たとえばそれは その三
放課後の、二人以外誰もいない教室。その二人……椋は朋也を前にして、云った。 「私を犯してください」 と。余りにも衝撃的な一言に、朋也はのけぞった。あれから、色々と変わってしまったのだ。 椋はこのところ、いつも思う。休み時間が待ちきれない、と。 (……) 時折、チャイムが鳴ってから尚も粘り続ける教師がいる。当然の事ながら生徒達が心の中で無言のブーイングをしていそうな雰囲気の教室内。その中でも椋は一際苛立ちを覚えながら、シャープペンシルや消しゴムをしまう。そうしてようやく解放されて、トイレへと向かう。もう五分も過ぎてしまった。時間がない。 個室のドアを閉じると、気が抜けたようにため息を付いてしまう。ぬれないようにとショーツを脱いで、丁寧に折り畳んでスカートのポケットにしまう。これからすることのために。 (あ、あ、ん) 指先で敏感なところを何度も突いては、こね回す。朋也と杏。二人の学校での行為を目撃したあの日から、椋は情事にふける回数が増えた。激増したと云ってもいい。それ以前はそんなことをしようなどと想像すらしなかったのだから。 誰もいない暗闇。冷たい空気の中。激しく交わる二人を見てしまった。汗ばんだ状態で絡み合う肌。互いに至近距離で感じ合っているであろう熱く、荒い呼吸。ぱん、ぱん、と音を立ててぶつかり合う体と体。ひたすら攻められ、揺さぶられ続ける杏の華奢な体。深く貫かれ、漏れてしまうなまめかしい喘ぎ声。もう、忘れられるものではなかった。 (だ、め。なのに) いけないことをしているとわかっている。どうにか気を逸らそうと思っても、その度にあの時の光景が頭の中に浮かび、離れなくなってしまっていた。自室では特にぼーっとしてしまい、気がつくと胸と股間に手が伸びてしまっている。学校でもそう。考えれば考えるほどに体が疼き、火照り、我慢できなくなってトイレに駆け込み、一人自慰行為にふけるのだった。そうしなければいつしか教室で、皆がいる前でしてしまいそうだから。 (ん……。お姉ちゃん。朋也くんに) 小さくて、柔らかな手で勃起してしまった桜色の乳首を強くつねってみる。朋也のような優しい男の人にされていることを想像しながら。姉が……杏が朋也にされていることを想像しながら。 (こ、んな風に、されて……。あ……) まるで、犯されることを望むかのように、秘所に触れる指先を小刻みに動かし続けた。そのうち満足出来なくなって、両手で胸を揉みしだいていた。 (あっん。あ、あふ……ん) 声を洩らさないように気をつけながら、割れ目の中に指を入れて刺激する。そうしてじわじわと感じていく。背筋にしびれるような快感。 (あ、あ、ああん。……気持ち、いい。気持ちいいよぉ。だ、めぇ) 触れば触るほど、椋の秘所はぐしょぐしょになっていく。こんな姿を誰かに見られたら……。そんなことを想像しながら後始末をし、次の授業に望む。誰かに咎められるのを望んでしまうかのような、気付いて欲しいような、ぞくぞくするような背徳感。 そんなことを幾度となく繰り返していくうちに、やがて、物足りなく感じてしまう。一度そう思うと、行為は更に過激なものになっていく。 (……) 気が付くとトイレの中で、椋は全裸になっていた。隣の個室には誰かがいる。そして、ドア一つ隔てた外にはやはり誰かがいて、話し声が聞こえたりする。他愛のない、女の子同士のおしゃべりが。 (気持ちいい……) 椋はドアにもたれ掛かり、指先の動きを更に速める。ぽたぽたと滴が垂れて落ちていく。 (あっ……) 暑い吐息だけを漏らしながら……感じる。 (もう……だめ) でも、結局は逆効果だった。こんなことをして解消しようと思えば思うほど、満足できなくなっていく自分に気付いた。 そうしてある時、椋は決心して朋也を呼び寄せた。夕暮れ時の教室に。そこで、全てを打ち明けるつもりだった。 「朋也くん……。私……」 あの時の行為を全て見ていた、と朋也に云ったら。