-WhiteCanvasSpecial
〜とっても危ないパジャマパーティー・前編〜- 真っ白なキャンバスに描かれたのは、色とりどりに咲き誇る六つの花。
最初に誰が言い出したのか、その提案について誰がどのように賛同したのか、あるいは反対をしたのか、みんなの間で具体的にどんな協議というべきかやりとりがあったのか、今となってはもはや判然としないようだけれど、ともかくも瓜生家の一室にて、女の子六人達によるパジャマパーティが開催される運びとなった。 ――そんなわけで、今まさにそのパジャマパーティーを開催中なのだけど、六つの花の中心にはかなり困ってそうな表情の男子が一人だけいた。 「ねえ、お兄ちゃん」 その男子とは、今まさに妹の桜乃に話かけられつつ、布団にうつ伏せにされていて、後述する理由で完全に身動きできないでいる瓜生新吾その人だった。彼が困惑している理由はとても単純。このパーティーにおいては、例えるなら主人公と言うべきか主賓的な立場のはずなのになぜか蚊帳の外にでも追いやられたかのように、パジャマパーティーの概要はおろか開催自体、誰からも何も知らされていなかったのだから。もしかすると少女達六人の意志により、意図的に伏せられていたのかもしれないけれども、真偽の程は定かではない。 そんなハーレム状態の彼を中心に布団が何枚も敷き詰められていて、気分はあたかも修学旅行の夜かのよう。今にも枕投げでも始まりそうなくらい楽しい雰囲気の中、新吾の右腕には完全デレデレモードの愛理がぴったりと張り付いていて、左腕には愛理と同じようにデレまくった結月がボリュームたっぷりの胸をむにゅうううと押し当てていた。更にそれだけではなく、背中には紗凪が甘えるお子様のように張り付いてもいるわけで、どうあがいても新吾は身動きなどとれはしないのだった。それに加えて新吾とにらめっこをするようにして、うつ伏せに寝そべる桜乃が僅か数センチくらいの至近距離の位置にいて視線を交差させていた。密着している三人と比べると桜乃としてはちょっとあぶれてしまった感じなのだけれども、当の本人はそれほど気にしてはいない模様。そして更に驚くべき事に、この他にも、間もなくこの場所へと戻ってくるであろう二人の女の子が控えているのだった。 「抱き心地のいい妹って、お兄ちゃん的にどうでしょうか?」 静かにかつゆっくりと、新吾の妹であり恋人(の一人)でもある桜乃は新吾に問い始める。 桜乃は恥じらいに頬をほのかに赤らめ、上目使いで何かにすがりつくような眼差しを向ける。つまりは桜乃が妹としてではなく一人の女性として最愛の人……新吾を思いっきり誘っているというシチュエーションなのだった。ガールズトークの行き着く先はいつもそんな感じの内容に行き着くのはもはや必然と言えよう。桜乃だけでなく、みんながみんなその気になっているから、遠慮というものは最初から存在しない。した者勝ち。早い者勝ち。言い出した者勝ち。遠慮なんてするだけ損という、まさにバーゲンセールのような状況下。 「どうって……。桜乃、なんて事を聞くのかな」 「お兄ちゃんが好きだから、聞いちゃいました」 「……」 桜乃にとってそれ以上の理由はなかった。あまりにも愛情てんこ盛りのお誘いを受けて、新吾は何も言えなくなってしまう。 「どうなのよ新吾? まあ、勿論答えは決まってるわよね?」 桜乃の親友、愛理が質問者に代わって新吾の答えを催促してくる。決して他人事ではないと思っているのか、みんなが興味を持ちながら聞いている。新吾の一挙一動を見守るように。そして勿論聞き手に回るだけでなく、煽る。 「新吾は本っ当に優しいから、桜乃ちゃんともらぶらぶなんだろ〜?」 紗凪も加勢するように言いながらにっこり笑ってる。一人の幸せはみんなの幸せと、ここにいる六人は互いの気持ちをそんな風に感じあえる仲なのだった。みんな、揃いも揃って新吾の事が大好きなのだから。 「ああ、羨ましい。何しろ私と新吾のそういう成人指定的なシーンは都合によってほとんど削ぎ落とされてしまったからね」 新吾と桜乃が仲睦まじく交わり合ってるであろう、思い出のシーン(?)的なものを想像したのか、結月が頬を赤らめつつちょっと無念そうに言うが、しかし脇から鋭い突っこみが入る。 「ほとんども何も、結月にもあたしにも元からないだろ。そんなシーン」 じとーっとした細い目で結月を睨みつけ、呆れたような紗凪。 「そうだった。むぅ……。私と紗凪きちはそういう意味でちょっと遅れをとっている、かも」 「誰が紗凪きちだ!」 そんなあだ名を許可した覚えは無いと、結月に突っ掛かる紗凪。この二人はいつもそんなやりとりばかり。ボケの結月と突っ込みの紗凪といったところ。 「あんた達。そんな知らない人は本当に知らなさそうなメタな事情なんてどうでもいいわよ。……桜乃、気にすることなんてないんだから、しちゃいなさいよ。新吾と好きな事、いっぱいね。あたしが許可しちゃうわ」 愛理はいつもどんな時でも桜乃を勇気づけてくれる。もし仮に、自分にお姉さんがいたとしたら、愛理みたいな感じなのかな、と桜乃は一歳年上の親友と話をする度に思うのだった。 「うん。……なのでお兄ちゃん。エッチして欲しいです」 聞き間違えなど有り得ないくらいはっきりと言い切る桜乃。 「桜乃。あ、あのね」 あんまりそういう事をみんなの前で言うんじゃありませんと、普段ならばたしなめるのだが、有無を言わせぬ迫力が今の桜乃にはあった。桜乃だけでなく、周りの雰囲気もそう。煮え切らない新吾に対して、堅いことばかり言ってんじゃないわよとか、愛理だったら言いそうだ。 「それも……みんなの前でして欲しい。普通には嫌。だめ。エヌジー。マニアックで激しいのを希望致します」 「み、みんなの前でじゃなきゃ嫌なのっ!?」 大胆を通り越して思いっきり羞恥プレイというものだよそれは、と新吾は思った。それ程までに、今日の桜乃は本気モードのようだ。常日頃から大胆な冗談を言うことはあれど、この目はかなり真面目に言っていると新吾にもわかる。ゆっくりと気合いを入れるように息を吸い込み、結構な覚悟を秘めているであろう眼差しに、新吾は拒否することなどできはしなかった。 「お披露目エッチ、ということで」 恥じらいを無理にごまかそうとしているのか、ボケボケなのは変わらないけれど、本気のおねだりであることは確かなようだ。 「いいわねそれ。