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-東方密室耐久祭-















 とりあえず麦酒、とでも云いたいくらいあっさりとしていて突発的で適当な流れではあるが、彼女たちはただ今現在戦闘真っ盛り中だった。空中にて、互いに背と背をくっつけて、全方位警戒中。
「霊夢。四時方向にエネルギー波多数だ」
 白黒の服に金髪。リボンのついたとんがり帽子を被り、箒にまたがっているという普通の黒魔術師、霧雨魔理沙。ひたすら直線的な攻撃なれど、魔法力はすさまじい。
「何よエネルギー波って!」
 答えとして、とりあえずくらうとやばいものとだけ魔理沙は云っておいた。
「っていうか、四時ってどっちの方よ!」
 紅白の巫女装束を身に纏い、ふよふよ浮きながらお札を投げまくる楽園の素敵な巫女、博麗霊夢。誘導弾的なお札故に、狙いを定めるまでもない。
「多分右下!」
「こっちね!」
 霊夢はそういって、お札を投げまくる。びしびしと落とされていく妖精達。
「違う。そっちは多分七時の方向!」
 あくまで多分。つまりそれは適当。あてにならない。
「こっちにもいっぱい敵がいンのよ!」
 彼女たちは既に三百六十度全方位関係なく飛び回っているので、手当たり次第に各個撃破するしかないのだ。
「じゃあ、最初から索敵なんていらないじゃないか」
「最初から索敵なんていらないの! 敵なんて見てりゃわかるっ! 来たら落とす。そんだけ!」
 等とアホなことを云っている間にも敵は多数召喚され、やばげな弾幕は上下左右あちこちから勢いよくびしびし飛んでくる。二人の戦闘スタイルは嫌が応にも『サーチアンドデストロイ』という場当たり的なものにならざるを得ないのであった。
「弾幕薄いぜ! 何やってんだよ!」
「るさい! っとに、なんで私がこんなっ!」
「撃ってる暇があったら喋れ! ……違った。逆だ!」
「ああもう! 七面倒くさいったらありゃしない! こうなったら一気に!」
 間怠こいと感じた霊夢は、一撃必殺の構えを取る。
「……はああああっ! 霊符・夢想封……んがんぐ!」
「ま、待てっ!」
 魔理沙は慌ててがばっと覆い被さり、大技を発動しようとしている霊夢の邪魔をした。
「何すんのよっ!」
「私を前方において大技放つな。危ないだろ」
「大丈夫よ! 魔理沙なんだから」
「説明になってない! それにこっちは私の家だ!」
「いっそのこと家ごと何もかもすっ飛ばした方が綺麗になるでしょ! 掃除の手間が省けるってものよ!」
「そういうのは博麗神社めがけてやってくれ」
 無茶苦茶である。そういってる間にもどこから召還されたかわからないくらいの精霊達が、悪意を込めて弾幕攻撃をしかけてきているのだった。





で、時間はかかったけれど、どうにかこうにか全部撃退するわけだが。





何故このような状態になってしまったか?





理由は極めて単純。





「いやー。危なかった危なかった。はっはっは」
 コーヒーを飲みながら、のーてんきに笑う魔理沙であった。
「……」
「まさか、私の部屋のマジックアイテムが暴走を起こすなんてな」
「笑い事じゃないわよ! 少しは掃除しなさいよ!」
「いやいや。掃除を頼もうとして霊夢を呼んだんだけどな」
 コーヒーの濃い香りを楽しみながら、片手間で霧雨邸の大きく穴のあいた屋根を魔法で直し続けて、呟く。パズルのように角材やら板やらが面白いように挟まっていって穴が小さくなっていく。
「……本末転倒じゃない。それ」
「で、まあ。今までのやりとりを見てもらえればわかると思うが。掃除をしている最中に、私が集めたマジックアイテムが干渉しまくって、暴走してしまったんだ。で、敵さんがいっぱい召還されてしまったわけ」
 それほど霧雨邸は、どの部屋もごちゃごちゃしていた、というわけである。基本的に魔理沙は物を捨てることが苦手なためか、溜まっていく一方だったのである。その中にはマジックアイテムも多数存在し、相互干渉を起こしてしまったのだった。充分あり得ることではあった。
「あんた。誰に云ってんのよ」
「さぁ?」





