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日曜日午後三時










 日頃の疲れが溜まっていたのか、ついつい眠ってしまったベッドの上。イン、彼氏の部屋。けれど、彼女にとってそれはとても不覚に感じる事実だった。

 その日はデートと云えるような云えないような、シチュエーション的には曖昧な時間が延々と続いた。休みの日に何となく会って食事をして、買い物をしたり歩いたりして、することもなくなったので朋也の部屋に来て、そのままぼーっとしていたのだった。智代も朋也の側に居て気が緩んだのか眠気が差し、ベッドに横にならせてもらっていたらいつしかうとうとと気持ちよくなって、そのまま。何となく、という適当さが支配した一日になりそうだった。

「朋也ぁ」

 寝言。智代が眠りに落ちてから数十分後のこと。小さい声だけど、朋也にははっきりと聞こえた。完全に懐いた飼い猫が甘ったるく媚びた鳴き声を出しながら、主人の足元をまとわり付くかのようだった。その声は朋也が普段智代に対して抱いているイメージとは正反対のもの。

 心身共に気怠くものんびりとするような、日曜日は午後三時頃のこと。明るい光が差し込む朋也の部屋にて起こった微笑ましい出来事。

「ああ」

 律義に返事をするのは朋也。突然の声にちょっと驚いたので、智代の顔をのぞき込んでから人差し指で頬をつついて見せる。健康的で白い肌はふにふにしていて柔らかかった。

「あ……」

 智代は突如目の前に現れた朋也の顔に驚く。起きるか寝に落ちるかすれすれの所にいたようで、ちょっとの刺激で目覚めてしまったのだった。

「今私、何か云っていたか?」

「俺の名を呼んでいた」

「……ああ」

 やはり、と思う。智代は頬を赤らめる。

「聞こえていたのか。……恥ずかしい」

「どうして?」

「いや……。だって、あんな声で」

 不覚に感じてしまう。隙を見せてしまったような気になってしまったから。

「どんな夢を見ていたんだ?」

「……云わなければだめか?」

「だめではないけれど、教えてくれるのなら知りたいな」

 智代は少しだけ迷いながら、云った。

「キス、してた」

「誰と?」

 朋也にとっては聞くまでもないこと。智代にとっては云うまでもなくわかってくれると思っていること。呆れたようにじとーっとした細目になってにらみ付ける。ちょっとの非難も込めて。

「お前以外に誰がいる」

「そっか」

「……」

 朋也は智代に近づいた。

「智代」

「あ……」

 夢の中のワンシーンと全く同じだった。朋也は目を見開いて驚く智代の唇を奪っていた。

「実はまだ夢の中なんだ」

「そんなわけ、あるか」

 さらに込み上げてくる恥ずかしさ。智代は目を閉じてやり過ごそうとするけれど、無理だった。

「さっきみたいに呼んでみてくれよ。朋也ぁって」

「誰が……」

 意地を張りたくなった。実際に張ってみた。そうしたら朋也に笑われた。

「お前。可愛いな」

「可愛い、のか?」

 可愛いだなんて云われたことがなく戸惑う。意地を張ったところが可愛いのだろうか? 理解できない。

「ああ、可愛い。もっと隙を見せて欲しいな」

「私は戦士じゃない。隙をくらい見せる時だってある」

 生真面目な智代にとって隙を見せるとは、だらしないことと思ってしまう。

「悪いことだなんて云っていない。ただ、さっきみたいに素のままの智代を見てみたいな」

「嫌だ」

 それはそうだ。だって、猛烈に恥ずかしいのだから。決して媚びない気高さが智代にはあった。

「そう云わないでもう一回云ってみてくれよ。朋也ぁって」

 智代の気持ちを察した上で、さっきのような甘ったるい声をリクエスト。

「絶対に云わない」

 智代は頑固だった。それに、何だか馬鹿にされてるような気もして意地を張ってしまう。

 しかし、朋也も朋也で大胆不敵だった。時に智代は思う。朋也という一見へたれなようなこの男の魅力は、そんなところにあるのかもしれない。なかなか油断ならないということだ。

「あ……」

 素早いキス。虚を突かれたように、智代は瞬きを繰り返した。

「云ってくれるまで続ける」

「や、め……。ん……」

 立て続けのキス。恥ずかしさが込み上げてくる。と、同時に拒否したくない、心地よい感触も智代の中でわき上がる。

「と、もやぁ」

 意地を張って絶対に云わないつもりでいたのに、無意識のうちに朋也のリクエストに答えてしまっていた。キスによって骨抜きにされてしまったかのようだった。負けた、と思ったけれどそれ以上に心地よさが上回った。もっとして欲しいと、素直になっていく。

「す、好き……なんだ。もっと……」

 智代は脱力してしまった。物憂げに目を潤ませ、上目使いでキスをねだる。けれど朋也は。

「してあげない」

 冗談っぽく笑って云った。

「い、意地悪……しないでくれ。もう……だめなんだ」

 体がおさまらない。必死の智代を見て、朋也は可哀想に思えてきた。

「悪い悪い。冗談だ。……でも、触っていいか? 体」

「いっぱい触って欲しい」

 ふさ、ふさ、と服の上から大きな膨らみに手をかける。と、同時に舌と舌を絡ませ合わせるくらいに濃厚なキスをした。

「あ……」

 智代の柔らかな胸に触り続けるうちに朋也はあることを思いだしていた。出会った頃のエピソードを。

「覚えてるか? あの時お前、云ったよな。触ってみろって」

「う、うん。覚えている。確かに云った」

 春原の馬鹿が智代の事を『実は男だろ!』とか何とか抜かして、純粋にショックを受けた智代が朋也に対し半ばやけっぱちになり『触って確かめてみろ!』と、胸を突き出してきたこと。実際には朋也の『女の子にしか見えない(しかも可愛い)』という苦笑混じりの言葉によって救われたのだった。