でもね新吾。桜乃との番が終わったら、その次はあたしともしてよね。……優しくしてくれないと、怒っちゃうんだからね? ふふっ。新吾ぉ」 愛理も桜乃と同じような気持ちなので、徹底して甘える。結月と同じように胸を新吾の腕に押し付けてふにふにとうごめいている。鼓動の高まりすら感じて欲しいと思い、更なる密着を求める。 「わお。愛理がデレまくっている」 「何よ結月。悪い?」 「『あんたと馴れ合いたくないの!』 だったかな?」 「う……」 愛理はぎくりとする。それを言われると今でも辛く、トラウマになっているとわかる。今となってはあの時の態度は自分の中での黒歴史だから。出会った頃はまさか、この人とこのような親密な関係になるなど想像すらできなかった。仕方が無いと言えば仕方が無いことだった。未来など見通せるわけがない。 「い、いいじゃない。そりゃ、私だって好きな人ができたら変わっちゃうわよ。も、もう、いいじゃないのよっ! そういうわけだから、桜乃の次はあたしねっ!」 しかしその力強い宣言にはまた、紗凪による横槍が入る。対抗馬は何人もいる。 「ちょっとまーった! 桜乃ちゃんの次はあたしよあたし! 愛理なんかよりいっぱい新吾に気持ちいいことしてあげるんだから!」 「何よ、気持ちいいことって!」 愛理と紗凪はかなりの似たもの同士。負けず嫌いが二人も揃っているわけで、途端に言い争いになる。 「びぃかっぷのパイズリ……。固すぎて皮がすり剥けそう。もちろん、新吾の方がね」 「結月ぃ!」 とっても失礼な突っこみを入れる結月と、目をつり上がらせて叫ぶ紗凪。 「昨日、夢を見ました」 相変わらず独自の時間を突き進んでいるのであろう桜乃が、ゆっくりとだけど確実に、何の脈絡も無いことを語り始める。女の子達が揃っておしゃべりを始めると、いつの間にか全く関係がないような話題に変わっていることなどしょっちゅうで、それがまた楽しくもあったりする。一晩だけじゃとても足りないくらいお話をし続けたいと、誰もが思う。喉がかれて声が出なくなるまでとことん。 「へえ。どんな夢?」 愛理は桜乃にとことん優しくて、お話をじっくりと聞いてくれる。愛理は本当に聞き上手なお姉さんです、と桜乃は心の中で感謝の意を示した。 「学食で、みんながお兄ちゃんを取り囲んでいるの」 「……どういう状況なのかな、それ」 何か囲まれてしまう程悪い事でもしたのだろうか俺は、と新吾は思った。例えばまた女子校ゆえのミス……トイレに間違えて入ってしまったりとか、偶然の突風を受けてまくれ上がってしまったスカートの中を見てしまったとか。思い当たる節はいくつもある。決して自分の過失では(ある意味)ないとは思うのだけれども、言い訳できないことばかりだった。 「新吾を? 今もそうだと思うんだけど?」 愛理、結月、紗凪によって全身をがっちりとガード。よほど高名な怪盗辺りでもなければとても逃げ出せそうにない状況に新吾はただされるがまま。 「今の状況とはちょっと違くて。……みんな制服姿なのです」 「学校だから当然ね。それで、どうなるの?」 紗凪も結構興味深々といったところ。 「発端は愛理です。愛理が突然お兄ちゃんに衝撃的な事を言うところから、全てが始まるのです」 「え、ちょっと。何であたしなのよ?」 「さあ」 夢に理屈を求めても仕方が無いところ。とは言え、突然登場させられるとなんだか違和感がある。例えるならば、もう一人の自分がいて、こっそりと悪さでも働いているような居心地の悪さを感じる。 「それで、衝撃的なことって?」 結月が問う。なかなかに気になる内容だから早く続きを聞きたい。 「愛理が……胸をお兄ちゃんの腕に擦りつけるように押し当てて……それから『ふふ。ねえ新吾ぉ。この中で、誰のおっぱいが一番好き?』と、それはそれは、とっても色っぽくも甘えた口調で言うのです」 「わお」 「愛理……。本当に変わったよね」 ツンケンしていたのは本当に過去の事。結月が驚き、紗凪がしみじみと言う。もっとも、紗凪自身も愛理のことは言えないが、あんまり変わったという自覚はない模様。誰も彼も、知らぬは本人ばかり。 「言わないから! あたしはそういう事言ったりしないから! それに夢だし。む、胸は……今、擦りつけてるけど……。普段から言ったりしたりはしないわよ。ほ、本当にどういう夢なのよそれは」 即座に否定。夢の内容に断固として抗議する愛理。そんな痴女みたいな真似は、少なくとも人前ではしない。はず……。だけど今のこの状況ならばその限りではないかもしれない。 「さあ。……で、お兄ちゃんは困って答えに詰まって絶句しちゃいます」 「それはそうだろうね。うん」 結月が納得したように頷いている。 「普通に困るよ。そんなこと聞かれたら」 新吾自身も納得。 「そうしたら今度は天羽先輩が……」 ――噂をすればなんとやら。ドアをノックする音と共に、女の子の声が聞こえる。わけあって、ちょっとの間不在だった二人の姿。おっとりした声と、元気いっぱいにまくし立てるような声。 「ただいま〜」 「皆様おまたせ致しました〜。就寝前のティータイムの準備ができましたでございますよ〜」 みうとアンジェが新たなお茶やお菓子などの用意を買って出て、運んできてくれたのだった。 「あ、みう先輩お帰りなさい〜。一緒に新吾の背中に張り付きませんか〜?」 「ふふ。紗凪ちゃんったら本当に新吾くんの事が好きなんだから」 「はい〜! みう先輩のことも勿論大好きですよ〜!」 (これで更に二人に乗られたら流石に重い、かも) 重い、とはまさに禁句。女の子にとってはネガティブ過ぎるNGワード。空気が読める新吾は口にはしないものの、そんな風に思っていた。紗凪にとってみうは新吾と同じくらい親愛なる人。好き、というキーワードにはみんな敏感。その言葉が持つ意味を誰もが皆、強く意識している。 「みう先輩。それならあたしも紗凪には負けていませんから!」 「私もです」 「それについては私も負けてはいないと、びぃかっぷじゃない胸を張って言うよ」 「びぃかっぷ関係ないだろ結月!」 紗凪が結月を睨みつけて抗議するが、それはさておき。愛理も桜乃も結月も、それぞれの心に秘めた思いは一緒。 「アンジェもでございます〜。旦那様ぁ〜。お背中マッサージ致しますよ〜! えいっ!」 ポットやカップ類、そしてお菓子が満載されたお盆を傍らのテーブルに置いてから、アンジェが新吾の上に乗っかってきた。