素直な気持ち -櫻子と向日葵-
淡いピンク色のカーペットが敷かれた床の上にて、仰向けに寝そべりながら呆然としている櫻子と、その上に覆いかぶさっている向日葵。つまるところ、向日葵が櫻子を思いっきり押し倒したような構図。――事の発端は僅か十数秒前の口論。その口論の原因は櫻子にあり、とても下らなく些細な内容だった。つまりはいつも通り。 「あなたはどうしていつもそんな調子なんですの?」 ちょっときつめの口調。櫻子の挑発に乗ったというわけでもなく、業を煮やしてついやってしまったといったところ。舌打ちの一つでもしたいところだけど、かろうじて堪えたのだった。 「向日葵?」 いつものように二人で勉強……もとい、一方的に向日葵が櫻子の相手をさせられていたところで、異変は起こった。いい加減になさい、とそんな感じに。 「追試なんて受けたら内申に響きますわ。そんなことも分からない程お馬鹿じゃないでしょう? いくらお馬鹿なあなたであっても」 母親が言うような指摘を受けて、櫻子はムキになって反抗する。向日葵のお説教は、心の底から櫻子のことを心配したがゆえのものだから、かえって櫻子は頭にくるのだった。 「そんなの気にしないもん! いーから放れろこのおっぱい!」 「いいえ放れません。あなたがきちんと勉強すると誓うまでは」 もしも今、向日葵が両手を床から外してしまったら、支えを失った体が櫻子と完全に密着するようになってしまうだろう。けれど、それもいいかもしれないと、向日葵は一瞬思ってしまう。……どうしてそう思ったのだろう? 一瞬自分でもわからなくて、ふと櫻子に向いていた注意が逸れる。 「放せ! このっ! このっ! ていっ!」 「きゃっ!」 子供のようにもがいてじたばたする櫻子は、ふとした拍子に向日葵の胸をむんずと掴んでしまう。向日葵の、櫻子を拘束するように床を押さえていた腕が緩み、あっと言う間に逃げられてしまう。 「べーーーだ! やっぱり弱点はおっぱいなんだな! バーカバーカ!」 子供じみた態度をとる櫻子に、向日葵はかえって怒りや諦めが沈み、落ちついていく。そして今自分が感じた何とも形容し難い感情を、この目の前にいる分からず屋のお馬鹿娘にわからせてやろうと思うのだった。 「そんなに言うのなら、分からせてあげるわ」 「何を?」 向日葵は一気に櫻子の側に寄り、そして体を拘束し……。 「もごっ! なにすんだバカ! 放せ!」 「放さないって言ったでしょう」 「バカ! 痛い! 本気でやるなこのおっぱい!」 ぱちん、と乾いた音。尚も櫻子がもがくので、向日葵は遂に業を煮やし、手が出てしまった。 「あ……」 「静かになさい」 「本気で叩いた……。向日葵なんて嫌……い。んんっ!」 櫻子が泣き喚こうとするのを予測していたのか、向日葵が唇を塞いだ。 「違いますわ。本当に、もう」 憎いからそうしたのではないと、冷静に説明したいところだけど、したところでわかりはしないだろうと向日葵は思った。 「ん、んんんんんっ! ……な、にするの」 「こうでもしなければ、あなたはわかってくれないでしょう?」 言葉より実践で説明しているのだった。 「どういう……こと」 「本当にどこまでも鈍感ですわね。いいわ。教えてあげます。耳の穴かっぽじってよく聞きなさい」 櫻子の目前で、向日葵は自分の思いをはっきりと打ち明ける。 「私は、私の目の前にいるおバカでガキっぽくて、どうしようもなく鈍感な……人の気持ちなんかわからないようなあなたのことが、好きなのです」 「……え」 「だから、言うことを聞いて欲しいのですわ」 ああ、やっと言えた。こんなどうしようもないシチュエーションだけど、言えた事に代わりはない。櫻子がどう思うかはさておき、自分の思いを伝えることはできた。それにしても重ね重ね思うけれど、本当に情けないシチュエーションだこと。向日葵は一瞬片手で顔を覆い、そして意を決して次なる行動に移る。 「あ……」 向日葵は、櫻子の丁度胸の辺りに手の平を当て、満便なく撫で回す。 「や、やだ。くすぐったい……」 抗議をされてもやめる気はない。 「これは、あなたがいつも私にしていること、ですのよ?」 「やっやっ!」 撫でれば撫でる程に、服の布地と肌がこすれていく。もしかすると痛いと思うかも知れないけれど、これくらい強引にしたって罰は当たらない。普段は逆に櫻子が、この倍はきつく触れてきているのだから。もぞもぞとした感覚はやがて、櫻子の神経を羞恥心で満たしていく。 「や、やめろ。……あ。バカ。変態……んっ!」 櫻子が反抗的な態度をとればとる程、向日葵の挑発も続く。 「バカで結構。変態も望む所ですわ」 「あ!」 櫻子の服が、インナーごとたくしあげられてしまった。殆ど膨らんでいない胸と、ふっくらとしてしまった乳首が晒される。肌は白くて瑞々しくて、触れているだけで気持ちいい。 「さ、触っちゃ……」 「ダメでも触りますわよ」 「んひっ!」 人差し指と親指が桜色の突起を摘まみ、くにゅくにゅと弄ぶ。 