たとえばそれは -その二-
最近姉の様子がおかしい。と、彼女……藤林椋はそう思った。 姉……藤林杏が何か隠し事をしているような、そんな気がするのだった。時折たまに、不自然なまでに帰宅時間が遅いときがあるから。理由を聞いてみると『委員会が長引いた』とか、もっともらしいのは確かで、両親は普通に納得して咎めることもないのだけれど。何だろうか。自分が知らない理由でもあるのだろうか、と勘ぐってしまう。 (関係ない、って云われちゃう……よね) 仲の良い姉妹だとは自他共に認めている。少し前に、一人の人を巡って三角関係を築いてしまったことがあったのは確かだけど、全てを受け入れたからこそ今の関係があると確信できる。だから、今ではわだかまりなど何もない。誰もがそう思ったはずだった。 (朋也君と、会ってるのかな) 何となくだけど、薄々そう感じてしまう。放課後の、誰もいないところで何をしているのだろう? なるべく変なことを考えないようにと心がけてはみるけれども、彼女は彼女で多感な年頃なわけで。好奇心を押さえ込むには少々荷が重すぎた。 (……見つからなければきっと、大丈夫……だよね?) 遅くなることと、両親に嘘をつくことを心の底で謝りながら、今度二人の様子を見てみようと、そう思った。 そして、そんな機会が訪れたある日のこと。
ドクンッと、漫画の描写のように大げさなくらい心臓が高鳴ったような気がした。実際椋はビクッと全身を震わせていた。それだけショックを受けたから。 (なに……してる、の?) 椋が見た光景は、それは息を飲むようなものだった。挙動不審だった杏を目撃して、気付かれないようにと後をつけてきたのだが。一瞬見失ってしまう。そうしてしばらくしてようやく見つけて、改めて声をかけようとしたのだが。杏は足元に下着をずり下げたまま茂みの中で密かに交じり合っていた。相手は朋也だ。 (え……) そうして杏は朋也によって顔に射精されて、拭い取りもしないままという、とんでもない格好で茂みから出てきて辺りを歩いている。声をかけがたい、猛烈に恥ずかしい事をしていると、椋は本能で察していた。すぐに辺りは薄暗くなり、二人は体育館に入って行った。制服姿だった杏はいつしか体操着に着替えていて、椋は首を傾げた。どうしてこの時間に体操着? と。 (……) 疑問に思ったのも束の間。その理由はすぐにわかることになった。 「はっ! あっあっあっあっ!」 「……っ!」 入り口の、僅かに開いた隙間から中をうかがう。暗い体育館の中。階段を上がった狭い通路にて。 立ったまま重なり合い、朋也が杏を背後から激しく突いていた。その度に柔らかな杏のお尻がたゆみ、ぱん、ぱん、とぶつかる音が響く。杏の表情は微妙に歪み、恥じらいに頬を赤らめていて、堪えきれない甘ったるい声をもらしてしまう。杏の羞恥心を刺激するために、体操着などというものを着せたのだ。 (え……ええっ!? こ、こんな……ところ、で?) 「先にイったら罰ゲームだからな」 「んああああっ! ああっ! ああっ! ああんっ! だ、めぇっ!」 罰ゲームという言葉を聞いた瞬間。朋也の攻めが一段と激しくなった気がして、程なくして杏は達してしまった。あまりにもあっさりと、あっけなく。 (ば、罰ゲーム?) 「仕方ねぇな」 朋也は脱力して倒れ込む杏を抱きかかえて、降りてこようとしていた。椋は慌てて身を隠そうとした。 (あ……。く、来る。で、でも。罰ゲームって……どんな……) 気になって仕方がなくてついていくことにする。何かを求めるような、とろんとした姉の瞳を見て、椋は悟っていた。 (何をしてくれるの、って。お姉ちゃんもきっと、同じ事考えてる……) その先は。
