幸せブランコ
夕暮れ時の公園。辺りには誰もいない。 「貸し切りだね。いるのあたし達だけ〜。うーん、何だか得した気分がするよ」 並んでブランコに腰掛ける紗凪と新吾の二人だけがいた。 「ねえ新吾」 「うん?」 紗凪が腰掛けているブランコのチェーンが微かにきいきいと音を立て、彼女の長い尻尾のような髪と共に揺れている。学校帰りにちょっと寄り道しようと、紗凪が何気なく新吾を誘い、今に至るのだった。そうして紗凪は唐突に言った。 「靴飛ばししようよ」 その提案はなんとも可愛らしい、子供の遊び。小さい頃よくやったなあと、紗凪も新吾も懐かしく思う。ブランコに揺られながら片側の靴を飛ばし、飛距離を競う単純な遊び。わけもなく楽しくて熱中したものだ。 「いっくよー」 新吾はまだその勝負を受けるとは言っていない。けれど紗凪は新吾の同意を得ることもなく、いきなり勝負をふっかけるのだった。そして靴を片方軽く脱いで引っかける。 「紗凪様の実力を見せてあげるからね! んしょ、んしょ」 結姫女子学園の制服の白いスカートがヒラヒラと揺れる中、紗凪のブランコは前後に勢いを増す。時折スカートがまくれてショーツが見えたりしているけれど、あえて新吾は何も言わないようにしていた。 「そうだ。あたしが勝ったら何か言う事聞いてもらお。何がいいかな〜」 「いつの間にかそんな決まりができてる」 どうやらそんなルールが今決まったようだ。無論、これもまた新吾の同意など得ていない。けれどそれはもはや決定事項。反論は許さないよと、紗凪は笑顔で言い切る。仕方ないなあと、新吾は苦笑。 「まあまあ、いいじゃんいいじゃん。……んじゃ、一丁いっくよ〜!」 そして紗凪の右足から学校指定の茶色い靴が軽く脱げて……。 「いっけ〜! そりゃっ!」 「お。結構飛んだ」 びゅん、とお得意のハイキック。黒いソックスに加え、淡いピンクと縞柄のショーツが一瞬はっきりと見えるくらいに高く足を上げた。……めっきり新吾にくらわせることもなくなった紗凪の強烈な一撃によって、かなり遠くにまで靴は飛んでいった。 「へっへ〜ん! ホームラーン!」 してやったり。これなら勝てないでしょ? と、満面の笑みを浮かべる紗凪。そして今度は新吾をけしかける。早く早くと待ちきれないよう。 「次は新吾の番だよ」 「ああ。するよ。……あれ?」 新吾は紗凪と同じようにブランコに勢いをつけ、そのまま皮靴をリリース……。のはずが、うまく抜けず、中途半端に引っかかってしまった。その結果、靴は彼らのほぼ真上に飛んでしまった。紗凪の飛距離に比べてとても情けない結果。 「へ? ……おわっ! あぶなっ! もう、新吾の下手くそ。どこに飛ばしてんの」 新吾の皮靴はぼとっと音を立て、紗凪の目前に落ちていた。そんなわけで唐突な靴飛ばし勝負の結果は文句なしに紗凪の勝ちに終わった。靴を履き直した新吾が紗凪の靴を取って来てから、何をお願いするのかと改めて聞いてみると。 「で。何をすればいいの?」 「そだな〜。どしよっかな〜。何がいっかな〜」 上機嫌な紗凪はニコニコしながら考えている。そして、すぐにいい案が浮かんだ模様……。 「決めた。……ね、新吾。ちょっとだけ、いちゃいちゃしよ?」 それが新吾にデレデレな紗凪の望み。無論、ちょっとだけ終わるはずもない。 …………
「う〜ん。新吾の上、気持いいにゃ〜」 ブランコの上には新吾。その上にちょこんと腰掛けている紗凪。紗凪が求めたのは、大好きな人とのスキンシップ。その様は、何だかまるで膝の上に乗っかってくる猫みたいだと新吾は思った。黒い大きなリボンは猫の耳を、長いポニーテールの髪型は尻尾を連想させるから尚更。しなやかでスレンダーな体もそう。新吾は思わず紗凪を抱きしめたくなるけれど、怒られそうなので堪える。 「紗凪。こんなのでいいの?」 「こんなの、じゃないよ。新吾といちゃいちゃするの、すっごく楽しいんだから。……でも」 「でも、何?」 「欲張りだけど。……その、もうちょっと色々として欲しいかも。……あぁ、そこで『色々ってどんなこと?』 だなんて野暮なこと聞かないでよね? まあ、新吾のする事なら、この心の広い紗凪様は大抵のことは許してあげちゃうんだから……ひゃうっ!」 本人がそう言うなら、堪えずに抱きしめても良かったかもしれないなと思いつつ、紗凪の細く白い首筋にキスをする新吾。