「ああ! あ! だ、め……」 「何を震えているのです?」 「く、くすぐったくて……。あふっ」 「起ってきましたわ」 「うあっ! 向日葵が……触る、から……」 「触られて感じる方が問題ですわ」 「そん、な……。あっ」 櫻子は細い首筋をひくひくと震わせながら、切羽詰まったような声を上げる。向日葵は構わずに乳首への愛撫を続けた。 「ああっ! あっ! はっ……! だ、め……。ああぁ……」 櫻子の震えは大きくなり、体が跳ねる。不規則に、びく、びくん、と反応する。 「はぁぁぁっ! だ、め……。あ、あ、あっ。体……ヘン。何か、おかしい……。やあぁぁ。こ、こわい……。も、もう……だめ」 普段の脳天気ぶりなどどこへやら。目を潤ませながら脅える櫻子。向日葵はけれど怯まない。これはお灸を据えているわけなのだから。最後まで、お仕置きを完遂させるつもりだ。 「ヘンになっちゃいなさい。私の手で」 「んひっ!?」 向日葵の指が櫻子の秘所に触れる。子供っぽい柄のショーツをずらし、剥き出しの割れ目にまで侵入していく。櫻子には、針で刺されたように感じる。そうして一気にねじ込まれていく。 「あっ! そんな……とこっ! うああっ!」 櫻子の頬を涙が伝う。流石に向日葵もやり過ぎたかと思ったけれど、ここまできたら後には引けなかった。 「あなたの初めて、もらってあげましたわ」 「うっうっ……」 信じられない。ただその思いが櫻子を支配しているように見える。 「痛かったでしょう? こんな風にされるのが嫌なら、心を入れ替えて……」 ここから先は、向日葵の予想から外れる展開となった。 「痛かった。……けど。でも……向日葵にしてもらえたから、嬉しい」 「え?」 呆気にとられる向日葵。 「向日葵、ごめん。いつも言うこと聞かなくて。……これからはなるべく、聞くようにするから。だから……これからも、して」 今回だけなんて嫌だと、櫻子は言っているのだった。向日葵の挑発的な行為に、今度は櫻子が、向日葵が感じたものと同じような思いを抱いてしまったのだった。 「わ……わかって貰えたならいいんですわ」 櫻子は寝起きのようなとろんとした半開きの目をしながら近づいてきて。 「櫻子? んっ!」 向日葵が逃げないようにとしっかり抱き締めて、覆い被せるようにキスをした。 「向日葵。……好き」 今度は全く逆の状態。向日葵は櫻子によって組み伏せられていた。 「櫻子……。何を?」 「あたしも向日葵の初めて……欲しい」 「え? あっ!」 向日葵のふにふにした指が、向日葵の秘所に触れていく。それだけでなく、向日葵の胸を普段のように乱暴にではなく、優しく撫でるように触れていく。 「あ……。だ、め……ですわ……」 「向日葵ぃ」 普段の憎たらしい声などどこへやら。すがるような、悩まし気な猫の泣き声のような声で求めてこられ、向日葵は拒否することも抗うこともできなかった。 「好き」 「んっあっ!」 つぷり、と先端が入っていき、向日葵は喘いだ。……しっとりと湿ったそこは滑りがよくて、櫻子の指を歓迎するように受け入れていった。 …………
「んふぅ。んっ」 「あ、ふ……。うぅん」 互いの秘所をいじり、愛撫いし合う全裸の二人。上に櫻子、下に向日葵。シックスナインという格好。互いの秘所を好き放題に弄り回し、自由に愛撫し放題なのが良いと思うのだった。 「あっ。向日葵、それ、いい……」 「あなた、こそっ。んひっ!」 互いの指が、舌が、しっとりと濡れた柔らかな秘肉をいじり、とろとろに濡れていく。 「んっ! 向日葵のここ、濡れ濡れになってる。ああっ!」 「くっ。……あ、あなたのだって、糸……引いてますわ。ん、うっ!」 くちゅくちゅと湿った音が途切れない。 「あっあっ。気持ちいい。もっと、もっと激しく……して」 「わ、私もですわ。……櫻子。一緒に」 「うん。一緒にいこ」 二人の白い肌が重なり、ひくひくと震える。互いの体が一つになっていくように感じる。込み上げてくる快感は、ごまかしようのない事実。 その日から、二人の関係は少し変わった。
無意味な喧嘩が目に見えて減った。そうしていつしか仲の良い親友といったような、親密な関係になったと誰もが気付くことになった。 「ねえ、向日葵」 「何ですの?」 「したいな」 「もう。……仕方ないですわね」 ひそひそと、誰にも聞こえないように呟く二人。――その日の放課後。人の気配がまるでない『いつもの場所』こと、トイレの片隅にて……。 「んっんっ! んんぅっ! んぷ……。んっ!」 「んくっ。んんっ! んぁっ! も、っと」 狂ったように、貪るように唇を重ね合わせ、舌を絡ませている二人がいた。――我慢出来なかったよと、お互いにそう思いながら、互いを求め続けるのだった。 ----------後書き----------
ゆるゆり二作目。さくひまなお話。 この二人は、いつか仲良くこういう事をし合えるようになりそうに思うのです。
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