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机の下の時雨










 ――艦隊司令執務室。午後三時すぎのこと。

「提督。よろしいですか?」

「ああ、何だ?」

 多忙を極めた事務処理もこの時間になってようやく落ち着いたのか、部屋の中は人影もまばらで落ち着いた雰囲気が漂っている。が、当の提督だけはまだまだ残務があるようで、万年筆の動きが止まる気配はなかった。うずたかく積み上げられた書類はなかなか減ってはいかない。

「お忙しい所失礼致します。この書類ですが、いくつかご確認いただきたいところがあるのですが」

 机の上に差し出された書類の束には注釈の付いた付箋がいくつも貼られていた。

「わかった、見よう。急ぎか?」

「いいえ。お手すきの時で構いませんので、お願い致します」

「そうか」

「はい。では、失礼します」

 皆、提督に気を使っているのか、急かすことなくそそくさと去っていく。

「ふう」

 やがて、控えめにドアが閉じられる音。そうして提督は再び一人になった。彼以外に人の気配はない。……机の下を除いて。

「時雨。誰もいなくなったぞ」

「ん……」

 彼はやっとのことで万年筆を置き、代わりに、自分の股間に顔を埋めている少女の頭に手を置いた。柔らかさとこそばゆさを感じながら。

「気持ち良くて、とろけてしまいそうだ。時雨のおしゃぶりで」

「んん。そう? ……そう言われると、僕も嬉しいよ」

 たっぷりと咥えこんでいたものを一旦口から抜き、一房にまとめた三つ編みを右手で押さえながら、時雨は微笑する。可愛らしい唇は白濁した液体で少し濡れていた。

「僕もね。提督のを……お口で咥えていると、それだけで幸せな気持ちになれるんだ」

 いつからか始まった秘密の時間。時雨にとっては仲の良い艦娘にも、誰にも内緒の一時。提督が言うには、こうしてもらうことで仕事もものすごくはかどり、尚かつ気持ち良くて堪らないとのこと。

「続き、するね?」

「ああ。頼む」

 あーんと口を大きく開けて、かぷりと咥え込む。ずにゅり、と湿った感覚と共に、再び時雨の口内が太いもので満たされる。

「ん……。ん……」

 ぐぷぷ、にゅく、にゅく、くちゅ……。二つの存在が一つになったよう。決して激しく動くことはなく、常に一定の時を刻むかのような緩やかな交わり。咥え込んだものの形や硬さに合わせて頬をすぼめ、舌先で亀頭を撫でる。今日も、咥え始めてからどれくらいがたつのだろう? 休日前の夜、ひたすら長風呂にでも浸かっているかのような、ゆったりとした時間。

「提督」

 ノックの音とともにまた、来客。時雨は動揺することなくしゃぶり続ける。誰か来たのかなど、興味はない。ただひたすら、口での愛撫を続けるだけ。声を出さないように、物音を立てないように気をつける。ちゅぷ、ちゅぷ、というような小さな音すら立てないように。

「……ん。……ふ」

 机の下は意外な程に広くて、窮屈さは感じられない。埃一つないそこには時雨のために用意された座布団が一枚あり、長時間座っていても平気。

「んく……。ん……」

 唾液と先走り液が混じり合い、白く泡立っていく。垂れた液体が時雨の衣服を少しずつ汚していく。

(ここは僕の場所……だよ)

 自分の縄張り。時雨は子犬のような事を思う。付近のマーキング……何度か提督の指で秘部をいじられて潮を飛び散らせてしまったことがあり、とっくの昔に済んでいて、誰にも明け渡すつもりはなかった。ずりゅずりゅと、提督の白いズボンの下からはみ出した陰毛が時雨の口や頬に触れる。縮れ毛が抜けて、頬に張り付き、口内にも入っている。気付かないうちに飲み込んでいたりしていそう。

(僕。……今、幸せ)

 提督の大きな太ももに挟まれて、時雨は体を火照らせる。喉の奥まで、むせ返る寸前まで咥え込みたくなって、実行する。

「んぐぁ……」

 ぐちゃ、ぐちゃと、時雨の口の中で下品な音が微かにしている。自分が軟体動物にでもなったかのようだと時雨は思う。少し苦しいけれど、嫌じゃない。

(提督。僕の体……どう? 気持ちいいの? ……あ)