というわけである。





結局の所、掃除をしていて綺麗になるどころか、更にバラバラと部屋中にゴミが散らばってしまった。





霊夢曰く『それは最初から!』ということではあるけれど。





「状況は更に悪化した、か」
「また危なくなったりしないように、どうにかしなさいよ!」
「ああ、わかってるわかってる。整理したら不要品は香霖堂で引き取ってもらうさ」
 魔理沙の中では既に、香霖堂という存在は古道具屋ではなく廃品処理業者と化しているのであった。我々の世界で云うところの、リサイクル業者的な感じだろうか? もっとも、魔理沙は大して気にもとめないが、お値打ち品が結構な頻度で入っていたりはするのだが。
「とりあえず、分別は手伝ってくれ」
「……。これ、何よ?」
「ああそれ?」
 霊夢が取り出したそれは、一言で言うところのワラ人形だった。魔理沙の友人でもある『アリス・マーガトロイド』という名前が書かれたお札が貼られている。そしてその付属品としてぶっとい五寸釘が一本。
「いつもアリスに人形とか作ってもらってるからさ。たまにはお返しで、私も見よう見まねで作ってみようかなと思ったんだ。ちゃんと人形関係の文献とかパチュリーのところで漁ってな」
「……。そう。きっと喜ばれるわ」
 別の意味でね、と霊夢は思った。確実にこれは嫌がらせになるだろう、とも。そして、こんなものは物騒だし縁起でもないから神社の周りの木には刺したりしないようにきつく云っておこう、と。博麗神社の周り以外なら別にどーだって構わないけど、とも思った。
「で。これは何なの?」
「ああそれ?」
 霊夢が次に取り出したものは、木を削って作られた刀……。木刀であった。
「この間遠出したときに買ってきたおみやげ」
「どこのおみやげなのよ……」
 呆れたような霊夢の声。
「どこだったかな。温泉宿で売ってた」
「っていうか、おみやげで木刀はないでしょ」
「そうか? 観光地でのおみやげは木刀に限るだろう?」
 どこか間違った知識を持っている魔理沙。
「限らないわよ。そんなもんどこでも売ってるって」
 結局その木刀はくだらないもの、と彼女に認定されてしまったのであった。
「で、これは?」
「ああそれ?」
 霊夢が三番目に取り出したものは、うさぎの耳のようなつけ耳だった。
「この前ウドンゲからひっぺがしてきた」
「……」
 何てことすんのよ、とは思ったけれどあんまり気にはしないようにした。ウドンゲとは、フルネームを鈴仙・優曇華院・イナバという、狂気の月の兎である。
「誤解するな。ちゃんとニンジン十本と物々交換したぞ」
 そんなもので自身のアイデンティティの固まりのようなものと交換するなようさぎ、と霊夢は思った。
「なんならつけてみる? 霊夢ならきっと似合うと思うぜ」
「要らない」
「残念だ」
 『不要品』扱いされてぽいっと放り投げられるうさみみ。哀れウドンゲ。
「で、これは?」
「ああそれ? それは、香霖堂でもらった……」
 男性用の下着……褌であった。
「あんた。そういう趣味があったの?」
「勘違いするな。要らないのに無理矢理押しつけられただけだ。褌の美について小一時間延々と語られそうになってな。逃げようとしたら押しつけられた」
「……」
 筋骨隆々の男が嬉々として延々と褌の美について語る。い・や・す・ぎ・る。と霊夢は思った。そしてそれも、ぽいっと不要品リスト行きと相成った。
「で、これは?」
「ああそれ? それは、あの幽霊が頭につけてるやつ」
 グルグル渦巻き模様が付いたバンダナというか……。冥界のお嬢様、西行寺幽々子がいつも着用しているアレである。
「じゃ、これは?」
「ああそれ? それは、アリスのカチューシャ」
 スペアをもらったとかなんとか。実は魔理沙はアリスのあのカチューシャは円形脱毛症、いわゆる十円禿げ隠しなのではないか? 等と常々思っていたのだが、どうやら違ったようだ。そんな風に思われてると知ったら、彼女は一体どう反応するのであろうか?
「じゃあこれはっ?」
「ああそれ? それは、リリー・ホワイトの羽」
 この前雲の上で会って毎度のごとくいきなり喧嘩売られて、勿論格の違いを見せつけて返り討ちにし、叩き落とした拍子に羽が数本抜けていった。とかなんとか。リリーホワイトとは春を告げる精霊であり、慌て者故に春を伝えようとして弾幕攻撃をしかけてしまうことがよくあるのであった。
「これはなんなのっ?」
「ああそれ? それは……えーと。中国人っぽいあいつ。えーとえーと、名前何だったけかな……。まあ、とりあえず中国の帽子だ」
 魔理沙はかなりどーでもいいや的に、名前を思いだそうとする行為をやめてしまう。紅美鈴(ホンメイリン)という、紅魔館の門番の名前を思い出せるのはいつの日か。
「……」
 どうやってそういった類のものを手に入れてくるんだろう、と霊夢は思った。魔理沙曰く、蒐集家の血が騒ぐのであるらしいが。
「これはっ!」
「ああそれ? それはリグルの触覚」
 リグル・ナイトバグ。彼女は容姿はどうあれ……基本的には虫。蛍なのだが。
「き……き……」
「樹? 樹がどうかしたのか? 気?」
「きゃああああああああああああああああっ!!!!!」
 霊夢も年頃の女の子なわけである。ばしっと魔理沙に投げつける。
「どわっ!」
「な、何てもん持たせんのよおっ!!!!」
「落ち着け霊夢! リグルはゴキブリじゃないぞ!」
「似たようなもんよっ!」
 本人に対してはすごく失礼なことを平然と言い放つ霊夢であったが、結局それも不要品リスト行きへと相成った。















