながら、夕莉はこの後のことを想像した。そして、予想通りの結果がすぐに実現する。

「も、う……で、る。くうっ」

 ぶちゅ、ぶびゅ、と口の中が満たされていく。強い圧力で押し出されそうだけど、夕莉は悠真の体を抱きしめるようにして、放さなかった。悠真の体とぶつかり、夕莉が被っていたハットがぽろりと落ちゆくのがスローモーションのように感じる。

「ん、ん」

 濃厚で量も多くてむせ返りそう。経験は無いけれど、強い酒を原液で飲んでいるかの様。こぼさぬように、夕莉はしっかりと飲み干していく。一滴たりとも無駄にしないように。先程のお返しと言わんばかりに生真面目に。

「んく、んく……んぐ」

 やがて夕莉は悠真のものから口を離す。ちゅるりと泡立った精液が糸を引いていく。ちょっと顎や頬を濡らしながら夕莉は自ら予想した未来を実現しようと口を開く。ぺろりと舌を出して、好きな人に最高の笑顔を見せながら。

「ん……。悠真くん、ありがとう。わたしのお口で感じてくれて」

 自分の体で気持ちよくて幸せな気持ちになってくれたらいいなと、夕莉はそう思いながら、口元を指で拭うのだった。










…………










「あ、あ、あっ」

 夕莉は再び大きなダブルベッドに寝かされ、覆い被さるように悠真の体。

「夕莉の中、温かい」

「んっあっ!」

 何度も何度も打ち付けるように、腰を揺さぶる悠真。夕莉の華奢な体はベッドにめり込んでは弾むように押し出される。

「あ、あ、あっ!」

「夕莉。本当に、可愛い」

「嬉しい。……けど、こんな顔。恥ずかしい」

 ぐしょぐしょに濡れた秘所を奥まで侵入され、込み上げる快感にだらしなく口を開いては、喘いでいる。そんな顔を間近に見られて、可愛いと言われた。喜んでいいのかどうか、よくわからない。

「もっと夕莉のそういう所、見たい」

「……そんな。羞恥攻め?」

「好きな人が俺のでいっぱい感じてくれてるなんて、最高に幸せだと思う。夕莉は違う?」

「違わない。……で、でもでも。やっぱり恥ずかしくて、顔が燃えちゃいそう。あ、あんまり見ないで〜!」

「そんな事言っているけど、夕莉。気付いてる?」

「……え?」

 何だろう? 夕莉がきょとんとしていると。

「今の姿のことだが。ちょっとだけ、痛い。少しだけ緩めてくれるとありがたい」

「……ぁ」

 両腕で悠真にしがみついて、その上両足でもカニばさみロックという恰好。当然、大きく股を広げていて、はしたないことこの上ない。その事実に気付いた夕莉は一瞬目をまん丸にして絶句し、次いで慌てふためき、釈明をしようとする。

「こ、これは! そのっ!」

「ああ、責めてるんじゃない。だから恥ずかしがらないで欲しい。俺も、夕莉を放したくないから」

「……。うん。わたしも、悠真くんに放れて欲しくない。んっ」

 二人の思いは同じ。好きな気持ちが自然にキスの形になっていた。

「悠真くん。……。わたし、もっとエッチになっても、いい?」

 勿論いいに決まっているから、悠真は優しく微笑みながら頷いた。それはとても自然な、歪んでない微笑みだと夕莉は思った。そして今の夕莉は生真面目な堅物風紀委員ではなくて、好きな人の温もりにただ身を任せて甘える少女。