 ぽんぽん、と時雨の頭を二回、軽く撫でる提督。それはあたかも砲撃開始の合図。実際には、(何らかの形で)出すよという提督からの合図。いつもこのパターン。来る! と、時雨は覚悟した。

「……んぅっ!」

 ごぼぼ、と、排水が詰まったかのよう。提督が射精した。

「提督? どうかしましたか?」

「いや、何でもない。それよりな。この数字が合わないんだが……」

「そこはですね……」

 カチャカチャと音が聞こえる。そろばんでもいじっているのだろう。提督は今もまだ、誰かと話をしている。机の下。時雨の口内には今も尚大量の射精が続いていた。ごぽ、ごぽ、ごぽ、と燃料をホースで補給するかのよう。

「ふ……ぁ、ぁ……! うぐぐ……!」

 長時間溜め込んでいた小便のような、勢いの強い大量の射精。提督の飽和攻撃によって時雨は持ちこたえられず、遂に決壊して溢れ出す。

(多すぎる……! ぼ、僕……もうだめ! こんな量、飲みきれない! ……溢れる!)

 誰かに気付かれてしまうから、絶対にむせかえってはいけない。それだけはどうにかして避けつつ、時雨は必死の思いで提督のものを口から引き抜いた。

(あ……。くぅ……!)

 緊急離脱も時既に遅し。だばだばと、蜂蜜のようにねっとりとした精液が時雨の口内から溢れ出す。泥酔した挙げ句嘔吐するかのような情けなさに、時雨は思わず涙をこぼした。全部、飲み干してしまうつもりでいたのだから不覚をとったと思うのだった。

「うぐぐ……!」

 苦しくて目を見開く時雨。けれど無情なことに提督の射精はまだまだ終わってはおらず、砲塔を目前に突きつけられた時雨はゼロ距離の集中砲火を受けることになるのだった。

「あ……! ぐ! んひっ!」

 びしゃり、びちゃ、ぶちゃ、ぶびゅびゅ、と機銃斉射の如く射精が続く。防御手段も回避運動もままならず、なすすべなく呆然としている時雨の顔面を、リボンで結んだ一房の三つ編みを、子犬の耳のように飛び跳ねた髪から控えめな胸や衣服の中までどろどろに汚されてしまった。全てが台無しだ。

(あ……あ……。僕……ダメ……。沈む……。溺れる……。提督の、濃くて……すごいので……)

 虚ろな眼差しで、ひたすら精液シャワーを浴び続けている時雨。全段命中といったところ。

「――以上か?」

「はい。提督、ありがとうございます」

 机のすぐ下で起きている深刻な装甲破壊など意にも介さず、提督は執務を粛々と続けていた。まるで、何も起きていないかのような落ち着き具合。

「終わったぞ」

 精液にまみれた時雨は、提督の声も耳に入っていないような様子でひくひく震えていた。

「あ、あぁぁ……」

 仕事が終わったのか、射精が終わったのか、最早時雨の意識には判別がつかなかった。

「まだまだするんだろ?」

「だ……め……。だよ……。あ……」

 体を持ち上げられ、机の上につっぷすように置かれ、ずるり、と白い下着を一気にずり降ろされてしまう。その後にふわりとした感触。スカートが外されて、空気抵抗を受けながら落ちたのかもしれない。これもまたいつものパターン。口での行為が終われば、時雨は決まって提督との新しい交わりを求める。今日に関しては、求める余裕すらなかった。

「尻をだせ」

「僕……。おかしく、なる……」

 本望だろう? と、提督は言ったものだが、今は無言のまま。ずぷ、と先端が入り口に押し当てられる。抵抗は一切なく、提督の大きなものをしっかりと包み込んでいく。

「あああっ!」

 ドアを閉めなきゃ。今誰かが入ってきたら……! 時雨がそう思う暇も与えず、提督は腰を進めた。大きな机がギシギシと音をたてる。体中にぶちまけられた精液の匂いと快感が交じり合い、常識的な思考などあっという間にどこかへと吹き飛んでしまった。