無論、紗凪の許可など得ずに強引に。紗凪がみうの為にとわざわざ用意していた特等席はアンジェが横取りしてしまった。当のみう自身はくすくす笑いながら紗凪とアンジェのやりとりを眺めている。 「んぎゅ! うああっ! アンジェ、あたしの上に乗っかってくんな〜! でっかいおっぱいが当たってる! びぃかっぷに対する当てつけか〜〜〜!」 「ふっふっふ〜。その通りでございますさっちゃんさん。当ててるのでございます〜! これが本当の当てつけなのでございますよ〜!」 ……意味が少しばかり違うようだった。 「こら! 何をするんだアンジェ〜! 割り込むな〜! ここはあたしとみう先輩の特等席だ〜〜〜!」 「ふっふーん。さっちゃんさんがさぞかしお疲れかなと思いましてこのアンジェ、気を効かせてみたのでございますよ〜!」 「余計なお世話だ〜〜〜! 誰が疲れるもんか〜〜〜! こら〜〜〜! アンジェ〜〜〜! おっぱいで背中包み込むな〜!」 アンジェが当ててくる胸の余りの柔らかさにムカっときて反抗しまくる紗凪と、その紗凪をいじりまくってはしゃいでいるアンジェ。自分の背中を土台代りにどたばたされて、新吾は苦笑しっぱなし。 「ふむ。相変わらずライバルは多数のようだね。実のところ、私も新吾の背中に張付きたいのだけど、先約いっぱい。ううむ……」 「腕を確保してるんだからいいじゃない」 「……」 人身売買? と、新吾はちょっと思った。 「時々でいいから、思い出してください。妹みたいな女の子がいたってことを」 目を細めながらボケボケな事を呟く桜乃。控えめな桜乃はいつでもどこでも新吾の体に抱き着いたり甘えたりできるからと、今はあえて一歩引いてみんなに場所を譲ってくれているのだった。とても奥ゆかしい。そんな優しい桜乃はみんなから可愛いと思われて、大切にされているのだった。 「『みたい』って……。妹でしょうがあんたは」 「そういえば、そうでした」 女数人集まればかしましいとばかり、たちまちにぎやかになってしまう。一時離脱していた二人が加わればその要素は倍増するどころか、四倍か八倍かそれ以上増えるようで。 「それはそうと、夢の続きはどうなったの?」 話が途中で途切れてしまったことについて、ふと思い出したように愛理が続きを要求。 「何でございますかそれは?」 「え、何何?」 「桜乃が昨日見た夢の事です」 「あたしやみう先輩も出てきてるみたいですよ〜」 「へえ。どんな夢かな。聞かせて聞かせて」 「アンジェ興味津々です〜!」 「はい。では、続きですが。……最初からお話しましょう」 桜乃は戻って来たみうとアンジェの為に、愛理による衝撃的な発言が全ての始まりだった……という辺りまで、再度説明した。 こうして、桜乃の長い長い回想が始まる……。
娼婦のように妖艶な眼差しで誘惑。年相応とはとても思えないくらいに大人びた仕草。新吾の腕に胸を押し当てて、右手の細い指先で新吾の首元を撫でている。 『ふふ。ねえ新吾ぉ。この中で、誰のおっぱいが一番好き?』 愛理曰く、人前でそんな事は絶対に言わないわよ、との事だったが、夢の中では例外だった模様。ともかくも衝撃的な台詞だったことは間違い無く、大いなる波乱を巻き起こすこととなる。 『ふうん。新吾くんって、女の子のおっぱいが好きなの?』 『えっと。みう先輩。それは……』 『嫌いなの?』 新吾が即答しないでいると、何故かみうはとても哀しそうな、寂しそうな、泣きそうなくらい曇った表情になってしまった。新吾もごく普通の健全な男子なわけで、嫌いなわけがないのだけれども、かといってはっきりと好きだと断言するのも気が引けてしまうのだった。それではまるで自分が『はい。俺は変態です』とでも断言しているかのようだから。 『好き、ですよ?』 新吾がそう答えると、みうの表情が途端に明るく微笑みに満ちたものに変わっていく。ちょっとどきどきしたけれど、言ってみて本当によかったと新吾は思う。その証拠にみうだけでなく全員がホッとしている。……そんなところで後ろからものすごく元気な声が響きわたる。突っこみ不要の元野良メイドなあの娘だ。 『それは良いことをお聞き致しました〜! アンジェのおっぱいはそんな女の子のおっぱいが大好きな旦那様のご要望にお答えするために用意してあるのでございます〜! ですので早速でございますが是非是非アンジェのぷるぷるおっぱいをじっくりゆっくりたっぷりとご堪能くださいませませ旦那様ぁ〜! えいっ!』 『わっ! むぐうううっ!』 大チャンスとばかりに飛びついてくるアンジェはボリューム満点の胸を新吾の顔へ思いっきり押し付けていた。むにゅうううっと、交通事故発生時に運転席のエアバッグが緊急作動でもしたかのように、とてつもなく大きくも柔らかな膨らみの谷間に新吾の顔は埋もれてしまう。が……。 『……。菜夏ちゃん。めっ』 『はうっ!?』 即座にみうが手を回してアンジェから新吾を奪還しつつ、アンジェには僅かに劣るものの、やっぱり大きくてふんわりした胸を後頭部にむにゅうううと押し付けていた。おっとりしているようでいてただ見ているだけじゃなく、やるときはとことんやる。なかなかに度胸が据わっているみうだった。 『わあああっ!』 いきなり訪れた二回の攻撃に強烈な既視感を覚える新吾。かつて天羽家で、みうのお母さんである天羽結子さんに同じようなことをされたのを思い出していた。相手がアンジェとみうに変わっただけで、その凄まじさは全く同じだった。 『新吾くん。私のおっぱいで良ければ、何でもしていいんだよ?』 『な、何でもって?』 あまりにも母性的な、優しく包み込むような笑顔でみうは言った。 『ふふ。新吾くんが大好きな事だよ。新吾くんのお手手で揉み揉みしたり、こねこねしたり、ふにふに〜ってしたり。それで私が感じちゃって……ぴこんってとがっちゃった乳首をおしゃぶりして赤ちゃんみたいにちゅーちゅー吸ってみたり、新吾くんのお顔を包んでぷるぷるぱふぱふしたり、ね』 『みうさん、そうはこのアンジェが……はう!』 奪われたら奪い返せとばかりに巻き返しを図るアンジェだったが、恋のライバルはみうだけではない。今度は紗凪がアンジェの体を新吾から遠ざけにかかってきた。 『アンジェ、ちょっと場所代われ。