彼は驚き、戸惑い、そして椋の行為に絶句した。 「私を犯してください」 うろたえる朋也に見せつけるように、両手でスカートを思い切りたくし上げる。下着を身につけていない上、とろとろに濡れている秘所が露わになる。衝撃的な光景に、凍り付いたかのように呆然とする朋也は何も云えなくなっていた。 椋はそれでもただ、朋也を求めた。散々悩んだ末の結論だった。迷いはなかった。朋也と杏を咎める気など毛頭なかった。椋ははっきりと云い切ったのだ。あの日、二人を見たその時から体が疼いて仕方がないんです……と。 「早く……してください」 「で、でも」 そのままの状態で見つめられるだけで、椋はあまりの恥ずかしさに震えてしまう。自分がどんなことを云っているのか、今更冷静になってきたのだから。姉の大切な人に……性欲に溺れて求めている。 「入れて……ください」 でも、どうしようもない。何度も抵抗したし、考えないように努力をした。結果、椋の良心は惨敗を喫した。だから……救いを求め、目尻に涙を浮かべ、何度も哀願する。 誘惑されたかのように、朋也はもう抵抗できなくなっていた。 「お姉ちゃんには、私が必ず……云います、から。だから……今……してください」 好きな人を困らせている。椋はそれを自覚しながら、どうしようもなくなっていた。自分はどんどん悪い娘になっていくと、そう思いながら。 「あ、あ……」 やがて抱きしめ合う二人。そして唇を重ね合わせた。姉と同じことをして欲しい。そう云う椋に朋也は頷く。 そして、椋に命じる。 ……
(あ、あ、ああああっ! 裸。……私、裸。外……あぅ) 日が落ちて数時間。すっかり暗くなり、教師も生徒も誰もが帰宅し、人の気配の無くなった校内にて。椋は廊下を歩かされていた。辛うじて靴下と上履きだけははいているという格好で。ほんの僅かに肌を覆う感覚がとても背徳的だった。一人でするのとはまるで違う、椋の求めていた感覚がそこにはあった。 朋也は椋の体を上から下までなめ回すように見て思う。杏と瓜二つだな、と。双子だから当然のことだけど、肌の色からスタイルまでがそうなのだった。 「あ、ああ。あんまり、見ないでください」 あまりの恥ずかしさに椋は卒倒しそうになる。が、朋也は更に云う。嫌なら全てなかったことにするんだ、と。 「やめるか? やめるなら今のうちだぞ」 「……いいえ」 今なら引き返せると朋也は暗に云っている。椋の決心は揺るがない。 椋の制服は全て、教室の中に置いてきた。もし今、誰かにばったり出会ったら……どうしようもない。全てが終わることだろう。けれど、そう思うだけで股間に熱いものを感じてしまう。全裸になり、教室のドアをそーっと開けて廊下へと出ていく時の感覚は一生忘れられないことだろう。鼓動が高鳴り、息が荒くなった感じ。猛烈なスリル。 椋は無意識のうちに右手で胸を、左手で股間の茂みを隠しながら歩く。 「椋。隠しちゃだめだ」 当然のことながら、朋也のチェックが入る。そして、何度となく同じ事をしてしまい、最後には両腕を背中に回され、縛られる……。 (あ……。やだ……) 「ふーん」 もはや胸も秘所も隠すことができず、遮るものが何も無くなってしまった。朋也は椋のツンと少しだけ尖ってるように見える胸を見て、云った。 「杏から聞いてたけど。あいつより大っきいのな」 「あっ! そ、んなこと。お姉ちゃんが云っていたんですか。……んっ!」 突如、朋也が背後から椋の胸を揉みまわした。服の上から見た時より大きくて張りがあって、一瞬固いなと感じた。揉まれた方は敏感だった。つい、声が出てしまう。 「あっあっ! 朋也く……んっ」 「気持ち良さそうだな。クラス委員長」 わざとその言葉を強調。椋はびくっと震える。立場以前に思う。自分は今、何といういけないことをしているのだろう。 「んっ!」 だけど同時に気持ちいい、と思ってしまった。異常なシチュエーションに、体の感覚が普段より遙かに敏感になっているのは確かだけど、それだけじゃない。 