「時雨。しゃぶってただけで下の方も濡れ濡れだぞ?」

 しゃぶっているだけで気持ちいいというのは本当。それだけで、恥ずかしい所を濡らしてしまうのだった。

「あっ! あひっ! ああああ! て、提督が僕の中に……っ! あああああっ! そ、そんな激し、くぅぅっ!」

 机の上も精液まみれにさせながら、ふと、時雨は思い出す。あれはいつのことか。今に至るまでの経緯。こんな風に、提督に体を許すようになった当初の事。










…………










『ああ、やっと終わった……』

 積み上げた書類の山をみて、うんざりとしたように腕を伸ばす提督。処理済み、と書かれた付箋にため息をつく。

『提督。僕にできること、何かないかな?』

 疲れ果てた提督の為に、コーヒーを持ってきた秘書艦の時雨。執務室に二人きりの時、疲労を感じているのか机に突っ伏して目を閉じている提督。それを見て、優しく声をかける時雨。ささやかな会話だけど、提督は一瞬ぼうっとしていたようで。

『んあ……? ああ。時雨か。……。何でもない』

『提督?』

 ぴたりと二人の視線が合わさり、ばつが悪そうに逸らす提督。きっと今、この人は何か自分のことについて考えたのだろう。何を考えたんだろう? 時雨は純粋に知りたいと思った。

『今、何を考えていたの? 僕のこと?』

『そ、それは。そうだが……。……な、何でもないぞ。本当にだ』

 どうして言えないのだろう。恥ずかしいことなのかな? そう思うのは当然のこと。

『僕、知りたいな。教えてよ。提督が今考えていたこと』

『何でもないって』

 時雨の好奇心が満ちていく。珍しく食い下がってみると。

『恥ずかしいこと? ……もしかして、いやらしいこと? とても口には出せないようなこと?』

『う……』

 図星だった。その反応は時雨にもよくわかった。

『どんなことを考えていても、僕は提督の事を軽蔑したりなんてしないよ』

 だから教えてと目を輝かせて時雨は言った。

『わかったよ。本当に、怒らないな?』

『うん。約束する』

 そして提督は口を開いた。

『我ながら……何を考えているんだと思った。その……。時雨と、したいって。そう思った。それだけだ』

『へえ。……僕と、したいんだ』

 エッチな事。怒りなんて込み上げるわけがない。軽蔑なんてするわけがない。時雨はただひたすら、嬉しいと思った。そして……。

『く、口で……その……しゃぶって欲しいなって。そう思った。何故だか、そんな風に思ってしまったんだ』

 時雨が提督に声をかけたあの瞬間、ふとそんな事を思ってしまったのだと、正直に白状するのだった。

『口で? 僕の、口で……?』

 思わず自分の唇に人差し指を当てる時雨。考えたこともなかったような、異質で背徳的な行為だけど。求められたら応えてあげたい。この人に、尽くしてあげたい。健気な時雨は心の底からそう思った。

『いいよ。僕、する。頑張るから』

 こっそりと、机の下に忍び込んで、そして……。

『お口で……するね?』

 時雨は提督のズボンのチャックをゆっくりと、下ろしていく。










それが始まりだった。










 ――机の上に突っ伏しながら、後ろから激しく突き込まれている時雨。ぱんぱんと音を立て、時雨の剥き出しの尻が形を変えていく。膣の中を散々かき混ぜられ、体中が震えてしまう。

「はぁっはぁっ! あっあっあっあっあっあっあっぁっ! ふ、深いぃぃぃ! 僕、壊れちゃう! 提督だめええええええっ!」

 時雨の体内に、先程以上に大量の射精。バラストタンクなんて、とっくの昔に満タン状態。だばだばと溢れ出たものが、時雨の両足を伝っていく。

「いく……っ! 僕、もういっちゃう! だめっ! だめええっ! あ、あ、ああああああああああっ!」

 少し遅れて時雨も絶頂を迎える。気持ちいい。心も体も大いに満たされていく。大好き……と、時雨は強く思った。

「はぁ、はぁ……。僕……幸せだよ。提督……」

 とても嬉しくて、幸せたっぷりで体全体がキラキラと光っていそうな、そんな気持ち。

「夜戦も……したいな」

 もっともっと乱れさせて欲しいと、時雨は望むのだった。










----------後書き----------

 気紛れで、初の艦これ話でした。

 秘書艦にしている時雨が可愛かったので、提督とのハードだけど愛が溢れるお話を書いてみました。

 他の艦娘のお話も楽しそうなので、また何かしら書いてみようかと思います。


ご感想を頂けると嬉しいです。





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