あたしも頑張る』 『さささ、さっちゃんさんご無体でございます! ですが大変失礼ではございますが、さっちゃんさんの為を思って言わせて頂きますと、さっちゃんさんのびぃかっぷのおっぱいでは旦那様のご期待に添うのは非常に厳しいのではないかと思いましてございます!』 アンジェの一言は胸の小さな紗凪のことを気遣っているのか馬鹿にしているのかはわからないが、紗凪にとっては屈辱としか思えない。紗凪のコンプレックスは徹底的に刺激され、そして活火山のように爆発する。 『だーーーーっ! うっさーーーーいっ! おっぱいは、おっぱいは大きさだけじゃない!』 『紗凪! あんたは今、確実にいいことを言ったわ』 珍しく愛理が紗凪を誉めている。何しろ、サイズ面ではどうしてもアンジェやみうに遅れをとるのだから、呉越同舟とでも言うべき関係か。この場合は味方勢力となるのだろうか? 『まさにその通り。びぃかっぷが正しい事を言った。おっぱいは大きさだけではない。諸君! この私を見てみたまえ! このぴっちりとした制服の上からでも分かるふっくら真ん丸な曲線! とってもいい形をしているだろう? 女の子しているだろう? 芸術的であると思わないかねっ!』 『そうだ! おっぱいはラインだ! ……って、びぃかっぷで悪かったな結月! 何だかんだ言っておっぱい思いっきり大っきいくせに大きさだけじゃないとか形だとか、何贅沢言ってんだ〜〜〜!』 どうにも結月が関わるとボケと突っこみの漫才になってしまうようだが、それを遮るのは意外なことに桜乃の静かな一言だった。大人しい性格故に賑やかな面々に埋もれ、忘れられていたかのような立場だけど実は実力派なダークホース。 『……ですが皆さん。おっぱいのラインコントロールも微妙な妹がここにおりましてございます』 『桜乃……。自分で微妙って言っちゃってるけど、桜乃もそんなに小さくはないんじゃない? なにもそんなに自虐的にならなくても……』 至極真っ当な愛理の一言に、桜乃はふるふるとかぶりをふる。 『天羽先輩とアンジェ……。超弩級おっぱいの人がお二人……。結月お義姉さんも大きいし、愛理もなかなかのバランスがとれたぐっどおっぱい。紗凪さんは……小さいけれど徹底してて、とてもキュートな乙女のぷちパイ……』 『び、びぃかっぷを誉められた!? あたしのおっぱいってキュートなのっ!?』 紗凪にとってその事実はとてつもなく衝撃的な事だったらしい。 『ぷ、ぷちパイだと!? 何と言う女の子らしい言葉の響きなんだ! あ、ああ、素晴らしい! 素晴らしいよびぃかっぷ! キュートなぷちパイ最高だよ!』 結月にとってもそのキーワードは衝撃的だったようで、凛々しい役者のようにびぃかっぷを誉める。称える。賞賛する。 『だあっ! 誉めてんのか貶してんのかはっきりしろ結月!』 『そこへいくと、この妹めのおっぱいはそれといった特徴も無く、何とも形容しがたい微妙さ加減……』 制服の、蝶のようなリボンが乗っかっている胸をまじまじと見つめ、哀しそうに目を細める桜乃。ちょっと腕で挟んで寄せ上げても大したボリュームが生まれるわけでもない。 『ん。でもね桜乃ちゃん。可愛い妹のおっぱいは、新吾くんもきっと大好きだと思うよ。ね? 新吾くん』 慰めるわけでもなく、無理やりおだてるわけでもなく、優しい口調に加えて天使のような笑顔で真実であろうことを呟くみう。大人しい桜乃以上に存在そのものを忘れ去られていたような立場の新吾は、突然話を振られて何も答えられない。 『え……』 『お兄ちゃん……。妹のおっぱい……略して妹パイ、好きですか?』 (何でわざわざ略すのかな?) 不安いっぱいで泣きそうな表情の桜乃に、新吾は否定などできるはずがない。元より、大切な妹の体なのだから嫌いなわけがない。大きかろうが小さかろうが関係ない。 『好きだよ?』 『……』 新吾の人柄から、その一言が決してお世辞ではないと桜乃もわかっているけれど、どこかやるせなさが残る。そんな思いを解消するためか、桜乃は行動に出ることにした。しゅるりと布地が擦れる音――桜乃が着ているブルーを基調とした各務台学園の制服の胸元を飾るリボンを解いていく音。 『伸びちゃった背の分膨らんで欲しいのに、ご覧の通り薄いまま……。こんなつまらないおっぱいでも……お兄ちゃん、ずっと好きでいてください……』 全員が一瞬ハッと息を飲むような、神秘的かつ背徳感溢れるシーンだった。桜乃の制服もブラウスもブラも、丁度胸のところだけ布地が取り払われたようにぽっかりと空き、二つの申し訳程度に膨らんだ小振りな丸みが露わになり、頼り無くふるると震えていた。白くつやつやな肌は緊張の為か鳥肌がたっているように見える。そんな桜乃があまりにもいじらしくて本当の妹のように可愛くて、愛理が勇気づけてくれる。 『桜乃……。新吾が桜乃の事を嫌いになるわけがないじゃない。ねえ新吾。そうでしょ?』 先程のみうと同じように微笑を見せながらそう言う愛理。一瞬目を伏せて、もぞもぞと両手を動かしていく。 『愛理、何やってんだ?』 『ん。あたしのも新吾に見てもらおうかなって思ってね。恥ずかしいけど、桜乃が見せてるから……平気。言っておくけど、新吾にだけだからね? こんなとこ見せちゃうの……』 桜乃とは違い、ブルーのリボンを解かずに残したまま結姫女学院の制服の胸元だけをはだけさせていく愛理。桜乃と比較して明らかにボリュームがあって、それでいて少しツンと突き出ていて、程よい大きさの膨らみ。透き通るように白い肌に加えて淡い桜色の乳輪。 『皆さん、おっぱいを旦那様にお披露目するのでございますね〜! おまかせくださいませ! アンジェのメイド服はとっても便利でございます! この通り胸の部分だけ綺麗に脱げちゃったりするんですよ〜! ほらっ!』 アンジェの動きはそれはもう速かった。ぱぱぱっと脱ぎ去り、あとにはぷるるんとふるえまくる程に弾力に富みまくったバストが元気よく飛び出した。モデル級と言っても過言では無いくらいのボリュームのそれは、男の大きな手の平でも収まり切らないくらいの特大サイズだった。ばばーんと、ど派手な効果音でも鳴り響いていそうな雰囲気の中で揺れている。 『ふふ。じゃ、私のも見せたげるね。んしょ、んしょ、よいしょっと……。はい、どうぞ新吾くん。わたしのおっぱい、どうかな?』 制服を脱ぐ仕草も可愛らしい。みうのバストは見るからに柔らかくて、触れればふにゃりとした感触と共に、指がぷるぷるとどこまでもめり込んでいってしまいそう。