…………















「やれやれ。やっと片付いてきたわね。っとに、よくこんなにガラクタ集められるものね」
「ああ。ホント、助かったぜ」
 片付けていけば結構広いものである。……というよりも、広い部屋が狭く見えるほど多くのものを詰め込みすぎていただけなのであるが。
「この瓶はなによ?」
「ああそれ?」
 最後に残った瓶。青い色の液体が入っている。
「……。えっと。なんだっけ?」
「何だっけ、って」
 うーん、と手を顎に当てて考えるが。
「私にも分からない。確か香霖堂で買ったもののはずなんだが」
 金は払ってないけどな。
「危険な代物じゃないでしょうね!」
「もしかすると……持っているだけでも危険かもしれないな」
 等と危ないことを笑いながら云う魔理沙
「……。魔理沙」
「なんだ?」
「パス」
 ぽいっと瓶を魔理沙にパスする。持っているだけで危険かもしれない可能性が無きにしもあらずな瓶を、ぽいっと。
「ノンディレクショナルレーザー!」
 ピシッと、限定的に制限された出力の細いレーザー魔法が、放り投げられた瓶をはじくのであった。
「ああっ! どっかの青白い魔女からパクった魔法!」
「人聞きの悪いことを云わないでくれ。見よう見まねで誘導尋問で使い方聞き出して覚えただけだ」
 人はそれを、パクリという。
「それ、見よう見まねって云わないわよ」
 等とのんきに云い合っている間も、はじかれた瓶は慣性の法則を忠実に、孤を描いて飛んで行き……。やがて。
「がっしゃん」
「分かりやすいわね」
 床に落ちて割れたのであった。
「割れちゃったね」
「割れたな」
 何故かやけに冷静な二人。落ちた瓶からは液体が溢れ、ボコボコ泡立ち……。
「煙。出てきたわね」
「出てきたな」
 ある種達観しているというか、これから何が起こるかわくわくして待ち望んでいるような二人。
「……魔理沙」
「ああ」
 青白い煙に包まれていく二人。
「何か私。……頭がぼーっとしてきた」
「奇遇だな。私もだ」
 全然奇遇では、ない。やがて部屋中を煙が覆う頃……二人はばたりと倒れてしまったのであった。





そして、気を失いかける間際……。





 メガネをかけた香霖堂店主。森近霖之助によると……。
『これは媚薬といって。主に女性をその気にさせるものだ』
『へえ』
『そしてそれに加え、魔法によって効力を強化されている』
『そーなのかー』
 何も考えずに云い終えてから気付く。
(……。それはもしかすると、霊夢に対して使ったら……! うふふふふ)
 というわけでその瞬間、魔理沙はクレクレ君になっていたのであった。
『頼む。譲ってくれ!』
『譲ってあげてもいいのだが。その代わりといってはなんだが。一つ、見て欲しいものがあるんだ』
『なんだ?』
『僕の肉体美を是非。武留和亜華吾(ぶるわあかあ)という外の世界の機械を入手して、ここ数ヵ月間ずっと筋肉を鍛えていたんだ。使い方はまっ・たく・かん・たんだったよ』
 霖之助そういって服をババッと脱ぎ捨て、ボディビルダーのようにムキッとポーズを取った。鍛え上げられた筋肉が、とっても暑苦しい。
『どうだいこの筋肉は。美しいだろう?』
 何故かとっても嬉しそうな表情の森近霖之助であった。対照的に、呆然としている魔理沙。
『……。マスタースパーク!』
 ビシッと一発。その瞬間、閃光が何もかもを消し去ったのだったとさ。