椋は一瞬くらっときてしまった。 暗い廊下の先にある場所。そこは、職員室だった。数刻前、朋也と杏の会話……。 『あ、あんたなんで職員室の鍵なんて持ってんのよ。体育館もそうだけど』 『いや、春原の奴がな。学校中の合鍵作ろうぜとか云いだしてな。色々と事情があって、合鍵を作ってしまったんだ。今では学校内の殆ど全部開けられるかもしれない』 『つるんで悪さしていそうね』 『意外としていないぞ。強いて云えばいつだったか、赤点になりそうだから採点前のテストを見つけて成績の良さそうなやつの答えに変えようかとしたんだ。春原の頼みでな』 『……』 『……したんだけど、結局書き写したのは間違ってた答えばっかりだったみたいで。春原は思いっきり赤点になった。しかも前より悪い点』 『何やってんだか』 『まあ、それはそうと。お前の担任の席ってどこだっけ?』 『そこ。……って、まさか』 『そのまさか。お前の担任の席の上でやろうぜ。それが罰ゲーム』 『あ……。ちょっ……。え、鉛筆なんて中に入れないでよっ! あ、あ!』 『自分の席の上で教え子がやってるなんて知ったら、何て云うだろうな。お前の担任』 『う。……あ、ああああっ! は、ずかしいよぉ……』 罰ゲームとは、杏の羞恥を煽るシチュエーション。想像するだけでも凄まじい背徳感。無論、誰もいるわけもなく、雑然とした空間は静けさに包まれていた。椋は廊下で聞き耳を立ててみる。 「う、ぐ」 明らかに苦しそうに、けれどとても物欲しそうな瞳で杏は呻いた。そして、目の前には朋也。いつしか杏の衣服は全て脱がされて、全裸になっていた。 (学校で……そんな格好……) こんな所、もし誰かに見つかったら。そう思うと他人事ながら、猛烈なスリルを感じてしまい、息をのむ。杏は、口にボールのようなものを咥えさせられていた。初な椋には最初それが何なのかよくわからなかったが、それは拘束具の一種、ボールギャグだったと後で知ることになる。杏は喋ることすら許されず、ひたすらにくぐもった声をあげる。 更に、それだけではなかった。 「う、う〜うぅぅぅ」 杏のむき出しになった左右の乳首に、激しく震えるローターを当てられ、テープで固定されていた。勿論、スイッチを入れたまま。 それだけではない。極めつけに、電動のバイブレーターを奥まで突っ込まされていた。無論、スイッチはオンになっていて、杏の中で蠢いている。その度にヴヴヴヴ、ビイイイ、と、虫の羽音のような機械音が響く。敏感なところを徹底的に刺激され、杏は喘いだ。 「んううううっ!!」 担任の机の側で、手を背中で縛られて動きを封じられていた。そして。 (ど、どう……するの?) 朋也は杏を机に突っ伏させて、そしてそのまま腰を進めていく。 (そ、そこは……! そ、そ、んな……とこ、に!?) 椋は絶句する。何も塞いでいない穴……アヌスの入り口に、極限にまでそそり立ったものを押し当てて、少し強引に、けれど傷つけないようにゆっくりと挿入していく。ずぶずぶと埋まり込んでいく感じが見るだけでわかる。 「うぐっ! ぐひぃぃぃっ! んぐううううっ!」 その衝撃で、ボールギャグをかまされた口からとろりと唾液がこぼれ落ちる。 「んひぃぃぃっ! んひっ! んんんぅっ! うぅぅっ!」 朋也は太く、大きく、長いものを突き立てて、ゆっくりと割れ目を押し開いていく。 「んーーーーっ! んぐーーーーっ! ひぐっ! うぐっ! んんんーーーっ!」 喋ることもままならない杏を横目に、朋也のものはやがて、奥まで入り込み、引きずり出す。 (あ、あ。す、す……ごい) 「んんんんっ! んひっ! んんんんんっ! うううううっ!」 しかし、椋はわかっていた。姉の声が、苦痛だけで発せられているものではないと。 (お姉ちゃん。……気持ちいいんだ。そんなところに入れられて。気持ち、いいんだ。これじゃ……) こんなことが、と椋はつくづく思った。そんなところを激しく攻められて、感じている杏を見て、椋は信じられないという気持ちと共に、また別の感情がこみ上げてきた。 「んひーーーっ! んぅーーーっ! んぐぅっ! うぐぅっ!」 その責めは延々と続く。全身を強烈に刺激され、杏はのたうち回った。職員室の中からかすかに聞こえてくる声。それを聞いている椋の鼓動はひたすら高まっていく。 「んぅぅぅぅっ!」 (あ……) 廊下の冷たい床にぺたんと座り込んでいるのに、体は興奮してしまって、火照ったように熱くなっていた。 (や、だ。私……) 「んぅっ! んぅっ! んくぅっ! んひぃっ!」 椋の体は疼き、震える。 (これじゃ私……。