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平沢家の休日










 それはいつのことだったか。『妹さんに唯のいい所全部吸い取られたんじゃないの?』と、姉の友人は冗談交じりに云った。それは間違いであると妹の憂にははっきりとわかっていた。最も、云ったところで誰も理解してくれないだろうという事も理解していたけれど、確かに違うのだ。当事者である憂にしかわからない違いなのだから。

「お姉ちゃん。朝だよ」

 早朝。平沢家次女……平沢憂は今日も姉の唯を起こしに行く。ベッドの上には大の字になって布団を蹴っ飛ばし、おへそを丸出しにしながら眠りこける唯の姿。今もまだ夢の中にいるのか大きく口を開け、気持ち良さそうに寝息を立てている。休日とは云え一応起きようとはしたらしく、枕元の目覚まし時計が鳴り始めるが完全に無視してひたすら眠り続ける。

 可愛いと憂は思う。本来ならば起こすためにゆさゆさと体を揺さぶるところだけど、今日は休日だからもう少しこのままでいさせてあげようと思った。とりあえず目覚まし時計のアラームを止める事にしてから憂は唯のベッドに腰掛けて部屋を眺め見る。部屋の片隅には大事そうに飾られたギターが置いてあった。軽音部に入り、このギターを手にした時から唯は変わった。打ち込む何かを見つけ、目的を得た。憂にとってはとても嬉しくもあり、少しだけ寂しくもあった。

「むにゃむにゃ」

 唯は何だか嬉しそうに呟きながら寝返りを打つ。多分夢の中で甘くておいしいおやつでも食べているのではないだろうか。だらしなく開いていた口が閉じ、何かを噛んでいるかのようだった。

 憂はくすっと笑う。確かに姉は……唯はドジでいい加減で適当で、だけど一つの事に集中すると物凄い力を発揮して、かなり天然ボケ入っていながらも無意識のうちにいつの間にかみんなを巻き込んでいっている。憂には分かっていた。唯にはそんな、説明しにくいけれどすごい魅力があるのだと声を大にして云いたかった。軽音部に入って以来、時折たまにそんな力が発揮されているみたいで、やはり憂にとっても嬉しいことだけど、でも……。

(寂しい……よ)

 突如、憂は頬に違和感を感じた。

「あ、れ?」

 触れてみるとすぐにわかる。一粒の涙がこぼれ落ちていたのだった。

 少しだけ寂しいと思っていたのはわかっていた。けれど、強く思ってはいなかったはずなのに、何故だか無意識のうちに考えてしまっていた。そして憂はどうして、と思う。涙をこぼしていたなんて。

「う、あ……あれ」

 手の平でぬぐい取る。けれど、もう一粒、二粒と立て続けに涙がこぼれ落ちていた。

「おかしいな。あ、あれ? 何で……」

 唯が軽音部に入部して以来、接する機会が以前よりも減った。至極当然のことであり、そもそも姉妹や兄弟というものはいつしか離れて行くものだと理解もしていたはずだった。けれど、それが現実になった今、猛烈に寂しさがこみ上げてきた。

「お姉ちゃん……」

 寂しいよと、心の底から思った。そして……。

「……」

 無意識のうちに憂は唯の唇に自分の唇を重ね合わせていた。弱音を吐くことなんてなかったし、我慢できるとも思っていた。それが何故なのだろうか。身勝手だと充分わかっていつつ、そんなことをしてしまっていた。

「憂?」

 そして、何故かそういう最低最悪のタイミングで目覚めてしまう空気の読めない唯。姉妹の目が至近距離で合っていた。きょとんとする唯は何度かまばたきをして憂を見つめる。

「あ……。ご、ごめんなさい!」

 慌てて謝る。謝ったところで許してもらえることではないとわかっていつつ。しかし、唯の反応は憂の予想を越えていた。

「うーいー」

「お姉ちゃ……んっ!?」

 唯は憂の体を突然引き寄せ、キスをしてきた。驚愕に憂の目は見開かれる。

「憂の唇って柔らかいね」

「お、お姉ちゃん。初めて……?」

「ん。初めてだよ? ファーストキスは憂とー」

 ショックを受けるかと思ったけれど正反対だった。何だか妙に嬉しそうな唯は、そのまま憂の体に触れ始める。寝ぼけているのかと思ったけれど、そうではなさそうだった。

「あ……」

「いいな。おっきくて、羨ましいよ」

「お……姉ちゃん。あ、あ」

 唯は憂の胸を服の上から優しく揉む。姉の自分より大きいということは知っていたけれど、実際に触れてみてそのふくよかさが羨ましく思えた。そして、驚く憂を引き寄せて再びキスをした。

「あ、あ」

「憂。好きー」

 憂は完全にペースを握られ、発端がどちらなのか分からなくなっていた。

「私、も……。あっ。んっ」

 とぼけているようでいて的確。首筋に舌を這わせてくる唯は、憂の敏感なところを知り尽くしているように見えた。

「お姉ちゃん。そこだめ……。あっ」

「寂しいなら、憂も軽音部に入ればいいのに。楽しいよ?」

 どうしてキスなんてしたのか、唯はお見通しだった。だから、軽音部に入部を勧めた。

「だめだよ。そしたら大変なことになっちゃうよ」

 姉の言に嘘はない。確かに軽音部は本当に楽しそうだと思った。何度となく入部することを考えたことはあった。けれど、それはできないと結論付けた。何故か?