『ああそういえば、そんなことがあったっけな』





 そして、二人が気付く頃には、媚薬の効果が部屋中に充満していたのであった。
「霊夢」
「……ん」
「霊夢の肌。綺麗だな」
 いつの間にか二人とも意識を取り戻して……魔理沙は霊夢の巫女装束に手をかけていたのであった。
「魔理沙。……恥ずかしいんだけど」
「気にするな」
「気にする」
 細かいことは気にせずに、巫女装束をはだけさせていく。
「どうしてこうなったんだっけ?」
「そりゃ。落とした瓶が媚薬の瓶だったからさ。気化するタイプのな」
「簡単に云うわね」
「都合のいい口実だからな」
 そして、極めて何気なく霊夢の口にキスをする。
「ん……んん。何か、ものすごく貞操の危機を感じるんだけど」
「大丈夫。優しくするから」
「んん」
 何が大丈夫なのよ、と云って抵抗したかったけれど身体がそれを受け入れてしまっていた。というよりも、拒否したくない気分。
「霊夢も同じ気分だろ?」
「……」
「実は、私もなんだ」
 二人とも、完全にその気であった。それでも、二人とも一般的な人間に比べ、魔法などに対する抵抗力にはかなりのものがあるため、一見すると平然としてはいる。薬が気化した当初はさすがに濃度が濃すぎて気を失ってしまったけれど。
「……。一方的に守勢っていうのも、なんか面白くないわね」
 それでも行為自体は否定はしない。
「私もそう思う。だから霊夢。いくらでも反撃してきてもいいんだぜ」
 簡単に霊夢を好きなようにできるなど思ってはいない。何事においても、魔理沙は霊夢にはかなわないなと思っているふしがあるのだった。
「じゃ、早速させてもらうわ」
 そういって霊夢はお札を一枚、魔理沙の背中にぺたっと張り付けた。
「……っ?」
「効果はすぐわかるわよ。嫌でもね」
「くっ……。あ、あ……あッ! な、何だっ」
「体温を上げるお札。というわけじゃないんだけどね。ああ、剥がそうとしても無駄よ。私にしか剥がせないから」
 それは、何かしらの効力を倍増させる類のお札。
「例えば、病気療養中の人に薬を飲ませた上で張って、治癒能力を一時的に押し上げたりとか、ね。用途は様々だけど、結構使えるわね」
 つまりはこの場合、気化した媚薬の効果を一つの基準にし、その数倍にまで引き上げてしまったわけである。
「あ……あ……。っく、うぅぅ!」
 身体が更に火照って呼吸が荒くなる。そして、少し意識が遠くなりそうなくらいぼーっとしてしまう。服が肌とこすれているだけで快感になってしまうほど、猛烈な感覚。
「身動きできないでしょ? まあ、普通の人なら、こんなの使わなくてもやばいんだろうけどね。それこそ発狂しそうなくらいね」
 二人はかなり特別な人間、ということだ。そして、霊夢が完全に主導権を握ったと判断し、魔理沙の黒い服に手をかけようとしたところで。
「くぅっ。……れ、霊夢。あ、くぅ……うぅっ! うぐっ! っく……うっ! くああああっ! あぐっあぐっ! ああっあっあっあっ!」
 魔理沙は必死にもがきながら、一気に服を脱ぎ捨て……いや、むしろ、魔法で自身の服を完全に引き裂いたといってもいいだろう。
「どうして欲しいの?」
「なめて、欲しい」
 裸になった魔理沙は完全に降参してしまったかのように大股開きして、霊夢を誘う。今はもう、肌に少し触れられただけでも快感に感じてしまうほど、敏感な状態なのだから。
「ふーん。そう」