お姉ちゃんのこと、どうこう云えない。あ、あぁ……) 普通の感覚は既に失われていた。姉の痴態を見て、普段の椋ならあまりの恥ずかしさに卒倒しそうなくらいだったし、今二人がしている行為は客観的に考えて変態そのものだと思ってしまうのだろうけれど。今は何も考えなかった。ごく自然に、手が動いたから。自分も同じなのだとわかってしまったから。 (ん……) 胸と、股間。敏感な部分に。 (だ、め……なのに。学校なのに……) 「んんんんんっ! んひぃぃぃっ! うぐっ! お、お尻が、あぁぁぁ。き、気持ちいいよぉっ! あぅっ! あひっ!」 (っ!?) 突然、杏の声がかすかに聞こえた。朋也が杏の口からボールギャグを外したようだ。 (う、うぅ。だ、だめ。私……こんな。盗み聞きしながら……なんて) でも、もう手は止まらなかった。下着の上から敏感なクリトリスを刺激して、何度も何度も擦りこねくり回す。ブラをまくり上げふにっとした乳房を揉み回し、硬くこりこりとした感触の乳首を摘んで転がす。 「そろそろ、いくぞ」 朋也は少しずつ動きを早めていく。その度に椋の手の動きも早くなっていく。 (ああっ! 朋也くん……お姉ちゃん……ごめんなさいっ! ごめんなさいぃっ! あっあっあっ……!) 二人の行為を見ていて興奮して、自慰行為をしてしまっている。自己嫌悪の感情がわき起こるけれど、どうしようもなかった。 「ああっ! こんなのだめぇ! い、っちゃうぅっ! いっちゃうよぉぉっ!」 涙を流し、机の上をべとべとにさせながら、杏は達した。 「出る、ぞ」 朋也も絶頂を迎え、深く突いたところで一気に射精していた。杏の柔らかなお尻は白く汚された。 (わ……たしも……。あっ……んぅぅっ!) 廊下で、椋もイってしまった。冷たい床の上にぽたぽたと滴が落ちる。 そして、完全な静寂が訪れる。
月明かり一つない暗い廊下。誰もいなければ、気配すらない。そんなところに二人の姿。 杏は殆ど裸にさせられ、歩かされていた。靴とニーソックスとリボンだけ付けて、逆にそれが艶めかしい。その歩みはゆっくりだけど確実で。廊下を出て、靴箱の並ぶ出口を出た。 (ど、どこまで、行くの? 服……着ないの? 裸で……) 相変わらずどきどきと高鳴る鼓動はおさまらない。遠くから密かに見つめる椋は、気付かれないように細心の注意を払いながら着いていく。二人は中庭を越え、花壇の脇を越え。そうして校門の近くまで辿り着き、盛り上がった芝生の上でキスをし合い、朋也は杏を押し倒した。二人は再び交じり合い始めたのだった。 (あ……。あんな、とこ……で) 朋也は杏を動物のように四つん這いにして、突きまくっていた。 茂みの中でそれを見ていた椋は我慢が出来なくなり……やがて。 (もう、だめ。私……も) 思わず、気がついたら、とでも云うべきか。椋は姉と同じ格好になっていた。スカート、上着、インナーに下着。全てを脱ぎ捨てていた。 (こんな、とこで。学校で……外で……裸……あ、あ) 改めて背徳的だと感じた。こんな所で、外で、遮るもの一つない素肌を晒す。脱ぎ捨てられた衣服が事実を物語る中、椋の鼓動を早めていく。 「あ、あ、あ……はぁっ」 両手を付き、芝を握りしめる杏。突かれる度に揺さぶられ、甘い声を上げている。羨ましいと心底感じた。 (あ、あ……。入れて、入れてぇぇ……私も……私の中にもぉ。朋也くん……) 心の中で、姉の大切な人を求めてしまい罪悪感に苛まれる。が、それでも秘所をいじる手は速度を上げる。湿り具合も増していくけれど、止められない。 「はぅっ!」 朋也と杏の動きが止まった。そのまま中に出したようだ。 (あ……んっ!) それを見て寸前で堪えていた椋も、最後の一線を越えた。頭の中が一瞬白くなり……気持ちよさが体を支配する。ぴしゃぴしゃと、飛沫が落ちていく。 (気持ち、いい) 荒い息を吐きながら、そう思った。 ----------後書き----------
かなり今更な罰ゲームだったり。 第三話は、さてさてどうなりますやら? お楽しみに。
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