愛理や桜乃と比べて乳輪と乳首はちょっと大きめで色も淡くて艶やかだった。 『みう先輩っ!? あ、あたしも見せる! びぃかっぷだけど……新吾、見て……。はいっ!』 紗凪の胸は、一言で形容するならばとっても子供っぽかった。紺色の超が付くほど伝統的なデザインのスクール水がぴったりと似合いそうな、頼り無い膨らみの先にちょこんとしたさくらんぼのように小さめのな乳首が盛り上がっていた。……紗凪がふとみうに問う。 『うう……恥ずかしい。って、みう先輩? 何をしているんですか?』 みうは赤いリボンを制服から外して、胸の外周に巻き付けていた。 『あ、うん。おっぱいにリボンでラッピングしてみたらどうなるのかなって思って。可愛いかな?』 『はい! それはもう!』 大絶賛の紗凪。もちろん、他の娘も同じ。 『みうさんグッドアイデアです〜! アンジェも旦那様の為に今度ヘッドドレスを改良しておっぱい用にしてみようかと思います〜!』 『まさに自分をプレゼントって感じですね』 アンジェと愛理も感心して頷いている。 『リボンを巻き付けて余りあるおっぱい……。うらやましい』 ほぅ……と、羨望に満ちた息を吐いている桜乃。 『で……』 紗凪が横目で、新吾とはまた別に、この場で忘れ去られていそうな人物を眺め見る。 『結月は見せないわけ?』 『は、はっはっは。何を言うのかね。見せないわけがないじゃないか。では何故私が出し惜しみをしているのかと君達は問うのだろう? ならば改めて答えよう。真打ちは常にラストに登場するものだということなのさっ!』 結月の瞳がきらーんと輝いた気がした。場所が教室あたりだったらみんなの黄色い声援が飛ぶところ。しかしながら、この場の六人は完全に耐性がついしまっているのか、とっても冷静なのだった。ああ、この人は今、きっと恥ずかしくてたまらないんだろうなと、感づいている。それでいてみんながみんな胸を新吾に差し出すようにさらけ出してしまったから、言うなれば前に出たいけれど出るに出られない心境なのだと。 『今の結月、全然凛々しくないからね。どちらかって言うと格好悪い』 愛理による評価はとっても低い。 『明らかに登場タイミングを逃した〜って感じよね』 紗凪も愛理と同じように底評価。やれやれとばかりに両手をひらひらさせている。 『結月さんらしくないと思います〜』 アンジェの表情もさえず、みんなと同感の模様。 『か、格好悪いとまで言われた……。タイミングが悪い……。らしくないとも……。まだまだ私は大根役者……。これはきっと、初心に返って謙虚にならなければいけないということだね、うん』 ぶつぶつ呟いてる結月に紗凪が焦れったいとばかりに叫ぶ。 『だーーーっ! 能書きはいい。さっさと見せろ。その無駄にでかいおっぱいを!』 『み、見せるさ! 見せるとも! 見せて差し上げよう! 心して見るがよいぞ新吾! う、うぅぅぅ……っ!!!!』 『手が止まってるわよ』 桜乃への優しい接し方とは対照的に、ちょっと意地悪な表情の愛理。日頃からしょっちゅうちょっかいを出されたり、やられたりからかわれたりされている仕返しと言ったところ。もちろん悪気などなく、楽しんでいる笑顔。 『結月、本当は恥ずかしいんじゃないの〜? 何を今更って感じだけどさ〜』 紗凪も愛理と同じように余裕綽々な表情で結月を追い込む。 『結月さんがんばってくださいなのです〜』 アンジェは中立の立場を崩さないようで、いつでもどこでも応援してくれる。 『お義姉さん。そんなに無理をしないでも……』 桜乃の優しい気遣いが痛い。しかしここで見せなければ、何か勝負に負けたような、自分自身に負けたような、プライドを傷つけられてしまうような、そんな気がする。 『大丈夫さ! たかだかおっぱいを新吾に見せるだけ! ほらっ!』 力みまくって上着の前を開けようとした結果、バリッと裂ける音がして柔らかな布地がちょっと裂けた。ついでに勢い余ってボタンまでもが吹っ飛んでしまうという落ちになってしまった。 『わあああっ! ぼ、ボタンがあああっ!』 『わぁ。結月ちゃん、気合い入ってるね〜』 『豪快でございます〜!』 『とても、体張ってます』 『セルフレイプな光景よね、まるで』 『ふ、ふ、ふ。……ご覧あれ。これが私のおっぱいさ。美巨乳だろう? 触ってみたいだろう? とくと眺めてくれると嬉しいよ。ふふふ……。ふ、ふ……。……。わ、わ、わきゃーーーーーーーーーーっ! ああっ! だ、だめ! 頑張れ私……! お、おっぱい見られたくらいで何だ! 恥ずかしくなんて恥ずかしくなんて恥ずかしくなんてっ! ……は、恥ずかしいっ! やっぱり恥ずかしい! 死んじゃうくらい恥ずかしいっ! もうだめ! 新吾、見ちゃいや……あっ!?』 『こら結月! 隠すなー!』 紗凪が結月を背後から羽交い締めにして、覆い隠そうとする腕を封じた。 『な、何をするか紗凪きち! 離せ! 離せ〜〜〜!』 『だ〜れが紗凪きちだ〜!』 『結月。往生際が悪いわよ。いい加減吹っ切れなさい』 『結月ちゃん。無理はしちゃだめだよ?』 『していない……。むしろ、新吾に見てもらいたい。けど、でも……恥ずかしくて、でも新吾に見てもらえて嬉しくて……。すごく複雑な気持ち……』 『ふふ。そうだよね結月ちゃん。私もそう思ってるよ〜』 みうはいつも誰に対しても優しい。そんな結月の緊張を解きほぐすかのように、みんなの楽しそうな笑い声が聞こえる。 このようにして、六人の少女達は胸元を全てさらけ出すことになった。 『――で、新吾。最初の質問に戻るけど。誰のおっぱいが一番好き?』 こうして全ては振り出しに戻り、愛理の口から最初の衝撃的な台詞が再度繰り返されることとなる。愛理の笑顔はどこか有無を言わせない迫力があり、六方向からの視線が新吾に集中し、ご決断をと促す。 ……丁度その辺りで桜乃の意識は覚醒していく。