「あっあっあっ! はぅっはっあっ う、んっ! はぁっあっ。き、もち……いい……。いきそ……あ、んっ! はぁぁっ! 気持ちいいよぉっ!」

「俺も気持ちいい。夕莉の中、きゅうきゅう締め付けてきて」

 悠真が奥まで突っ込もうとすると最後の数センチで強い抵抗に阻まれて、それでも強引に押し込むと、そのまま抜けなさそうなくらい密着する。

「あ、ああああっ!」

「きつい。痛いくらい」

「え……。大丈夫、なの?」

 夕莉に要らぬ心配をさせてしまったと、悠真は少し後悔。

「ああ、大丈夫。全然嫌じゃない。むしろ……」

 ゆっくりと、抜ける寸前まで引き抜いてから。ずん、と奥の方まで一気に押し込む。

「ぁんっ!」

「もっと締め付けて」

「そ、んな。激し……くぅぅっ! はうっ! ぁっ! お、奥に……奥に当たってるぅ! ずんずんってして……あああっ!」

 広々としたダブルベッドがギシギシと揺れている。二人の交わりは最高潮に達しようとしていた。

「夕莉。好きだ」

「んんんぅっ! んんぅっ! わたし、も! すき……。あああああああっ!」

 互いに絶頂が近いと、雰囲気だけでわかる。息を止めるようにキスをして、そしてラストスパートにかかる。

「んんんんんっ! んんっ! んんーーーーーーーーーーーっ!」

 杭を打ち込むかのように強く圧力を加える悠真。夕莉の小さな秘部が裂けてしまいそうなくらいの勢いで、跳ねるように上下に動く。夕莉のふくよかな胸と悠真の胸が密着し、ぐにゃりと潰れていく。

「い、いっちゃう! また、いっちゃう! 何回もいったのに、またっ!」

 空調が効いているのに暑くて汗だくの二人。交わりは更に速度を増し、ベッドの上で飛び跳ねているようにすら見える。そして、高まりは限界に達し……。

「んああああああああっ! いくぅっ! い、くぅぅぅぅぅぅぅぅっ! ひゃぅっ! あ、あ、はぁぅうううううううううっ!」

 互いに絶頂を迎えた瞬間。夕莉はビクビクッと震え、悠真は硬直したように夕莉を抱きしめながら膣内に射精を繰り返していった。びゅくびゅくと、狭い膣内に白濁液が満たされていく。その瞬間は、文字通り昇天しそうなくらいに気持ちよくて堪らない。

「で、出てる……。出てるぅ。わたしのお○んこに、悠真くんの……ザーメンが。あ、あぁぁ……あ、あ」

 しばらく二人はそのまま一つになったまま、抱きしめ合った。

「あ……。だ、だめ、よ。そんな……。赤ちゃんみたいなの……」

 抱きしめ合うだけじゃ飽き足らず、悠真はただひたすら夕莉の乳首にしゃぶりついていた。じゅる、じゅぷ、じゅぴ、ぴちゃぷちゃと、わざと音を立てながら。

「あ、あ、あっ! だ、だめぇっ! いったばかりなのに。おっぱい気持ちいぃぃっ!」

 夕莉のふくよかな胸は夕莉自身の手でむんずと掴まれていて、その上で悠真によって交互に吸い付かれていった。悠真のものは夕莉の膣内奥深くに突き刺さったまま勢いを失わず……それどころか再びまた動き始めていった。