「可愛いよお前。すごく女の子してる」

「……そう、か」

 照れ臭そうに、うれしそうに微笑。

「あふっ」

 朋也は服の中に手を這わせる。下着をずらし、乳首を摘まむ。

「あ、あっ」

「敏感なんだな」

「わ、私は。お前の好みの女の子に、なれているか?」

「当たり前だろ」

「んっ」

 愚問すぎたので、キスで唇を塞いでやった。

「完璧。生真面目。最強。みんなの憧れ。……けど、それなのに何故か俺のことを好きになってくれた。もしかするとそれがお前の唯一にして最大の欠点かもしれないな」

 朋也は智代の髪を弄びながらそんなことを云う。

「欠点だなんて云わないでくれ。私にとっては他のことなんてどうでもいいんだ。朋也の事が好きでいられるなら」

「そっか」

「そうだ」

 互いに呼吸を合わせたかのようにキス。

「朋也」

 智代は照れながら云った。

「来て……」

 と。

 そして二人は肌を重ね合わせ始めた。





…………





 智代は私服のスカートだけ脱がされた状態。どうしてこんな中途半端な格好をしなければいけないんだ。脱がすのなら最後まで脱がせろと云うもっともな問いに対し、半脱ぎはえろいからだというあまりにもフェティシズムに溢れた答え。智代は苦笑しながらため息をつくも、仕方のないやつだと云いながらも朋也の変態的なリクエストに応じる。いつものパターンだった。そして、応じるからには智代も本気だった。

「あ、あ、あ」

 ず、ず、と規則的に上下する体。それとともに、可能な限り堪えつつも漏れてしまうあえぎ声。

 ベッドの上に仰向けに寝そべる朋也。朋也に跨がりながら秘所に大きくそそりたったものを挿入し、騎乗位で腰を上下するさせている智代。

「いいぞ智代。腰使い上手いな」

 一生懸命な智代に対し朋也はぴくりとも動いていない。生真面目な智代は丁寧にかつダイナミックに体を動かし続けている。上下の単純な動きだけではなく、時折腰をグラインドさせてみたり、早さの強弱をつけたり。朋也は気持ちいいのだろうか? 感じているのだろうか? そんなことを考えながら、色々工夫してみせる。

「あっ!」

 突如そのペースが乱れる。朋也が手を伸ばし智代の両胸を揉みしだいたのだ。

 形の良いボリュームたっぷりの胸はこね回されるように形を変える。

「いきなり締まりがよくなったんだが」

 事実をありのままに云う朋也。

「く……。し、かたないだろう。あっ……」

「美乳だな。でかいし形もいいし、乳輪も乳首の大きさも丁度いいし」

「胸のことなんて、ほめられてもうれしくない」

 と、云いながらも。

「そうか。でも、俺は好きだぞ」

 朋也が気に入ってくれてるのなら、それでいいのだろう。純粋に喜んだって構わないのではないかと智代は思った。

「……ありがとう」

「しかし」

「何だ?」

「智代には騎乗位がよく似合ってるな」

 それは名言……ではなく明らかに迷言だろう。

「どういう意味だ」

「颯爽とした女騎士のイメージ?」

「わけがわからん。荒馬を乗りこなしてるとでも云いたいのか?」

「そうそう。そんな感じ」

「ほう」

 ならば、そうしてやろう。智代は嬉しそうに笑いながら更に上下に激しく動く。

「ぐおっ!」

 突然の刺激に朋也は体を強ばらせる。

「ふ……。ほら、もっと激しく動くぞ。あ……あっ! んっ!」

 ず、ず、と粘りけのある水音が細かく響く。二人の結合部は少しばかり湿ってきていた。そのまま延々と智代は腰を上下に動かす。柔らかくて大きな胸もゆさゆさと揺れ、まくれ上がったスカートの下から見える丸いお尻もがたゆむ。

「どうだ? くっ。早く……達してくれ。あっ。このままじゃ私が……」

「も、もうすぐなんだが。で、出る……」

「あ、あ、ああああっ!」

 一足先に智代は絶頂を迎えてしまった。そのまま脱力して朋也の上に倒れ込み、唇同士がたまたま重なり合う中、朋也も達した。智代は熱いものが下半身に込み上げてくるのを感じた。





…………





「朋也ぁ」

 ベッドで添い寝中。余裕を取り戻した彼女による甘ったるい声。

「……さっきまであんなに嫌がっていたのに」

「ふふ。隙を見せるのも案外悪くないなって、そう思えてきたんだ」

 心地よい何かがあったから。智代の硬い守りを解きほぐしたのは朋也。

「おわ」

 甘え方を教えてしまったなと朋也は思った。智代は妙に積極的で、頬にキスをしてきた。そして満面の笑みで云う。

「好きだ」

 悪くないな、と朋也も思った。

 が、実際には悪くないどころかずっとそのままでいて欲しかった。

 今では素直に慣れていないのはむしろ朋也の方かもしれない。二人には、そんな微妙な関係が何よりも心地よく感じるのだった。










----------後書き----------

 智代のあまあまもの。ちょいえろ。

 CLANNADのお話ではことみとか有紀寧とか渚とかであまあまものを書いてきたけれど、智代もなかなかどうしていい雰囲気になりますね。



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