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【墓乃上怨子の怨念】





うーむ(--)
花鈴「ご主人様。どうしたんですか?(・・)」
いやな。今、ちょいと小説を書いておってな。ああ、俺と貴様らによるのんべんだらりとしたアホ話なんぞではなく『超小説ッ!』って感じの、本格的な長編小説をな(--)
花鈴「そうなんですか(^^;;;;)」
フフフ。今の俺には直木賞だの芥川賞だの、興味ないわ! 目指すはビッグにノーベル賞だぜ! ダイナマイト作るぜダイナマイト!( ̄ー ̄)
花鈴「はぁ(^^;;;)」
でだ。作品を作るに際してタイトルをいろいろ考えておるのだが、なかなか迷ってしまってのう(--)
花鈴「タイトル、ですか(・・)」
おう。タイトルじゃ(--)
花鈴「どんなお話なんですか?(^^;;)」
どんなお話、か。ふむ……。一言で言うと、だ。平日昼間の専業主婦や、ニートや引きこもりやさぼってる学生や会社員くらいしか見てないよーな時間にやってるメロドラマのような話だ(--)
花鈴「そうなんだ……(^^;;;;)」
とても家庭的でほのぼのした、感動的なお話だぞ( ̄ー ̄)
花鈴「そうなんですか〜。……それで、ご主人様が考えたタイトルって、どんなのなんですか?(^^)」
よく聞いてくれた。……考えに考えた末に、一つ浮かんだものがある。それは……(--)
花鈴「……(^^)」
『愛と友情の密室保険金連続殺人事件』だ!( ̄ー ̄)
花鈴「ひぅっ(xx)」
どーした。何をひぅひぅ云っておるか。感動したのか?(--)
花鈴「ほ、ほのぼのしたお話じゃないんですかぁ?(;;)」
え? ほのぼのしておるよ? 小さい頃から仲良しこよしの幼馴染みがな。成長してから仲違いして、互いに多額の保険金を掛け合って、隙を見つけては事故に見せかけて殺ってやろうとして関係ない第三者が巻き添えとかとばっちりで次々に死んでいく、というようなノスタルジックでスリリングかつほのぼのした恋愛ものホームドラマなのだが(--)
花鈴「タイトルからして、全然ほのぼのしてないですよぉ〜!(xx)」
そうかなぁ……。互いの歩く道を予測しては、ブービートラップを張ったり、背後から堂々と鈍器使って不意打ちしたりしてるんだけどなぁ。ああ、ならさ。『愛と友情の』を『青春の』に変えたりすればイメージも明るくなるかな?(--)
花鈴「そういう問題じゃないです〜。そのお話のどこがほのぼのしてるんですかぁ〜!(xx)」
うぅ……。仕方がない。そこまでいうなら、『愛と友情の密室保険金連続殺人事件』はやめておこう(--;;;;)
花鈴「……(xx)」
何だよその呆れ果てた目は! フン。いいさいいさ。こうなったら、貴様が感動のあまり涙ちょちょぎれ状態になっちまうような、超恋愛小説って感じの話を書いてやるからな! 覚えていやがれこん畜生!(--#)





そして、数日が過ぎる





ふふふふ。おいひぅー。約束通り、熱い純愛な感動小説を一丁、徹夜で書いてきてやったぞ!( ̄ー ̄|||)
寝不足でクマができているご主人であった。
花鈴「そうなんですか〜。ご主人様、体大丈夫ですかぁ?(^^;;;;)」
ったりめぇだ! いいから早速読め。そして、原稿用紙五十枚分で感想を書けコラ!(--#)
花鈴「はい〜。じゃあ、読んでみますね(^^)」





それは、どんなお話かというと?










 俺は今日、彼女をデートに誘った。どのように誘ったのかというと、どこかに遊びに行こうぜ、とそのまんまな感じだった。  その言葉に彼女はすぐ反応せず、沈黙の時間が数秒間続いた。断られたかな、あるいは無視されたかな、と思っていたら、彼女はボソッと云ったのだった。
「墓場」
 俺は驚喜した。ダメ元の誘いではあったが、まさか内気な彼女をデートに誘うことに成功できるとは!
 うれしさついでに、俺は更に聞いてみた。そこで、とは墓場のことだが、そこでどんなことをして遊ぶんだい? と。すると彼女はまたも数秒間、時間を置いてから云った。
「墓荒らし」
 グレートだ! 何というロマンチックな趣味だろう。きっとあれだ。墓石なんかを豪快にドシャッとおっ倒したり、ずばばばっと掘り返したりするのだろう。それはもう、至上の喜びとも云える快楽を味わえるエンタテイメントであることだろう。考えるだけでも鳥肌が立ち、ゾクッという武者震いにも似た感覚が背筋を襲う。
 俺はそのように、とてつもなく感動したから更に聞いてみた。墓場で、どこか良いというか穴場的なところは近くに無いか? と。そしたら彼女は云った。
「うちの庭」
 素晴らしい。実は彼女の実家はお寺で、庭(というよりも境内)にはお墓があるのだ! 彼女の可愛らしい性格を考えるに、恐らく、不法投棄というか死体遺棄という非合法な響きがぴったりの墓場なんだろう。
 でも、墓荒らしをしたら祟られたりしちゃうんじゃないかな? 何て、些細な心配事をちょ〜〜〜っとだけさりげな〜〜〜く云ってみた。そしたら。
「祟りは、快感」
 同感同感同感! もう何というか、俺とこの娘は波長というか気が合いまくるような気がしてきた!
 俺は決めた! 墓場でのデートの時、彼女に告白するということを!
 とりあえず、何時にする? と聞いて、約束を確実なものにした! そしたらもう、お約束。
「子の刻」
 やっぱりだ! 俺はもう、この娘にぞっこんだ!
 あ、それともう一つ聞くのを忘れていた。何かもっていった方がいいものとか、あるかな?
「遺書」
 彼女はやっぱりわかってるなぁ! これはもう、気合入れて書いちゃうよ!










花鈴「……(xx)」
ふふふ。どうだ面白いだろう。タイトルは名付けて『墓乃上怨子の怨念(はかのうえおんこのおんねん)』だ。もうな、アカデミー賞でもグラミー賞でも作文コンクールでも合唱コンクールでも総ナメって感じ?( ̄ー ̄)
花鈴「はぁ〜……(xx)」
ため息付くなため息を! ぐだぐだぬかしてっと、貴様と悠希のえろえろがっちゅんな話でもねちねちねちねちのーこーかつはーどに書いちゃるぞ!(--####)
花鈴「ひぅっ! や、やめてくださいよぅ〜〜〜!(xx)」





ご主人様の創作意欲に、衰えは無い!





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