「気持ち、押さえられなくて……。みんなの前で……こんなこと、しちゃうよ」

 いつしかそうなってしまう気がした。それに、と憂は思う。

「みんなに嫉妬しちゃいそうだから」

「ほえ?」

 唯はさっぱりわかっていないようだった。何だかんだでみんなに慕われていて、ギターという最前面に出て行くパートで大活躍。唯のあまりにも眩しすぎる姿に、自分の入り込む余地などないと思えてしまう。それに、軽音部は唯にとって神聖な場所だから部外者である自分が入り込んで荒らしてはいけないとも。

「ね。憂」

「あ……」

 唯は憂を抱きしめたままころんと転がる。憂が仰向けに、唯が上になり覆い被さる形になった。

「もっとキス、しよ」

「え……。あ……。んんっ!」

 笑顔の唯は憂に有無を云わせなかった。

「うーいー」

 唇だけではなく頬に、額に、首筋にキスを続ける唯。憂はその度にくすぐったそうにのけぞる。

「あ、あ、あ……っ」

 そうして間髪入れずに唯は云い放つ。

「憂。気持ちいいんだね?」

「あ、ふ……」

 唯の度重なる愛撫に呼吸が粗い。憂の顔は火照り、ぽーっとしてしまう。

「こっちはどうかな?」

「お、ねえちゃ……ん。だ、め……あ」

 唯はまさに無邪気な子供だった。ひくつき、力が抜けてしまった憂の上をうごめき、スカートの中に顔を突っ込み、下着の上から舌でなめ始めた。あまりにも無防備な憂は、唯のおもちゃにされてしまった。

「あ、あ、あっ! や、あ……っ! おねえちゃんっ! はずかしいよぉっ!」

 目尻に涙を溜め、シーツを掴んで必死に込み上げる羞恥に耐える憂。

「そう? それじゃ」

 唯は再び憂の体に覆いかぶさり……。

「一緒になめなめしようよ」

 パジャマのズボンを下着ごと脱ぎ捨て、憂の口元に押し付けた。丸くて形の良いお尻がむき出しになる。

「そ……んな。ひゃっ!」

 憂が悲鳴のような喘ぎを上げる。唯が憂の秘所をまさぐり、指を入れてきたからだ。

「ほら。憂もー。一緒に気持ちよくなろうよ」

 攻められ、促され、憂は無意識の内に舌を出して唯の秘所を刺激しはじめた。

「う、ん……。ん、ん、ん」

「あは。気持ちいい〜。憂上手〜」

 器用な憂は必死に舌を這わせる。けれど、愛撫の上手さは唯の方が一枚上手だった模様。いつしか唯は指も使い、憂の秘所をいじり回し、かきまぜる。ギターを練習していくうちに覚えたテクニックとばかり、小刻みに。

「あ……ひっ。あっあっ! も、もう……だ、めぇぇ! あああああっ!」

 唯の愛撫に堪えきれず、憂はあっさりと達してしまった。ぽたぽたと零れ落ちる雫をみて唯はにっこりとほほ笑むのだった。





…………





「憂〜」

「……」

「後で、一緒にお風呂入ろうよ」

 今日は……今日もと言い換えるべきか。両親は旅行中で、家には二人だけ。誰にも遠慮することなどなかった。唯の提案に憂は頷く。

「うん」

 唯のベッドで添い寝。裸の姉妹。憂は恥ずかしそうに頬を赤らめる。

「おなかすいた」

 く〜と唯のおなかが鳴った。見つめる先は妹。とても期待に満ちた表情。今日もおいしいものを作ってくれるだろう。

「ご飯作るね」

 そして期待どおりの答え。でも、と憂は云った。

「もう少し。もう少しだけ……このままでいさせて」

 唯に抱き着く憂。心地よい温もりにもう少しだけ身を任せていたかった。

「いいよ。好きなだけ」

「うん。お姉ちゃん……好き」

 普段とはまるで逆の立場だった。今はただ好きなだけ甘えさせてもらいたい。憂はそう思った。










----------後書き----------

 けいおん! 第二弾は平沢姉妹。憂はとってもいい妹。



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