「い、い、くぅぅぅっ!」

「夕莉。このままもう一回」

「ああああああああああっ! え……。ま、た……。あ、あ、あ、あ、あ! 悠真くん、少し、休も……。あああああああんっ!」










…………










 ベッドの上で抱きしめ合う二人。けれど、普通の形ではなくて。

「ん……。もう」

 少しの困惑。そして恥じらいと、母性本能。未だ夕莉の胸に顔を埋めている悠真に対して、夕莉が感じている思い。

「そんなにおっぱいが好きなの?」

「男で女の子のおっぱいが嫌いな人は、そんなにいないと思う」

「そうなんだ」

「ずっと、こうしていたい」

 白くもちもちした肌。ふっくらとした膨らみに顔を埋めて、時々乳首をキュっといじくったり、吸いついたり。そんなこと。

「赤ちゃんが甘えてるみたいね」

 僅かなくすぐったさが心地よい。夕莉はおだやかに笑いながら、悠真の頭を撫で始めた。

「気の済むまで、いいわよ」

 何だか可愛いなと夕莉は思う。こんな風に甘えられると、思うままにしてあげたくなってくる。

「悠真くん?」

「何だ?」

「何だ、じゃなくて」

 夕莉はこそばゆさに肩をよじらせる。

「どこ、触ってるの?」

「おっぱいだが」

 悠真は悪びれずに言った。それは嘘ではない。けれど正解でもない。

「そこだけじゃないでしょ?」

 もぞもぞと這い回る感触に、夕莉はじとーっとした目をしながら追求する。男の人って本当にしょうがないんだから、と、心の中でぼやきながら。

「柔らかいな」

「もう……。んっ。嫌らしい触り方」

「だめか?」

「だめじゃないけど。……恥ずかしい」

 肉付きの良いお尻を撫で回されている夕莉。悠真の両手でお尻をすっぽりと覆うように掴み、揉みくちゃにし、割れ目に指をはわせる。

「痴漢されてるみたい」

「されたこと、あるのか?」

「ないわよ」

「俺だったらいいだろ?」

「うん。……でもそれじゃ、痴漢じゃないと思うけど? って、あっ!」

 夕莉はまたも押し倒されて唇を重ねられる。

「夕莉のお尻が可愛いから、またしたくなってきた」

「もう……。なにそれ。あっ!」

 夕莉はくるんと体をひっくり返される。

「入れるぞ」

「そん、なっ!」

 悠真は夕莉の体に重なり、丸みを帯びてふっくらとしたお尻の割れ目に一物をねじ込んでいく……。

「あっ!」

 大きく目を見開く夕莉。その間も、止まる事無くずぶずぶと長くて太い物が入り込んでいく。

「ゆ、悠真くん! だめっ! あっ! んっ!」

 交わるのが何度目かもわからない。けれど、こみ上げてくる快感は増していき、その度に夕莉は目を見開いて喘ぎ続ける。ふと、目の前の大きな鏡が見える。曇りのない鏡には、悠真と交わり、胸をゆさゆさと揺らしながらだらしなく涎を垂らしている自分の姿がくっきりと写っていて、夕莉は間近でそんな光景を目の当たりにする。

「あ……あっ!」

 恥ずかしい。夕莉は心底そう思った。

「よく見えるな」

 夕莉が何を見ているのか、悠真も気付いたようだ。そうして悠真は夕莉と交わった間少しばかり動きを止めて、枕元のスイッチをいじくった。

「こ、こんなの!」

 それは照明の設定のようだった。紫からピンクへと、室内中が妖しげな色に染まっていく。真面目な夕莉にはなかなかに受け入れがたい光景。けれど、首筋を震わせる快楽からは逃れられなくて混乱してしまう。

「まさに、ラブホテルでしてるって感じだな」

「い、いやらしい! はぅっ!」

「雰囲気出てていいんじゃないか?」

「な、何を? あっ!」

 悠真は枕元に転がっていた夕莉のハットを拾い上げ、被った。弄ばれているかのような扱いに夕莉は抗議しようにも、もはやそんな余裕はなかった。ぱちんぱちん、ずんずんと、リズムカルに交わりは続く。

「あっあっあっ! そん、なっ! あっ! ん! 悠真くん、は、激し……すぎ! あっあっぁあああああっ! そんなに、激し……く、だめ……あ、あ、ま、また奥に……また、来ちゃう! ん、んああああああっ! 悠真くん! す、すきいぃぃっ! いっちゃうぅぅぅぅぅっ!」

 ぎしぎしぎしとベッドがきしむ。このまままだしばらく楽しもうと悠真は思い、恥じらいつつももう少しこのままし続けて欲しいと夕莉は思うのだった。










ひたすら抱かれて、優しく、激しくされて。










夢見心地のまま、恋っていいね、と夕莉は思うのだった。




















----------後書き----------


 随分と遅くなってしまいましたが、久方ぶりのシリーズ発動であります。

 恋がさくころ桜どきのえっちなお話シリーズ第一弾は月嶋ゆりゆりさんでした。生真面目な彼女が変わっていく様が、とても可愛らしいと思います。

 次作をお楽しみに!


ご感想を頂けると嬉しいです。





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