「で。どうする?」 「え……」 胸を揉む手を離して、朋也は問う。 初めての体験を、どこでする。と、朋也は改めて云った。 「えっと……」 数分後。 「あっあっあっ!」 中庭。よく杏と朋也の三人で食事をしたところ。そんなところで椋は処女を散らされた。場所はお任せしますと椋は云い、朋也は考えた。椋が一番恥ずかしいと思う場所はどこだろう、と。いくつか考えてみたけれど、このような結論に達したようだ。 「こんなとこ。みんなに見せてやりたいな」 「そん、な……」 夜空には星が輝き、思ったより暗くはない。そのまま、立ったまま重なり合う。 「ほら。もっと腰動かして」 「あぅぅ! はぅ! はいぃっ!」 初めてなのに、朋也は容赦しない。羞恥に次ぐ羞恥でしっとりと濡れ、ほぐれたそこは朋也のものをいとも簡単に受け入れていた。破瓜の瞬間も、血など出たりしなかった。 椋は思う。自分は何ていやらしい娘なのだろうと。初体験で、野外で全裸にさせられて犯されて、その上自ら腰を振っている。あえぎ声すら出して。改めて今の状況を考えると、卒倒しそうになる。とてつもなく恥ずかしいことをされているのだから。でも、拒否はしたくなかったし、逃げようともしなかった。 (恥ずかしいのが……気持ちいい、なんて……。私……私……) 理性と本能がせめぎ合う。 「あ……」 突如、朋也が突くのをやめた。 「何だか疲れちまったな。この辺でやめるか?」 わざとだった。朋也は意地悪でそんなことを云っている。 「そ、そんな。朋也くん……。最後まで……してください」 追い詰められたような、すがるような目で椋はおねだり。朋也は云った。一気に行くぞ、と。 「あっあっあっあっ! す、ごい……です……あっ!」 散々突かれて揺らされて、大きな胸を揉みしだかれて。やがて椋は達することになる。 「ひあああああっ! あっあっあっあっあああああっ!」 秘所から放物線を描きびしゃびしゃとしぶきをあげながら。 ……
夜の教室。朋也の横にいるのは全裸の椋……ではなかった。そっくりだけど、違う。椋の双子の姉。杏だ。 「と、そんな展開とかってどうよ」 朋也はぬけぬけと云った。今までの事は全て朋也の妄想で、事実ではないとばかりに。 「……想像力豊かすぎるわよ」 さすがに杏もそこまでの筋書きは考えていなかった。が……。 「で、でも。それ、すごい。ぞくぞくしちゃって……。うう。椋。ごめん。馬鹿なお姉ちゃんで……最低よね」 想像するだけで興奮してしまう。それはあまりにも背徳的で、杏は秘所が湿りを帯びてきたことを自覚し、尚更罪悪感に苛まれる。そう。今までのは全て朋也が語った妄想。決してリアルではないのだ。……ないはずなのだから。 「あ?」 「どうしたの?」 「誰かいるぞ」 「う……そっ!」 これで幾度目だろうか? 夜の学校でセックスをしながら徘徊中のこと。朋也はわざと嘘をつき、そう伝えて杏を驚かせ、羞恥の渦に叩き込んだ。 そしていつしか想像を語り合った。ifの連続。……もし、目撃してしまった人がいたとする。それがもし、椋だとしたら? その椋がもし、朋也と杏の営みを見てから欲情してしまったとしたら? 疼いた体をしずめるために、求めてきたら? そんな創作小説のようなシチュエーション。 「冗談だよ」 「ちょっと。やめてよ……」 「杏」 朋也は本気で驚いている杏の首筋にキスをした。 「あ……」 「たまには、さ」 朋也は云う。 「学校以外の場所でしようぜ」 「い、いいけど。どんなところで?」 「そうだな。考えておく。それはそうと」 「あ……」 「こんなの、どうだ?」 朋也は杏を四つん這いにさせつつ、ポケットから何かを取り出した。……数秒後、杏の頭には猫の耳のようなヘアバンド。そしてお尻にも。 「はぅっ! あ、あぁ! な、によこれ……。はうっ!」 尻尾の付いた小さなバイブを一気に挿入した。 「盛りの付いた雌猫だな」 「だ、ってぇ……あ、あ、あうっ!」 続けて、朋也は杏の中に挿入し、動き始めた。杏はそれに合わせて腰をくねらせた。 「あっあっあっあっ! はぁっ……あっ!」 か細い、仔猫のような喘ぎが教室の片隅でかすかに響いた。 …………