「と、そのような感じの夢でした」 頬を赤らめながら回想を終了させる桜乃。全く、何というカオスな夢なのだろうか。 「すごい夢見ちゃったと、そう思いました」 目をさましてから暫くの間ベッドに座り混んで呆然としてしまう程のインパクト。 「桜乃……。何て言うか……かなりすさまじい夢だね」 「なるほどなるほど。皆様でおっぱいの品評会を開催したのでございますね〜」 「何と言うか……。何と言っていいのか……。どういう夢なのよ、それは」 「ていうか、学食で堂々と何をやってんだあたし達は。露出狂か」 「ま、まあ。夢のことだし」 「確かにそれは猛烈に恥ずかしい行為かもしれない。ううむ」 アンジェ、愛理、紗凪、結月と四人共、そろって落ち着いた感想を述べている。 「でも、実際はどうなのかな? 新吾くんは女の子のおっぱい、好き?」 みうの質問に、新吾は素直に答える。こうなってはもはや、隠すこともないわけだから。 「そりゃ好きですよ。俺も男ですから、断言します」 「ま、そうよね」 新吾の潔さに愛理は納得の表情。 「男って、そういうもんだよね〜」 「この妹も、お兄ちゃんのことを男性と意識しております」 「旦那様〜! そうこなくちゃでございます〜!」 愛理だけじゃなくみんなが頷いている。そもそも、そうでなくては困るのだから。 「わっ! アンジェ……背中で暴れないで」 アンジェはいつしか紗凪を新吾の背中から引っ剥がして、コバンザメが張り付いているようなベストポジションをゲットしていた。 「こらアンジェ! 新吾の背中はあたしとみう先輩の担当だ〜!」 「はううううっ! あ、アンジェにも旦那様にご奉仕させてくださいませ〜!」 紗凪も逆襲に転じようと頑張っている。二人のポジション争奪戦はまだまだ終わっていない模様。 「そっか。じゃ、……ここならみんなしかいないからいいかな。新吾くんに見てもらおうかな」 みうが澄ました顔でそう言いながら新吾の側でパジャマの上着のボタンをぽつぽつと外し始めた。至極自然な動作で、違和感などまるでない。細く白い指先がとても儚げに見える。 「私。新吾くんもみんなも大好きだから……。恥ずかしいけど、見せちゃうね?」 新吾だけじゃなくて、ここにいるみんなのことが大好きと、みうははっきりと言った。その一言は全員の共感を得たようだった。誰もが……じゃれ合い続けていた紗凪とアンジェも一時休戦といった感じにみうの霰もない胸元を見つめる。普段、制服の上からでもはっきりと分かる、はちきれんばかりのボリュームの胸が今、一糸まとわぬ状態で晒されている。 「ん……ん。はい、どうぞ。これが私のおっぱいだよ〜。……ど、どうかな? 形とか大きさとか、変じゃない?」 みうの低い身長とは不釣り合いな、まん丸型で大きな胸。みうは新吾に差し出すようにして、両手で乳房の下部をくい、と持ち上げてみせる。 「全然、変じゃないです。その……大きくて、きれいです」 「よかった。ありがと」 一見するとまるで動揺することもなく、ごく自然な仕草で胸を晒したようでいて、実の所は恥ずかしさと猛烈な緊張感にどきどきしまくっていたみう。新吾の一言は心の底から嬉しくてたまらない。 「本当にきれいですよみう先輩のおっぱいは〜。……みう先輩は寝る時にブラつけないんですか?」 みうがノーブラだったことに気付いた紗凪。 「うん。そうだけど、変?」 「変じゃないです〜! そっかぁ。あたしもこれからはノーブラで寝よ〜っと」 それで大きくなるわけではないわよねと愛理は思ったけれど、口には出さなかった。言ったら間違いなく怒られるから。 「それでびぃかっぷが大きくなるわけではないよね。うん」 「びぃかっぷなめんな結月〜〜〜っ!」 ほらやっぱり、と愛理は心の中で溜息一つついていた。 「アンジェはブラをしながら寝ておりますよ〜!」 納得する人、意外と思う人、半々くらいに別れる。 「じゃ、あたしもおっぱい見せる〜。新吾ぉ。びぃかっぷのプチぱいだけど、見てくれるかな?」 「うん。もちろん」 「やったあ! ……でも、本当に小さいけど、がっかりしないでよ? 本当に本当だからね?」 子供のように念を押す紗凪は可愛いと新吾は素直に思う。 「しないよ。絶対に」 「ありがと。もう……。本当にどこまでも優しいんだから。そんなとこが大好きなんだよ、新吾ぉ」 みうに触発された紗凪がもぞもぞとパジャマのボタンを外していく。……みうと違い、白と水色の縞柄のスポーツブラをつけていた。後でわかることだけど、ショーツとお揃いの柄。 「どうだ〜。これがあたしのびぃかっぷだ〜」 紗凪がえっへんと胸を見せつけるようにすると、小ぶりな胸が更に小さく見える。 「小さいだろ〜。プチぱいだろ〜。……はあ〜。本当に、みんなにはかなわないなあ。……新吾は小さなおっぱいは嫌い?」 「そんなことないって。紗凪の胸だから、本当に大好きだよ。可愛いと思う」 何度でもそう答える。 「ん。ありがと。……でもね。確かにちっちゃいけど、それなりにふにふにしているんだよ? 新吾にいっぱい触ってもらって、大きくしてもらいたいなぁ。なんて……あぅぅ……」 自分で言っておいて顔中真っ赤にしてしまう紗凪。新吾に優しく揉まれたり撫でられたりされている光景を想像したようだ。 「何だか、段々と桜乃が見た夢の通りの展開になっていくわね」 「正夢になりました」 とっても細い目をしながらとぼけたように言う桜乃。 「アンジェなんだかわくわくしてきちゃいました〜」 「ふむ。新吾によるおっぱいの品評会と。夢の内容のように、乗り遅れる訳にはいかないな」 「じゃ、次はあたしね。新吾に感想言ってもらおうかしら」 言いながら、愛理がパジャマのボタンを外し終える。白いシンプルなデザインのブラを手早く外し、一瞬勿体振ったように両手で隠してから思い切って露にする。 「ど、どう? あは。……当たり前だけど、これって結構恥ずかしいわね。分かっていて、覚悟していても、ね」 「うんうん。愛理ちゃんもわかる? 恥ずかしいよね〜。それでも見てもらいたくなっちゃったんだけどね。新吾くんに」 「本当にそうですね。天羽先輩の気持ちがわかります。恥ずかしいけれど、でも……好きな人に見て欲しいって。そんな気持ち。……で、新吾。どう?」 整った形。小さすぎず大きすぎず、程よくバランスの取れた膨らみの先に、つんととがった乳首。つやつやしていて張りがありそうだと新吾は思った。 「きれいだよ」 「ありがと。素直に嬉しいわ」 ホッとする気持ちもまったく一緒。みうに同意したように愛理も笑顔。 「愛理のおっぱいは、バランス型」 桜乃の評価に愛理はちょっとの意外さと大いなる照れの入った笑顔。 「え、そう? バランスいいのかな?」 「でもね、お腹のふにふにしたものがもっとそこに集まればいいのにね」 結月が喜んでいる愛理の心の中を見透かしたように、あえて本人の口調を真似て茶々を入れる。