 あっけないのね、とクスクス笑いながら云って、開かれた秘部に舌を這わせようとする。
「魔理沙。ここ、濡れまくり」
 既にそこはとろとろと濡れていた。そして、魔理沙はもうこらえきれないのか自分の手で秘部を刺激している。
「あ、たりまえだろう。く、あぁぁ。こ、んなことされりゃ。あぅっ! あふっ! あっひ……あっぁあ……うぅ」
 はあはあと荒い息をつく。通常の人間であれば発狂でもしそうなくらいきつい状態なのだから。
「じゃ、お望み通りにしてあげるわ」
 そして霊夢は魔理沙の秘部に舌を這わせる。ゆっくりと、ちゅぷ、ちゅぷ、と音を立てて……。
「かかったな」
 にやりと笑う魔理沙。
「う、あっ!」
 が……。今度は逆に霊夢が身体をビクッと痙攣させた。
「な、何をしたのよ!」
「霊夢と同じことだ。私だって魔法力増強の小道具ぐらい持っている」
「ま、さか……」
 そのまさかだった。だけど、こういう形で魔理沙が反撃するとは、ちょっと思わなかった。
「ふぅ。……色仕掛けで相手を落とすのは、くのいちの常套手段だぜ」
 魔法増幅用の液体を、自分の愛液に見せかけて霊夢になめさせていたのだった。
「く、うぅ……ぅっ! あぐっ! ああああっ! ああっ! あっあっあっ!」
反撃とばかりに霊夢の巫女装束に手をかけて、はだけさせる。胸に巻いたサラシも一気にはぎ取って……。
「ふ、ぅぅ……。これで五分五分だな」
「あ、あ。あぁ……あ……!」
 身体の火照りがどうにも抑えきれずに苦しむ霊夢。それに対し魔理沙は、大分今の感覚に慣れてきたようだ。
「霊夢。どっちが先にいかせられるか、勝負してみないか?」
「どう、するのよ?」
 魔理沙は仰向けに横たわった。
「簡単なことだ。私の上に、うつぶせに乗っかるんだ。頭は反対側に」
「こう?」
「そうだ」
 互いに裸。華奢な身体、小さな胸、そしてふっくらしたお尻を外気に晒す。
「で、互いに舐め合う」
「……。犬みたいね」
「咲夜程じゃないけどな」
「最近太ったとか嘆いていたわね」
「どーせ間食のしすぎだろ」
 さりげなく知り合いであり紅魔館に勤めるメイド、十六夜咲夜のことを犬とか何とかひどくいっておいて、行為を開始する。
「ではいくぞ」
「ん……く。あ、あっ。魔理沙。そんな、あっ」
「敏感だな。霊夢は」
「その言葉、そのまま返す……わ!」
「くう、あぅっ! あくぅっ!」
 ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ……。厚くふかふかした絨毯の上で、隠微に重なり合う二人。
「ま、けるかよ」
「こっちだって」
 互いにぴちゃぴちゃと舐めては、薄い毛の生えた秘部を指でいじくり、開いたり突いたりなぞったりする。そのたびにひくひくと痙攣する秘部。
「あ、あ、あ。あっん」
「くぁぁっ! あっぐ……う、ぅぅ」
 意地を張って、絶対に先に達したりするものかと思いながら攻撃的になる。これはある種の勝負なのだから。
「んっ……んんっ! さ、先にいった方が……処女を捧げるって、どうだ。……あふっ!」
「上等、よ。ああっ! ああっ! あぅっ!」
 それを聞いて更にヒートアップする。既にお互い意識が飛びそうなくらい達しかけているのに。
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
「だ、め……。ああああっ!」
 ビクビクと背中を反らし……ピンク色の秘部から大量の愛液を垂らして。