――例えばそれは、深夜二時頃。杏の自宅近く。真夜中の公園。二人は夜中にこっそり家を抜け出して、そんなところで待ち合わせ。 杏はまず最初に云った。スカートをたくしあげ、何も覆っていない秘所を見せつけながら。 「朋也ぁ」 つつ、と一筋の滴が太ももを流れ落ちていった。嬉しそうに、上気した瞳で杏は云った。 「あたしを犬にしてぇっ……!」 じゃら、と鎖の音が響く。朋也の手に握られたそれは首輪。付けたのは自分。繋がれるために、付けた。 「あっあっあっ! 朋也ぁっ!」 公衆トイレの明かりだけが僅かに辺りを照らすだけの、漆黒の闇。杏は服を全て脱ぎ捨てて、茂みの中で四つん這いにされて突かれまくっていた。 「あっあっ。あふっ」 そのまま、立ちバックで一つになりながら徘徊。ベンチの上。片足を大きく上げて交わる。 「突いて。突いて……。もっと突いて。あぅっ!」 杏はひたすらに朋也を求めて腰を振った。 向こうの方に、公衆トイレの明かりが見えた。朋也は杏を引きずるようにして、その方へ向かう。男子トイレの前。明かりの下。杏は全裸。 「あああああああっ! すごい、すごいぃぃ……あ、あ、あーーーっ!」 …………
――例えばそれは、体育の授業中。女子はプールで水泳中。 その真っ最中。朋也と杏は授業をさぼって交じり合う。 「あ、あ、あ」 誰もいない女子更衣室にて、肌を重ね合わせる。 机の上には、女生徒が脱いだ制服や下着。誰かが戻ってきたら……。そう思うと、猛烈なスリル。朋也もだけど、自分も変態扱いされることだろう。 「も……っとぉ。突いてぇ。あっ。あっ」 杏は全裸。上半身をテーブルに突っ伏したまま、激しく突かれる。 「お。これは」 朋也は何かを見つけた。薄い布地のそれを、杏の頭にかぶせる。 「あ、あ」 それは椋のショーツだった。白くてシックなもの。 「なめてみろよ」 「やっ……あ」 椋の秘所が当たる部分を舌でぺろりとなめさせられた。あまりの罪悪感に杏は目をきつくとじる。が……朋也の突きは激しさを増すばかりだった。 …………
例えばそれは、体育の授業中。大会に向け学校の回りを何週か走るという、定番とも云えるマラソンの授業中。先に走り終えた者は校門付近で待っていた。杏はかなり早く走って、そして朋也のいたずらを受けていた。 「出る、ぞ」 「あっあっあっあっあっ!」 杏はブルマ。朋也は制服。二人は何度も交じり合い、もう達する寸前になっていた。 「あうっ!」 朋也は射精。杏の丸いお尻目がけて何度も。二度、三度、四度と出した後。 「あっ!」 朋也は、ずり降ろされていた杏のブルマを下着ごとつかんで引き上げた。そして、杏のお尻に思い切り食い込ませた。 「戻っていいぜ」 「そ、んな……」 べっとりとした感覚。もう今日は、下着もブルマも使いものにならないだろう。後で脱がなければ。……今日一日、下着を着けないで過ごせと、そういうことだった。 「う……」 そんな状態で、杏はクラスメイト達の中へと戻って行く。歩くたびに秘所もお尻も、ぐにゅりと嫌な感触がする。誰かにばれないように、必死に普通を装う。 「杏ー。どこ行ってたのよー」 「あ、うん。……ちょっとね〜」 友人が声をかけてきた。朋也とセックスをして、お尻にいっぱい出してもらったの。と、杏は心の中で呟いて、誰にも見えないようにぺろりと舌を出した。 ――例えばそれは。
いつしか現実になった。
----------後書き----------
さて。この変態えっちシリーズ、いつまで続くんでしょ?
よろしければご意見ご感想をくださいな。
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