全くの不意打ちに紗凪は裏返ったような声を上げてしまった。 「こ、こらあ! 突然キスすんなあ! ……んっ!」 紗凪は顔を真っ赤にして抗議するも、今度は顔をクイ、と軽くひねられて唇にまでキスをされてしまった。 「んんんっ! ちょっ……、キス、だめ……。そんな、ずるぃ。んんっ! あっ!」 やがて唇が離れ、至近距離で数秒間見つめ合う二人。紗凪の瞳は潤んでいて……。 「あ……」 「ごめん。ちょっと、やりすぎた」 謝る新吾に、紗凪は頭を振りながら言った。 「嘘。……ごめん。離しちゃ嫌。もっとしてぇ」 切なくて、感極まって泣き出しそうな紗凪は今度は自分からキスを求める。 「んんぅ。ん、ん。んぷ……ん、んにゅ……ん……。新吾ぉ。好きぃ」 周りの風景なんて目に入らない。紗凪はただひたすら小さな体を好きな人に包み込んでもらいつつ、キス攻めにしてもらう。上手いか下手かなんて関係無くて、時折鼻同士がぶつかったりしても関係無く続ける。 「んふぅ。あ、ん……。どうしてこんなに、キスって優しいのかな。ん、んん……」 互いに体中が熱を帯びていくのがわかる。紗凪は頭の中が真っ白になっていくように感じた。甘くて優しくて、気持ちいい。そんな気持ち。くちゅ、くちゅ、と熟した果実をむさぼるかのよう。舌が絡み合いながら、互いのぬくもりを直に感じ合う。 「新吾ぉ」 ごろごろと猫が喉を鳴らすかのように、紗凪は安心しきって甘えて新吾に抱きついている。 「好きぃ。ん、んんぅ」 思う存分キスをすると、二人の頬は赤ん坊のように濡れていった。そのことに気付き、二人してぷっと吹きだして笑い合う。 「新吾。……あのね」 紗凪がもじもじしながら、何かを求めている。 「あたし……その……か、感じちゃって……。キスだけで……」 「紗凪?」 「新吾のせい、だからね? こんなに優しくキスして……抱きしめて……あたしを弄んで……」 紗凪はいっぱいいっぱいになり、あわあわしながら弱々しい抗議。 「どうしたの?」 「っ……。どうしたもこうしたも、ないよっ」 そんな事、空気を読んで気づいてよと、紗凪は困り果てる。どれだけ恥ずかしいことを言わせようとしているのと、八当たり。キスを求めたのは他でもない紗凪自身なのに。鈍感男、と心の中でちょっと拗ねてみせる。 「新吾がキス……上手だから。手玉に取られて、気持ち良くなっちゃって……調子に乗って、いっぱいしちゃって……」 言わなきゃわからないんだろうなと紗凪は思いつつ、素直な気持ちを独白。これからおねだりするのはもっともっと恥ずかしい事なのだから、ちょっとやけっぱちになっていた。 「体、どんどん熱くなっちゃって……。何だかエッチな気持ちになっちゃって……。んっ!」 ちゅぷ、とねっとりした液体の中にある大きな泡が弾けたような気がした。今はまさにそんな瞬間。 「ぬ……濡れちゃった……の……」 言葉を続けていないと湿りが更に増えていきそう。ショーツにじんわりと染みができて、洪水になってしまいそう。堪らずに紗凪は新吾を求めた。 「ここで、して……」 紗凪は、とろんとして焦点の定まってなさそうな眼差しを新吾に向け、新吾も応える。 ……
「誰もいないし、見てないから」 だから大丈夫と、自らに言い聞かせている紗凪。ショーツを膝の上十五センチくらいにまでずりおろし、既にぐっしょりと濡れている割れ目と共に白く薄いスカートで隠す。 「服もちゃんと着たままだし、ちょっとやそっと見られたくらいじゃ、わかんないよね? 誰かが来ても、すぐにわかるし……」 確かに紗凪が言う通り、ブランコは公園中を見渡せる位置にあった。新吾は紗凪の座る位置を少しだけ前にずらして、ズボンのチャックを開ける。そうしてもぞもぞと手を入れて、大きく長くそそり立った物を取り出してから、紗凪の体を引き寄せて乗せ、隠す。紗凪の眼差しは新吾の物をそそり立たせるには充分な魅力があったのだった。 「紗凪」 準備は万端。後はもう、交わるだけ。紗凪は意を決したのか頷き、腰を上げ、ゆっくりと降ろしていく。 「あぅっ」 紗凪の狭い入り口に新吾の物がぴたっと宛がわれ、一旦止まる。この後どうするかは、紗凪次第。こんな所でこんな事するのはやっぱりいけない。やめよう。そう言われても全く仕方がない行為なのだから。 「いいよ、紗凪」 迷いなど、どこにもなかった。好きな人に、体の奥まで感じて欲しい。