やがて二人は、ほぼ同時に達した。





「ふぅ」
「はぁ」
 結局、いつの間にか本気の勝負(?)になっていて、しかも決着は付かず引き分けということになった。
「今度こそ霊夢に勝てると思ったんだがな」
「甘いわよ」
 でも、勝負とはいっても何故か楽しそうだ。二人とも、不快感は全く感じていない。
「でも、どうにかして決着をつけたいものだな」
「そうね。ちょっと引き分けじゃ、つまらないわね」
 二人とも裸のまま横になってクスクス微笑む。
「……お?」
「どうしたの?」





と、そんなとき。





「た、たまたま魔理沙の家の近くに来たから寄ってみる。ただそれだけよ」
 金髪のショートヘアにカチューシャを付けて、本を片手に持った少女。七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドが霧雨邸の前に来ていた。所用と云うより、はっきり云うと暇で散歩をしていたらたまたまた近くまで引き寄せられるように来てしまっていただけなのだが。
「でも。『何も用も無いのに来たのか?』何てことを云われたら、何て答えようかしら」
 魔理沙のことだからそういうことを云う可能性は十分にあるわけで、でも、それに対する言い訳というか大儀名目みたいなものがなかなか浮かばなかったのである。要するに彼女もかなりの見栄っ張りというか、性格的にあまり素直ではないわけである。
「そう。たまたま近くに来て、たまたま暇……じゃなくて、時間的に余裕があったから魔理沙の所にお茶でもいただきに来た。そう云えばいいのよ」
 そして、やっと覚悟が決まり……。ドアを開け……ようとして。
「あれ? アリスじゃない。どうしたの?」
「さっきから何ぶつぶつ云ってるんだ?」
「……っ!」
 開ける直前でドアが開き、中からは素っ裸の霊夢と魔理沙が現れた。
「な……! な、な、な……! れ、霊夢……魔理沙と何を……何をやってんの!?」
 動転するアリスに『いけないことしてたの』と、かるーく云って、更に動転させ。
「はっ!」
「はうっ!」
 そして、呆然としているアリスに霊夢は先ほど魔理沙に貼りつけたお札をびしっと投げつけた。更に。
「アリス。これ飲んでみな。美味いぜ」
「え?」
 同じく、先ほど魔理沙が霊夢に舐めさせた液体を飲ませた。というより結構強引に、ぐいっと口の中に突っ込んだ。
「んぐっ! あ、あ……ああ!? ま、魔理沙!?」
 身動きが取れなくなったところで、霧雨邸の内部に入れられて、ばたんとドアが閉じられる。
「さてさて」
「再戦、開始ね」
「な、に……? な、何を……?」
「いやいや。どっちが先にアリスをいかせられるか、勝負しようと思ってな」
 魔理沙は笑顔でそう云いながら、アリスの服を剥がしていく。そして、霊夢もにっこりと笑いながらアリスの人形達の動きを封じていく。
「大丈夫よ。気持ちいいことをするだけだから」
「悪いことじゃないな。減る物でもないしな」
「あ〜〜〜〜っ! あ〜〜〜〜っ!」
 二人ともにこにこ笑いながら、アリスにとっては危険なことを言い放つのであった。アリスにとって笑顔の二人は、悪魔の尻尾と羽が着いているように見えた。……後になって本物の悪魔がそのエピソードを聞いたら『悪魔はそんな笑い方しないわよ』と、邪道であるという烙印を押されてしまったのだけど。
「というわけで、アリス」
「しばらくの間、我慢してね」
「あーーーあーーーーーー! あーーーーーーーーーーっ!」
 霊夢と魔理沙の執拗な攻めが容赦なくアリスに降り注ぐのであった。





こうして、しばらくの間





アリスの受難は続いた。





で。どちらが勝利を収めたかというと?





「くそ。また引き分けか」
「……」
 足下には惚けたよーな表情のアリス。
「なかなか勝負が付かないわね」
 既にアリスの人権などは存在しないのであった。
「……」
「霊夢。もう一回勝負だ」
「望む所よ」
 そしてまた、二人の視線がアリスへと向けられる。
「……」





今更ながら





やっぱり、寄り道なんてしなければよかった……





等と思うアリスだった。





「あーーーあーーーあっあっあっあっ〜〜〜〜! な、なんで私がこんな……目に。んぐっ!」
 そんな悲惨(?)なアリスに対して、ニカッとさわやかに微笑み、舌を絡ませるくらい濃厚なキスをする魔理沙。
「細かいことは気にしないようにしようぜ」
 アリスの秘部をしなやかな指でひたすら攻めまくる霊夢。そのたびに、ぐちゅぐちゅ湿った音が密室の中に響き渡る。
「む。上手いな、霊夢の攻めは」
 負けていられないとばかりに、アリスの乳首を優しくつまんだりこねくり回したりしゃぶったりして弄ぶ。
「ひああっ! ま、りさ……! だめ、あっあっあーーーーーっ!」
「アリスを先にいかせるのは、私の方よ」
「さて、それはどうかな」
 ビクビク痙攣しまくるアリスを横目に、二人は視線で火花を散らす。





そして再びアリスの悲鳴(?)が、魔法の森中に響き渡るのであったとさ





それでも結局、勝負はつかなかったりして。















おしまい






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