恐らく結月にとっては愛理の逆鱗に触れるのが趣味なのだろう。 「ゆ〜つ〜き〜! あんたはまたそういう事をっ!」 頭にきた。びし、とこめかみがちょっと浮かび上がったような愛理。愛理と結月の間でよくある光景。喧嘩友達なのだろうか? 「ま、まあまあ。愛理さん落ち着いてくださいませ。お気を静めてくださいませませ。……それでは今度は続きまして、この真打ちたるアンジェめが旦那様に自慢のおっぱいをご披露致します〜!」 と、言ったところまではよかった。しかし。 「おりゃ!」 「はうっ!? さささ、さっちゃんさん何をされるのでありますか!? このアンジェも心の準備と言うものがですね!」 突然、紗凪がアンジェの背後に回り込み、パジャマの胸元を一気に開けてしまう。 「アンジェのはど〜せ無駄に馬鹿でっかいんだからさっさと見せちゃって次いけ〜!」 「無駄ではございません〜! アンジェのおっぱいは旦那様の為に……ああああ〜〜〜っ! さっちゃんさんおやめになられてくださいませ〜!」 アンジェの一言がかなり癪に触った模様。紗凪が言った通り、モデル級のとんでもなく大きな胸がふるふると揺れて自己主張しまくっている。紗凪のびぃかっぷではとてもできない芸当。 「あ〜もうっ! こうだ! こうしてやる」 つんつんつんつんと紗凪が横からアンジェの胸をつつきまくる。その攻勢に晒されながら、アンジェは新吾に向き直る。 「さ、さっちゃんお許しを〜! だ、旦那様ぁ! アンジェのおっぱいはいかがでしょうかぁ? はわわわわっ! さっちゃんさんギブです! ギブでございます〜〜〜っ!」 「大きくて可愛いよ」 「ありがとうございます〜! はう! あう! さささ、さっちゃんさんお許しを〜! 大っきくて申し訳ございません〜!」 「申し訳ないと思うんだったら少しでいいからあたしに分けろ〜!」 「できません〜〜! って、さっちゃんさん! よくよく考えてみたら、みうさんもおっぱいとっても大っきいじゃありませんか〜! どうしてこのアンジェだけを目の敵にされるのですか〜!?」 アンジェがもっともらしい疑問を紗凪にぶつける。すると。 「そんなの言うまでもないだろ! みう先輩のおっぱいはいいんだ! 特別! だけどアンジェのおっぱいは別だ〜〜〜!」 「そそそ、そんなああ〜〜〜! おっぱい差別でございます〜〜〜! あ〜〜〜れ〜〜〜!」 むんずと掴み、ふにふにふにふにっとアンジェの胸を揉みまくる紗凪と、泣き笑い状態のアンジェ。 「何やってんだか」 アンジェと紗凪による漫才みたいなやりとりに呆れてる愛理。 「さて、後ろが騒がしいけれど今度は私」 桜乃が見た夢のように無様な姿は見せない。そのためには平常心とばかりに淡々と続ける。 「何か結月ってさ」 「うん?」 「ブラの代わりにサラシ巻いていそうよね」 「それはそうさ。何故ならばこの私は本職の巫女なのだから!」 えっへんと言わんばかりに胸を張る結月。 「え。本当に? 冗談で言ったのに」 何だか結月なら本当にあり得そうと思った愛理だったけれど、そんなことはなかった模様。結月もなかなかにノリの良い性格のようで。 「冗談です。普段は普通にブラしてます。んしょ。……新吾ぉ。見て。ほら」 「結月も結構大きいよね」 「ん……。えへへー。お風呂で結構マッサージしてたりするんだよ」 褒められてとにかく嬉しい。結月は凛々しいから可愛いモードへと変わっていた。 「あ、するする〜。念入りに洗いながらね」 「ま、常識よね」 「あたしも毎日しているぞ〜。……効果全然ないけど」 「乙女のたしなみでございます〜。って、さっちゃんさんそろそろお許しを〜!」 未だにアンジェの胸をつんつんつんつんしている紗凪。 そのような各人の涙ぐましい努力も全ては新吾の為。そうして最後の一人、桜乃がひょこっと現れる。 「お兄ちゃん……」 「桜乃?」 「お兄ちゃんにとっては、見慣れてしまったいつものつまらないおっぱいかもしれませんが」 気づけば桜乃は胸を晒していた。とても大胆な事を呟きながら。 「え、何? 新吾と桜乃ちゃんは毎日一緒にお風呂にでも入ってんの?」 「あんた達、お互い揃いも揃ってブラコンのシスコンよね」 「シスコン……。お兄ちゃん、ブラコンな妹は嫌いでしょうか」 「嫌いなわけない。というか、シスコンな兄の方が妹に嫌われるものかと。俺はそっちの方が心配だよ」 シスコンでありブラコンであることを互いに否定しない。事実なのだから。そうして新吾の手が伸びてきて、桜乃の胸に触れる。力を込めず、ただ触るだけの愛撫だったけれど、桜乃にはそれだけで充分だった。 「嫌いになることなんて、ない。好きだよ……お兄ちゃん。ううん。大好き。……妹としては、もっともっといっぱいシスコンになってもらいたいよ」 もっともっと愛して欲しいし、可愛がって欲しい。桜乃も新吾に対して同じように尽くしたいと思う。普段は恥ずかしくて言えないような本音がぽろぽろとこぼれてくるけれど、他の人達にはのろけているとしか思えない。 「あーもう熱々なんだからっ! ごちそうさま!」 「あは。仲良しだね〜」 「兄と妹、禁断の仲。あたかもロミオとジュリエットのような感じ」 「本当に桜乃さんはお兄様にお尽くしする健気な妹さんでございます〜」 「あのねみんな、思い違いしているよ。二人で風呂に入るなんて滅多にないし……」 実際のところを説明すると、予想外の不興。逆効果だったようで。 「ちょっと新吾。最近桜乃に冷たいんじゃないの? お風呂くらい一緒に入ってあげなさいよ」 「女の子に冷たくし過ぎると校内中に悪い噂が広がって連鎖的に爆弾が爆発していくぞ〜!」 「紗凪。それ、何てゲーム?」 「新吾くん。桜乃ちゃんを大切にしなきゃだめだよ?」 「もしかすると二人の恋は耐え忍ぶものなのかもしれないね。……えっちの時に普段の倍気持ち良くなるために」 「一つ屋根の下にお住まいなのですから思う存分ハッスルいたしましょうよ〜!」 何だかもう、みんなから色々と言われまくり。 「いや……。あのね、みんな……」 「違う……。そんなことない。お兄ちゃんはいつも優しくしてくれるよ……」 恥ずかしくて視線を逸らす桜乃。新吾がいつもしてくれる優しいキスの事を思い出す。いたわるように頭を撫でてくれて、そっと引き寄せて抱き締めてくれる。そうしてただ何をする訳でもなく密着するだけで桜乃は気持ちが落ち着いていく。