その思いは強かった。 「う、ん。あ、あ……。ああぁっ。新吾のが、ずぶずぶってあたしの中に入ってくるよぉ」 ずずずず、と少しずつ膣内へと埋まり込んでいく物を感じる。小柄で軽い紗凪の体も、膣内の抵抗をかき分けて挿入するくらいには十分な重みだった。 「ああああああっ! は、入っていくぅ。奥まで……。あ、あ……。こ、こんな、とこで……しちゃった」 やがて沈み込むのが終わり、全てが埋没していた。子宮の方にまで届いていそうだと紗凪は思った。ふと我に帰り辺りを見回すと、いつもの公園が目の前に広がっている。相変わらず誰もいない。二人の行為は誰にも気付かれていない。紗凪は内心ホッとして、ちょっとため息をついた。 「はぁ、はぅ……。えへへ。新吾ぉ。一つに繋がっちゃったね」 「うん」 小さいけれど肉づきの良い紗凪のお尻。すべすべしてひんやりとして、思わず撫で回したいと新語は思う。けれど今は、あくまで秘密の遊び。誰にも気付かれてはいけない隠れんぼのよう。 「あ、あん……。ブランコ、揺れてる」 いつの間にか、二人の交わりに合わせるようにブランコが揺れ、きぃ、きぃ、と音を立てている。 「あ……。あたしのびぃかっぷ、もみもみしちゃだめだよぉ。その触り方、エッチだよ……。んっ」 ふり落とされないようにと、紗凪の小ぶりな胸を掴みながらしがみついている新吾。かなりのどさくさ紛れな行為。手の平にすっぽりと収まるような、丁度いいサイズだと新吾は思ったけれど、本人を傷つけそうなので何も言わないようにした。 「あ、あ、あ……。気持ちいい……。新吾。新吾も気持ちいい?」 「うん。紗凪の中、最高に気持ちいいよ。きゅきゅって締まってとろとろで」 「そなんだ。嬉しいな」 じゅぷ、じゅぷ……。白いスカートに隠された中ではそんないやらしい音が響いている。結合部の周りは更に湿りが増し、泡立ち、紗凪の敏感な神経をひたすらにいじめている状況。 「んんっ! んひっ! はひっ! あ、あぁ……。奥に……奥に当たってるぅ。ああんっ」 もし。もしも何か一つでも運命が食い違っていて、今とは異なる未来があったとして。……好きな人に想いを伝えられなかったり、受け入れて貰えなかったりしたら。こんな事をしていなかったかもしれない。例えば、新吾がみうと結ばれたりしたらどうなっているか? それは……好きな人が好きな人と結ばれて、その事自体はとても嬉しいけれど、でも……と複雑に思う。そうしたらもしかすると、自分はこのブランコに腰掛けて泣いていたかもしれない。紗凪はそんな想像をしてから、今の現状を思いぽろぽろと嬉し涙をこぼす。 「うぁっ! はぁんっ! あっ! もぞもぞって、しないでえぇ……。あんっ! おっぱいもらめぇぇぇっ!」 紗凪はそんな事を言いながら、気が付けば自らもぞもぞと腰を上下にしていた。気持ち良さが込み上げて止まらない。乳首がつんと起ってしまい、ブラと制服の上からでも新吾には気付かれて、指先できゅ、と摘ままれている。紗凪の快感に追い打ちをかけるには充分だった。 「あ、あたし……もうだめ。もう、いっちゃう……。あ、あ、あ、あ、あ……! 新吾……好き……好きぃっ! あ、あ、あはぁぁぁぁぁああああああんっ!」 はしたないとわかっていつつ、紗凪が大きく口を開けると可愛らしい八重歯が見える。そのままびくびくと小刻みに震え、紗凪は遂に絶頂を迎えた。同時にびゅくびゅくと音がしたように新吾の物が伸縮すると、紗凪の膣内へと熱いものが込み上げ、溢れていく。 「ん、んんぅ……んむ、んぷ。……しん、ごぉ……んくぅ、んぐぅ……」 激しい交わりの余韻もそのままに、二人は繋がったまま濃厚なキスを交わしていった。 幸せなひととき。
ブランコの上での、大好きな人との交わり。
いつまでも続いて欲しいなと、夢見心地の紗凪は願うのだった。
----------後書き----------
紗凪きちのお誕生日ということで、TwitterのTL上を見ていて何だか唐突に書きたくなり、一気にゼロから書き上げました。 何だかブランコがトラウマな人が多いみたいなので、じゃあ、ということでブランコの上で幸せなのを一つどうかなーと思ったのでした。 いかがでしたでしょうか?
ご感想を頂けると嬉しいです。
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