新吾は桜乃の気が済むまでいいよと言ってくれるから、いつまでも甘えてしまう。いつもそんな風に優しくしてくれてありがとうと心の底から思う。 「……。好き」 多くの想いを込めて、新吾の背中にそっと密着する桜乃。 「ま、そうよね。想像付くわ」 「そうだろうね〜。優しいんだから、本当に」 誰もが皆、新吾と桜乃の仲の良さを自分の事のように喜んでくれる。 「桜乃……。あの、じゃあ……。お風呂、一緒に入る?」 「……。もし私がのぼせ上がっちゃったら、介抱して」 こくりと頷きつつ、一緒に入った暁には何だかそんな展開が予想されるので、ちょっと先手を打ってみた桜乃。 「あーもー! ごちそう様って言ってるでしょ! 話が全然進まないじゃないのよっ!」 「そうでございます! 早くおっぱいの品評会を開始致しましょう〜!」 「新吾。覚悟はできているよ。しっかりと品定めしてもらいたい」 「びぃかっぷ、見て欲しいな」 「新吾くん。いっぱいいじってね」 ――そんなこんながあって、六人全員の胸が露になり、新たな展開へと移っていく。 「でも、この中から一番を決めるなんて、無理よね多分」 「うん。新吾は優しいから、いつまでたっても決められないかも」 「じゃあ、新吾くんに触ってもらおうよ」 「旦那様によるお試しタイムでございますね〜!」 いつしか六人は立ち上がって、横一列に並んだ。ふるふると揺れる十二の膨らみは圧巻だった。 「えっと。何をするの?」 「みんなのおっぱい、お触り放題。……右から左から。お兄ちゃん早く。焦らさないで」 恥ずかしさからか、桜乃は言葉少なめ。 「う、うん」 ゆっくりと、廊下の壁をなぞるように順繰りに触っていく。それぞれの柔らかな膨らみは火照っていき、ほのかに赤くそまっていく。 「ん」 「んんっ。くすぐったいわ」 「ごめん」 「あ、謝る暇があるならもっと触ってよ!」 「うん。それじゃ」 「あ、あ。……改めて、触られると……恥ずかしいわね。んっ」 言われるままに、新吾は愛理の胸をぐにぐにと揉みしだく。そうして更に、左から右へと何度も手を這わせて行く。 「くふ……。あ……。新吾に触られてる」 「あんっ。旦那様ぁ。くすぐったいでございます……」 「ん……。乳首、くにゅくにゅ転がしちゃ……。あ……」 「えへへ。新吾くんにおっぱい触ってもらって、嬉しいな」 「この後。みんなでお兄ちゃんを取り囲んでぱふぱふするのです。……んっ」 「いいわね、それ。んっ。あっあっ」 二度、三度、四度と左右に手を動かして、時折立ち止まっては一人ずつ公平に胸を揉み回す。 「みんな……乳首、起ってきているね」 「ど、こ見てんのよ! って、まあ……見せてるんだけど。……そりゃだって……し、しょうがないじゃないのよっ! 好きな人にまじまじと見られたり触られてるんだから! た、起っちゃうわよ! でも、触るだけじゃなくて、もっと……してよ。いっぱい」 「うん」 そういうわけで新吾はただ触るだけではなく体を屈めて、六人分の胸に舌を這わせていく。乳輪の外周を舐めては、尖った乳首を口に含んで吸い付いたり、舌で転がせたり。そうかと思えば右から左に舌を這わせる。 「あ、あ……。もう、いやらしい舐め方……。く……んっ!」 「あ……。新吾を独り占め、したい……。欲張りな願いだってわかっているけど。んう……」 「うん。私もそう思うよ。ふふ……。新吾くん、おっぱいにちゅーちゅーしちゃって赤ちゃんみたい。いっぱい吸ってね〜」 敏感なのか、口元に手を当てて刺激をやり過ごそうとする結月。胸に顔を埋めている新吾の頭をいいこいいこと撫で撫でしているみう。そして、両手で胸を寄せ上げて新吾に差し出す愛理。反応はそれぞれ異なる。 「あぅ……。もう我慢できない。ねえ……もう、えっちしようよぉ。新吾ぉ」 「アンジェも大賛成でございます〜! もうおっぱいだけでは我慢できません〜! 旦那様とえっちの時間でございます〜!」 「お兄ちゃん……えっち、して」 紗凪もアンジェも桜乃もあっさりと限界を向かえてしまったのか、みんな揃って気持ちが高ぶっていく。もう、胸への愛撫だけで収まるわけがない。 ――そういえばとみんなは思い出した。先程までの話では、先方は桜乃になる、と。そうして、みんな同意したように揃いも揃ってパジャマはおろか、ショーツまでを脱ぎ捨てていく。後には一糸まとわぬ姿になった六人の少女達。 (六対一……。俺……。体、持つのかな?) 嬉しいのだけども、ちょっと……いやいや、かなり恐いハーレムタイムが始まる。……と、その前にオープニングセレモニー代わりのスウィートタイム。六人の望みはキス。夢でじゃなくてリアルでのキス、キス、キス……。その二倍。三連続どころか六連続。いつまでも続くキス。 「お兄ちゃん……好き。……んんっ」 「ん、んっ。しん、ごぉ。ん、ふっ」 「らんな、しゃまぁ。んにゅぅ……んんぅ」 「えへへー。キス……嬉しいなー。う、ん。ん〜ん……」 「ん、ん……。もっとしてぇ。舌……絡ませてぇ」 「新吾くぅん。あむ……はむ……。んん〜ん」 新吾はきら星のごとく居並ぶ全裸の女の子六人を抱き締めてはキスをして、また他の娘を選んではキスをしてと繰り返した。代わる代わる、取っ替え引っ替え、何度もいっぱい。おでこやほっぺたへの挨拶代わりのキスから、唇同士を触れさせる程度の可愛いキスから、互いの舌を思いきり絡ませ合う濃厚なキスまで様々。一人のキスはみんなの気持ちを熱くして、そしてまた次のキスに移る。する方もされる方も、愛情をたっぷりと込めた気持ちを素直にぶつけ合う。 「……好き。私、もう……気持ち……押さえ切れないよ」 「新吾……。あたしも好き。いっぱいしてね」 「旦那様ぁ。心の底からお慕い申し上げます〜」 「好きだよ〜新吾。もう、それしか言えないよ。好き……好き……えへへ〜」 「新吾ぉ! 好きっだたら大好きなんだからね〜だっ!」 「新吾く〜ん。うふふ……。好きだよ」 キスは本当に不思議な魔法。すればするほど『大好き』という気持ちが増幅してきてたまらない。暴発し、溢れ過ぎた気持ちはやがて体の火照りへと代わり、次のステップへと移っていく。 みんながみんな全身で新吾に求めている。……えっち、しよ? と。 後編に続く。
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